第1話『Brand New Stories!!』
PART 9
セラス | ……。 |
泉 | どうしたのかな。 こんな夜に、急に呼び出して。 |
セラス | 話があるの。 |
泉 | 改まって、どうしたのかな。 |
泉 | 話なら、たくさんしてきただろう。 この、一年。 |
セラス | ……うん、そうだね。 |
セラス | ふたりでずっと、戦ってきたもんね。 |
セラス | 晴れの日も、雨の日も。 遠征した日も、その翌日も。ずっと。 |
セラス | 初めて会ったとき、泉はナイトに見えた。 わたしの世界を救ってくれる、ナイト様。 |
セラス | でも少しずつ、そうじゃないってこともわかってきた。 |
セラス | 泉はわたしの手を引っ張って、いつでも新しい世界を見せてくれた。 |
セラス | わたしができなかったことを次々とやってみせて、でもその代わり、 泉はぜったいにわたしに諦めることを許さなかった。 |
セラス | 泉は契約の悪魔みたいだった。 |
泉 | ……結局、私はあなたの契約を守れなかったけどね。 |
セラス | でも、楽しかった! |
セラス | わたしは、あの一年、ずっと楽しかったのに! |
セラス | なのに、泉はどうでもいいって言う! なにそれ! わたしのことなんて、どうでもいいの!? |
泉 | 私があなたと一緒にいたのはね。 |
泉 | 私には、夢がないからだよ、お姫様。 |
泉 | 私には、やりたいことがなにもない。 どんなことだって、たいていはうまくいってしまう。 |
泉 | だから、私は誰かの夢に寄り添うことにした。 |
泉 | そうすれば、私もその間だけは、夢を見ていられる。 情熱がこの胸にあるのだと、錯覚できるんだ。 |
泉 | 私が求めるのは、ただそれだけ。 |
泉 | 別に、誰でも構わなかったんだよ。 夢を見せてくれるのなら。 あなたじゃならない理由は、どこにもないんだ。 |
セラス | だったら。 |
セラス | わたしがあなたに、新しい夢を見せる。 |
泉 | ……へえ? |
泉 | もう夢を叶えたあなたが、私を満足させられるだけの夢を? |
セラス | うん。 |
セラス | 悔しいから。 |
セラス | 泉に『誰でもよかった』なんて言われるの、すごく、すごく、悔しいから。 |
セラス | 『なんでもよかった』だなんて、二度と言わせたくないから。 |
セラス | わたしの新しい夢。 それは。 |
セラス | あなたに、スクールアイドルを好きにさせること。 |
セラス | 桂城 泉に、スクールアイドルを好きにさせてみせる。 大好きで、大好きで、かけがえのないものだって、思い知らせてやる! |
セラス | わたしとの1年間を、宝物にさせてやるから! |
泉 | ……それは。 |
泉 | 大した宣言だね。 それは『私を救う』という意味に、他ならないんだよ。 |
泉 | あなたにできるのかい? お姫様。 |
セラス | もう、決めたから。 |
泉 | いいだろう。 ただし、一年だ。 |
泉 | 契約は一年限り。 長く続ければ、今度は私があなたの時間を奪ってしまうからね。 |
セラス | どうせわたしにはできないって思ってるんでしょう。 |
泉 | 叶わない願いをいつまでも追い求めるのは、つらいだろう? |
セラス | いいよ、一年。 それだけあれば、じゅうぶん。 |
セラス | あなたの胸にわたしの名前を、セラス 柳田 リリエンフェルトを、 永遠に刻み込んでやる。 |
セラス | 覚悟しててよ。 |
泉 | ……ふふ。 |
泉 | それで、どうする? ふたりでどこか一緒のユニットに入るのかな。 |
セラス | ううん。 |
セラス | この蓮ノ空でわたしたちがやるのは、四番目のユニット。 『Edel Note』だよ。 |
泉 | それは……? |
セラス | わたしの夢を叶えるあなたの夢を、叶えてあげる。 |
セラス | ただし。 今度はそっちが『お姫様』だから。 |
セラス | 泉先輩。 |
泉 | これからよろしく。 パートナー。 |
セラス | ……あの、というわけで。 |
セラス | わたしと泉は、新たな四番目のユニット『Edel Note』として、 活動しようかと……。 |
小鈴 | えー!? |
セラス | 部長許可は、もらいました! |
吟子 | 花帆先輩……。 |
花帆 | せっちゃんが花咲くために、大事なことなんだよ! |
花帆 | それに、これは蓮ノ空のためでもあるんだよ! |
吟子 | ……どういうこと? |
花帆 | つまりこれが、あたしの描く夢の第一歩なの! |
花帆 | 蓮ノ空で、花咲くために『Edel Note』結成なんて、 みんな予想してなかったでしょ!? これはびっくりするよ、みんな! |
さやか | びっくりはするでしょうけど! |
瑠璃乃 | ……いいんじゃないかなと、ルリは思うよ。 |
吟子 | 瑠璃乃先輩……? |
瑠璃乃 | なんというか、105期の始まりとして、すごくアリな気がしない? うちら花咲くためなら、なんだってやっちゃうんだぞ~! みたいな。 |
吟子 | 確かに……。 花帆先輩らしいと言えば、らしいですけど……。 |
瑠璃乃 | 少なくともセラスちゃんと泉ちゃんが幸せそうなら、 それがいちばんでしょ! |
さやか | ……そうですね。 |
さやか | ラブライブ!にも出ないと決めたんですから、 それ以上に大きな決断などありませんか。 |
セラス | あの……でも、これは……伝統を軽んじてるとか、 そういうわけではなく……。 |
泉 | 安心してほしい。 組むのは、一年限りだ。 私たちのユニットは、伝統には残らないよ。 |
さやか | 一年限り、ですか? |
泉 | ああ。 来年は私もセラスも、違うユニットに入る。 セラスのスクールアイドル人生を私だけに縛るのは、申し訳ないからね。 |
泉 | ……まあ、私が来年もまだ蓮ノ空にいるかどうかは、セラス次第かな。 |
瑠璃乃 | なんか、一年限定っていうのは、それはそれでもったいないような……。 いいの? セラスちゃん。 |
セラス | うん。 |
セラス | その頃には泉にとってわたしはかけがえのない存在になってて、 泉も『スクールアイドル大好き♡ しゅきしゅき♡』ってなってるはずだから。 |
セラス | わたしもきっと満足して他のユニットをやってる。 |
瑠璃乃 | なんか人格も変わってない!? |
泉 | あなたたちを救うためにやってきたのに、 まさかこんな混乱を巻き起こすことになるなんて、 甚だ不本意ではあるんだけどね。 |
姫芽 | いずみん、ほんとにそう思ってる~? |
泉 | 思っているけれど……どうして? |
姫芽 | その割に、なんか口元がにやけてるよ~? |
泉 | ……む。 |
泉 | もともとこういう顔なんだよ。 まだまだ人を見る目が足りないね。 |
姫芽 | そうだった~? ごめんね~。 アタシ、人が『楽しい』って思ってるかどうかに、けっこ~敏感でさ~。 |
泉 | なかなか手ごわいな、姫芽ちゃんは。 |
姫芽 | ふふふ。 |
さやか | ともあれ、今年も一筋縄ではいきそうにありませんね。 |
花帆 | そうだね。 |
花帆 | 夢への第一歩は、これで決まった。 |
花帆 | 曲作りも、あともうちょっと。 |
花帆 | みんな! Fes×LIVEに向けて、がんばろうね! |
さやか&瑠璃乃&吟子&小鈴&姫芽&泉&セラス | おー! |