第2話『踊り続けよう、きみが見てる』
PART 4
DOLLCHESTRAの練習。 | |
鏡に向かって一緒にダンスしているさやかと小鈴。それを見守っている綴理。 | |
綴理 | ……。 |
さやか | ワン、ツー、スリー、フォー! ワン、ツー、スリー、フォー! その調子! 重心意識! 呼吸のテンポ崩さず! |
小鈴 | ……!!! |
さやか | ターンしてーー決め! |
小鈴 | はい! |
小鈴 | お、おお……初めて、初めて転ばずに最後までできました……!! |
さやか | 小鈴さんの、たゆまぬ努力の賜物です。 |
小鈴 | う、うう……さやかせんぱーい!! |
さやか | わっ! |
小鈴 | また……また、湖のときみたいな……胸の奥から、 わーって熱いものがこみあげくるような…… すっごく、すごい、すごくて……!! |
さやか | この1週間……頑張りましたね、小鈴さん。 |
さやか | 綴理先輩、いかがでしたか。 |
綴理 | ん。 前に比べて、動きがずっとよくなってる。 それに、すずはずっとボクの方を見てくれていたね。 |
小鈴 | はい、今見てくれていたのは、綴理大先輩ですから! それを意識して頑張りました! |
綴理 | 伝わったよ、すずの想い。 がんばりました! って気持ち。 |
さやか | いやその前に大先輩ってなんですか!? |
小鈴 | 大先輩は大先輩です! 三年生なので! |
綴理 | ボク、大先輩。 |
さやか | なる、ほど。 と、ともあれ一言は込められたようで良かったです。 次は、二言くらい込められるように頑張ってみましょうか。 |
小鈴 | じゃあさやか先輩はどんなものを込めているんですか!? |
さやか | わたしの場合は……昨日の自分よりも成長できた姿をお見せしたい、とか。 皆さんの期待に応えられればと。 |
小鈴 | なるほど、がんばります! |
綴理 | 頑張ってたすずもそうだけど……さやもよくなってたね。 |
さやか | え、わたしもですか? |
綴理 | うん。 きっと、すずを知ってあげているからだね。 いいよね、スクールアイドル。 |
さやか | ええっと……。 と、ともあれ、しっかり前進していますね、小鈴さん。 あとは敦賀に向けて、一度ライブをーーって。 |
小鈴 | ぐぅ~~~。 |
さやか | ね、寝てる……! |
綴理 | 頑張ってたからね。 |
さやか | もう、仕方ないですね。 |
さやか | 正直、不安だったんです。 わたしの“特訓”でいいのかどうか。 |
綴理 | すずは、さやの特訓が良いって言ってたよ。 |
さやか | それは……はい。 |
さやか | でも、求めているものが正しいとは限らないじゃないですか。 それこそ去年のわたしが、綴理先輩みたいになりたいと言っていたように。 |
さやか | だから、ほっとしました。 |
さやか | 綴理先輩の目から見ても、以前より良くなっているというのなら…… きっとわたしの特訓は、間違いではなかったのだと。 |
綴理 | ……「さやとボク」と、「さやとすず」は違うからね。 |
さやか | それは、どういう? |
綴理 | 混ざる色が違えば、出てくる色も違うんだ。 綺麗な色に違いは無いよ。 心配しないで。 |
綴理 | 作詞はできそう? |
さやか | 実は、小鈴さんに偉そうに指導しておいて、 わたしの方はまだはっきり掴めていなくて。 あと一歩だとは思うんですけど。 |
綴理 | 分かるといいね。 |
さやか | ……そうですね、もう1週間経ちましたから。 時間の流れは早いですね。 |
綴理 | 楽しいとね。 |
さやか | 敦賀で行うライブフェスタは、お昼前開始じゃないですか。 |
綴理 | そうだね。 |
さやか | 花帆さんや瑠璃乃さんと相談して、学校からも許可を取って…… 実は、福井で前泊することにしました。 |
さやか | 出発は綴理先輩たちと一緒です。 |
綴理 | やった。 |
さやか | なので……敦賀での本番前日に、福井でライブをします。 |
さやか | そこを、小鈴さんの“特訓”の総仕上げ…… 見てくれている皆さんに想いを伝える、最後の予行演習を。 |
綴理 | そっか……うん、さやはやっぱりすごい。 ちゃんと、指導ができてるよ。 ボクなんかよりずっと。 |
さやか | ここまでわたしが頑張って来られたのは、綴理先輩のおかげですから。 |
綴理 | ……ありがと。 ふふふ。 |
さやか | ふふ。 さて、じゃあいったん着替えて戻りましょう。 |
さやか | わたしも新曲の作詞も今までの考えをまとめたいですし…… 明日のお弁当や綴理先輩の修学旅行の支度もしなくてはなりません。 |
綴理 | えっ。 |
さやか | え、じゃあありません。 3泊4日の修学旅行だというのに、 綴理先輩が手ぶらで新幹線に乗ったりしたらと思うと。 |
綴理 | ボクなんなの。 |
さやか | ……小鈴さん、行きますよ。 起きられますか? |
小鈴 | ぐぅ……。 |
さやか | 仕方ない。 おぶっていきますか。 いきましょう、綴理先輩。 |
小鈴 | ……さやか先輩。 |
さやか | ? |
小鈴 | になりたい……。 |
さやか | あはは、そんな良いものじゃないですよー。 |
綴理 | 良いものだよ? |
さやか | 反応に困ること言わないでください! |
慈 | それじゃあ、楽しんでおいでね~。 私たちもたっくさん東京で遊んでくるから! |
瑠璃乃 | うん! おみやげ楽しみにしてるね! |
姫芽 | 東京のめぐちゃんせんぱい……いっぱい写真ください! |
慈 | とーぜん! そっちもどんどん写真送ってね! |
梢 | 修学旅行というのは、遊びに行くわけじゃないのだけれど……。 |
慈 | はいはい、梢ちゃんのお小言なら新幹線の中で聞いてあげるから。 |
梢 | まったくもう。 みんなもね、良い思い出になることを祈っているわ。 |
花帆 | はい! いってきまーす! |
吟子 | はい、いってきます。 先輩方もお気を付けて。 ……金沢からの下り新幹線って、なんか不思議な感じ。 |
綴理 | 獲れたての新幹線、楽しんでね。 |
さやか | なんだか新幹線が三枚おろしにでもされそうな感じですけど…… はい、楽しんできます。 綴理先輩もどうかお気を付けて。 |
小鈴 | 綴理先輩! 徒町、やってやります! |
綴理 | ん。 きっと良いフェスになるんだろうな。 いいなぁ。 |
さやか | しっかり、この旅行中に作詞も完成させます。 |
綴理 | それも楽しみにしてる。 さやなら、できるよ。 |
さやか | はい! |
アナウンス及び音楽が鳴り響く。 | |
梢 | 時間ね。 私たちはもう行くわ。 |
慈 | また来週~! |
綴理 | ばいばい。 |
花帆 | うわあ。 ほんとに二年生と一年生だけだ。 |
瑠璃乃 | にわかに実感がこみ上げてきます。 |
さやか | それではーー今回はこの6人で。 蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブとして、張り切っていきましょう! |
花帆&さやか&瑠璃乃&吟子&小鈴&姫芽 | おー! |