第7話『わがまま色の存在証明』
PART 3
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目をぱちくりさせた姫芽の前に、にこにこしたさやかが立っている。
- 姫芽
えっと、どうしました~?
- コメント
目をぱちくりさせた姫芽の前に、にこにこしたさやかが立っている。
- さやか
助けてください。
- 姫芽
ええ!? なんでまた!
- さやか
もうわたしは小鈴さんから物理的に距離を取るしか方法がないんです。
小鈴さんはわたしがいなくても頑張れるはずなんです。 - さやか
でもわたしがいたら小鈴さんの成長に悪影響が出ますから。
- 姫芽
わ、分かりました分かりました。
アタシもさやかせんぱいがやろうとしていることは分かりますから。 - 姫芽
実際、最近小鈴ちゃん頑張ってますし~……。
- 姫芽
で、助けてというのは……?
- さやか
お世話させてください。
- 姫芽
ひえ。
- さやか
何かお手伝いができることがあればさせてください。
- 姫芽
なんか色々限界になってませんか……!?
お手伝いと言っても……竜胆祭でやることはもう決まってますし……。 - さやか
そこをなんとか。
- 姫芽
そこをなんとか!?
お世話って食い下がってやるものですかね……!? - さやか
そこをなんとか。
- 姫芽
こわいこわいこわい。
- さやか
あ、では姫芽さんがお忙しい間、
積んでいると嘆いていたゲームを代わりにやっておきましょう。 - さやか
少しでも減らしてみせます。
- 姫芽
それはアタシのだ!!!! 誰にも譲らん!!!!!
- さやか
あ、すみません……。
- 姫芽
はっ、いえいえこちらこそ。
- 姫芽
小鈴ちゃんはこれを一身に受け止めていたのかぁ……。
- 姫芽
でも、さやかせんぱいなりに小鈴ちゃんのためを思ってやってることでは
あるんだよねえ~……。 - 姫芽
分かりました。
みらくらぱーく!では、竜胆祭のツアーガイドをやろうとしてるんですよ~。 - さやか
それは。
- さやか
蓮ノ空が楽しい場所であると、多くの人にたくさん知ってもらえる。
……素敵な提案ですね。 - さやか
わたしたちも、姫芽さんが入学してくる前……
オープンキャンパスでツアーガイドをやったんですよ。 - 姫芽
でしたよね~。
ていうかこれをやろうって言い出したのもるりちゃんせんぱいなんです。 - 姫芽
ラジオとかオープンキャンパスとかをやったからこそ、
「やっぱり来た人それぞれに楽しんでもらいたい」って。 - 姫芽
で、アタシとるりちゃんせんぱいで分担するルートを考えていて~。
- さやか
分かりました。 そのお手伝い、是非させてください!
まずは竜胆祭で行われる全ての出し物を把握してまいりますので! - 姫芽
全てって……。
いくらさやかせんぱいでもそれはムリじゃないですかねぇ~……? - 吟子
私の手伝い、ですか……??
- さやか
はい。
小鈴さんの近くにいては、とても己を制御できません。 - 吟子
先輩そんな人でした????
- 吟子
と言っても、今は何をしてもらうことも。
他の人にも聞いてるんですか、これ。 - さやか
はい。
先ほどもみらくらぱーく!の企画をお手伝いしていたのですが……。 - さやか
これ以上やったらみらくらぱーく!feat.村野さやかになってしまうとか、
さやか先輩がみらくらぱーく!じゃないと説明がつかないとか。 - さやか
いっそ小鈴ちゃんと一緒に4人でやりますかとか……
姫芽さんに言われてしまい……。 - 吟子
つまりはやりすぎたんですね。
- さやか
そのようです……。
- さやか
ですが! わたしはそこまでとは!
- 吟子
ほんとですか……?
- さやか
とにかく!
吟子さんのことも何かお手伝いできればと! - さやか
スリーズブーケは確か、ファッションショーをやるんですよね!
手数が欲しいのでは!? - 吟子
いや、まあ、その通りではあるんですけど。
- さやか
修繕のお手伝いは足りていますか。
- 吟子
こ、これは私が好きでやっていることなので!
- さやか
なるほど……で、では、それ以外の雑務は全て請け負いましょう!
- 吟子
その他の雑務……?
- 小鈴
今日も一日頑張るぞー!!
- 姫芽
……小鈴ちゃんは、元気だねえ。
- 小鈴
姫芽ちゃん、なんかおばあちゃんみたいになってない!?
- 吟子
まあ、昨日は色々あっただろうからね……。
- 泉
色々?
- 姫芽
その反応、もしかして吟子ちゃんも……?
- 吟子
それが……。
- さやか
ただいま戻りました、吟子さん。
やっておきましたよ、全部。 - 吟子
ぜ、全部ってなんですか……?
- さやか
こちらが演出プランです。 セットリスト、登場順、かける音楽、
ライティング、モデルさんの手配……諸々組んでおきました。 - 吟子
は……?
- さやか
開会の挨拶と〆の挨拶も全部こちらで用意しました。
スピーチはこれを読み上げてください。 - さやか
それから、竜胆祭MVPを受賞した時のコメントがこちらです。
- さやか
念のため、惜しくも準MVPや入選止まりになってしまった際の
落選コメントもこちらに。 - 吟子
……。
- さやか
吟子さん?
- 吟子
ええ……?
- さやか
なにか……まずかったですか?
- 姫芽
そっかぁ。
あれは野放しにしてはいけないモンスターだったんだ……。 - 泉
また面白いことになっているね。
- 吟子
本当にモンスターなのはそのあとだよ。
- 吟子
私たちの仕事片付けたあと、
まだまだ元気に他のお世話を探しに行ったから……。 - 泉
なるほど。 つまり、さやか先輩の抑えきれない情熱の賜物ということだ。
その熱がどこから出てきているのか、興味があるな……。 - 姫芽
いずみんは変なところでスイッチ入っちゃってるし。
- 吟子
そんなポジティブに受け止めるものかな……。
泉さんの方は何もなかったの? - 泉
ああ、来たよ。 さやか先輩。
- 泉
ただ、セラスがやりたいと言っている出し物は、
何を隠そうフリップを使った大喜利大会でね。 - 吟子
またあの子はうろんなものを……。
- 泉
さやか先輩の回答はある意味で非常に面白かったのだが……。
- 吟子
え、あれが?
……あっそういう。 - 泉
あれこそまさに青春のきらめきじゃないか。
- 泉
ただ残念ながら、
出題者側ではあの魅力を活かしきることはできないだろうと思ってね。 - 吟子
き……聞かなかったことにしておこうかな……。
- 小鈴
ねえみんな、聞いてる?
- 吟子&姫芽
え?
- 泉
すまない、小鈴さん。
こちらで盛り上がってしまって。 - 小鈴
もー。
ねえねえ、今日の寮、すっごく綺麗だなって思わない? 気分も良くなるよね? - 吟子
言われてみれば。
- 姫芽
ん~……!
- 姫芽
小鈴ちゃんの言う通りかも!
ちょっと疲れてた気持ちが復活してきた~! - 姫芽
いやあ、こうやって綺麗な廊下を見ると、掃除っていうのも大事だなあと、
身につまされるねえ~。 - 吟子
姫芽は散らかしてるわけじゃないけど、部屋にものが多いんだよ……。
- 姫芽
え~、じゃあ片づけてくれる~?
- 吟子
私は人の部屋まで掃除するほど世話焼きにはーー。
- さやか
ふう……。
ああ、おちつく……。 - 姫芽
つ、ついにあの人、人の部屋どころか学校の世話を……!
- 吟子
嘘でしょ……!?
- 泉
あっはっは!
- 瑠璃乃
えー、村野さやかさん。
- さやか
はい……?
- 瑠璃乃
苦情が……!
来ています……! - さやか
そんな……!?
- 花帆
苦情ってまた、たいそうな。
どんなのが来てるの? - 瑠璃乃
……お世話と称して校内を絶えず徘徊し後輩に絡んでいるとかなんとか。
- 花帆
なにそれこわ。
- さやか
うっ……。
- 瑠璃乃
なんでも、竜胆祭の準備の三割を村野さやかがやっているのではないかと
学校中で噂になっています。 - 花帆
三割って……百人分ぐらい!?
- 瑠璃乃
提出書類のサインにも村野さやかって名前がめっちゃ多くて、
村野さやか村野さやかひとつ飛ばして村野さやか、
みたいなことになってるみたいです。 - 花帆
この学校、村野さやかさんがいっぱいだあ!?
- さやか
そんなにいたんですね……。
- 瑠璃乃
いないよ!! なんだよ三割が村野さやかって!
こんなのもう竜胆祭じゃなくて村野祭だよ!! - 瑠璃乃
はあ……。 姫芽からもちょっと聞いたから、
さやかちゃんの気持ちは分からなくもないけどねえ……。 - 瑠璃乃
小鈴ちゃんから距離を取ろう、ってことなんでしょ?
- さやか
そうなんです。 でも……小鈴さんから距離を取っている間、
何をしていいのか分からなくなって。 - 花帆
そこまでなる!?
小鈴ちゃんが入学してくるまでは何をしてたの??? - さやか
綴理先輩のお世話をしていました。
- 花帆
じゃ、じゃあその前は!?
- さやか
その、まえ…………???
- 花帆
記憶ないの!?
- 瑠璃乃
ルリもちょっと、これはさやかちゃんのためにもどうにかしてあげたいと
思うわけです。 これでもヒーロー業を営んでおりますので。 - さやか
はい……。
- 瑠璃乃
あくまで、さやかちゃんのお世話も、ルリのも、
本質的には誰かのためにしないとダメだと思うんだ。 - 瑠璃乃
さやかちゃんのやったことで、
本来その人がやらなきゃいけないことまで取っちゃだめってことです。 - さやか
はい……。
- 瑠璃乃
ね、さやかちゃん。
卒業まで小鈴ちゃんと距離を取る気? - さやか
えっ?
- 瑠璃乃
小鈴ちゃんが竜胆祭頑張れたとして、そのあとはどうするつもりなの?
- さやか
それは……それ、は。
- さやか
そう、か……竜胆祭を終えたあと……
わたしが元通りになってしまったら意味がない……。 - さやか
えっ? わたしは誰のお世話もしてはならないということになりませんか!?
- 花帆
いや、まあ、そうなる……かな!?
- 瑠璃乃
変わらなきゃいけないことも、あるよ。 やっぱり。
- さやか
わたしが、変わらなければならない……!
これは小鈴さんとの関係ではなく、わたし個人の問題……! - さやか
分かりました……わたしは、人のお世話を断ちます!!
- 瑠璃乃
ん……頑張ってみよっか!
小鈴ちゃんのお世話を我慢できたさやかちゃんなら、きっと大丈夫! - さやか
はい。 かくなるうえは、どうしようかな……。
- さやか
……お姉ちゃん?