~Shades of Stars~
エピローグ
102期撫子祭のライブが、大成功で終わった、その翌日。
- kozue_tsuzuri_megumi_sachi
『かんぱーい!』
蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブの部室では、ささやかな打ち上げが開かれていた。
- 沙知
「いやあ、本当にいいライブだったねぃ!」
沙知は満足げに紙コップを傾ける。
- 沙知
「でもやっぱり、みんなそれぞれ、飲み物は違うんだねぃ……」
梢は自前の紅茶、綴理は缶のココア、そして慈はなぜか明らかに外のカフェで買ってきたらしきカフェラテを持っていた。
- 慈
「まあ、私たち、趣味もぜんぜん違いますからね~」
- 梢
「性格も違いますし」
- 綴理
「ボクは好きだよ、ふたりのこと」
よしよしと慈が綴理の頬をくすぐる。
- 慈
「私も好きだよ~、綴理のこと~☆」
- 綴理
「ふふふ」
- 梢
「あなたたち、見るたびに仲良くなってるわね……」
呆れながらカップを傾ける梢。
- 慈
「えー?嫉妬ですかぁ?梢」
- 梢
「そんなわけないでしょう……。まったく……め、慈……」
ん?と沙知が首を傾げた。
慈は半眼で梢を見やる。
- 慈
「あのさぁ……もっとスッと呼べないわけ……?」
- 梢
「……なんのことかしら。そうだ、いい茶葉を実家から送ってもらったのよ。淹れてあげましょうか、つ……綴理」
- 綴理
「ボクの名前、つつづり、じゃないよ?」
- 梢
「……そうね、ええ…………綴理」
立ち上がった梢。その背を綴理が追いかける。
んん?とさらに沙知は首を傾けた。
- 沙知
「どうかしたのかぃ?あれ」
- 慈
「心境の変化じゃないですかー?」
- 沙知
「ふぅむ」
練習中に始めたお互いの名前呼びは、すっかり定着した。
いや、定着したかな……。慈は首をひねる。なんでもいいけど、恥ずかしそうに呼んでくるのだけはやめてほしい。こっちまで照れるから。
- 綴理
「こず、こずこず」
- 梢
「な。なによ。つ……綴理」
- 綴理
「ボクの名前は」
- 梢
「わかっているわよ!綴理!」
仲睦まじそうに紅茶を淹れるふたりの後ろ姿を眺めていると、沙知がぐっと拳を握って。
- 沙知
「いやぁ、本当にいいライブだった……。次こそは、次こそは必ず、最後まで4人で出られるように、あたしもがんばらなくっちゃいけないね……」
それから、こちらを見てニヤリと口を開く。
- 沙知
「そういえば、知っているかぃ?きみたちのこと」
- 慈
「え?撫子祭で割れんばかりの拍手と歓声とともに空前絶後の大成功を収めた私たち102期生のことがなにかぁ?」
- 沙知
「乗っているねぇ、調子に……」
うすら笑った後、沙知は人差し指を立てた。
- 沙知
「きみたち、『蓮ノ大三角』って呼ばれてるらしいぜ?」
- 慈
「なんですかそれ」
- 沙知
「さぁてねぇ。それだけ人の心に強く光を残すライブだった、ってことじゃないかぃ?」
天井を見上げる。そこにはない星の輝きを幻視して、なるほど、悪くないと思う。
音楽一家のエリート、乙宗 梢。
ダンスの天才、夕霧綴理。
そして私、世界中を夢中にする美少女、藤島 慈。
夜空に輝く最も大きな一等星たち。
ラブライブ!優勝を目指すなら、ハッタリだって大事な武器だ。
- 慈
「悪くないセンスじゃん、沙知先輩」
- 沙知
「ふふん、そうだろう。……ん!?なんのことだぃ!?これはあくまで、世間がきみたちを指している噂話であって──」
なにやら言い訳を並べ立てる沙知を横目に、慈は笑みを浮かべた。
- 慈
「蓮ノ大三角……。なるほどね。大三角」
梢と綴理の背中に目を向けた後、同じように沙知を見やる。
憐れみとともに、告げてやる。
- 慈
「沙知先輩が入ってないわけだ」
- 沙知
「誰がちっちゃいだ誰が!」
先輩を指差して笑ってやる。
- 慈
「伸びるといいですね、身長☆」
きゅるんと笑うと、お茶を入れたふたりが、戻ってくる。
- 梢
「慈……。人の身長をあげつらうのは、あまり良いマナーとは言えないわよ」
- 綴理
「さち。高いところに手が届かなかったら、言ってね。ボクが取ってあげる」
- 梢
「でも、それだと先輩のプライドが……。どうかしら、持ち上げてあげたほうがいいんじゃ……?」
本気で心配そうに言う梢に、ついに沙知が笑いながらキレた。
- 沙知
「きみたちそれが先輩に対する態度かぃ!?まったく!」
もうすぐ、夏休みだ。
- 沙知
「この問題児どもめー!」
今年はいったいどんな楽しいことが待っているのだろう。慈は窓の外に目を向ける。タレントに奮闘していた去年よりもずっと、充実して、退屈しない。そんな夏の予感があった。