第2話『Dream Match!』
PART 1
姫芽、吟子、小鈴が部室から帰ろうとしており、部室の中にはまだセラスと泉が残っている。 | |
姫芽 | きょうもがんばったね~。 さ、帰ろっか~。 |
小鈴 | うんっ! |
吟子、セラスと泉に声をかける。 | |
吟子 | じゃ、またあした。 |
セラス | はい、またあしたです。 吟子………………先輩。 |
四月シナリオ終了時から一週間くらい経過しているが、いまだに吟子を先輩と呼ぶのが慣れないというネタをこすってくるセラスに、吟子がジト目を向ける。 | |
吟子 | セラスさんは、いつになったら慣れるの……。 |
泉が面白がっているときの笑みを浮かべて、 | |
泉 | 吟子さんが全部反応するからだよ。 |
無邪気に笑うセラス。 | |
セラス | えへへ。 吟子のこと好きだよわたし。 構ってくれるから。 |
吟子 | なんて嬉しくない理由……。 まったく……。 |
小鈴 | じゃあ、またねー! |
姫芽 | ばいば~い。 |
セラス | はい、またあしたです。 姫芽先輩、小鈴先輩。 吟子ちゃん。 |
吟子 | もう突っ込まないからね!? |
部室を出た姫芽、吟子、小鈴が連れ立って廊下を歩いている。 | |
小鈴 | 何だか、セラスちゃんも泉ちゃんも、 すっかり部に馴染んだって感じするよね! |
姫芽 | そうだね~。 吟子ちゃんともすっかり打ち解けて~。 |
不本意そうな顔の吟子。 | |
吟子 | いろいろ釈然としないんだけど……。 |
姫芽 | でも、かわいいでしょ~? |
吟子 | そ、それは……まあ、初めての後輩だし。 かわいくないとまでは、言わないけど……。 |
姫芽 | あはは。 誰もせらりんのことだとは言ってないよ~? |
吟子 | 泉さんがかわいいわけないでしょ! |
小鈴 | ええっ!? 泉ちゃん、すっごくかわいいよ!? |
吟子 | 外見の話をしてるんじゃなくて! |
姫芽 | なるほど~。 少なくともいずみんの外見はかわいいと思ってる、と~……。 |
吟子 | 外見はね。 泉さんは美人だし、セラスさんはかわいいよ。 |
小鈴 | うんうん! |
姫芽 | 吟子ちゃんが素直に認めた~? |
小鈴 | あ、ほんとだ! えらいね! |
吟子 | 私、もう二年生だからね。 いつまでも姫芽と小鈴の手のひらの上だと思ったら、大間違い。 |
姫芽 | じゃあ……。 かわいいよ~、吟子ちゃん~。 |
吟子 | そう? ありがと。 |
姫芽 | お~……新鮮な吟子ちゃんだ~ |
小鈴 | かわいいよ、吟子ちゃん! |
吟子 | ふふ、まあね。 |
小鈴 | 二年生になってすっごくオトナっぽくなったし、 メイクもどんどん上手になって、 |
小鈴 | 会うたびにいっつも『わああ、美人な大和撫子さんだあ!』って思うよ! |
吟子 | そこまで言わんでいいから! |
姫芽が小鈴の腕を掲げる。 | |
小鈴なにかしちゃいました?の顔の小鈴。 | |
姫芽 | あははっ。 ウィナ~。 この勝負は小鈴ちゃんの勝ちぃ~。 |
小鈴 | お世辞じゃなくて、ほんとに思ってることだよ? |
吟子 | わかっとるから……。 もう……。 |
姫芽 | 小鈴ちゃんは、いずみんせらりんと、どう~? |
ニコニコと答える小鈴。 | |
小鈴 | 楽しいよ。 |
小鈴 | 先輩たちがいなくなって、部室がちょっと広くなっちゃったけど……。 |
小鈴 | いつの間にか、空いたところに泉ちゃんとセラスちゃんが収まってて。 でも、それは代わりとかじゃなくて、ふたりはちゃんとふたりの色で。 |
小鈴の語りを聞いて、一瞬儚げな表情になる姫芽。姫芽自身は真剣ですが、見せ方としてはコミカルに。 | |
姫芽 | せんぱい……。 |
小鈴 | あっ! 姫芽ちゃんに先輩の話題はまだ禁句だった!? |
姫芽 | ……ううん。 後輩ちゃんも入ってきたし、 いい加減、アタシも前に進まなきゃね~。 |
小鈴 | 姫芽ちゃん……。 |
姫芽 | 小鈴ちゃんみたいに、愛されて尊敬される先輩になりたいし~。 |
小鈴 | いやいやいや! 徒町なんて、そんな、ぜんぜん、まだまだだよぉ! |
姫芽 | デレデレだ~。 |
小鈴 | ぜんぜんぜんぜん! こういうときこそ『油断大敵』『勝って兜で再チェスト』って、 おじいちゃんによく言われてたんだから! |
小鈴 | 徒町、精進あるのみ! ちぇすとー! |
小鈴が拳を振り上げる。 | |
姫芽 | おお、良いね兜で再チェスト! |
吟子 | 勝って兜の緒を締める、でいいじゃない……。 |
吟子 | ……まあ。 泉さんとセラスさんが部室にいる姿も、ようやく見慣れてきたよね。 |
姫芽 | あ、もどってきた~。 大和撫子ちゃん~。 |
からかう姫芽に、ジト目を向ける吟子。 | |
吟子 | そこうるさい。 |
きゃは、と姫芽嬉しそう。 | |
小鈴 | でもでも、ふたりとも、ラブライブ!で競った相手だったのに。 今は同じ部活仲間だもんね! 徒町はすっごく嬉しいよー。 |
姫芽 | 蓮ノ空、第四のユニットまで作っちゃったわけだしね~。 そこんとこ、伝統代表の吟子さんとしてはコメントあったりする? |
吟子 | 別にいいんじゃないの。 なにやったって。 今を生きる子がいちばん偉いんだから。 |
姫芽 | うんうん~。 や~、面白くなってきましたな~。 |
小鈴 | なんだかワクワクするよね! 今年も何が起こるかわからなくて、すっごく楽しみ! |
吟子 | 少なくとも、今年は去年とはぜんぜん違う年になりそうだよね。 みんなで追いかける目標も変わったし。 |
小鈴 | そうだね! 花帆先輩の夢! みんなが花咲けるステージ! |
花帆の夢と聞いたあたりから、姫芽が考えごとを始め、しゃべらなくなる。 | |
姫芽 | ……。 |
吟子 | まだ、どんなものになるのかは分からないけど。 |
小鈴 | でも、Edel Noteも復活できたし! 夢の第一歩は踏み出せた! |
小鈴 | あれが一歩目なら、花帆先輩の夢を追っかけていくと、 色んな人の夢がどんどん叶っていったりするのかなあ。 |
吟子 | じゃあ、小鈴の夢も叶うかもしれないね。 |
小鈴 | 何と! 徒町の夢まで!? |
吟子 | 小鈴は、チャレンジし続けて、何者かになりたいって言ってたでしょ? |
吟子 | 花帆先輩の夢を追うのって、きっと、チャレンジの連続になると思うから。 |
小鈴 | 確かに! 今までしたことない経験い~っぱいしたら、夢に近づけるかも! |
小鈴 | 姫芽ちゃんの夢も叶うといいね! |
姫芽 | うん、まあ叶うんじゃないかな~。 アタシの夢は、かほせんぱいの夢と重なるところが多いんで~。 |
吟子 | 姫芽、言ってたもんね。 ゲームとスクールアイドルで、たくさんの人とつながりたいって。 |
小鈴 | いっぱい重なってる感じがする! それ、絶対叶うよ! |
姫芽 | だといいね~。 |
夕食後、三年生たちと吟子、小鈴、姫芽がラウンジで談笑している。 | |
前のシーンで気にしていた姫芽も、周りが楽しいムードの中なので、今は楽しい。ただちょっとテンションは低めなイメージです。 | |
【衣装】部屋着 | |
3年生+2年生 | |
ソファー座り | |
吟子 | 三年生って、もうすぐ修学旅行ですよね? |
瑠璃乃 | そうだよ? ちょっくら東京行ってくるぜー。 |
姫芽 | いいですね、東京~。 |
小鈴 | 去年は、ホームまでお見送りに行きましたね。 |
さやか | ですね。 あれからもう、一年。 小鈴さんがこんなに大きくなるわけです。 |
小鈴 | えへへ。 4メートルまであとちょっとです! |
瑠璃乃 | サイズは変わってないよ! |
姫芽 | 修学旅行は、どんなとこ見て回るんですか~? |
花帆 | それが、ぜんぜん決められないんだよ~! |
花帆 | 渋谷、恵比寿、押上、豊洲……。 魅力的なショッピングモールが多すぎて……! |
吟子 | 東京に行ってまで……。 |
瑠璃乃 | ルリは、ウワサの市ヶ谷の釣り堀にいってみたいなー。 都心のど真ん中にあるんだって。 すごくね? |
花帆 | すごーい! |
さやか | わたしは、秋葉原に行こうと思っています。 |
姫芽 | さやかせんぱいがですか~? |
意外そうに聞く姫芽に、胸を張るさやか。 | |
さやか | はい。 ラブライブ!を優勝させていただきましたから。 神田明神にお礼のお参りをしようかと。 |
小鈴 | おおー! |
花帆 | それだよさやかちゃん! |
さやか | えっ? |
瑠璃乃 | そうだよ! 行かなくっちゃじゃん! |
瑠璃乃と花帆、意気投合してふたりでうなずき合う。 | |
花帆 | 初日のスケジュールは決定だね! |
瑠璃乃 | うんっ! |
ふたりを見て、微笑ましいものを見るように笑うさやか。 | |
さやか | では、心置きなく修学旅行を楽しむために、 きょう出た課題を片付けにいきましょうか。 |
花帆 | うっ、そうだった……。 |
瑠璃乃 | じゃあこのへんでお開きにしよっか。 |
皆が立ち上がり始める。SE人数分 | |
花帆 | またあしたねー! |
小鈴 | おやすみなさーい! |
皆が手を振り合いながら、ばらばら別れて歩き出し、ひとりになった姫芽、廊下を歩いていく。 | |
姫芽の表情、だんだんと、モヤモヤしたものに変わっていく。 | |
姫芽 | …………。 |
と、行く先の曲がり角から、たまたま歩いてきた泉が姿を現し、姫芽の顔を見て、すぐに「何かモヤモヤしている」と気づく。 | |
泉 | おや? 何かあったのかな? |
姫芽 | あ。 |
泉 | 何かモヤモヤしているみたいだね。 私でよければ話を聞こうか? |
姫芽、いつもの笑みを浮かべて、しれっとごまかそうとする。 | |
姫芽 | いや~、大したことじゃないから~。 |
姫芽 | 実は、今やってるゲームにめちゃくちゃ厄介な難所があってね~。 そこをどうクリアしようかって考えてただけなんで~。 |
泉、じっと姫芽の顔を見つめながら、 | |
泉 | それはちょっと意外だな。 |
姫芽 | え? |
泉 | そういう壁にぶつかったとき、あなたはむしろ、 燃える印象があったんだけど。 |
姫芽、一瞬、表情がこわばるが、すぐ苦笑を浮かべる。 | |
姫芽 | ……いつもそうとは限らないよ~? アタシも人間だからね~。 |
姫芽、手を振りながら笑顔で泉とすれ違い、廊下を進んでいく。 | |
姫芽 | じゃ、おやすみ~。 |
泉 | ああ、おやすみ。 |
振り返る泉、遠ざかる姫芽の後ろ姿を、静かな表情でじっと見ている。 | |
泉 | …………。 |
姫芽、部屋に入り、扉を閉めるなり頭を抱えて騒ぎ出す。 | |
姫芽 | うわー! 分かっちゃった分かっちゃった~!! そうですアタシはモヤモヤしてま~す!! |
姫芽 | だってかほせんぱいのアレ、すごくいい夢じゃん! |
姫芽 | かほせんぱいの夢を追っかけてったら、 アタシの夢も叶っちゃうかもしれない! |
姫芽 | それってただ乗りじゃん! ただ乗りできてラッキーじゃん! ラッキーって……。 |
姫芽 | ……アタシ、それでいいの!?!? |
姫芽、拳を握り締め、ためを作り、それから天井を見上げて叫ぶ。 | |
姫芽 | よくな~~~い! |
姫芽 | それで夢が叶った気持ちになるって、 みらくらぱーく!の安養寺姫芽として、ちょっとどうかと思う! |
椅子にどさっと座るモーション | |
姫芽 | はぁ……。 |
↑の体制で腕を組む | |
姫芽 | どうしよ……。 このままじゃ、かほせんぱいの夢に呑まれちゃう……。 |
姫芽、悩ましい顔で目を閉じ、 | |
姫芽 | それはよくないよ……よくないけど……。 |
姫芽 | ぜいたくな話なのか~~~??? |
着信音 | |
姫芽 | ん? |
スマホを手に取る姫芽。 | |
画面にはメール着信のお知らせ。 | |
差出人を見た姫芽、顔色を変える。 | |
姫芽 | え、うそ……。 |
姫芽 | うそ、うそ、うそうそうそうそ! いやうそじゃ困る! |
姫芽の顔にぱあっと大きな笑みが広がっていく。 | |
姫芽 | マジか~! いや~、ずっとこのゲームの布教してきてよかった~! |
姫芽 | まさか、新作発表のイベントに呼んでもらえるとは~。 何だか夢みたい……って、あれ? |
姫芽 | これって夢が叶うチャンス……? |
姫芽 | もしかして、これならかほせんぱいの夢には呑まれない、 アタシが叶えたい夢になる……? |
姫芽 | いや~、それはどうかな~……。 かほせんぱいの夢、でっかいからな~……。 |
姫芽 | ……待てよ? じゃあ……いっそ、こっちの夢もでっかくしちゃう? |
姫芽 | そうだ……そうだよ! 絶対呑み込まれないくらいでっかくしちゃおう! このイベントに全力をぶつけて……! |
姫芽 | そのためには~ーー。 |
姫芽、決意の表情で、ぐっと拳を握り締めて、 |