第10話『ルリめぐ・ファンファーレ』
PART 7
花帆 | すごーい! 瑠璃乃ちゃん、ステップばっちり決まってた! |
さやか | これなら、明日のライブもぜったいうまくいきますよ! |
瑠璃乃 | へへっ、そうかな! いぇい! |
瑠璃乃 | ま、充電次第な不安はあるけど。 でも、きっとなんとかなるなる! もうルリ、スクールアイドルだもん! |
花帆 | だったらあたしたち、ステージ袖にいて、 エネルギー送ってあげる! こんな風に! |
花帆 | ほら、さやかちゃんも! |
さやか | えっ!? は、はい! |
花帆 | がんばれ瑠璃乃ちゃん、がんばれがんばれがんばれー……。 |
さやか | さ、最後までやり遂げられますように……! |
瑠璃乃 | あははっ、ふたりともありがとさんきゅー! |
瑠璃乃 | めぐちゃん。 |
慈 | るりちゃん。 ちょっと来て。 |
瑠璃乃 | 花帆ちゃんも、さやかちゃんも、 びっくりしてたじゃんー。 |
瑠璃乃 | 急にそんな、怖い顔で来るんだから。 戻ったらふたりになんて言い訳しよっかなー。 |
慈 | これ、どういうこと。 |
慈 | なんで私の名前があるの! こんな、勝手に……。 |
瑠璃乃 | ね、めぐちゃんもルリと一緒に出よーよ。 ふたりでライブ、しよっ? |
慈 | ……冗談じゃ、ないんだよ。 私は怪我して、踊れなくなったの。 |
慈 | それなのに……悪趣味だよ、るりちゃん。 |
瑠璃乃 | 出るし……。 ルリは、めぐちゃんと一緒に、 ライブに出るんだし! そう決めた! |
慈 | だから! |
瑠璃乃 | 出るの! ぜったい、ぜったいぜったい! めぐちゃんも出る! 一緒にやろうよ! |
慈 | そんなに簡単なことじゃないの! |
瑠璃乃 | 出ーるー! |
瑠璃乃 | だって、めぐちゃんも出たいんでしょ……? だったらやろうよ、一緒に、やろうよ! |
慈 | 私は、別に……っ。 |
慈 | もう、やめるって決めたんだから、今さら、そんな……。 |
瑠璃乃 | ルリだって、失敗するかもしれないって不安だけど……。 |
瑠璃乃 | でも、めぐちゃんと一緒なら、きっとできるって思うから! だから、めぐちゃん! |
瑠璃乃 | 待ってるから! |
慈 | ……! それは。 |
瑠璃乃 | あっ……めぐちゃん! 久しぶりだねっ! |
慈 | うん、久しぶり。 転校してから、どう? 友達できた? |
瑠璃乃 | ……あ、あんまり……。 めぐちゃんがいないんだもん……。 |
慈 | よし、そんなキミにめぐちゃんが、とっておきのプレゼントあげるよ。 ね、今おうち? |
瑠璃乃 | え? う、うん。 |
慈 | だったら、テレビつけてくれる? |
瑠璃乃 | わかった。 |
瑠璃乃 | あっ! めぐちゃんが、テレビ出てる! すごい、すごいすごい! どうやったの!? |
慈 | 私が本気出したら、こんなもんってこと! |
瑠璃乃 | わあー。 |
慈 | だからね、るりちゃん。 もうメソメソするのは、終わり。 |
瑠璃乃 | えっ……? |
慈 | 私、るりちゃんの見えるところにいるから。 ずっと、夢中にさせてあげるから。 |
慈 | だから、るりちゃんには笑顔でいてほしい。 |
瑠璃乃 | ……あの、あのね、めぐちゃん! ルリも、めぐちゃんにプレゼントあげたい! |
慈 | え? |
慈 | ありがとうね、るりちゃん。 すごくかわいいよ、この靴。 |
瑠璃乃 | うん、喜んでくれて、ルリも嬉しい。 めぐちゃんのダンス、とってもかっこよかったから。 |
瑠璃乃 | 動きやすそうなのがいいかな、って。 |
瑠璃乃 | あのね、めぐちゃん……。 ルリもね、ちょっとずつ友達、増えたよ。 |
瑠璃乃 | がんばってるんだ。 めぐちゃんにも、いつか笑顔を届けられるように。 |
慈 | ふふーん。 でも私、どんどん先に行っちゃうよー? るりちゃんのくれた靴なら、どこだって走っていけるもんー。 |
瑠璃乃 | そ、それは……。 その、だったら! |
瑠璃乃 | 外国とか行って、すっごくビッグになって、 一気にめぐちゃんに追いつく! 飛行機で! |
慈 | ん。 そしたら、またふたりで楽しいことができるね。 |
瑠璃乃 | そうだよ! また一緒にやろうよ、めぐちゃん! 必ず追いつくから! |
慈 | うん。 |
慈 | 待ってるーー。 |
慈 | ……その言葉。 |
瑠璃乃 | え? |
慈 | ううん、なんでもない。 でも、そっか。 |
慈 | 私がスクールアイドルになったのは……。 るりちゃんとふたりが、楽しかったから。 |
慈 | ふたりでいろんな新しいことをして、 そしたら周りも楽しんでくれて。 |
慈 | みんなを、もっともっと夢中にさせてやりたくて。 だから、ずっと走ってきたんだ……。 |
瑠璃乃 | めぐちゃん……? |
慈 | ごめんね、るりちゃん……。 でも、もう遅いよ……。 |
瑠璃乃 | ど、どうして……? ぜんぜん、まだルリが来たばっかりだよ! |
瑠璃乃 | 大丈夫だよ、いつだって、めぐちゃんはなんでもできたんだもん! めぐちゃんなら、怪我ぐらい、すぐにーー。 |
慈 | そんなことないんだよ! |
慈 | 私はね、ずっとかっこつけてきただけ! るりちゃんの前で、いいとこ見せたかっただけなの! |
慈 | ダンスだって、いつもこっそり練習してた! 子役のオーディションだって、何回も何回も落ちたんだから! |
瑠璃乃 | えっ……。 |
慈 | それでも、るりちゃんが喜んでくれるから、 るりちゃんが笑顔でいてくれるからって……。 |
慈 | 怪我のことだって、ほんとはもっと早く言えばよかった! そしたら、るりちゃんが蓮ノ空に来なくても、よかったのに。 |
慈 | 私が、逃げてたから……。 るりちゃんの前で、かっこいい私のままでいたかったから……。 |
慈 | ごめんね、るりちゃん。 |
瑠璃乃 | そんな、そんなこと……。 |
慈 | わかったよね、るりちゃん。 私は、藤島 慈は、 るりちゃんに憧れてもらえるような、かっこいい子じゃないんだ。 |
慈 | いくじなしで、弱虫で…… 今だってずっと、ステージにあがるのが、こわいんだよ。 |
慈 | 今までずっと、嘘ついてて、ごめんね。 |
瑠璃乃 | め、めぐちゃん! |
慈 | スクールアイドルとしてのるりちゃんのこと、これからも応援するよ。 蓮ノ空を、どうかよろしくね。 |
瑠璃乃 | めぐちゃん…………。 |