第13話『いずれ会う約束の桜』
PART 9
綴理 | ……ふふ。 |
慈 | ん、ありがと。 |
梢 | 素晴らしい、催しだったわ。 |
花帆 | あの、さ。 |
さやか | はい。 |
花帆 | なんか……あたしの出番多くなかった? |
さやか | それは、そうでしょう。 わたしたちの軌跡をなぞったら、 あなたの果たした役割は大きすぎます。 |
花帆 | ええっ!? |
さやか | ……と言いつつ。 実は、あなたに見てもらいたかったのは、それです。 |
小鈴 | 徒町はFes×ReC:LIVEの時に、 DEEPNESSがどうして今の形になったのかを聞いて…… 本当に感動しました。 |
吟子 | 私はあのオープンキャンパスで降り出した雨の中、 これからどうするんだろうって不安だった。 |
吟子 | でも、綺麗な傘の空は、私たちの不安も晴らしてくれた。 |
姫芽 | ……ね、かほせんぱい。 アタシ……繋がる力がなかったら、 ここに居ることすらできなかったんですよ。 |
姫芽 | ゲームでの一芸入試ができたのは、 去年のかほせんぱいたちの活躍によるものだったんですから。 |
花帆 | ……。 |
さやか | 分かりますか、花帆さん。 |
さやか | ーーあなたがこれまで、どんなに落ち込んでも立ち上がってきた…… 諦めなかったおかげで、広がったこの未来が。 |
瑠璃乃 | きっと、瑞河の子たちだってそうだよ。 花帆ちゃんが諦めなかったから、あの子たちは最後に笑ってステージに立てた。 |
花帆 | ……あたしは。 |
吟子 | ……私たちはただ、花帆先輩に、 自分には何もできないって思ってほしくないだけ。 |
小鈴 | 今も、これからも、花帆先輩の気持ちを、 塞ぎこまずに全力で叩きつけてほしいです! |
姫芽 | それが、かほせんぱいにもらったものに対する、恩返しかなって。 |
花帆 | うん。 ……うん。 |
瑠璃乃 | これまで花帆ちゃんは、たっくさんのことを頑張ってきたよ。 どんなにつらいことがあっても、どんなに難しいことがあっても。 |
瑠璃乃 | だから……これからだって、もっともっと頑張れるはず。 そう思って……ちょっと一年生と相談して、手を加えさせてもらったんだ。 |
梢 | ふふ。 まったく……突然、先輩たちに贈る映像に、 ちょっと花帆ちゃんへの励ましを入れていいですか……ですもの。 |
慈 | ダメなわけないじゃんね。 |
綴理 | 今まで、さんざんかほに励ましてもらってきたんだから。 |
花帆 | あ……うう……みんな……! ありがとう! センパイたちも、本当にありがとうございます! |
吟子 | 花帆先輩? |
花帆 | そうだね……分かったよ! |
花帆 | あたしがこれまでやってこられたこと……やりたいと思って、 乗り越えてきたこと……全部全部、どうにかしたいって思ったことを…… ひっくり返してきたこと! |
花帆 | うん……この気持ちだ。 温かくて、強く、 やりたいって言葉が、うるさいくらいに……! |
花帆 | 梢センパイ!! |
梢 | 花帆? |
花帆 | 綴理センパイ! 慈センパイも! |
慈 | どしたの、花帆ちゃん。 |
綴理 | なにか面白いことかな。 |
花帆 | まず……聞かせてください! |
花帆 | またいつか、ライブしたいですか! |
梢&綴理&慈 | ! |
梢 | それは……でも。 |
花帆 | ぁ……良かった。 |
花帆 | その顔が見られたら十分です!! |
綴理 | かほ、なにをするつもりなの? |
花帆 | さやかちゃん、瑠璃乃ちゃん、アルバムだよ! |
さやか | ええっ? |
瑠璃乃 | でも花帆ちゃん、アルバムはまだ完成してなくてーー! |
花帆 | うん! だからいいの! |
花帆 | 諦めない、仕方ないで終わらせない、新しい未来……! |
花帆 | センパイたちがスクールアイドルじゃなくなって、 もう一緒にライブができないって言うんなら! |
花帆 | それを……あたしは、変えたい! |
花帆 | できた!! |
さやか&梢&綴理&瑠璃乃&慈&吟子&小鈴&姫芽 | “いつかまた、みんなで”……!? |
花帆 | そう!! |
花帆 | 確かに……センパイたちは卒業する。 卒業したら、スクールアイドルじゃなくなる……のかもしれないけど! |
花帆 | でもさ! なりたいと思ったらなれるのがスクールアイドルなら、 センパイたちがなりたいと思ってくれたら、 |
花帆 | その時は……センパイたちは、 その時だけは……スクールアイドルに戻れるんじゃないかって! |
花帆 | ううん、戻れるんだ! 戻れるんだって、言いたい! |
花帆 | だから! このアルバムの空白、最後のページには、未来の写真を入れるんです! |
花帆 | 戻ってきて、そしてまたライブをしたときに! 一緒に撮りましょう! |
梢 | きれいにお別れしようと、思ったのに。 ……最後の最後まで。 |
綴理 | かほは、ずっとかほだね。 出会った時からずっと、かほのまま。 ……でもこんなに、大きくなった。 |
梢 | ……そうね。 |
花帆 | あたしのわがままでしかないけど……! どうでしょうか! |
慈 | 卒業してもスクールアイドル、ね。 |
綴理 | なりたいと思ったら、いつだって、戻れる……。 |
梢 | ……花帆。 |
梢 | つまりこれは。 |
花帆 | はい! |
花帆 | 願えば、叶います! 必ず! |
梢 | まるで夢みたいな話だわ。 |
花帆 | そうですよ! 夢を叶えるのが、スクールアイドルですから! |
梢 | そうね。 ずっと、そうしてきたものね。 わかりました。 |
梢 | 戻ってくるわ。 “いつかまた、みんなで”、ライブをやりましょう。 |
花帆 | ーー。 |
花帆 | やっ、たああああああああ~! |
瑠璃乃 | 花帆ちゃん! |
さやか | 花帆さん! |
姫芽 | いや~。 かほせんぱいはわがままだって言いましたけど。 こんなの、嬉しいわがままに決まってますよね~。 |
小鈴 | 姫芽ちゃんだけじゃないよ! 徒町も! |
吟子 | うん……。 ありがとう、花帆先輩。 |
花帆 | またライブをやりたいか聞いた時のセンパイたちの…… やりたいけど、でも、って顔を見て、あたし気付いたんだ。 |
花帆 | あたしは、そんな顔をした人を、みんなみんな花咲かせたいんだって! |
花帆 | あたしのやりたいことは、スクールアイドルができない人でも、 スクールアイドルがやれる場所! |
花帆 | スクールアイドルをやりたいと思った人なら、 だれでも花咲ける場所を作りたい!! |
瑠璃乃 | こずこずセンパイとまた一緒にライブしたいだけじゃなくて~? |
花帆 | それももちろんあるけど~~! |
花帆 | でも、まだまだやりたいんだったら、やればいいじゃん! 寂しいからって諦めること、ないんだよ! |
花帆 | 決まったことだって、みんなが願えば変えられる。 |
花帆 | それって、ここにいるみんなと一緒だったから、できたことだったんだよ! |
花帆 | またやろうよ、みんな! 新しいステージ……みんなが花咲ける、新しい夢の舞台を! 作ろうよ! |
瑠璃乃 | どう、めぐちゃん? |
慈 | たまに戻ってきてちゃちゃっとライブやるだけかなーって思ったら、 ずいぶん大きな話になってきたねえ。 |
慈 | でも、ま、めぐちゃんの凱旋ライブとなれば、 それぐらいでっかい舞台じゃないとね。 |
瑠璃乃 | ふふふっ、うん……嬉しいよ、ルリも。 |
瑠璃乃 | それでこれが……はい。 ルリからの、アルバム。 |
慈 | ありがと、るりちゃん。 大切にするね。 |
瑠璃乃 | ん! |
綴理 | ねえ、さや。 |
さやか | なんでしょう、綴理先輩。 |
綴理 | さやは、ボクが戻ってきたら、嬉しい? |
さやか | ……そんな当たり前のことに、答えなきゃだめですか? |
綴理 | 答えてほしいな。 |
さやか | 綴理先輩を応援してくれた人も全員、喜ぶと思います。 ……その中でもわたしが、いちばん喜ぶかもしれませんが。 |
綴理 | ふふ。 |
綴理 | アルバム、ありがとう。 |
さやか | はい。 |
綴理 | 毎日見るね。 |
さやか | は、はい。 |
花帆 | ねえみんな! あたし、今この気持ちを、歌にしたい! |
花帆 | みんなで作ろう! また会おうね、って約束の歌を! それをセンパイたちに贈るの! |
さやか | みんなって……三年生も一緒にですか!? |
瑠璃乃 | 本末転倒じゃね!? 贈るんでしょ!? |
花帆 | でも、みんなで作るんだよ! だって、みんなの曲なんだもん! |
綴理 | 作ろう。 |
慈 | 人使い荒い後輩ちゃんだなぁ、もう。 |
梢 | ……もう驚き尽くしたと思ったのに。 それが花帆だものね。 |
吟子 | すごい人です。 |
姫芽 | せんぱい方と、まだ共同作業できるんですね~! |
小鈴 | がんばります! 104期最後の曲ですもんね! |
花帆 | うん! |
花帆 | いつかまた、みんなで! そんな、104期最後で……最高の曲を、作りましょう! |
梢 | まったく、すごいことになってしまったわね。 |
慈 | ほんとほんと。 |
綴理 | 楽しいこと、また増えちゃったね。 |
梢 | ……ねえ、ふたりとも。 |
梢 | 九人で曲を作ることが決まったばかりなのに、 この期に及んでさらにタスクを増やそうとするのは、忍びないのだけれど。 |
綴理&慈 | ふふ/ふふふっ。 |
梢 | ……ふ、ふたりとも? |
慈 | わかってるわかってる。 Dream Believersのことでしょ。 |
梢 | う。 |
綴理 | あの時は、あれが一番良いと思ったんだ。 でも、今の気持ちはそうじゃない。 そうだよね? |
梢 | ……ええ。 |
綴理 | ふふ、一緒だ。 |
慈 | 当然、かなり力を入れたし、これまでのスクールアイドルクラブの先輩たちも 喜んでくれるようなものにはした。 |
慈 | でも、それだけじゃ足りなくなっちゃったからね! |
梢 | その通りだわ。 だから……。 |
梢 | もう一度、作り直しましょう。 今度こそ、私たちが後輩に遺すにふさわしい、Dream Believersを。 |
綴理 | うん、やろう。 |
慈 | よっしゃ、やってやろうじゃん! |
慈 | にしても、一年の頃の梢だったら、 真っ先に『時間がないんだから無理よ』なんて言いそうだったのに。 |
綴理 | かほの影響だね。 |
梢 | そんなこと……。 |
梢 | ……いいえ、そうかもしれないわね。 |
梢 | だからこそ、私たちが彼女たちからもらったものを、 ちゃんと、歌に込めて贈りたい。 |
綴理 | うん。 『見守ってるよ』だけじゃない。 『ありがとう』そして、『またいつか』の曲。 |
慈 | あの子たちの曲も、私たちの贈る曲も、完璧に仕上げて! 私たちが最強の世代だと、蓮ノ空に刻んじゃおう! |
綴理 | さいきょーの蓮華祭を作ろうね。 |
梢 | がんばりましょう。 最後のライブを。 |
慈 | 最後じゃないんでしょ? |
梢 | ……そうね。 |
梢 | じゃあ、改めて言うわ。 |
梢 | 未来へと続く約束のステージ。 104期スクールアイドルクラブ、最高のライブを、がんばりましょう。 |
綴理&慈 | おー! |