第17話『ルリ思う。』
PART 8
慈 | るりちゃんの言ってたことは、正しかった。 世界中を夢中にするって、私は口だけで。 |
慈 | いっぱい取りこぼしてたんだね。 私は……るりちゃんの魅力を、この先ずっと潰すところだったんだ。 |
慈 | ーー決めた。 |
瑠璃乃 | どこ行ったーーーーーーー!!!! |
瑠璃乃 | 『旅に出ます めぐちゃん』ってなに!? |
瑠璃乃 | そんなさくさく旅立ててたまるか! 旅なめんな! ていうか学校なんだと思ってんの!? |
慈 | でっかくなって帰ってくるよ、蓮ノ空。 |
瑠璃乃 | なにしてんの!? バカじゃないの!? ほわっつ!?!? |
慈 | るりちゃん。 ……あ。 |
慈 | 行っちゃった。 |
瑠璃乃 | 行っちゃわなかったらどうするつもりだったのか色々聞きたいんだけど。 |
瑠璃乃 | ……はあ。 どういうつもりなの、ルリを置いて旅とか。 |
慈 | ……そのまんまだよ。 |
瑠璃乃 | 真面目に怒ってっからね。 ちゃんと全部話してくれない? |
慈 | ……解散しようと思って。 |
瑠璃乃 | ……みらくらぱーく!を? |
慈 | ごめんね。 私はるりちゃんを舐めてたんだよ。 |
慈 | 私とるりちゃんなら最強だけど…… 私のいないところで、るりちゃんは最強にはなれないって。 |
慈 | でも、そんなことなかったじゃん? |
慈 | るりちゃんの方が、世界を夢中にさせる力を持ってたのに…… 私はそれに気が付かなかった。 |
慈 | 私にはできなかったことを、るりちゃんは出来てた。 ほんとはきっと、もっと前からできてたはずなのに……。 |
慈 | だから私が、るりちゃんに劣ってたってことだ。 |
瑠璃乃 | すう……ふう……。 それで? |
慈 | だからるりちゃんと同じく、カリフォルニアに飛んで、 武者修行をして帰ってくるよ。 |
慈 | るりちゃんをまた、夢中にさせられる私になってね。 |
瑠璃乃 | ……。 |
慈 | ふがいなくてごめん。 スクールアイドル、全力で楽しんでね。 |
瑠璃乃 | ふっ……。 |
瑠璃乃 | ふざけんなーーーーーー!! |
慈 | ……るりちゃん。 |
瑠璃乃 | いや、マジでふざけんな! あーびっくりした!! |
慈 | えっ。 |
瑠璃乃 | ルリがここまで頑張って来られたのは、 スクールアイドルクラブのみんなのおかげで、 応援してくれたみんながいたからだよ! |
瑠璃乃 | でも、頑張ってきたのは、めぐちゃんが居たからじゃ!! |
慈 | それは違うよ。 |
慈 | 直接スクールアイドルが好きになれたんだったら、 もう私を挟む必要なんて……ないんだよ。 |
瑠璃乃 | スクールアイドルが楽しいのは本当だよ。 この半年のおかげで、 すっごくスクールアイドルのことが好きになれた。 |
瑠璃乃 | 確かに、もうめぐちゃんを挟むかどうかなんて関係ない。 |
慈 | ……ほら。 |
瑠璃乃 | でも、めぐちゃんは肝心なことすっぽ抜けてる! あ、肝心って意味分かる!? あんだすたん!? |
慈 | るりちゃん。 それはぼんやりとわかるけど。 |
瑠璃乃 | ぼんやりとかよ。 じゃあくっきり言うよ。 |
瑠璃乃 | なんのために、一緒にスクールアイドルやるつもりだったんだよ。 ふたりで、世界を夢中にするって、そう言ったじゃん! |
慈 | ……っ。 でもるりちゃん、今の私は、るりちゃんの言ってることも、 るりちゃんのことも、全然分かってなくて。 |
瑠璃乃 | だからすっぽ抜けてるって言ってんの。 ルリの大好きなめぐちゃんは、世界中を夢中にさせるめぐちゃんだよ。 |
慈 | だから、それがもう私には。 |
瑠璃乃 | ……そんな顔しないでよ。 めぐちゃんは可愛い、めぐちゃんはすごい、 めぐちゃんは……いつも……ルリを……っ。 |
瑠璃乃 | だからルリは、いつも、楽しくて……。 |
慈 | るり、ちゃーー。 |
瑠璃乃 | だから……だから! |
瑠璃乃 | めぐちゃんは、ルリに劣ってなんかいない!! 二度と言うな!! |
慈 | るり、ちゃん……!? |
瑠璃乃 | ルリ、分かったんだ。 世界中を夢中にするって言うのはさ。 |
瑠璃乃 | めぐちゃんと、ふたりでやらなきゃ出来ないんだってこと! |
瑠璃乃 | 俯いてる子ひとりひとりに、顔を上げて笑ってほしい。 |
瑠璃乃 | それが、ルリのやりたいこと。 できること。 ルリの、スクールアイドル。 |
瑠璃乃 | ルリが楽しませられるところに、 めぐちゃんは届かない。 |
慈 | ……っ。 |
瑠璃乃 | でもね。 めぐちゃんの言ってたことも、全然間違ってない。 いえーって盛り上がってるとこに行くのは、絶対楽しい。 |
瑠璃乃 | そんでその盛り上がる場所を作るのは、 やっぱりルリは出来ないんだ。 |
瑠璃乃 | ルリはいつも、めぐちゃんについてくのが楽しくて…… それだけだったもん。 |
瑠璃乃 | だからめぐちゃんの手が届くところに、ルリは届かない。 |
瑠璃乃 | ねえ、めぐちゃん。 ルリはひとりで遊ぶのが好き。 |
瑠璃乃 | ルリは確かに、ルリ自身を楽しませることは出来るよ。 でも、そんなルリが、めぐちゃんと一緒に居る理由はなに? |
慈 | ……そっか。 そうだね。 ごめんね。 それ以上言わせちゃ、もうどうしようもないね。 |
慈 | うん。 ……私は、かわいい。 |
瑠璃乃 | そう! |
慈 | 私はすごい。 |
瑠璃乃 | そう! |
慈 | そして……私は、るりちゃんが大好きで。 るりちゃんも、私が大好き。 |
瑠璃乃 | そう!! |
慈 | ……ね、るりちゃん。 私もね、スクールアイドルが好きだよ。 |
慈 | まっすぐな努力が伝わって、楽しませようとがんばればがんばるほどに、 みんなが喜んでくれて。 |
慈 | ひとりひとりの『楽しい』って声が、ぜんぶ聞こえてくるんだ。 |
瑠璃乃 | そうだよ……そうだよ! めぐちゃんは、それができるの! |
慈 | ん。 だからね、るりちゃんが届かない世界のことも、 ひとりが大好きなるりちゃんのことも……。 |
慈 | 私がずーっと、夢中にしてみせるから! |
慈 | ね! ふたりで。 |
瑠璃乃 | うん、ふたりで。 |
慈&瑠璃乃 | 世界中を夢中にしよう!! |