第7話『Link to the FRIENDS!』
PART 4
一同、トレーニングウェアを着て、金沢市の公園にまでやってきた。 | |
休日の自主トレというイメージ。 | |
吟子 | だから言ったのに……。 |
小鈴 | 大先輩の壁は、鼓門より高かったね……。 |
不敵な笑みを浮かべながら、姫芽が腕を組む。姫芽はただ負けただけじゃなくて、負けて得るものがあったという雰囲気。 | |
姫芽 | ふっふっふ……。 |
姫芽は指を立てて、にこやかに言う。 | |
姫芽 | でも、糸口は見えたよね~。 |
吟子 | そ、そう……? |
姫芽 | 自分たちよりレベルの高い相手に挑むってことは、 ふつーにやっても勝てないわけだからさ~。 |
姫芽 | あらゆる武器を駆使して、ぶつからなきゃいけないってこと。 |
姫芽 | そしてみんなの武器を束ねて……合体必殺技を手に入れるのだ~! |
小鈴 | さっすが姫芽ちゃん! 学生チャンピオン! 勝負ごとでは、いちばん頼りになるー! |
吟子 | ……そうだね。 アレコレ言っちゃったけど、姫芽がいてくれて心強いよ。 ありがと。 |
ニコニコと吟子の言葉を受け入れる姫芽。 | |
姫芽 | のーぷろぶれむ~。 |
公園の端っこについて、辺りを見回す吟子と姫芽。 | |
吟子 | まあ、それはそうとして、自主練もやらなきゃね。 この辺り、かな。 |
姫芽 | ダンスやってる人、けっこ~いるね~。 |
吟子 | あー……やっぱり、ラブライブ!大会が近いから、かな。 近くの高校の子、とか? |
小鈴が指差した先には、ダンスしている集団。8人チームぐらいのイメージです。 | |
小鈴 | ねえねえ、あの人たち、すっごくうまいよ! |
姫芽 | えっ、ダンスうま~! あの人たちも高校生~? |
吟子 | いやいや、さすがに違うでしょ……。 てか、あの端っこの人……すごい。 |
小鈴 | わ~……綴理大先輩ぐらいキラキラしてるかも……。 と、とんでもない……。 |
しばらく眺める三人。 | |
感嘆の声を漏らす吟子。 | |
吟子 | フォーメーションも、上手……。 |
姫芽 | アタシたち、目指すはアレだね~。 |
小鈴 | んしっ。 じゃあ、パート切り替えの部分を重点的に特訓っ。 やろ~! |
吟子 | 撮ったの再生するよ。 |
吟子 | …………ぽちっ。 |
三人、スマホを見つつ、首をひねる。 | |
姫芽 | ん~……。 |
ストレートに口に出す吟子。姫芽も、おかしいなあ、という気持ち。 | |
吟子 | ……なんかやっぱり、うまくないね。 |
姫芽 | せっかく三年生のせんぱいとバトったのににゃあ……。 |
小鈴 | で、でも、ふたりとも表情が真剣で、ばっちり決まってるよ! |
吟子 | いや、こんなときにまで良かった探ししてくれなくていいから、小鈴……。 |
泉が落ち着いた雰囲気で、気さくにアドバイスをしてくる。 | |
泉 | どっちかというと問題なのは、 お互いのストロングポイントを把握していないことなんじゃないかな? |
後ろから覗き込んできている泉にビビる三人。 | |
吟子&小鈴&姫芽 | わっ!? |
泉は朗らかに、手を挙げる。 | |
(※泉は基本的に落ち着いていて、柔和なイメージです。常に柔らかく微笑んでいます。) | |
泉 | やあ。 |
小鈴 | あっ、さっきのダンス上手なおねえさん! |
泉 | っふふ。 褒めてくれていたね。 どうもありがとう。 |
ぱちぱちと手を叩く姫芽。泉は少し首を傾げてから、微笑む。 | |
姫芽 | めちゃめちゃすごい連係でした~! いいチームですね~! |
泉 | チーム? ああ、確かにいい子たちだったけどね。 でも、きょう会ったばかりだよ。 |
平然と言い放ってくる泉に、目を丸くする小鈴。 | |
小鈴 | え!? |
泉 | ちょっと暇していたから、混ぜてもらっていたのさ。 おかげで、いい汗が流せた。 |
小鈴 | 会ったばかりで、あんなに複雑なフォーメーションを……? 徒町、仰天です……! |
吟子 | ……あの。 |
泉 | うん? |
吟子 | どういうことですか? 問題なのは、って。 |
吟子の態度が真剣なので、もしかしたら余計な口出しをしてカチンとさせてしまったのかな、と苦笑いする泉。 | |
泉 | おっと、ごめんごめん。 余計な口出しをしちゃったね。 |
吟子 | あ、じゃなくて! |
吟子 | 私たち、どうしてもこの曲を仕上げなきゃいけなくて。 気づいたことがあれば、言ってほしいんです。 どんな些細なことでも。 |
泉は吟子、小鈴、姫芽をそれぞれ見返す。どうやら三人とも同じ気持ちだと確認してから、口を開く。 | |
泉 | ……ふむふむ。 |
泉 | なるほど、なにか事情があるみたいだね。 それじゃあ、お姉さんからはひとつだけ。 |
泉 | お互いの長所と弱点。 つまり、ストロングポイントとウィークポイントを知ることだ。 |
吟子 | ……それは? |
泉 | 理解が深まれば、 おのずとお互いを活かす動きが意識できるようになるんだよ。 |
泉 | 例えば、ひとつの劇のように。 舞台上には役割をもった様々な演者がいる。 |
泉 | 自分がどの配役を演じることがもっとも劇団にとって貢献できるのか。 長所も弱点もわからなければ、決めることは難しいだろう? |
小鈴 | はい、そうだと思います! |
泉 | ステージも一緒だよ。 皆で作り上げる物語に変わりないと、私は思っているよ。 |
泉が気づいたように振り返る。 | |
泉 | ああ、ごめん。 呼ばれちゃったから、行くね。 応援しているよ、がんばって。 |
手を振って去ってゆく泉。 | |
残された三人は顔を突き合わせる。 | |
吟子 | お互いのストロングポイントと、ウィークポイント……。 |
※姫芽は吟子や小鈴のウィークポイントについては、もうこの時点で気づいている。気づいていて口に出すのを拒んでいるので、顔を曇らせていた。 | |
姫芽 | ……。 |
小鈴 | お芝居に例えてくれたの、徒町はすっごくわかりやすかった! |
小鈴 | そうだよね、やっぱり綴理先輩にはかっこいい役をやってほしいし、 さやか先輩は大人っぽい役が似合うもんね! |
吟子 | 私はあの映画のとき、かわいい役をやらされたんだけど……。 |
小鈴 | でもなんだか、姫芽ちゃんの言ってることとも、近かったよね。 |
吟子 | あ、確かに。 あらゆる武器を駆使してって、それってつまり自分たちの持っている武器。 |
吟子 | ストロングポイントってことだもんね。 |
小鈴と吟子の視線が姫芽に向く。姫芽はウィークポイントの話題は避け、ストロングポイントの話にもっていこうとする。 | |
姫芽 | ん~、なるほど~……。 |
姫芽 | つまり、勝負するにしても、どこをどのように意識するかによって、 伸び方がぜんぜん変わってくるってことで~……。 |
姫芽 | よーしふたりとも~! 明日からまた、バトルの続きやろ~! |
姫芽 | お互いのストロングポイントを、ばっちり活かせるように猛特訓だ~! |
吟子 | う、やっぱりそうなっちゃうんだ。 |
姫芽 | ゆっても、練習自体はさんざんしてるわけだし~。 とりあえず今は、あがくしかないっしょ~? |
吟子 | ……それは、そう。 |
吟子 | あ、でもちょっとレベルは下げようね! 三年生は、強すぎるっていうか! |
姫芽 | ふっふっふ、おっけ~。 ストロングポイントを発揮する前に負けちゃ、意味ないもんね~。 |
そう言ってから、姫芽はやる気満々に両手を突き上げる。 | |
姫芽 | よっしゃ~~~! バチバチに火花、散らしちゃお~~~! |
吟子 | ……やっぱりこれ、ただ戦いたいだけじゃ? |
小鈴 | あ~……そうかも。 |