第11話『スクールアイドルクラブのために!(?)』
PART 1
えな | あ、藤島先輩だ! |
慈 | んー? |
びわこ | わわ! こないだのライブ、すごく素敵でした! |
慈 | あはは、ありがと♪ |
しいな | これから練習ですか? がんばってくださいね! |
慈 | うん、まっかせて♪ 今月のライブも、いっぱい盛り上げちゃうから♪ |
慈 | んー……やっぱり、こうでなくっちゃ。 私ってば、かわいくて、かっこよくて、ほんと完璧☆ |
慈 | ……スクールアイドルに復帰できて、ほんとによかった。 ……嬉しいな。 |
慈 | た・だ・し、ここで満足してちゃ意味ないからね。 もっともっと、がんばらなくっちゃ! |
慈 | そのためにも! ふっふっふ……。 この話をしたら、みんな驚くだろうな~。 |
慈 | おはよー! みんな! |
慈 | あれ? 梢だけ? |
梢がホワイトボードになにかを書いている。(きょうの打ち合わせのトピックなど) | |
梢 | おはよう、慈。 |
ちょこんと椅子に座る慈。 | |
慈 | あ、それもしかして今度のライブの? |
梢 | ええ。 せっかく3ユニット揃ったことだし、 そろそろ大きなライブを開きたいって思ってて。 |
梢 | 市内の会場を貸してもらえることになったの。 |
慈 | おおー、いいね! |
梢 | またみんなで特訓しなくっちゃね。 |
真剣にホワイトボードを見つめる梢。その横顔を見つめながら、慈がぽつりとつぶやく。 | |
慈 | やっぱり、梢が部長でよかったんだろうな。 |
梢 | え? |
おどけた口調で言う慈に、梢が微笑む。 | |
慈 | なんかそういうの、自然にできちゃうじゃん。 私はムリだなーって。 キャラじゃないし。 |
梢 | 私みたいな部長にはなれなくても、慈はいい部長になれていたと思うわ。 お互い、立場が違えばきっとね。 |
自分から言い出したたのに、反撃されて照れる慈。露骨に話題を変える。 | |
慈 | ……。 い、いいんだよ別に、そんなもしもの話は! それよりみんなまだかなー! 遅くないかー? |
綴理の手を引っ張って入ってくるさやか。ふたり一緒に入室してくる。 | |
さやか | す、すみません、遅れてしまいました! |
綴理 | あ、おはよう。 |
梢 | おはよう。 きょうはどうしたの? |
さやか | いえ、それが……。 |
綴理 | いい雲があって。 |
梢 | ……さやかさんも? |
さやか | 天気も良くポカポカしていたので、一緒にベンチに座っていたら、つい……。 あ、でもすごくふわふわしてそうで! |
綴理 | あれはマシュマロより柔らかかった。 |
さやか | ですよね、絶対! |
梢 | そう……。 |
慈 | ちょっとキミたち……。 |
花帆 | ごめんなさい! 遅れました! |
梢 | 花帆さんも、雲を見ていたの? |
花帆 | へ? 雲? それより、きょうは新刊が購買部に入荷した日だったんですよ! |
花帆 | 帰ったら読もうって思っていたのに、 気が付いたら読み終わっちゃってました! |
花帆 | 今回もすっっごく面白くて! |
梢 | そう……。 よかったわね。 |
慈 | ちょ、ちょっと練習前にそんなーー。 |
さやか | あの、あと瑠璃乃さんが……。 |
慈 | るりちゃんが? |
さやか | 充電が切れたので、練習は『いつかいく』と……。 |
梢 | …………そう。 |
慈 | 私が連れてきてやるからーー!! |
慈 | まったくもう! まったく! |
瑠璃乃を引っ張ってきて戻ってきた慈がホワイトボードの前に立つ。 | |
瑠璃乃 | みゅー……。 めぐちゃんは、心配性なんだからにゃあ。 |
慈 | 甘いよみんな、甘い、甘すぎる……。 夏休みボケか!? ひがし茶屋街の棒茶スイーツより甘い! |
綴理 | ボクは好きだよ。 |
さやか | あ、わたしも……。 実はスケートの練習帰りに、時々こっそりと。 |
花帆 | ええっ、いいなー! 梢センパイ、あたしたちも今度、一緒にーー。 |
慈 | ええい! スイーツの話を膨らませるな! |
慈 | 3ユニットになったんだから、 今はしっかりと地固めする時期だよ!? |
慈 | 完璧なダンス、歌、パフォーマンスを見せつけて、 ちゃんとひとりひとり応援してくれる人の心をぐっと掴むべき! |
瑠璃乃 | 大丈夫だよ、めぐちゃん。 めぐちゃんには、ルリがいるよ。 |
慈 | うん……。 じゃなくて! |
慈 | くっ……。 だめだこいつら、私が空気を引き締めてやらないと……。 |
慈 | ……でも、このメンバーで、今までやってきたんだよね。 |
慈 | 部長の梢だっているわけだし、 途中からやってきた私がアレコレ言うのも……。 |
梢 | 慈の言う通りよ、みんな。 |
慈 | 梢。 |
梢 | 各々、気を緩めず、しっかりと自分を律するように。 特に、花帆さん。 |
花帆 | えっ、は、はい。 |
慈 | 言ってやれ、言ってやれ! |
梢 | その、遅れるときはなるべく連絡するようにね。 なにかあったのかしらって、心配してしまうから。 |
花帆 | わっ、わかりました! |
慈 | ってちょっと梢!? それだけ!? |
梢 | え? |
慈 | 他にもっとこう、なにか! |
梢 | でも花帆さんは、入ったばかりの頃とは違って、 今はちゃんと朝練もがんばっているし……。 |
梢 | たまに気晴らしするぐらいは。 |
花帆 | センパイ……っ! |
梢 | ほどほどにするのよ。 今度やったら叱りますからね。 |
花帆 | はーい! |
慈 | 梢まで目尻下げて、孫が遊びに来たおばあちゃんみたいに なっちゃってる……。 やっぱり、私が言わなくっちゃ! |
立ち上がった慈が、バンとホワイトボードを叩く。(叩かない) | |
慈 | ああもう、キミたち! こうなったらーー。 ーー温泉旅館に、お手伝いに行くよ! |
花帆&さやか&梢&綴理&瑠璃乃 | 『温泉旅館』? |
慈がホワイトボードの前に立って、全員に説明。 | |
慈 | 実はこないだ、メッセージもらったんだ。 |
瑠璃乃 | 『拝啓 蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ様 よろしければ、当旅館の広報活動をお手伝いしてもらえませんか?』 だって。 |
さやか | 今までも商店街や屋台は手伝ったことがありますけれど……。 この規模のものは、いいんですか? |
梢 | もちろん学校側に確認する必要はあるけれど。 |
梢 | スクールアイドルクラブの前身である芸楽部は、 地域の活性化や町おこし、奉仕活動に重きを置いていたから。 |
梢 | 基本的に問題はないはずね。 |
慈 | しかも二泊三日で、ミニライブまでやらせてもらえるんだよ。 |
花帆 | 市内でのライブの前に、またライブができるんですか!? |
慈 | そーゆーこと!というわけで、近々、温泉旅館のお手伝いね! もう了承の返事は送っておいたから。 |
梢 | そんな勝手に……。 |
さやか | しかもこれ、市内ライブの前日ですね……。 |
瑠璃乃 | さっすがめぐちゃん! 自己チューギリギリ3ミリ手前! |
慈 | そう! ん? まあ、そう! |
慈 | ステージの経験を積んで、 来てくれた人に最高のライブをお届けできるようにがんばるんだよ! |
梢 | ……わかりました。 スケジュールを入れておきましょう。 |
慈はそこで顔をそらして、ひとり怪しい笑みを浮かべる。 | |
慈 | ふっふっふ。 かかった……! ここで仲良しこよしクラブは卒業……! |
慈 | 全員に競争心を思い出させてやるんだから……この私が……! |