第7話『わがまま色の存在証明』

PART 7

169 セリフ10 人物
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  1. 沙知

    それではこれより、DOLLCHESTRAによるパフォーマンス勝負を開始する!!

  2. 沙知

    ルールは単純、どちらの方が優れたパフォーマンスをするか、それだけだ。

  3. 沙知

    審査員はこのあたしと、志願してくれた泉ちゃん。

  4. 沙知

    それから駆けつけてくれたさやかのセコンド。

  5. 沙知

    そしてもうひとり。

  6. つかさ

    来たよ。

  7. さやか

    ありがとう、お姉ちゃん。

  8. つかさ

    わたしを魅せてくれるの?

  9. さやか

    ううん。
    ただ、見届けてほしいだけ。

  10. つかさ

    分かった。

  11. 小鈴

    泉ちゃんも、先輩方も、見ててくださいね!!

  12. コメント

    花帆が元気に手を振り、瑠璃乃も隣で微笑んでいる。

  13. 花帆

    頑張れー!

  14. ところであなたは?

  15. 沙知

    小鈴の、即席師匠みたいなものかな?

  16. ふうん? あの小鈴さんの師匠か、大きく出たね。
    期待させてもらうよ?

  17. 沙知

    はは、きみほどの子に言われるとそれなりにプレッシャーかな?

  18. 小鈴

    まさか、竜胆祭の前にこんなステージをやることになるとは
    思いませんでしたけど……こうなった以上、ここで徒町の全力を示します!

  19. さやか

    はい。
    準備期間が足りなかった、ということはないですか。

  20. 小鈴

    もちろんもっともっと練習できたかもしれませんけど……
    今のこの気持ちはきっと、竜胆祭でも得られないくらい熱いから!!

  21. さやか

    ですか……では、挑ませていただきます!

  22. 小鈴

    こちらこそ!

  23. 小鈴

    まずは今までよりも一歩大きく!

  24. さやか


    そんな体に合わない動きをっ。

  25. 小鈴

    それでもやる、さやか先輩に、すごいって思って貰うんだ……!

  26. コメント

    視点が客席へ。

  27. つかさ

    小鈴ちゃんってあんな動けるの!?

  28. あれは本来の小鈴さんの動きではないね。
    ただ……。

  29. 沙知

    なりたい自分、だよ。
    未来の自分をイメージして踊るようにさせたのさ。

  30. コメント

    視点がステージへ。

  31. さやか

    繊細さはない、勢い任せでまだまだ粗い、
    でもーーこの子の動きが人の目を奪う……!

  32. 小鈴

    くっ、このおお!

  33. さやか

    わたしには分かる、これこそがーー。

  34. コメント

    視点が客席へ。

  35. 小鈴さんだけの魅力。

  36. コメント

    泉、したり顔で頷く。流石小鈴さん。

  37. コメント

    その隣で沙知が苦笑い。

  38. 沙知

    とはいえ、かなり粗削りだねぃ。

  39. コメント

    瑠璃乃はふたりともすごい、と感嘆しながら呟く。

  40. 瑠璃乃

    流石に技術はさやかちゃんの方が上だけど……。

  41. コメント

    ここからだろう?とばかりに沙知が笑う。

  42. 沙知

    さて……やれるかい、小鈴。

  43. コメント

    視点がステージへ。

  44. 小鈴

    ついていくだけで、精一杯……!
    これが本気の、さやか先輩……!

  45. 小鈴

    やっぱりいつもは、徒町に合わせてくれてたんだ……!

  46. さやか

    ふっ……!

  47. 小鈴

    勝たなきゃいけないのに……徒町はっ!
    徒町は勝たなきゃいけないのに!

  48. 小鈴

    さやか先輩が求めてくれてるんだ、
    徒町はさやか先輩の求める徒町じゃなきゃ……!!

  49. さやか

    そんなのどうでもいい!

  50. さやか

    わたしは、そのままのあなたから学びたいものが、得たいものがあるんだ!

  51. 小鈴

    っ!

  52. 小鈴

    ……やってやる!!

  53. コメント

    観客席に視点が映る。

  54. コメント

    花帆が口元を押さえて驚いている。

  55. 花帆

    小鈴ちゃん……。

  56. 沙知

    はっ……はは、いいなあ。

  57. コメント

    感慨深く呟く沙知。羨むように。

  58. 何がだい?

  59. 沙知

    強いて言うなら……舞台の上で魅せる不完全でも熱を持った芸術……かねぃ。
    本当に、良い子たちだよ。

  60. まるで終わったみたいな感想だね。

  61. コメント

    泉はステージから目をそらさず呟く。彼女が一番、このステージに見入っている。

  62. コメント

    沙知は一瞬泉に視線をやる。

  63. コメント

    それからステージへ目を向けて、驚きに目を見開く。

  64. 沙知

    おいおい、嘘だろう?

  65. コメント

    ステージに視点が映る。小鈴がぐっと体を縮めたところ。

  66. 小鈴

    沙知先輩には、これはいつかできれば良いって言われた。
    でもーーそのいつかは、今にする!

  67. 小鈴

    できないかもしれない、大失敗するかもしれない、
    でもーー本気でさやか先輩を上回ってやる!!

  68. 花帆

    うそ。

  69. 沙知

    やれるのかい……!?

  70. 魅せてくれ。

  71. さやか

    これだ。 この無茶だ。
    わたしに足りない……強い意志。

  72. 小鈴

    徒町はさやか先輩のおかげで“何者か”にはなれた。
    でもここからはひとりで、その先にもいかなきゃいけないんだーー!!

  73. さやか

    “何者か”になっても、満足しない。
    できなくても、失敗しても、手を伸ばす勇気。

  74. さやか

    そうなんですね、小鈴さん。
    わたしはただ……臆病だったんだ。

  75. さやか

    誰かの期待に応えられないこと、誰かに失望されること、失敗すること。
    わたしはそれから、逃げていたんだ。

  76. つかさ

    さやか……?

  77. さやか

    わたしもーー一歩を踏み出す時なんだ!!
    見ていて、わたしの踊りを!

  78. コメント

    小鈴が回ろうとする横で、さやかが二回転ターンをする。

  79. 小鈴

    ふぇ……!?

  80. コメント

    客席が映る。

  81. つかさ

    そんな、リンク外で!

  82. コメント

    沙知が思わず立ち上がろうとする。つかさも悲鳴じみた声。

  83. コメント

    泉が沙知を制している。その泉は、沙知を見ることもせず食い入るようにステージを見つめたまま。

  84. 沙知

    あぶなーーこら!

  85. さやか

    ぁ……。

  86. コメント

    ステージ上で、ふたりが転んでいる。

  87. さやか

    さあ、もう一度です!!

  88. 小鈴

    あーーはい!
    もう一回です!

  89. さやか

    勇気を出すって……怖いことですね。

  90. 小鈴

    へ?

  91. さやか

    でも、あなたのおかげで分かった。
    こんなに、楽しいことなんですね。

  92. さやか

    わたしはあなたの隣に立っていることを、誇りに思います!

  93. 小鈴

    あ……はい!

  94. コメント

    客席が映る。

  95. コメント

    五人横並びで拍手をしている。

  96. 花帆

    あはは、すごいよふたりとも。

  97. 瑠璃乃

    隣り合って、楽しそうだね。

  98. つかさ

    やりたいこと、できたね。 さやか。

  99. 沙知

    まったく……気を休ませてくれないね、後輩たちは。

  100. ふふ。
    でも、あなたのおかげなんじゃないかな。

  101. 沙知

    あたしじゃないさ。
    あるとしたら、八重咲く蓮ノ空のおかげだよ。

  102. 小鈴

    ありがとう……ございましたぁ……。

  103. さやか

    礼を言うのはこちらですよ。 小鈴さん。
    学ばせていただきました。 心から。

  104. さやか&小鈴

    うふふ。

  105. 沙知

    さて。
    勝負の結果がどうとかいうのは無粋かな。

  106. さやか

    今回は本当にありがとうございました。
    勝負の結果は……そうですね。

  107. さやか

    まあ、言うまでもなくわたしの負けですよ。

  108. 小鈴

    そ、そんなことはっ。

  109. 良いじゃないか。 受け取っておけば。

  110. 小鈴

    泉ちゃん……?

  111. 勝たなきゃいけない戦いで勝ったんだ。
    あなたは自分を誇るといい。

  112. 小鈴

    ……そう、かな。
    ……ありがとう。

  113. 小鈴

    初めてさやか先輩に勝ちました。 にひ。

  114. さやか

    でも。 そうですね。

  115. 小鈴

    ヴぁ?

  116. さやか

    わたしはあなたの憧れでいたいから。
    ほんの少しだけ、悔しいと思いました。

  117. 小鈴

    しぇんふぁい……。

  118. さやか

    だから小鈴さん。
    これからも隣で努力させてください。

  119. 小鈴

    あ。

  120. さやか

    いつか一緒に二回転ができるようになりましょう。

  121. 小鈴

    はい!!

  122. さやか

    花帆さんと瑠璃乃さんも……見届けてくれて、ありがとうございました。

  123. 花帆

    ううん。 良い物見れたって、ね!

  124. 瑠璃乃

    そだね。 何よりも……。

  125. 瑠璃乃

    ルリにとっては、さやかちゃんがすっきりした顔をしているのが、
    何よりの報酬かな。

  126. 花帆

    あはは、よっヒーロー。

  127. 瑠璃乃

    へへへ。

  128. さやか

    お姉ちゃんも……来てくれてありがとうね。

  129. つかさ

    ううん。
    ……いいもの、見せてもらったよ。

  130. つかさ

    さやかがまっすぐに、やりたいことを見せてくれた。
    わたしから見せてって言ったわけじゃないものをね。

  131. さやか

    うん。 わたしが見てほしかった……それだけだから。
    小鈴さんに勝てなくて、悔しいんだ。

  132. さやか

    沙知先輩も、本当にありがとうございました。

  133. 沙知

    一応、理由を聞いておこうかな。
    きみのお礼に関しては。

  134. さやか

    ……沙知先輩の言う通りだったと思ったからですよ。

  135. コメント

    さやかが頭を下げて、面接室を立ち去ろうとしたところで足が止まる。

  136. コメント

    扉から廊下に向けて背を向けたところで、正面に立っている沙知の姿。

  137. コメント

    沙知の視線の先、廊下を歩むさやかと、さやかを挟むように話す花帆と瑠璃乃の立ち去る後ろ姿が映る。沙知がそれを見届けているという描写。

  138. 沙知

    本当はあの日、あたしの大学に来ないか誘うつもりだったんだ。

  139. 沙知

    うちのフィギュアチームがどうしても村野さやかが欲しいって聞かなくてね。
    そのために蓮ノ空に戻ってきた。

  140. さやか&花帆&瑠璃乃

  141. 花帆

    沙知センパイの大学……。

  142. さやか

    そうだったんですね。
    わたしはそこまでされるほどの選手ではないとは思うんですが……。

  143. 沙知

    それでも村野さやかの表現力に着目したんだとさ。

  144. さやか

    少し前なら、すぐにでも頷いていたかもしれません。
    でも今はーー。

  145. 沙知

    今は返事を聞くつもりはないよ。
    いったんあたしが様子を見てくるとだけ言ってきたから。

  146. 沙知

    どのみちこの時期のスクールアイドルは色々と考えることが多いからねぃ。
    ……想像していたのとは違う形でお節介を焼いてしまったが。

  147. さやか

    ……はい。 ありがとうございます。

  148. 沙知

    余計なお世話かもしれないが、つい“先輩”になってしまった。
    大学ではまだ二年生のぺーぺーだし、久々のことだったねぃ。

  149. 沙知

    これでも「誰かのために」で身を粉にしすぎた、苦い経験のある身だ。
    放ってはおけなかった、というわけさ。

  150. 沙知

    そんなわけで方々で情報収集の旅だった。
    小鈴を見つけられて良かったよ。

  151. 小鈴

    そ、そっか……沙知先輩は、最初からさやか先輩のために……。
    全て計算の上……。

  152. さやか

    変わりませんね、そういうところは。

  153. 沙知

    変に持ち上げるんじゃないよ、大変だったんだぞ?

  154. さやか

    ふふ。
    ……改めて、お手数をおかけしました。 もう、大丈夫です。 今度こそ。

  155. さやか

    残り半年、いちから出直します。
    この子と一緒に。

  156. 沙知

    あい分かった。
    その礼、確かに受け取ろう。

  157. つかさ

    じゃあ、わたしは帰るね。
    さっちゃん、お茶でも行く?

  158. 沙知

    お、いいですねー。

  159. さやか

    ここもなんかもう馴染んでる……。

  160. 花帆

    あ、沙知センパイ! つかささん!
    良かったら竜胆祭もしっかり見ていってくださいね!!

  161. 沙知

    ああ。

  162. つかさ

    もちろん!

  163. 沙知

    そうだ、竜胆祭で思い出した。

  164. 沙知

    あの時のRunwayは、本当に素晴らしかったよ。

  165. さやか

    はい。 もう、決してあの日の誓いそのものが間違いだとは思いません。
    あの日誰かの期待に応えたいと思ったからこそ、今のわたしは。

  166. さやか

    怖いですけど……自分の期待に応えてみせます。

  167. 沙知

    そっか。
    ……じゃあもう、OGが言うことなんか、なにもないな!

  168. さやか

    ……ふう。
    小鈴さんには、無茶をさせてしまいましたね。

  169. さやか

    小鈴さんに限らず、沙知先輩、泉さん……お姉ちゃんにも。
    みなさんに、たくさん心配をかけて。

  170. さやか

    勇気を、出した。 結果としてすっきりしたのは、わたしだけだけど……。
    本当に、これで、良かったんだよね……。

  171. さやか

    ……。

  172. 綴理

    星を見てるの?

  173. さやか

    ……え?

  174. さやか

    ……どうして、ここに?

  175. 綴理

    さちが許可取ってくれたよ。
    寮母さんも入っていいって。

  176. さやか

    そうではなく!!

  177. 綴理

    さちがさ……さやのことを心配してたんだ。
    ボクだって、気にもなるよ。

  178. 綴理

    もちろん……スクールアイドルのことは
    スクールアイドルが解決するのがいいとは、ボクも思うから。

  179. 綴理

    さちにはそう言ったんだけど……どうなった、かな?

  180. さやか

    沙知先輩の言っていた情報収集って、あなたからだったんですね。

  181. 綴理

    そう。

  182. 綴理

    だから、さっきさちから聞いたこともあるけど……。
    さやに、聞きたいんだ。

  183. 綴理

    どうかな……さやの欲しいものは、手に入ったかな?

  184. さやか

    はい。 ただ……そのために、たくさんの人を振り回してしまった。
    今はそれが、少し怖い。

  185. さやか

    誰の期待がなくとも、勇気を出して自分を貫いてみる。
    やるべきことは、見えたつもりなんですが。

  186. 綴理

    自分のしたことが、期待の反対に……失望に、なるかもって?

  187. さやか

    っ。

  188. 綴理

    ねえ、さや。

  189. 綴理

    ーーわがままってそういうことだよ。

  190. さやか

    ぁーー。

  191. 綴理

    自分で自分の道を決めて、飛び立っていく。
    ボクや、お姉ちゃんの失望が怖いなら、あの日の言葉を思い出して。

  192. 綴理

    きみはいつでも、わがままになっていいんだって。
    ボクたちのことを、考えなくていいんだって。

  193. 綴理

    きみも……鳥籠の外へ出たんだよ。

  194. さやか

    わたしっ……わたし。

  195. さやか

    あなたが言ったことを心から理解するのに、三年もかかっちゃいました。