第2話『ダメダメ⇒世界一!?』
PART 4
花帆 | きょうのライブも、すっごく楽しかったー! |
梢 | お疲れ様、日野下さん。 |
花帆 | センパイこそ、お疲れ様です! |
花帆 | 毎日毎日付き合ってくださって、 ありがとうございます! |
梢 | いいのよ。 私もライブが好きだから。 |
花帆 | えへへ。スクールアイドルって、楽しいですね! ライブをして、そのライブをスクコネで配信して……。 |
花帆 | どんどん応援してくれる人が増えていって、 いっぱいいっぱい笑顔が花咲いていって……。 |
花帆 | もう無敵な感じですよね!これ! |
花帆 | 一週間と言わず、このまま一ヶ月…… いや、三年間毎日ライブをするっていうのも……!? |
梢 | さ、さすがにそれはどうなのかしら……。 |
花帆 | そういえば、さやかちゃんから聞いたんですけど、 蓮ノ空のスクールアイドルクラブって変わっていますよね。 |
花帆 | 部内でユニットに分かれているだなんて。 |
梢 | ああ、そうね。 |
梢 | 蓮ノ空は、芸術においての名門校で、 スクールアイドルという言葉が生まれる前のこのクラブは、 もともと芸楽部という名前で活動していたの。 12 |
梢 | 由緒正しい伝統ある部なのよ。 |
花帆 | そうなんですか!? それもぜんぜん知りませんでした……! |
花帆 | あのー……。部内でユニットに分かれるってことは、 あたしと梢センパイが同じユニット、ってことなんですよね? |
梢 | そうね、今のままだと、そうなるわ。 もしあなたに他に組みたい人がいなければ、だけれど。 |
花帆 | いえ、あたしは梢センパイとがいいです! |
花帆 | あたしにスクールアイドルの魅力を教えてくれたのは、 梢センパイなんですから! |
花帆 | た、確かに綴理センパイも、 すっごく美人な方ですけど……。 |
花帆 | でも、あたしが綴理センパイと組んじゃったら、 さやかちゃんに怒られちゃいますよ! |
梢 | ふふ。それは、そうかもしれないわね。 あっちは村野さんがご執心みたいだから。 |
花帆 | わわっ、もしかして梢センパイこそ、 あたしと組みたくないですか……!? |
梢 | そんなはずないでしょう。 だいたい、あなたを誘ったのは、私なのよ? |
花帆 | あれ!?そうでしたっけ!? |
花帆 | あたしが梢センパイに スクールアイドルやりたいって言ったような……? |
梢 | あ、それは……。ま、マネージャーに、 そう、マネージャーに誘ったのは私、ってことよ。 |
梢 | ……スクールアイドルにも、 本当は誘いたかったのだけれど……。 |
花帆 | 梢センパイ? |
梢 | ううん、なんでもないわ。 |
梢 | 私はね、スクールアイドルが大好きなの。 幼い頃から、何度もスクールアイドルのライブを見て、胸を弾ませたわ。 |
梢 | 自分の体ひとつで見てくれる人を魅了する。 |
梢 | その姿が、とても麗しく焼きついて、 こんな芸術もあるんだ、って感動したの。 |
梢 | 最初にあなたを誘ったきっかけは、 あなたがこの学校でなにか楽しいことが見つけられればいいという、 お節介だったのかもしれないけれど。 |
梢 | 今はね、あなたを見ているとあの頃の私を思い出すの。 ただ純粋にスクールアイドルに憧れていた、情熱的な気持ちを。 |
花帆 | ええっと。それって、今は違うんですか? |
梢 | 今は……。 |
梢 | 憧れているものに、自分もなろうと思ってしまったら……。 楽しいだけじゃないことも、いっぱいあって。 |
梢 | で、でもね。 その過程だって、私はちゃんと楽しんでいるつもりだから。 |
梢 | 大変なことも多いけれど、自分の上達を感じられるのは、嬉しいことだわ。 |
花帆 | 上達、ですか。 |
梢 | ええ。でもいいの。これは私のやり方。 あなたにはきっと、あなただけのやり方があるわ。 9 |
梢 | あと少しで一週間のライブも終わりね。 その後のことは、またその後に考えましょう。 |
花帆 | わかりました! その後の中庭の予約は、その後に取りますね! |
梢 | 本当に三年間毎日ライブをするつもりじゃないわよね? ……そうよね? |
花帆 | なんだかあたし、 少しずつ蓮ノ空のいいところがわかってきた気がする……! |
さやか | ええっ、あんなに蓮ノ空を嫌がっていた花帆さんが!? |
花帆 | まず一個!ごはんがおいしい! |
さやか | 確かに、それはありますね。 朝夜と寮でのごはんが楽しめますし。 |
花帆 | そうだね。 山の幸も海の幸も、とにかく食べ物がおいしくて。 |
花帆 | ナスそうめんっていうのがおかずとして出てきたときは びっくりしたけど……。 |
さやか | そうですね。 |
さやか | わたしもナスそうめんが全国でポピュラーな食べ物ではないと聞いて、 びっくりしました。 |
花帆 | 他にもあります! 学校が近いから、ギリギリまで寝坊できる! |
さやか | それは蓮ノ空というよりは、 寮生活の利点なのでは……。 |
花帆 | 他にもええと、 寮母さんがそこまでは怖くない……。 |
花帆 | 消灯時間まではスマホを使っても怒られない……。 Wi-Fiも繋がる……。お風呂掃除しなくていい……。 |
花帆 | とかなんかそんな感じ! ね、さやかちゃんはスクールアイドルコネクト、どう? |
さやか | あ、配信していますよ。 といっても、わたしは引き続き、練習風景だけですけど……。 |
花帆 | あ、そうなんだ? |
花帆 | ほんとだ。毎日欠かさずアップしてる!すごい! |
さやか | ちょ、ちょっと! なんでここでわたしの配信見ようとするんですか! |
花帆 | え、だめ!? |
さやか | うっ。うううう……。人に見られるのも練習のうち……。 だめ、では、ない、です、けど…………! |
花帆 | えっ、あれ!? |
花帆 | いつのまにかさやかちゃんのチャンネル、 登録者数がすごいことになってる! |
花帆 | みんなに今年注目の新人って言われてるよ!? |
花帆 | さやかちゃん、 実はあたしに隠れてライブしてた……!? |
さやか | し、していません!練習だけです! |
さやか | というか……注目を浴びているのは、わたし自身の力ではなく……。 夕霧先輩とユニットを組んだ後輩だから、だと思いますし……。 |
花帆 | さやかちゃんって、……もしかして…… なんか、ダンス、すごい……? |
さやか | えっ?そ、そうですか? |
花帆 | うん……。なんか、すごくキレがあるっていうか。 手も足もピンと伸びてて、きれいな感じ、する……。 |
花帆 | さやかちゃん、すごい……。 |
さやか | それは、その、わたしはフィギュアをやっているので、 ゼロからのスタートというわけじゃありませんから。 |
さやか | でも、わたしぐらいの一年生なら、 他にもいくらでもいますし……。 |
花帆 | ……。 あたし、他の人のチャンネルってあんまり見たことなかったかも。 |
さやか | いろいろと勉強になりますよ。 |
さやか | あの、花帆さん? どうしたんですか、急に立ち上がって。 |
さやか | あっ、もう消灯時間ですね。 お部屋に戻らないと。 |
花帆 | ……うん。 |
さやか | ええと……。 おやすみなさい、花帆さん。 |
花帆 | うん……おやすみ。 |
さやか | ……花帆さん? |
花帆 | ……さやかちゃん、ほんとすごい。 |
花帆 | で、でも、あたしだって……。 |
花帆 | ……ごくり。 |
花帆 | ……だ。 |
花帆 | …………だ。 |
花帆 | ダメダメだぁ~~~~~~~~~~~~~~!!!!!! |
花帆 | えっ!?なにこれ!さやかちゃんとぜんぜん違う! 隣で踊る梢センパイと、ぜんぜん合ってないし! |
花帆 | 知らなかった、あたし……こんなダメだったなんて……。 |
花帆 | あたし、こんな、あたし、こんな……ハッ。 |
ふたば | ライブって、見れないの? |
みのり | 見たい見たい。 |
花帆 | あ、それじゃあ、 スクールアイドルコネクトっていうアプリがあって──。 |
花帆 | うわあああああああああああああああ~~~~~~~!!!!!!!! |