第8話『今はまだ遥か幽かな光』
PART 2
- コメント
この日、学校に帰ってから、など。
- コメント
部室にスクールアイドルクラブのメンバーが全員集合。緊急招集。
- 花帆
ええーっ!?
- さやか
それは、本当ですか……!?
- コメント
目を剥く三年生たち。
- 瑠璃乃
ほんとに……瑞河が、復活するの!?
- コメント
泉が大きくうなずく。
- 泉
ああ。 きょう、セラスのひとつ下の後輩である、
立科海莉さんが来て、教えてくれたんだ。 - コメント
意気込みにあふれて、頼りになる先輩方の前では、小鈴みたいに気合の塊になっているセラス。
- セラス
教えてくれたんです!
- 泉
正確に言えば、復活ではないんだけれどね。
- セラス
正確に言えばそうです!
- 泉
旧法人は、もはや撤退している。
- 泉
ただ新たな学校法人が、売却された校地を受け皿として設置許可を取り、
生徒を募集する計画が立っている、という話だ。 - 泉
経営母体は変わるけれど、校舎と名前はそのまま。
世間からの印象は、『瑞河が復活』と受け止められるだろう。 - 小鈴
つまり……つまり!?
- 姫芽
コンビニがあった場所に、また同じコンビニが建つ、
みたいな感じですかねえ~? - 泉
まあ、似たようなものかな。
- 泉
経営の失敗を反省して、今度は中高一貫校ではなく、
規模を縮小して普通高校として再出発するらしいけれど。 - 吟子
そこまで話が進んでるの……?
- 泉
もちろん、本当はこんな早さで計画が進むことはありえない。
- 泉
だが、瑞蓮祭やラブライブ!決勝大会プレーオフなどが大勢の目に留まり、
応援してくれる人たちの声が届いたことで、例外的に動いているようだ。 - セラス
そして!
海莉の話だと、瑞河復活はもう、秒読み段階に入ってる、って! - 花帆&さやか&瑠璃乃&吟子&小鈴&姫芽
!
- さやか
そうだったんですね……。
- セラス
わたしも、すごくすごく驚きました……!
- 泉
瑞河は、地域のシンボル校とも呼べる学校だった。
- 泉
人々がその価値に気づいた頃には、
もう廃校は決定してしまっていたが、遅れて支援が集まってきたんだ。 - 泉
『失われた母校を取り戻す』というストーリーはわかりやすく、美しい。
再建計画を立てるのは、新しく学校を建てるよりも、現実的だったんだろう。 - 泉
そこで、海莉さんを含めた元瑞河の生徒たちは、
その再建計画をどうにか後押しできないかと考えて、 - 泉
私たちに話をもってきたんだ。
- コメント
一同を見回し、そして厳かに告げる泉。
- 泉
つまり。
- 泉
『第二回瑞蓮祭』を開きたいから、私たちにも協力してくれないか、と。
- 花帆
第二回、瑞蓮祭……!
- 瑠璃乃
そっか……。 確かに瑞河の名前が大きく広まったのは、
ラブライブ!全国大会の一件。 それに、瑞蓮祭の評判だったもんね。 - 泉
そういうことだ。
- 花帆
よかったね! せっちゃん、泉ちゃん!
- 花帆
第二回瑞蓮祭、やろうよ!
そうして今度こそ、瑞河を復活させよう! - 花帆
ふたりの守りたかった、瑞河を!
- セラス
うん!
- セラス
こんな機会がやってくるなんて、ほんとに、びっくり……。
でも嬉しいよ、すごく……すごく。 - さやか
……そうですね、なんだか感慨深いです。
- さやか
今思えば、瑞蓮祭からラブライブ!プレーオフへの流れは、
- さやか
Bloom Garden Partyを開くきっかけになった出来事と言っても、
過言ではありません。 - 瑠璃乃
それはほんとに、そうだよね。
- 瑠璃乃
泉ちゃんやセラスちゃんを花咲かせることが、大きく育って、
- 瑠璃乃
花帆ちゃんの
『すべての人を花咲かせるためのステージ』に繋がったんだもん。 - 花帆
うんうん!
- 吟子
あの経験がなかったら、
私もBloom Daysの成功をイメージできなかった気がします。 - 吟子
きっとムリだって思っちゃってたかも……。
- 姫芽
スクールアイドルクラブにとっても、大きな転機でしたよねえ~。
アタシも、イベント開くときはいっつも思い出して、参考にしてますし~。 - 小鈴
あの頃の徒町はまだピヨピヨで右も左もわかりませんでしたが、
今ならもっとお役に立てるはずです! - 花帆
それじゃあ、みんな!
- コメント
こうして、一同の気持ちがひとつになった! 花帆が号令をかけようとしたところに、しかし、気まずそうに控えめに手を挙げるさやか……。
- さやか
ただその前に、ひとつあまりにも大きな問題が……。
- 花帆
えっ!?
- さやか
スケジュールです。
- コメント
わなわなと震える花帆。すけ、じゅーる……!?
- 花帆
な、なんとかなる……よね……!?
- さやか
花帆さんも知っての通り、Starring Bloomの準備はいよいよ大詰めです。
- さやか
今週も、他校のスクールアイドル部との打ち合わせが、
ぎっしり詰まっていますしね……。 - 吟子
ですよね……。 さやか先輩も瑠璃乃先輩も、
さすがに直近で長野に行く時間的余裕は、ありませんよね。 - コメント
グサッ、と胸を押さえて苦悶する花帆。
- 花帆
ううっ!!
- 瑠璃乃
ルリも実はまだ分身の術を使えなくてねぇ……。
- コメント
申し訳なさそうに言う瑠璃乃。
- コメント
泉も、さすがに苦笑い。
- 泉
今がいちばん忙しい時期だというのは、じゅうぶんわかっている。
ここから先は、私とセラスのふたりでなんとかするさ。 - コメント
コクコクと懸命にうなずいて、みんなの気持ちは伝わったから大丈夫だよ!と必死にフォローするセラス。
- セラス
う、うん。
蓮ノ空の名前を使わせてもらうだけでも、ありがたき幸せ、だよ! - 花帆
だからって、どっちかしか選べないなんて!
- コメント
悲鳴を上げる花帆。あたしたちがみんなこんなにやる気なのにぃ!
- コメント
気落ちしそうになる前に、吟子が声をあげる。
- 吟子
そういうわけで。
- コメント
胸を張って、あくまでも自然体、当然のような顔つきで。
- 吟子
長野には、私たちが一緒に向かいます。
ここは、私たち104期生に任せてください。 - 花帆&瑠璃乃
おお!?
- セラス
吟子先輩……!?
- 吟子
103期生は、もし本当にお時間が空いたら、手伝いに来てください。
そのときは、頼りにしています。 - 姫芽
お~……。
Bloom Daysを乗り越えて、吟子ちゃんも一皮剥けたねぇ~……。 - 姫芽
アタシはもちろんオッケーだよ~。
小鈴ちゃんは……って、聞くまでもない、かな~? - 小鈴
うんっ! いいね! すっごくいい話!
これ以上ないぐらいちぇすとだよ! ちぇすと~~~! - コメント
小鈴の気合の入った、喜びのちぇすとである。
- 姫芽
これはこれは、伸びやかで善きちぇすとが出ましたなぁ~。
- セラス
先輩方……。
- コメント
嬉しそうに息を飲むセラス。
- コメント
瑠璃乃もまた嬉しそうに、花帆に微笑みかける。
- 瑠璃乃
花帆ちゃん、ここは二年生のみんなに任せてみよっか。
大丈夫だよ。みんなならきっと、心配いらないよ。 - 瑠璃乃
姫芽も、吟子ちゃんも、小鈴ちゃんも、この一年すっごく成長したもん。
- 瑠璃乃
そのことは、ルリたちがいちばんよくわかってるでしょ?
- 瑠璃乃
これがきっとスクールアイドルクラブの、今できる全力、だよ。
- 花帆
うん……そうだね。
あたしたちは逆に、二年生のみんなの分までがんばらなきゃ、だね! - さやか
では、第二回瑞蓮祭のために、みなさん、最善を尽くしましょう。
- セラス
うん!
- 花帆
目指せ瑞河復活ー! えいえいおー!
- さやか&瑠璃乃&吟子&小鈴&姫芽&セラス
おー!
- コメント
しかし、そんな一同を眺めて、泉はまるで蚊帳の外のように微笑んでいるのであった。
- 泉
……。
- コメント
寮への帰り道を歩いているセラスと泉。
- コメント
緊急会議を行った後、Edel Noteの練習をしてからの帰り道、という設定。
- 泉
いやはや。
- 泉
ずいぶん、驚くニュースだったね。
- コメント
泉が穏やかにそう言うと、セラスはくわっと目を見開いて、いまだ興奮冷めやらぬ調子で言う。
- セラス
驚くなんてもんじゃないよ!
全身全霊でがんばらなくっちゃ! - コメント
どこか寂しそうに微笑む泉。
- 泉
……そうか、そうだね。
- 泉
がんばってあなたを支えるよ、セラス。
- コメント
その言葉を聞いて、泉と長い付き合いのセラスは泉の様子がどこかおかしいことに気づいて、ぴたりと足を止める。
- セラス
……泉は、嬉しくないの? 瑞河復活。
- 泉
あれはもう、私の中では終わった話だ。
- 泉
私は瑞河を救えなかった。 悔しい想いはあった。
だが、私と瑞河の物語は、そこで終わったんだ。 - セラス
え……?
- 泉
スクールアイドルクラブのみんなが気炎を揚げているのを見て、
改めて思い知った。 - 泉
……私は彼女たちとは違う。
- 泉
本来は、誰よりも私事であるはずなのに。
瑞河の復活の兆しすら、私を突き動かす動機にはならない。 - 泉
この胸から湧き上がる情熱が、なにもないんだ。
- 泉
……虚しいよ。 本当に。
覚えているのが、悔しかった想いだけなんて。 - コメント
顔を歪めてつらそうにつぶやく泉。
- コメント
じっと自分を見つめるセラスの視線に気づいて、はっと気づく。
- セラス
……。
- 泉
……いや、すまない。
あなたの盛り上がりに、水を差すつもりじゃ。 - セラス
じゃあ『リベンジ』だね!
- 泉
え?
- セラス
わたしにとっても、泉にとっても!
これは、リベンジのチャンスだよ! - セラス
だって、悔しかったんでしょ!?
だったらそのときの悔しさをぶつけて、今度こそ瑞河を復活させようよ! - セラス
悔しいって気持ちでがんばれたら、
泉は空っぽじゃないって証明になるでしょ!? - 泉
……私が空っぽではないという、証明に……。
- セラス
うん! ほら、泉って今までたくさんのひとの夢を叶えてきたんでしょ。
失敗したことなんて、きっとほとんどなかったんだよね。 - セラス
だったら、また違った燃料で、がんばれると思うんだ。
- 泉
……しかし。
- 泉
ここ最近は、スクールアイドル活動も、
高いモチベーションで取り組めていた。 - 泉
それなのに、改めて私の虚無が証明されるだけ、
という可能性も、あるわけだ。 - セラス
そ、それは、そうかもだけど……。
- 泉
私はあなたたちのようにはなれないと、
何度も、何度でも……。 - セラス
それでも!
チャレンジしないと、失敗だって成功だって、手に入んないんだよ! - コメント
セラスの力強い視線を浴びる泉。
- コメント
ハッとした後、やはりセラスはすごいな、と寂しそうな笑顔を浮かべてしまう泉。
- コメント
泉の微笑みに、言いすぎたかと、つい謝ってしまうセラス。
- セラス
ご、ごめん。
- 泉
……いや、あなたの言う通りだ。
- コメント
後ろ向きに考えてしまっていた自分に対して、ため息をつく泉。それから、つい先日のことを振り返る。
- 泉
……。 先月、小鈴さんとさやか先輩の事情に少し、
首を突っ込ませてもらってね。 - 泉
間違っていると思っても、とにかく進んでみる。
それは、大切なことだと、確かに思ったんだ。 - セラス
……だったら!
- 泉
一般的な意見で構わない。 あなたに聞きたいのだけれど……。
リベンジというのは、“燃える”ものなのかい? - セラス
それは、ぜったい、そう!
- セラス
たとえばわたしたち瑞河をプレーオフで破った蓮ノ空だって、
その前の年は決勝で全国大会優勝を、逃したんだよ。 - セラス
それから一年間。 きっと花ちゃんやみんなは悔しさをバネに、
すごくがんばってきたんだと思う! - セラス
わたしだって……。 子どもの頃、病院に入院して、
ヴァイオリニストになる夢を、叶えられなかった。 - セラス
だからこそ、スクールアイドルという夢を、
がむしゃらにがんばるって決めたんだから。 - セラス
“悔しさ”っていうのは、それだけの力が、あるんだよ!
- 泉
……そうか、わかった。
- 泉
ありがとう、セラス。
ならば私も、この機会に懸けてみるよ。 - セラス
うん! これは、わたしたちの『リベンジチャレンジ!』だね!
- 泉
ああ。
- 泉
……もちろん、瑞河の復活を望む人たちや、
たくさんの人たちの想いを叶えることも、大切だって思う。 - 泉
だが今回に限っては、
私は私の内なる叫びを叶えるために、力を尽くしたい。 - 泉
浅ましい話だけれど、ね。
- セラス
そんなことないよ、泉。
それが泉の夢なら、わたしはぜったい応援するから! - 泉
……ありがとう。
- 泉
では、ついでにひとつ、あなたに頼みがあるんだけれど。
- セラス
うん、いいよ! なんでも言って!
- 泉
これは情熱を取り戻すための、リベンジだ。
だから、どうだろう。 - 泉
この件が終わるまでは、再びあなたをお姫様扱いしても?
- セラス
えっ……。
そ、そうしたいの? 泉。 - 泉
ああ、ぜひとも。
あの頃の気持ちと決意を、ちゃんと蘇らせたいんだ。 - セラス
泉……わたしをからかってるわけじゃなさそう。
真剣、なんだね。 - 泉
想いが伝わって嬉しいよ。
- セラス
……うん、わかった。 いいよ。
- 泉
ありがとう。
- セラス
ただ……。 だからって、
わたしと泉の関係が、今年の4月の前に戻るわけじゃないからね。 - 泉
? それは、どういう意味かな?
- セラス
……なんでもない!
- 泉
ふむ……。
ともあれ、よろしく頼むよ。 - セラス
……うん。 よろしくね、泉。 わたしの騎士様。
もう一度、私の夢を叶えるために……力を貸して。 - コメント
手を差し伸べるセラス。
- コメント
その手の甲に口づけをする泉。
- 泉
もちろんだ。 今度こそ、果たしてみせる。
My Princess。 - コメント
そして自分の部屋に戻ってくる泉。
- コメント
その目には先ほどした決意とはまた違う、暗い決意がともっていた。
- 泉
……ふぅ。
- 泉
早速、計画をまとめて、海莉さんに送るとしようじゃないか。
やると決めたからには、本気で挑まなければな。 - 泉
だが……。
- 泉
それでも私の中になにも生まれるものがなければ……。
そのときは今度こそ、潮時だ。 - 泉
来月にはStarring Bloom。 そしてそれが終われば、いよいよ本番。
Bloom Garden Partyが待っている。 - 泉
セラス。 私とあなたに遺された時間は、
見かけの数字よりも遥かに少ないんだよ。 - 泉
だから、もしこの『リベンジ』が無為に終わったその時は……。
- 泉
来年、私はきっぱりと蓮ノ空を去り、あなたの手を離れよう。
それがきっと、互いのためなんだ。 - 泉
……ああ、嫌だな……。
そのためにも私は、死力を尽くすんだ……! - 泉
そうとも……! 私は、私のすべてを懸けて、掴んでみせる……。
私自身の……“情熱”を……!