第10話『ゆえに、ルリあり。』
PART 3
- 瑠璃乃
うーん……うーん……。
- 姫芽
難しいとこありました~?
- 瑠璃乃
え? あ、ううん。
書類は全然。 - 姫芽
書類は?
- 瑠璃乃
いや、ごめん。
そうだね、ちょっと悩みというか。 - 姫芽
その悩みっていうのは、
さっきからちょこちょこスマホ見てるのと関係あります? - 瑠璃乃
う、鋭いね。
- 瑠璃乃
めぐちゃん、やっぱり忙しそうだなってさ。
- コメント
瑠璃乃のデスクにあるスマホには、慈がロケをしている動画。
- コメント
姫芽が立ち上がり、瑠璃乃の後ろからスマホを覗き込む。
- 姫芽
さっき上がってためぐちゃんの動画ですね~。
まだ見てなかったんですか~? - 瑠璃乃
繰り返し見ちゃってるというか。
- 姫芽
ふむ。 12分34秒のとこのめぐちゃんの笑顔が何度も見たくて……
というわけではなさそうですね~。 - 姫芽
新曲のことですか? 気になってるの。
- 瑠璃乃
……ま、そう。
この忙しさで、めぐちゃんがちゃんと新曲作れるかなってさ。 - 姫芽
あのバズ曲の次の曲ともなれば、みんなの期待もすごいでしょうしね~。
- 姫芽
ね、るりちゃんせんぱい。
迷ってたこと言っていいですか? - 瑠璃乃
え? うん。
- 姫芽
るりちゃんせんぱい、お昼めぐちゃんせんぱいに何言おうとしたんです?
- 瑠璃乃
……ルリが。
- 瑠璃乃
ルリが代わりに、バズる曲作ろうか、って。
- 姫芽
やっぱり。
- 瑠璃乃
やっぱりだった?
- 姫芽
やっぱりでしたね~。
今のるりちゃんせんぱいなら、そう言うんじゃないかと思ってました。 - 姫芽
むしろさっき言わなかったことが意外でしたよ。
頼まれなくても助ける、じゃなかったんです? - 瑠璃乃
ぐっ……手厳しいな。
- 瑠璃乃
流石に身の程知らずなんじゃないか、って……思っちゃったんだよね。
- 姫芽
ふむ。
- 瑠璃乃
めぐちゃんはものすごくバズって、今やたくさんの人に引っ張りだこで。
ルリじゃ、一緒に世界中を夢中にするって胸張って言えないんじゃないかって。 - 瑠璃乃
だから、強引に助けるヒーローだ、
ってなんでもかんでも首を突っ込んでいいのかなってさ。 - 瑠璃乃
姫芽も言ったみたいに、めぐちゃんの次の曲は期待もかかってる。
- 姫芽
なるほどぅ……。
- 姫芽
じゃあ、あえてきついことを言いましょう!
- 瑠璃乃
姫芽?
- 姫芽
そりゃ身の程知らずですよ! もはや世界のめぐちゃんですよ!
でもそれがなんだって話じゃないんですか! - 姫芽
助けてって言えない子のためにも頑張るヒーロー、
それがるりちゃんせんぱいなら、
今のめぐちゃんこそ助けてって言えない子じゃないですか! - 瑠璃乃
……。
- 瑠璃乃
それは、確かにその通りだけど。
- 姫芽
それに、敵が強いからって尻込みしてたら、
いつまで経っても強くなれませんよ! - 瑠璃乃
敵ってわけじゃ……や、でもそうか。
- 瑠璃乃
学生チャンピオンが言うと説得力があるね。
- 姫芽
なに言ってるんですか。
- 姫芽
アタシが学生チャンピオンなら、
るりちゃんせんぱいは自他ともに認める
蓮ノ空のお悩み解決チャンピオンですよ! - 瑠璃乃
なんだそりゃ。
- 瑠璃乃
でも、そうだね……。
- 瑠璃乃
うん。
姫芽にそう言われて、ルリも思い出したよ。 - 瑠璃乃
先月ね。
花帆ちゃんみたいに、もっと強くならなきゃって思ったんだ。 - 姫芽
かほせんぱいですか?
- 瑠璃乃
そう。
もともと、三連華になるって誓ったときに、強くなることは決意していたけど。 - 瑠璃乃
花帆ちゃんの……先月見せてくれた、強引にでも誰かの夢を叶える強さ。
- 瑠璃乃
その瞬間を見た時ね、ルリの胸も……熱くなった。
今、その理由がわかった気がする。 - 瑠璃乃
そのくらい強くなって、めぐちゃんの隣に並びたいと思ったからだ。
- 瑠璃乃
めぐちゃんも今、世界中を夢中にしかけてる。
- 瑠璃乃
そんなめぐちゃんの曲をルリが作って、
ルリがめぐちゃんのピンチを助けられたら……
ルリは、今よりさらに一歩、前に進めるかもしれない。 - 姫芽
だったらなおさらじゃないですか、るりちゃんせんぱい!
- 姫芽
強くなろうとしたからこそ、
めぐちゃんせんぱいの曲作りに立候補したのなら……
それを完成させた時こそが、るりちゃん最強伝説の始まりですよ! - 瑠璃乃
そうだね……めぐちゃんに並び立てる強さの証明にも、なる。
- 瑠璃乃
よし、わかった。
- 瑠璃乃
もしもし、めぐちゃん。
夜遅くにごめんね。 - 瑠璃乃
うん……うん。
ルリ、めぐちゃんに言いたいことがあって。 - 瑠璃乃
めぐちゃんの新曲……ルリが、作っても、いいかな。
- 瑠璃乃
忙しいけど、大丈夫。
めぐちゃんが良いって言ってくれるなら。 - 瑠璃乃
うん、うん。 ……えっ、いいよそんなお礼なんて。
これはルリがやりたいことなんだ。 - 瑠璃乃
うん、そうだよ。
- 瑠璃乃
ルリの作った曲で、めぐちゃんが世界中を夢中にできるようにする。
一緒に、世界中を夢中にしよう。 - 瑠璃乃&姫芽
で、バズ曲ってなんだ??????
- 瑠璃乃
まずい、何もわからない。
どうやればバズ曲になるんだ???? - 姫芽
バズるためのコツ……攻略法、グリッチ、レシピ……
いやそんなものあったら……。 - 姫芽
るりちゃんせんぱい、
アタシ大変なことに気づいてしまったかもしれません。 - 瑠璃乃
え、なになに。
- 姫芽
バズ曲とは、バズったからバズ曲なのであって、
最初からそれを作ることは無理寄りの無理なのでは……? - 瑠璃乃
はっ……!
- 瑠璃乃
そもそも、因果関係が、逆……!
バズはみんながその曲を何度も聴いて、みんなに広めるからできること……! - 姫芽
そうですそうです、
コツなんてあったら今頃世の中はバズ曲溢れかえり時代ですよ~! - 瑠璃乃
ということは、まずいじゃん!
参考になるものが何も無い! - 姫芽
ひとつだけありますよ……!
- 瑠璃乃
そうか、めぐちゃんのバズ曲……!
- 姫芽
はい、これを参考にしましょう!!
- 瑠璃乃&姫芽
で、バズ曲ってなんだ??????
- 瑠璃乃
ダメだ、結局めぐちゃんの曲を聴いても何もわからない!
- 姫芽
ただひたすらいい曲だってことしかわからない……。
- 姫芽
今までのめぐちゃんの積み重ねを感じる、
めぐちゃんの良さが全部詰まったような
本当に神曲と言わざるを得ませんよね……。 - 瑠璃乃
こ、これまでとの明確な違いとかは……!
- 姫芽
う~ん……。
むずかしいです~。 - 姫芽
もういっそのこと、コツをめぐちゃんせんぱいに聞くほうが早いのか……?
いやでも……。 - 瑠璃乃
そうだね、ダメダメ。
めぐちゃんを助けるんだから。 - 瑠璃乃
それに……そもそも、
めぐちゃんもわかってたら自分でもう作ってるだろうし。 - 姫芽
そりゃそうだ!
- 瑠璃乃
えーい、もうわかった!
とりあえずルリたちもルリたちの集大成を作ってみよう!! - 姫芽
なるほど! ならうより慣れろ!
何事も実戦を繰り返すのみ!!! - さやか
なるほど……なるほど?
それで慈先輩のピンチを解消するために作ったのが……。 - 瑠璃乃
どうだった、BANG YOU全方位みらくりファンファーWAWOミルクBLAST!!
- さやか
ええっと……。
- 姫芽
これまでの集大成!!
- さやか
集大成ってこういうものでしたっけ!?
メドレーですらないごちゃまぜでしたけど!! - 小鈴
徒町、怖かったです。
- 瑠璃乃
え、なんで!?
- 小鈴
全方位キュン♡が途中でミルクに変わったら誰だって怖いと思います!!
- 小鈴
急にテンション変わるんだもん!
- 姫芽
だいたいなんでもすごいすごいって喜んでくれる小鈴ちゃんでもこの反応かー。
- 小鈴
徒町のことなんだと思ってんだ!?
- 小鈴
なんでもいーよいーよいい感じーって言うのは瑠璃乃先輩の方じゃ……?
- 瑠璃乃
ルリのことなんだと思ってんだ!?
- さやか
とにかくですよ、おふたりとも。
- さやか
バズ曲を作りたいという意気込みは理解しますが、
少なくともこういうのではないと思います。 - さやか
慈先輩の曲だって、ドドみらくりやっぱジャンボリーIIではないわけで。
- 瑠璃乃
ぐっ、そう言われるとそうだ。
- 姫芽
アタシはちょっと聴きたいですけど……。
- 小鈴
絶対ろくなことにならない気がします!
- 姫芽
とはいえとっかかりもないしなあ。
- 姫芽
初心者がひたすらランクマやるのと同じように、
またゼロから曲を量産していくしか。 - セラス
お困りのようですね、先輩方!
- セラス
レッスンルームからうなされてる時の夢みたいなサウンドが
聞こえてきてましたよ! - 瑠璃乃
そこまで言わなくてもよくない!?
- セラス
え、あ、ごめんなさい……良いものだと思ってたんですか……?
- 瑠璃乃
その言葉もフォローになってないし!
- 泉
まあまあ。
セラスも私も、迷走の手助けができればと思ってきたんだよ。 - 姫芽
いずみ~ん! 助けてほしいのは事実~!
- 泉
よしよし。 なら来た甲斐はあったね。
良かったじゃないか、セラス。 - セラス
そ、そうだね……そう、ですよね?
- 瑠璃乃
いや、うん、迷走に気づかなかったのはそうだね。
ごめんね、びっくりさせて。 - 小鈴
わかるよ、わかる……。
うなされてる時の夢みたいだった……。 - セラス
小鈴せんぱあい……。
- 泉
それで? 姫芽ちゃん?
- 姫芽
どうにかしてバズ曲を作りたい!
- 泉
ふむ。
バズ曲か。 狙って作れるものではないとも思うんだけどね。 - 泉
……面白そうだ。
- 泉
どうだろうか、瑠璃乃先輩。
私たちも作ってみてもいいだろうか。 - 瑠璃乃
えっ、良いの?
- 泉
ああ、瑠璃乃先輩が構わなければ。
慈先輩のため、なんだろう? - 泉
だとしたら、私たちが手を貸すことが、
瑠璃乃先輩にとって歓迎しない事態ということもあり得るかなと。 - 瑠璃乃
あはは、お気遣いありがとう。
- 瑠璃乃
でもそうだなあ、今は猫の手も借りたい気持ちだから……
じゃあ、お願いできるかな。 - セラス
任せるにゃん。
- 姫芽
猫がここにも。
- さやか
だとしたら……わたしも参戦しますか。
- 瑠璃乃
え、さやかちゃんまで?
- さやか
瑠璃乃さんが問題ないというのであれば……
わたしたちも慈先輩を助ける力になりたいですしね。 - さやか
それに、楽曲制作の腕を試す機会かもしれません。
- 泉
ふふ、じゃあ勝負と行こうか。
- さやか
面白いことを言いますね、泉さん。
- 小鈴
よーっし、じゃあここにバズ曲選手権を宣言します!!
- 瑠璃乃
なんか宣言された!?