第8話『今はまだ遥か幽かな光』
PART 4
- 海莉
それじゃあ、本日はお疲れさまでした!
- セラス
おつかれさま……。
- 海莉
次また長野にいらっしゃるときには、教えてくださいね!
セラス先輩には、まだまだお願いしたいことがありますので! - セラス
おー……。
- 海莉
あ、すみません、ちょっと電話が……。
失礼しますね! - 泉
ふぅ。 きょうはよくがんばったね、セラス。
- セラス
うぇーい……。
- 姫芽
わぁ、充電切れだぁ~。
- 吟子
あんなに一日中真面目にしてるセラスさん、初めて見たよ。
- セラス
他にもまだまだ撮影とか、インタビューとか、
自叙伝とか、やるみたいです……。 - 小鈴
自叙伝!?
- セラス
でも、これも瑞河のためなので……。
わたしは、瑞河を救う救国の聖女なので……。 - 吟子
撮影のマインドセットが刻み込まれてる……。
- 泉
とりあえず、私とセラスはできる限り毎日来ようとは思うけれど、
あなたたちは無理をせずにね。 - 吟子
毎日って、平日放課後に、毎日……?
- 泉
私がそのつもりだと言ったら、セラスもがんばりたいらしくてね。
- セラス
うぇ~い。
- 姫芽
ふたりとも、やる気だねぇ~。
- 吟子
だったら、私たちもできる限りは行くよ。
ちょっとでもお手伝いできるんだったら。 - 小鈴
先輩方にも、任せてって言ったもんね。
- 泉
ありがとう、みんな。
- セラス
あじゃじゃーす……。
- 海莉
うう……。
すみません、ちょっと困ったことになってしまって……。 - 泉
どうしたんだい?
- 海莉
瑞蓮祭で劇をお願いしてたサークルの方が、
都合が悪くなって出られなくなってしまって……。 - 泉
……。
- 姫芽
劇って、どんな劇をやるつもりだったの~?
- 海莉
先ほど桂城先輩が言った、瑞河の歴史が続いていることを示すための劇、
と言いますか……。 - 海莉
瑞河復活をモチーフにしたファンタジーなんですけど……。
- 小鈴
わあ、いいね!
確かにそれがあれば、歴史が続いているんだって思えそう! - 海莉
はい……。 とはいえ、スケジュールも急なので、
今から他の方に頼むのもちょっと厳しそうで……。 - 泉
……ふむ。
- 吟子
伝統が今も続いているんだ、って示すための劇だったら……。
- 姫芽
ライブとかでスケジュールを穴埋めするだけじゃ、だめだよねぇ~。
- 海莉
……あ、いえ、すみません。
別の案を考えます! - 海莉
お手伝いに集まってくださった裏方の方々には、あたしから事情を伝えて、
解散してもらうってことに……。 - 泉
だったら。
- 泉
私たちが、代わりに劇をやる、というのはどうかな。
- 海莉
えっ……!? いいんですか!?
- 泉
実際、廃校に立ち会った生徒が行う劇なら、
より強く結びつきを強調することができるだろう。 - 泉
瑞蓮祭の成功のその先を目指すなら、効果的だ。
- 吟子
そういえば泉さんって昔、劇をやってたんだよね。
- 小鈴
演劇部の方も言ってました! すごく有名人だった、と!
- 泉
まあね。
やむを得ない事情で、辞めてしまったのだけれど。 - 吟子
事情……?
- 泉
少々、軽くはないトラウマを背負うことになってね。
- 小鈴
えっ!?
- 姫芽
……大丈夫なの~?
- 泉
わからない。
- 吟子
わ、わからないって……!
- 泉
ただ、第二回瑞蓮祭に挑む私の意気込みを振り返れば、
これはちょうどいい機会のようにも、思えるんだ。 - セラス
……リベンジ!
- 泉
そうだ。
- 泉
この際だ。 悔いはすべてここで燃やし尽くそうじゃないか。
なりふり構わず、私の想いを乗せるんだ。 - 泉
そうすればきっと、生まれるものもあるだろう。
なにもしないよりは、よっぽどね。 - 泉
というわけで、どうかな。
みんなが良ければ、だけれど。 - 小鈴
泉ちゃんがそう言ってくれるなら、徒町は、やってみたい!
- 小鈴
考えてたんだ!
徒町たちで、ラブライブ!決勝大会の劇をするのは、どうかなって - 小鈴
去年の決勝大会を再現してさ。
その途中で、ライブもやる、みたいな感じで。 - 姫芽
でも、それだと瑞河負けちゃうんじゃ~?
- 小鈴
そこは、ちょっとアレンジしてさ!
- 小鈴
セラスちゃんがいかに瑞河のためにがんばってきたのか、っていうところを、
メインの話にして! - 姫芽
お~。 そこまでいったら、なんならもっともっとアレンジして、
ほんとに救国の聖女のお話作っちゃう~? ミュージカル風にして~。 - 小鈴
あ、そっちのほうがいいかも!
- 吟子
セラスさん、またお姫様役だ。
- 泉
ただセラスは瑞河でやることがたくさんあるだろうから、
その場合は……お姫様役は、小鈴さんがいいだろうね。 - 小鈴
えっ、徒町が!?
- 姫芽
いいんじゃん~?
- 吟子
まあ、小鈴以外にセラスさん役は無理だよね。
- 小鈴
う、うん、わかった! 徒町、お姫様がんばるね!
- セラス
そんな、小鈴先輩にわたしを演じてもらうだなんて……。
光栄の極み……。 - 小鈴
笑わない練習も、がんばるね!
- 吟子
あのキャラでいくんだ。
- 海莉
助かります! ありがとうございます!
- 海莉
あたし、早速あちこちに連絡してきますね!
- 海莉
本日はこれで失礼いたします! 改めて、ありがとうございましたー!
- 姫芽
でも、珍しいね、いずみんがそういうこと言い出すのって~。
- 泉
まあね。
だが、たまにはいいだろう? - 姫芽
アタシは、やる気になったいずみん、好きだし~。
- 吟子
ハスノソラファンタジーのときもすごく演技うまかったし。
心強いよね。 - 小鈴
うんうん!
手が空いたときでもいいから、なにかアドバイスとかしてほしいな! - 泉
任せておくれ。
- 泉
ただし、私は桂城 泉の名を背負っているわけだからね。
生半可なものにはできないよ。 - 吟子
うわ、急に偉そう。
- 小鈴
がんばるよ!
- 姫芽
うんうん~。 これで瑞蓮祭の成功……ううん、ストレッチゴールに、
大きく一歩近づいたね~。 - 泉
おっと……。 ということになってしまったけれど、すまないね、セラス。
本気で稽古するなら、私もしばらく長野に通うのは、難しそうだ。 - セラス
ううん。
- セラス
こっちは海莉がついてるから、大丈夫。
でも、一個貸しだからね? - 泉
もちろん。
第二回瑞蓮祭の成功に代えて、あなたに借りを返そうじゃないか。 - セラス
……ありがと、泉。
- セラス
先輩方も、ありがとうございます。
- 小鈴
え?
- セラス
いえ、改めて……。
瑞河は、わたしの大切な場所で。 - セラス
でも、蓮ノ空のみなさんが、こんなに親身になって協力してくださって。
- セラス
ここに来れなかった3年生の先輩方も、わたしたちの分まで
Starring Bloomの準備を引き受けて、がんばってくださってます。 - セラス
わたしは、なにも返せないのに……。
嬉しいです、すごく。 - 姫芽
せ~らり~ん。
- セラス
わわっ?
- 姫芽
なんだ~? 急に他人行儀になっちって~?
- 小鈴
そうだよ、セラスちゃん!
セラスちゃんは徒町たちのとってもとってもかわいい後輩なんだからね! - セラス
姫芽先輩、小鈴先輩……。
- 吟子
そういうこと。 理由がいるんだったら、『私たちは先輩だから』。
それだけで、じゅうぶん。 - 吟子
少なくとも、私を救ってくれた先輩は、そう言ってくれたから。
- 吟子
まあ、ひとつだけ、気になってることは、あるけど。
- セラス
……それは?
- 吟子
えっと……。
セラスさんたちは、もし瑞河復活の夢が叶ったら……。 - 姫芽
……せらりんといずみんは、瑞河に転校しちゃうのかな~、って?
- 小鈴
あ……。
- 泉
……。
- セラス
わたしは……。
- セラス
……いいえ。
わたしは、瑞河には戻りません。 - セラス
今はちゃんと蓮ノ空でやりたいことがあります。
- セラス
花ちゃんやみなさんと一緒に夢を追いかけて、Bloom Garden Partyを、
成功させたいって思ってますから。 - 小鈴
セラスちゃん……!
- セラス
瑞河のことは大切です。
もう一度瑞河を取り戻せるんだったら、わたしはなんだってやりたい。 - セラス
中学3年間を過ごして、たくさんの出会いがあったあの学校に……
わたしはまた、会いたいから。 - セラス
瑞河には、わたしの大切な思い出が、いっぱい詰まっています。
でも、蓮ノ空だって同じぐらい大切なんです。 - セラス
今のわたしは、蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブの、セラスですから。
- 泉
だ、そうだ。
- 吟子
うん……よかった。
あ、いや、よかったって言っていいのかわかんないけど。 - 姫芽
いいんじゃないかな~、よかった、で。
- セラス
……。
- 小鈴
泉ちゃんは!?
- 泉
私も、戻る予定はないよ。
もともとセラスとは、一年限りの付き合いのつもりだったからね。 - 泉
今さら瑞河に未練はない。
力になれなかったという悔しい想いが、残っているだけさ。 - 泉
そしてそれも、第二回瑞蓮祭を成功させることができれば、
きっと昇華するだろう。 - 姫芽
ふふふ、そっかぁ~。
- 姫芽
アタシも、いずみんとせらりんがいないスクールアイドルクラブなんて、
想像できなくなっちゃったもんな~。 - 小鈴
だね!
- セラス
……。 先輩方にそう言ってもらえて、嬉しいです。
わたしももっといい後輩になれるように、がんばります。 - 吟子
なーんかまた距離感じる。
- セラス
あっ、いや、これは……。
- 吟子
いつも通りでいいんだよ。
今は、蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブのセラス、なんでしょ。 - 吟子
……ね、セラス。
- コメント
吟子がセラスを呼び捨てにしたことで、小鈴、姫芽、わぁ、というリアクション。セラスも目を見開いて、少し溜めてからとても嬉しそうに。
- セラス
吟子……。
- 吟子
ぜったい言うと思った!
- セラス
つ、つい! いえ、嬉しくて! つい!
- 小鈴
あはは。
セラスちゃんきょう一日ずっと忙しくて、ボケる暇もなかったもんね! - 姫芽
よかったねぇせらりん~。
- セラス
先輩吟子先輩先輩吟子先先輩輩!
- 吟子
先輩が多いよ、セラス!
- セラス
どう!? 泉!
わたしは吟子先輩に呼び捨てにしてもらったよ!? - 泉
羨ましいなあ。
- セラス
まっ、泉はムリだろうね!
泉は吟子先輩の後輩じゃないから! ねっ! - 泉
いいなあ、いいなあ。
- 吟子
な、なん……?
- 泉
転入生の私も、後輩のようなものだと思わないかな?
- 吟子
いや、泉さんはなんか、こう、威厳が……。
- 泉
吟子先輩。
- 吟子
ああもうわかったってば! 泉!
- 姫芽
おお~。
- 泉
うん、しっくりくるね、吟子。
- 吟子
そ、そーですか……。
- 泉
姫芽。
- 姫芽
えへへ~。
- 泉
小鈴さん。
- 小鈴
あれ!? あれ!?
- 小鈴
なんで!? 徒町まだ仲良しじゃなかったの!?
- 泉
いや、なんというか……。
私は小鈴さんのことを、ことさら尊敬していてね。 - 泉
ひとりの人間として、敬っているんだ。
- 小鈴
えっ、嬉しいけど!? どうして!?
- 泉
吟子も姫芽ちゃんも、もっと早く、
ひとりで孤独に夢を追いかけていた時期に出会っていれば、
私のお姫様になっていたかもしれない。 - 泉
けれど、小鈴さんだけは、なんというか。
- 泉
どんなに私が手を差し伸べようとしても『それは私がやりたいことだから』
と言って、この手を振り払うような気がするんだ。 - 小鈴
えっ、わかんない!
- 姫芽
あ~。
- 吟子
まぁ、小鈴はそういうとこあるよね……。
- 小鈴
そうなの!?
- 泉
私とはなにもかも真逆でありながら、
がむしゃらに夢を追いかけてチャレンジを続けるあなたの背中に、
いつか私も追いつきたいと思っている。 - 小鈴
徒町、追われる側だった!?
- 泉
そういうわけで、その上でぜひ敬意を込めて、小鈴さんと呼ばせてほしい。
- 小鈴
心の距離は吟子ちゃんと姫芽ちゃんと同じぐらいってことでいいんだよね!?
- 泉
もちろん。
いつも仲良くしてくれて、ありがとう。 - 小鈴
こちらこそだよ! 一緒に劇チャレンジ、がんばろうね!
- 泉
ああ、悔いのないチャレンジにしよう。
- 吟子
こんな楽しそうな話持って帰ったら、花帆先輩また駄々こねそう。
- 姫芽
めっちゃ目に浮かぶ~。
- 小鈴
あはは!
- 泉
蓮ノ空は、いいところだね、本当に。
- セラス
……うん。
- 泉
それじゃあ、きょうは帰ろうか、お姫様。
疲れただろう。 寮についたら、私がマッサージをしてあげよう。 - セラス
ん……。
昔とは、逆だね。 - 泉
そうとも。
あなたが望むなら、髪を乾かしてあげてもいいよ。 - セラス
くるしゅうない。
- 吟子
泉、セラス~!
- 小鈴
早く早くー! 新幹線来ちゃうよー!
- 泉
ああ。
- セラス
今行きまーす!
- 泉
あなたも、あまり無理をするんじゃないよ、セラス。
- セラス
泉もね!
- 泉
勉強も、サボらずにね。
- セラス
うっ……! そ、それは、手伝ってください、泉先輩……!!
- 泉
ふっ、あははは。
- コメント
そうして、カメラが空にパンして、場面が切れる。