ふぅ……いいお湯だったわ。

ごめんなさい、先にお風呂いただいてしまって。
……あら？

そちら蓮ノ空さん、ですか？ あ、さんは要らないですか。
そうです、こちら夕霧綴理です。

雨すごいので家です。 こず……乙宗梢もいます。

もしかして……綴理がちゃんと学校に電話してる……？

はい。 わかりました。 明日の朝……朝何時ですか。
八時に、学校で。 はい。

では……ばいばい。

ばいばい……！！！

あれ、こず。 もう出たの？

ええ、ありがとう。 おかげで温まったわ。
でも、私があとで全然良かったのよ？

んーん。 ボクはやることがあったから。

今の？

うん。 寮に電話しなきゃダメなんだ。 知ってた？

もちろん知ってはいるけれど……私の分まで、綴理が。

ボク、頑張るようになったよね。

そう、ね。 本当に。

あの頃、こずに何も言えなかったから。

それは、どういうーー。

ボクもね、“先輩”になったんだー。

そう。 そうね。
私たち、“センパイ”になったものね。

ほら、あなたに風邪を引かれたら寝覚めが悪いわ。
はやく入って。

え……ボク、友だちと一緒に家のお風呂に入るのが夢だったんだけど。

だったら先に入らせないの！

失敗したー。

まったく。
……ふふっ。

ありがとう、花帆さん。
……あなたの作戦は、本当に正しかったわ。

でも……。

また……こういうことが起きるなんてね。

先輩たちは大丈夫でしょうか……。

あ、連絡来た！

乙宗先輩はなんと！？

あ、うん待ってね。 待ってーー。

待って……待ってって！
心配なのは分かるけど！

『綴理の家に泊まることになりました。』

ほっ……。

とりあえず、良かったねえー。

この雨の中、無理矢理帰ってこようとするんじゃないかって思いました……。

えー、こんな遠くまでー？
ないない……ないよね？

あ、はは……でもほら、梢センパイもついてるからね！

それは確かにそうですが……。
と、ごめんなさい。

別にいいよぉ。 妹たちもたまにやるしね。

い、いえ。 花帆さんに甘えてばかりでは居られませんから。

え、ばかりなんてことあったかな。
むしろあたしの方が……。

四人でやることも、先輩がたに一緒に行動してもらうことも、
花帆さんの提案ですから。

そんなこといったら、
この出店のお手伝いはさやかちゃんが考えてくれたでしょ？

それはれいかさんに偶然会えたからですし……それに。

うまく行ったんでしょうか。 この雨で……。

あ、雨だからって失敗したとは限らないし！
むしろ、綴理センパイの家にお泊りならもっと仲良くなれるはずだよ！
ね！

分かりました。 わたしもそう信じます。
わたしたちは、わたしたちでやることがありますからね。

うん、センパイたちのためにできることをしよう。

はい。

四人で頑張るんだ！ 四人で！

はい！

今はセンパイたちのこと心配しなくてもへーきへーき！

はい……はい？

頑張るぞー、えいえい、おー……さやかちゃん？

……思えば、昨日も一昨日も起こしてません。

さやかちゃん！？

ご飯も作っていませんし、登下校をサポートしてもいません。
わたしが居なくても大丈夫なんてこと、あり得るんでしょうか。

あれ？ 心配をしない、というのは正しいこと？
それとも養育義務の放棄？ たとえこの雨の中でも、
綴理先輩のもとへ向かうのがわたしのやるべきことなのでは？？？

さやかちゃん！？ ちょっと、落ち着いてさやかちゃん！

さやかちゃーん！！

ねた？

……確認してどうするの。 もう四度目よ。

ねたかなって。

寝たわ。

ねている人はねていると言わない……！

どうしろっていうの。

言いたいことが、あるんだけど。

……。

口にしようとするとほっぺが誰かに引っ張られたみたいになる。
さっきから何度も。

今日は楽しかったね。

……。

あれ、ねた？

あなたが言いたいことがあるって言っているのに、
寝られるはずないでしょう。

はあ。 そうね、楽しかったわ。

ん。 えっと。

……ボクも頑張るから。

……綴理？

……これは、こずが頑張るのがよくないっていうんじゃなくて。
こずが嫌な気持ちになったら困るから、言わなかったけど、えっと。

ボクも頑張るから。 こずにばっかり、任せないで。

……なにか、私が無理をしているように見えた？

んーん。 だから、違うんだ。
ただボクがこずを支えてあげたい……支えてあげられるよ、って言いたかった。

……そう。

わっ……。

……こず、寝相悪いな。

寝相なわけないでしょ。

……言えて良かった。

今の、話？

ん。 ずっと言えなかったから。
だから、言えてよかった。

…………。

……そう。 私も、聞けて良かったわ。

……ねえ、こず。
なにか、隠してることとかない？

……どうしてそんなことを聞くの？

こずは、あんまり自分が思ってることとか、言ってくれないから。
ボクから言ってあげないと。

……。

でも。

……最近、ラブライブ！の話とか、しなくなったから。

……。

そうかしら。 ……そうかも。

じゃあーー。

ほかにもやることが多かったから。
それを綴理が支えてくれるなら、嬉しいわ。

……そう？

頼りにしているわ、綴理。

ん。

……。