第11話『夢を咲かせる物語』
PART 2
チェックアウトしようと、荷物をまとめたセラス、泉。 | |
泉 | ……それじゃあ、忘れ物はないかな。 |
セラス | うん……。 |
泉 | ……まるで、初めて会った頃のあなたのようだ。 |
セラス | ……わたし、どんなだった? |
泉 | 帰る家のない、迷子みたいだったよ。 |
セラス | ……。 |
泉 | すまないね、セラス。 私の力が、及ばなかったせいだ。 |
セラス | ううん。 ……ありがとね、泉。 ずっと、学校と……わたしのために。 |
どんどん、どんどん、とドアがノックされる。 | |
首を傾げる泉。 | |
泉 | ……うん? |
泉 | はい、どちらさまーー。 |
花帆 | あ、あのね! |
泉 | 蓮ノ空の……え、みんなまとめて? |
小鈴 | まとめてです!! 一蓮托生という言葉には、蓮という文字が含まれておりますがゆえ!! |
さやか | わかりません、よくわかりませんよ、小鈴さん。 |
姫芽 | アタシたち、プレーオフをやるためにきたんだ~! |
セラス | ……へ? |
泉 | いや、しかし……。 あなたたちは、優勝できるんだよ? |
梢 | いいえ。 それよりも、プレーオフを成立させるために、協力しましょう。 |
泉 | えぇ? |
花帆 | ね、泉さん、せっちゃん。 |
花帆 | あたしたちは、プレーオフやりたいって思ってるんだけど…… ふたりは、どうかな? |
花帆 | もしやりたいって思ってくれてるんだったらさ…… そのときは、一緒に、悩もうよ! |
花帆 | ふたりじゃできないことでも、 みんなで考えたら名案が思い付くかもしれないよ! |
花帆 | あたしたちはずっとそうやって、 今までだって何度もピンチを乗り越えてきたんだから! |
セラス | ……。 |
泉 | ……セラス。 ただ、もしプレーオフができたとしても。 |
泉の言葉を途中で止めて、首を横に振るセラス。 | |
泉は『もしプレーオフができたとしても、セラスがステージにあがることはできないから』と断ろうとしていた。 | |
セラス | 泉、いいの。 |
セラス | うん……。 わたしも、やりたい。 プレーオフ。 |
セラス | このまま、決着がつかないまま終わるなんて、そんなの、やだもん。 |
セラス | 今までずっと応援してきてくれた人にも 『どうだ、わたしたちは最後まで戦ったよ』って、言いたい。 |
セラス | だから……。 |
頭を下げるセラス。 | |
セラス | 蓮ノ空の皆さん。 どうか、お力を貸して、いただけませんか。 |
セラス | 瑞河女子がもう一度、ライブができるように。 |
花帆 | うん! もちろん! |
セラス | 最後まで戦おう、泉。 |
泉 | ……なるほどね。 |
セラス | うぉ~~~~~~! |
花帆 | えっ!? |
セラス | 気合を入れた。 入った。 |
花帆 | そ、そうなんだ。 せっちゃんの大声、初めて聞いたかも……! |
セラス | ぜったいやろうね、プレーオフ。 どんなてをつかってでも。 |
花帆 | どんな手を使うつもり!? |
セラス | ここじゃちょっと。 |
花帆 | 言えないこと考えちゃだめだよ! |
泉 | それじゃあ詳しくは、それぞれの学校に帰ってから、話そうじゃないか。 |
慈 | だったらせっかくだから、ねえ? |
梢 | そうね。 後日、改めて。 |
うなずき合う梢と綴理。 | |
綴理 | みんなで、瑞河へ。 |
瑞河女子のスクールアイドル部にやってきた蓮ノ空9人。 | |
瑞河のスクールアイドル部員は、泉、セラスのみ。(※セラスは正確には部員ではないが) | |
さやか | 部室にお招きいただき、ありがとうございます。 |
泉 | いえいえ、こちらこそ遠路はるばる、どうもありがとう。 |
さやか | それでは早速ですが、具体的な話し合いを詰めるとしましょう。 |
さやか | 事前にお話ししていた内容の、ある程度のおさらいにはなりますが。 |
さやか | 問題点は廃校そのものもそうですが、 『廃校がきっかけの部活停止令』でしたね。 |
泉 | そうだね。 瑞河の経営破綻によるコストカットが、この時期に行われてしまったことだ。 |
吟子 | よりにもよって、ラブライブ!決勝大会の途中なのに……。 |
泉 | 廃校を覆すことはできないとしても、 この部活停止令をどうにかすることができれば、プレーオフは開ける。 |
梢 | ええ、そうね。 |
小鈴 | えーと……。 ほんとはだめかもですけど、 例えば、その、勝手に大会に出ちゃうとかは、どうなんでしょう! |
泉 | それはできないね。 ラブライブ!ほどの大会に、学校の許可なしで出るのは、不可能だ。 |
さやか | となるとやはり、学校の負担をほんの少しでも 肩代わりすることができればあるいは、というところですね。 |
慈 | 例えば、いろんな人に協力してもらってマンパワーを集めるだとか。 現地への送迎をお願いしたりね。 |
姫芽 | あ、じゃあ~、スクールアイドル活動をするためのスタジオを 貸してもらったり、機材を提供してもらったりもできますね~。 |
セラス | 協力者が多ければ多いほど、学校側もその声に後押しされて、 部活停止令を撤廃してくれる可能性はあがると思う。 |
さやか | となるとやはり、どうにか大勢に協力を募る手段。 つまり、瑞河の現状を知ってもらうためにどうするか、ですね。 |
泉 | そういうこと。 要点をまとめるのが上手だね、あなたは。 |
さやか | そ、そうですか? |
花帆 | そりゃ、さやかちゃんだからね。 |
瑠璃乃 | ウンウン、さやかちゃんだもん。 |
綴理 | いちばん上手だよ。 全世界でいちばん。 |
さやか | こぞって適当なことを言わないでください! |
セラス | ツッコミも上手。 |
花帆 | そうなんだよさやかちゃんはね……。 |
さやか | わたし自慢は後にしてください! いえ後でもやめてください! |
さやか | コホン……。 では、そのように進めましょう。 |
頭を下げるセラス。 | |
セラス | おてすうを、おかけいたします。 |
さやか | いえいえ。 わたしたちにとって、文字通り他人事ではありませんからね。 それでは、早速! |
さやか | 今回のプロジェクトは、瑞河を救うために、 まず瑞河の現状を皆さんに知ってもらうところから、始めましょう! |
瑠璃乃 | プレーオフに出れないって聞いてルリたちが動いたみたいに、 きっとみんな知ったら行動したくなるに決まってるよ。 |
吟子 | 自分たちの母校がなくなると知ったら、 せめてなにか手伝いたいと思う方も、大勢いるはずです。 |
小鈴 | これが、繋がる力……ですね! |
全員がうなずいたところで、花帆が手を挙げる。 | |
花帆 | あ……ねえねえ。 だったら、もうひとつ思いついたことがあるよ。 |
泉 | ほう。 |
さやか | なんですか? |
花帆 | ふっふっふ。 |
瑠璃乃 | あ、これ、かつてダンボールハウスをくれたときの笑顔……。 |
花帆 | 結局使ってくれてるんだから、あれも成功でしょー!? |
瑠璃乃 | そうだね! それで、もうひとつって? |
花帆 | 瑞河の現状をみんなに知ってもらうために、 あたしたち蓮ノ空が全面的に協力するの。 |
慈 | だからそれを、今やろうとしてたんじゃ。 |
花帆 | はい、ですから……! より注目を集めるために! 文化祭を開くんです! |
姫芽 | なんで~!? |
花帆 | だって蓮ノ空は3つの文化祭があるから、 すごく多くの人に知ってもらえてるじゃん! |
花帆 | だったら、瑞河でも今の時期に文化祭を開けば、 いっぱいの注目を集められるよ! |
さやか | ! なる、ほど……!? |
セラス | おもしろい。 採用。 |
泉 | ふふふ、蓮ノ空のひとは、面白いことを考えるねえ。 |
瑠璃乃 | 蓮ノ空全体っていうか、花帆ちゃんだからね。 いざっていうときの発想がすごいんだ。 |
慈 | いっつも驚かされるよねー。 |
梢 | でも知ってもらうためにお祭りをするのは、 可能性のあるアイディアだと思うわ。 |
綴理 | うん、やってみよー。 |
セラスは花帆に向かって言う | |
セラス | 瑞河の生徒みんなのための文化祭。 実現目指して、がんばろう。 |
花帆 | うんっ! |
瑞河女子の近くにある商店街にて、ビラ配り。 | |
登場キャラは、花帆、さやか、セラス。 | |
花帆 | というわけで、やってきました、商店街! |
さやか | まずはいつも通り、草の根活動からスタートですね……。 |
セラス | どうぞよろしくおねがいします。 |
さやか | はい、がんばりましょう。 |
花帆 | 大丈夫だよ、せっちゃん。 さやかちゃんはビラ配りに関しては、もう、プロだからね。 |
セラス | おおー。 |
さやか | なにかと配る機会が多いですよね……すべて蓮ノ空に入ってからですが……。 |
さやか | しかし、よく思いつきましたね、花帆さん。 文化祭だなんて。 |
花帆 | お、あたし褒められてる? |
さやか | ええ。 スモールステップの原理ですね。 |
さやか | 最初からプレーオフに出るための協力を求めるのではなく、まず手近な目標。 |
さやか | 文化祭を開くために協力してもらい、 最終的な目標につなげる、という手法があって。 |
ニコニコしながら首を傾げる花帆。 | |
花帆 | ??? |
ぜんぜんわかっていない花帆に、困り笑顔でよりわかりやすく説明してあげるさやか。 | |
さやか | つまり、手伝ってくださる人の心理的なハードルも下がる、 よいアイディアかと! |
花帆 | えへへ。 ま、文化祭だって、 開くために乗りこえなきゃいけないハードルは、山ほどあるんだけどね! |
さやか | 許可取りもそうですが、集客が十分にいかなければ、 それも失敗に終わってしまいますからね。 |
さやか | 各自、得意分野でがんばっていきましょう。 |
花帆 | 頼りにしてるからね、さやかちゃん! |
さやか | もう、はいはい。 |
セラス | さやかさんも、長野の人なの? |
さやか | わたしは金沢出身ですよ。 どうしてですか? |
セラス | 花ちゃんと、小学校からの友達だったりするのかな、って。 |
花帆 | え~、それってあたしたち幼馴染っぽいってこと~? |
さやか | 花帆さんとは高校に入ってからの付き合いですが、 確かに、一緒にいた時間はかなり濃密かもしれませんね。 |
花帆 | さやかちゃんもあたしのこと、花ちゃんって呼んだりする? |
さやか | それもかわいいですね。 花ちゃん。 |
セラス | 1回300円です。 |
花帆 | まさかの花ちゃん料!? |
セラス | でも、瑞河のためにがんばってくれてるから……。 1回1ハグにしてあげてもいいよ。 |
さやか | 花ちゃん呼びをするたびにセラスさんを抱きしめるのは、 ちょっと意味がわからなすぎますね! |
セラス | それか、わたしのことを『せっちゃん』って呼んでくれてもいいよ。 |
さやか | ええと……せっちゃん、さん。 |
セラス | さん付け……!? |
さやか | す、すみません、つい癖で……。 |
セラス | どう? 花ちゃん。 わたしもせっちゃんって呼ばれちゃったよ。 |
花帆 | え? うん。 かわいいよね、せっちゃんって呼び方! |
セラス | ……わかってない。 |
花帆 | なにが!? |
やや苦笑いのさやか。 | |
さやか | まあ、花帆さんはおおらかでかわいらしい方ですから……。 |
セラス | ……さやかさんって、苦労人? |
さやか | え!? いや、それは、どうでしょう……。 日々、楽しく過ごしているつもりではありますが……? |
セラス | 楽しく過ごしている人は、みんなそう言うんだよ。 |
さやか | ただの事実だからでは!? |
セラス | 花ちゃん。 わたし、蓮ノ空の人とも、仲良くなれそう。 |
花帆 | せっちゃんって昔から、看護師さんから人気あったもんねえ。 ちっちゃくて、お姫様みたいにかわいくて。 |
セラス | 花ちゃんがそれ言うの? |
花帆 | え? あたしも? |
セラス | 蓮ノ空の人は、花ちゃんにどういう教育をしていらっしゃるんですか! |
さやか | す、すみません……。 |
花帆 | なんで謝ってるの!? あたし!? あたしのせい!? |
花帆を半ばスルーしつつ、セラスとさやかが微笑み合う。 | |
セラス | さやかさん、ビラ配り、がんばろうね。 |
さやか | はい、セラスさん。 瑞河のプレーオフを目指して、一緒にがんばりましょう。 |
花帆 | ふたりだけで仲良くなっちゃだめだよー! ねー! |