聞きましたよ、綴理先輩！ 大活躍だったって！

さやにも褒められたんだ。
ボクは、事務作業は全然まったくダメダメだったけど……
市役所のみんなの力には、なれたみたい。

それはよかったです。 小鈴が、先輩方のお力になりたいと、
今にも飛び出していきそうな顔をしてましたから。

で、でもちゃんとガマンしました！
その分まで、頑張ります！ 今回は！

ふふ、きょうはよろしくお願いします。

ん、こちらこそ。

それはそうとして、ずっとやってみたかったんだ！ 伝統工芸のお手伝い！
金沢って感じがするね！

今日行く茜やさんは、染め物の工房です。
職人さんにはご迷惑をおかけしないように、気を付けようね。

頑張るぞー、ちぇすとー！

ちぇすとー。

えっ？ あっ、はい。 ちぇすとー……。

こんにちは。 今日はよろしくお願いします。
こちらのわがままを聞き入れてくださり、ありがとうございました。

ありがとうございます！
精一杯やります！

なにをすればいいのかな？

ここは、百生の家と昔からお付き合いのある、伝統ある染物屋さんです。
そして今は、染め物の伝統をたくさんの方に知ってもらうべく
体験コーナーも開いていて。

わー、徒町もやってみたいです！

今日はその体験コーナーで接客してくれる人が足りないということなので、
私たちでその役回りを埋めてほしいと。

はい、分かりました！

綴理先輩も、どうですか。

ん、分かった。 任せて。

では、よろしくお願いします。

私が出来る限りサポートしますし……
工房には職人さんたちもいらっしゃいますから、

困ったことや、分からないことがあれば、逐次連携を取っていきましょう。

わっかりました！ 頑張るぞー！ ちぇすとー！

ん……体験コーナーか。

綴理先輩？

ボク、こういうの得意かもしれない。

！

うん、とても綺麗。 ボク、これ好き。 アドバイス？
ううん、要らないよ。 次にキミがどんな色を足すのか、楽しみ。

キミのも、筆が細やかで踊っているみたいだ。
ここらへん、もっと足してほしくてうずうずしてそう。

ほわー……綴理先輩、めちゃくちゃ人気……。

すず。

はい！

ぎんに頼んで、もう1枚デザイン用の紙、出してもらって。
この子、もっと描きたいって。

はい！ すぐに！

綴理先輩、そちらはどうですか？

うん、良い感じだよ。
ね、みんな。

ボクの描いたのも見たい？
……ぎん、いいかな？

え、あ、はい。 皆さんが望まれていることなのなら。

じゃあ……そうだな、こうやって、こんな感じとかどうかな。

わあ……。

綴理先輩、ダンスだけじゃなくて、
芸術の分野においても本当に、才能のある方ですね……。

それはよく分からないけど……気持ちが伝わったなら、良かった。

気持ち、ですか？

うん。 みんなが良いって言ってくれたってことは、
ボクの気持ちが、伝わったってことなんだよ。

これは、どういう気持ちで……？

このお店に感じる、懐かしくて暖かい雰囲気と……
ここに興味を持ってやってきたみんなの……風みたいなものをイメージして。

今日のこのお店を、描いてみたんだ。

それは……。

自由な発想……心に溶けるモチーフ……
そっか、こんな風にしてもいいんだ……。

私が言うのもなんですけど、綴理先輩。

？

来てくれて、ありがとうございました。
皆さん、良いものが見られたと思います。 その……私も。

お礼を言うのは、ボクの方だよ。
こんな風に綺麗なものが描けたのは、ぎんと、みんなのおかげだから。

綴理先輩！ 紙、たくさんもらってきました！

よし、じゃあみんな、もっともっと描こうか。

綴理先輩、すっごくイキイキしてますね！

そうかな、そうかも。
……そっか、これもまた、みんなで作る芸術なのかもしれない。
うん、イキイキしてるよ、ボク。

……。

はいおつり。 美味しい煮つけにしてね。
ありがとう、また来てねー。

……綴理ちゃん。

なあに？

なんだかその……2年前と比べて、すっごく見違えたわね。

そう？ あんまり伸びてない気がする。

あはは、身長の話ではないのよ。
そういう緩いところは変わらないわね。

でも、……そうね。

もう立ってるだけの綴理ちゃんじゃないのね。
立派なスクールアイドルになったわ、綴理ちゃん。

ぁ……。

ボクね、今色んな職業体験してるんだ。
みんなに背中を押してもらって、色んなことをしたよ。
未来のボクが、卒業した先にやりたいことを見つけられれば、って。

ボクがやりたいことってなんだろう……
そう思いながら、この数日頑張ってみたんだ。

できないこともあったけど……できたことは、どれも楽しかった。

金沢市のみんな、金沢のことが好きな人たち……そして、
ボクの大好きな、市場の人たち。

みんなとの時間が、ボクは好きで……
みんなのために、頑張るのは楽しいんだ。

こうやって、頑張ってくれたものね。
はあ、ちょっとお姉さん泣きそう。

れいかさん？

大丈夫よ、綴理ちゃん。
あなたはどこでだって、素敵な人で居られるわ！
綴理ちゃんは本当に、成長したもの！

！ ……ありがと、れいかさん。
そういうれいかさんは、いつもれいかさんだね。

それは、褒めてくれているのかしら。

うん。 いつもボクに向ける笑顔が変わらない……
いつも、ちゃんと見てくれてる。

ふふ、それはこれから先も変わらないんだからね！

うん……ありがと。
ボクは、成長……頑張る。