第6話『未来への花』
PART 6
初日のハスノソラファンタジー・スタンプラリーが開催時間終了し、蓮メンバーたちが起点の中央観光案内所に集合している。 | |
花帆、大きく伸びをして、 | |
花帆 | いや~、初日、やり切ったね~! |
吟子 | ふぅ……。 |
吟子も、安堵のため息を漏らす。 | |
セラス | 泉、みんなの反応、どうだった? |
セラス以外の蓮メンバーたちも泉に目を向ける。 | |
姫芽 | それ気になってた~! |
小鈴 | どう? どんな感じ? |
広実 | ああ、いたいた。 |
広実と友人たちが観光案内所に入ってきて、小鈴が表情を輝かせる。 | |
小鈴 | 広実さん! みんなも、どうしてここに? |
広実 | いや~、なんていうか……。 一言ぐらい感想を伝えたくってさ……。 |
広実、恥ずかしそうな笑みを浮かべ、 | |
広実 | めちゃくちゃ楽しかったよ、スタンプラリー。 |
蓮メンバー、一斉に明るい表情になる。 | |
小鈴 | ほんと? 楽しんでもらえた? |
広実 | いやあ……いつの間にか、すっかり引き込まれちまったよ。 |
セラス | わたしたちに負けないぐらい熱演してたもんね。 旅のお方。 |
さやか | こちらも思わず熱が入ってしまいましたね。 |
広実 | へへ……。 最初は、まあ、よくわかんなかったけどさ。 どんどん、世界観にハマってったっつーか……。 |
広実 | 面白いよな。 伝統の文化を体験しながら世界を救うとか。 よく思いつくもんだ。 |
照れる花帆。 | |
花帆 | えへへ~。 |
広実 | 楽しかったよ。 まるで、物語の主人公になれたみたいで。 |
花帆 | ! |
花帆、嬉しそうに顔を輝かせる。そう言ってもらいたかったんだ、とばかりに。 | |
広実、爽やかに笑って鼻の下をこする。 | |
広実 | これでいつか本当に魔王が復活して、この金沢が危機に陥っても…… きっと、きょうの経験を糧に、また世界を救ってみせるからさ……。 |
瑠璃乃 | アレ!? ぎりぎり現実に帰ってこれてない!? |
姫芽 | それだけ衝撃的な体験だったってことですね~……。 |
瑠璃乃 | とはいえ、これだけ夢中になってもらえたら、嬉しいねえ。 |
瑠璃乃、吟子に微笑みかける。 | |
吟子、思わず、安堵の息をつく。 | |
吟子 | うん……よかった。 |
広実の友達 | そういえば、最後のアレ、どうやってたんですか? あのスクリーンにみんなが映ってたやつ。 中継? |
泉 | あれは録画だよ。 |
広実たちが驚いた顔に。 | |
広実 | 録画!? フツーに会話してる感じだったぞ!? |
姫芽 | へへへ~、以前アタシたち、 Fes×ReC:LIVEってライブを開いたことがあってね~。 |
瑠璃乃 | 103期の記録を『ただのアーカイブじゃなくて、映像作品として残したい』 って言って、104期のみんなががんばって作ってくれたやつだね。 |
小鈴 | そうです! そこでの技術の、応用? みたいな! |
泉 | そして、流れる映像にタイミングを合わせて、私が演技をしていたんだ。 |
姫芽 | 広実ちゃんのリアクションを見ると、狙いは大成功だったね~。 |
広実の友達 | マジ……? |
広実 | 半端ねぇな……あんたたち、やっぱりすげえよ……。 |
泉 | 楽しんでもらえたようで何よりだ。 |
広実、笑みを浮かべて、 | |
広実 | それに、アタシは元々この街の生まれだけど、 こうして改めて回ってみると、何だかいろいろ新鮮だったよ。 |
広実の友達 | てまりとか、金箔でアイテム作るやつも面白かったよね? |
吟子、実は一番欲しかった感想が不意に来て、あ……と、無防備な表情になる。 | |
吟子 | ……っ。 |
広実 | だよな。 伝統工芸とか、今まであんまり気にしたことなかったけど。 こうして触れてみると、いいもんだよなって。 |
吟子 | …………。 |
広実 | まあ、これ伝えたかっただけだから! アタシたちは、じゃあこれで。 |
広実の友達 | 明日も頑張ってね~! |
小鈴 | うん! カナザワを救ってくれて、ありがとうね~。 |
大きく手を振る小鈴に、照れくさそうに笑う広実。 | |
広実 | そりゃ、アタシの生まれ育った街だからな。 次の魔王退治にも、また呼んでくれよな。 |
蓮メンバーが手を振って広実たちを見送る。 | |
花帆、吟子の表情を見てうれしそうな笑みを浮かべ、 | |
花帆 | 伝統工芸、楽しかったって。 吟子ちゃんのいちばん聞きたかったことが聞けたね。 |
吟子、素直にうなずき、 | |
吟子 | うん……やっぱり、このイベント、やってよかった……。 |
吟子を見る他の蓮メンバーも温かい笑みを浮かべる。 | |
花帆、笑みを力強いものに変えて、皆を見る。 | |
花帆 | 初日の手応えは最高だったね! |
小鈴 | 明日は、今日に負けない演技ができる気がします! |
姫芽 | いけるいける~! 今のでモチベ爆上がりだからね~! |
吟子 | そうだね。 みんな、明日からも頑張ろう! |
~ここから、開催期間が過ぎていく様子を点景で~ | |
日が暮れて、中央観光案内所に集まり、笑顔で談笑している蓮メンバーたちの姿。 | |
そして、早朝に中央観光案内所に集まり、打合せの後、それぞれの場所に移動し始める蓮メンバーの姿。 | |
金沢くらしの博物館で、スタンプラリー参加者への対応の合間に、吟子が生き生きとした笑みを浮かべている様子。 | |
その後、順調に開催期間が過ぎ、最終日の前日。 | |
登場人物は、花帆、姫芽、小鈴、吟子、瑠璃乃。さやかは途中からの登場。泉とセラスはいない。 | |
その日の開催時間が終わり、蓮メンバーが吟子のいる金沢中央観光案内所に集まってきている(さやかは実行委員から話を聞いており、姿が見えない) | |
花帆、伸びをしながら、 | |
花帆 | いや~、今日も終わったね~! |
すると、姫芽が含みのある笑みを浮かべて吟子を見る。 | |
姫芽 | 吟子ちゃんも記者会見お疲れさま~。 |
吟子 | ……見たの? |
姫芽 | そりゃBloom Days実行委員長の晴れ舞台! 見逃すわけにはいかないでしょ~? |
横から小鈴が、こちらは意気込んだ純粋な笑みを浮かべて、 | |
小鈴 | そうそう! だからその時間だけはポイントをお休みにして、みんなで見たよ! |
唖然とする吟子。それからなんとか正気に戻って。 | |
吟子 | みんなで!? |
小鈴 | うん、蓮ノ空のみんなで! |
吟子 | そんなにみんなで!? |
吟子 | お、面白いことなんて、なんにも言ってなかったよ……!? |
姫芽 | いやいや~、いいものが見れましたよ~。 金沢への愛たっぷりな、素晴らしい記者会見でしたな~。 |
姫芽、したり顔で、 | |
姫芽 | 特に、『金沢のためなら死ねる』って語ったところは、 涙なしには見られなかったよね~。 |
吟子 | そんなこと言っとらんけど!? |
小鈴 | でも、本当にいい記者会見だったよ。 |
小鈴 | 吟子ちゃんの真っすぐな気持ちが伝わってきて。 徒町、感動しちゃった。 |
優しく微笑む小鈴。 | |
ド直球な賞賛も、それはそれで恥ずかしい。吟子、頬を少し紅潮させて、目を逸らしながら、 | |
吟子 | う、うん……ありがと。 |
小鈴 | 徒町は、吟子ちゃんならぜったいに夢を叶えられるって信じてたから。 |
小鈴 | 吟子ちゃんは、徒町の尊敬する大好きな吟子ちゃんだもん。 |
小鈴がまっすぐに微笑むと、吟子が「うっ」という顔をする。 | |
姫芽も同じように。 | |
姫芽 | ね~、大好きな吟子ちゃ~ん♡ |
そんな姫芽をジト目で見返した後、にっこりと笑って告げる吟子。 | |
吟子 | ……。 そうだね、ありがと。 大好きな小鈴、大好きな姫芽。 |
吟子が言い返してきたことにびっくりして、思わず顔を赤らめてしまう姫芽。大好きと言われて、にっこりと笑う小鈴。 | |
姫芽 | おわっ……? |
姫芽 | なるほど……日々成長してますな、吟子ちゃん……。 これはアタシも、負けないようにしませんと……。 |
小鈴 | 今のどこに勝ち負けの要素があったの!? |
小三角のじゃれ合いを見て、花帆、瑠璃乃がそれぞれ笑う。 | |
それから、花帆がみんなに発破をかける。 | |
花帆 | さ、いよいよ明日が最終日! |
瑠璃乃 | ついにここまで漕ぎつけたね! |
吟子 | そうですね、Bloom Daysも、明日まで……。 |
そのとき、さやかがやって来て、 | |
さやか | 吟子さん、皆さんも、ちょっといいですか? |
皆がさやかを見る。 | |
吟子 | さやか先輩? どうしたんですか? |
さやか | 先ほど、実行委員の方から相談を受けまして……。 |
さやか | スタンプラリーで使った備品のことです。 ああいったものは、Bloom Daysが終わったら、どうしたらいいのかと。 |
吟子 | あー……。 |
吟子 | そこは考えてませんでしたね……。 |
花帆 | いつものイベントみたいに、蓮ノ空の大倉庫に運ぶんじゃダメかな? |
さやか、難しい顔に。 | |
さやか | どうでしょう……。 大倉庫はあくまでも蓮ノ空のものですし。 今回はちょっと微妙な気がしますね……。 |
瑠璃乃も、恐る恐るという感じで、 | |
瑠璃乃 | それに、イベントで使った諸々ぜんぶって考えると、 かーなりダイナミックな量になるよね……? |
う~ん、と皆が考え込んだとき、吟子、何か思いついた顔に。 | |
吟子 | あ、そしたら……。 |
吟子 | おばあちゃんが地元の人たちと何かするとき、使ってる倉庫があるから。 |
そんな期待を込め、吟子、皆を見て、 | |
吟子 | 使わせてもらえないか、ちょっと相談してみる。 |