第11話『スクールアイドルクラブのために!(?)』
PART 3
着物を着た慈が玄関でフロントでお出迎えのご挨拶。 | |
瑠璃乃はその隣で見よう見まね。主にカメラに映るのは、慈。 | |
慈 | ようこそお越しくださいました! 長旅でお疲れでしょう! |
お客様をご案内する慈。 | |
お部屋に案内しながら、よどみなく旅館の説明をする。 | |
慈 | 当館は、シーンに合わせた多種多様な いやしの空間をご用意しております。 |
慈 | 疲れを癒やすとともに、加賀百万石として栄えた金沢のおもてなしを、 たっぷりと感じていただけたら! |
お部屋に案内して、お客さんと別れる。 | |
慈 | さらにこちらの温泉は、一泊三湯十八ゆめぐり。 趣異なる三つの大浴場もございますので。 |
慈 | それでは、どうぞごゆっくりお楽しみくださいませ☆ |
ドアを閉めて、振り返る慈。どや顔。 | |
慈 | ……ってもんだよ! どうかな! |
瑠璃乃 | すーー。 |
瑠璃乃 | すごーい! めぐちゃんすごい! なんか知らない言葉いっぱい話してた! |
慈 | ま・ね! ぜったい勝つつもりだったから! |
慈 | パンフレットとかホームぺージとか見て、ずーっと暗記してたんだ! 授業中とか! |
瑠璃乃 | すごいすごい! |
瑠璃乃がそんな慈を褒め称えてくれる。 | |
瑠璃乃 | やる気がすごい! 手段の選ばなさもすげーや! |
慈 | ふふふっ、泉質はね、ナトリウムやカルシウムを豊富に含み、 疲労回復にすっごい効果があるんだってよ。 |
瑠璃乃 | へええー。 ねーねー、それでどうして疲れに効くの? |
慈 | それは……。 目に見えない元素がなにかするんだとおもう。 肌から、こう、びびびって……。 |
瑠璃乃 | 元素が。 |
慈 | いいんだよ! 突っ込まれたら適当に言うから! |
瑠璃乃 | そっか! よくわかってないことも堂々と語れるめぐちゃん、かっけー! |
慈 | ほらほら、どんどんこの調子でいくよ! 早くしないと忘れちゃうんだから! |
慈 | ええと、ナトリウムとカルシウムを豊富に含んだ 創作会席料理を召し上がれ! |
瑠璃乃 | めぐちゃん、それただのメチャメチャしょっぱい煮干しだよ! |
厨房に向かう慈。勝利を確信している慈は、調子に乗り度MAX。 | |
慈 | さぁて、私たちは100点満点の接客をしちゃったわけだけど……。 |
慈 | どれどれ。 綴理たちの様子は、っと……。 |
厨房を覗き込む慈。カメラがさやかと綴理に切り替わる。 | |
固唾を呑むさやか。 | |
さやか | ……わ、わたしの料理は、どうですか? |
さやか | ……。 |
さやか | ! ……ちゃんとこの旅館の味になっている、ですか!? |
板長に褒められて、顔を輝かせるさやか。 | |
さやか | ありがとうございます! 板長! これも、ご指導ご鞭撻のおかげです! |
綴理 | すごいよ、さや。 ボクも信じたかいがあった。 |
さやか | はい! 一生懸命、がんばりました! |
綴理 | ところで、ボクも盛り付けやってみたんだけど、どうかな? |
さやか | えっ? なんですかこの、独創的で創造的な……宇宙……!? |
さやか | それでいて、お皿の上に金沢という土地の魂を表現している……!? |
綴理 | うん。 なんかいっぱい褒めてもらえた。 |
綴理 | この調子で、あと40皿お願いだって。 お互いがんばろうね。 |
目をぐるぐるにして叫ぶさやかと、普段通りマイペースな綴理。 | |
さやか | え、ええ……! |
さやか | わ、わかりました! 旅館のため、そして優勝のためにがんばりましょう! |
そのやり取りを物陰から見守っていた瑠璃乃と慈。瑠璃乃が慈の様子を窺いながら、声をかける。 | |
瑠璃乃 | なんか……いい感じっぽい! |
慈は悔しそう。 | |
慈 | ぐぬぬ……綴理め……。 いつもいつも、予想外のことばっかりして……! |
慈 | るりちゃん! 次いくよ! 次! 今度こそ、高笑いしてやろ! |
瑠璃乃 | ら、らじゃー! |
空き部屋で梢と花帆を捕まえる、慈と瑠璃乃。 | |
唖然とする慈の前で、梢は照れながらも自分たちの成果を誇る。 | |
慈 | え゛っ……!? |
唖然とする慈に、梢は部屋の中を見せながら。 | |
梢 | ええ、だから、お部屋に彩りがほしいと言われたから。 |
梢 | 掃除を手伝っている最中にね、思い切って提案してみたの。 |
花帆 | 各部屋に、テーマとなるお花を飾ってみたらどうでしょう、って! |
人の役に立てて誇らしげな梢と、どや顔の花帆。 | |
花帆 | 梢センパイがメインカラーと差し色の配分を決めてくれて、 あたしがお花を選んだんですよー! |
梢 | 普段から、衣装やステージのことばかり考えているのが役に立ったかしらね。 旅館の方にも、お客様にも、あんなに喜んでもらえるなんて思わなかったわ。 |
ニコニコする梢に、花帆もデレデレ。 | |
花帆 | あたしも、好きなことがこんな形で活きるなんて、びっくりです! 必死になるって、大事なんですね! |
梢 | 確かに、勝負でもなければ、 私も自分から言い出したりはしなかったかもしれないわ。 |
花帆 | これで、国産牛はあたしたちのもの…… ですね! |
梢 | そうね。 ふふふ。 |
花帆 | えへへ! |
瑠璃乃 | ……め、めぐちゃん! |
慈はぐぬぬぬと悔しそうに拳を握りしめていた。 | |
慈 | ……く~~~! |
受付に戻る瑠璃乃と慈。 | |
慈が頭を抱えている。 | |
瑠璃乃 | どうしよ、めぐちゃん! 2ユニットともめちゃめちゃポイント稼いでるよ! |
慈 | 綴理たちも、梢たちも、活躍しすぎだよ……! |
慈 | がんばらせるつもりが、ここまでがんばるとは! |
慈、瑠璃乃の言葉を聞かずに独り言。 | |
瑠璃乃 | がんばらせるつもりだった? |
慈 | 『え~ん、慈さまには勝てません~! なんでも言うこと聞きます~!』 ってなるはずだったのに…… |
慈 | このままじゃ、ぜんぜんムリじゃん! |
瑠璃乃 | もしも~し。 |
がばっと瑠璃乃に向き直る慈。その目は燃えている。(というかコミカルに血走っている) | |
慈 | るりちゃん! |
瑠璃乃 | わひゃ! |
慈 | 今から、もっともっと本気出して……圧倒的な勝利を収めるんだよ! 私たちが無敵ってところ、見せてやろ! |
瑠璃乃 | う、うん。 |
はたと立ち止まる慈。機能停止した慈を心配そうに、瑠璃乃が問いかける。 | |
慈 | ほんきで……! ほんき……で。 |
瑠璃乃 | ……めぐちゃん? |
慈 | やばい。 ショックで覚えてた内容ぜんぶ忘れた。 |
瑠璃乃 | えっ!?!?!? |
そこで入店してきたお客さんに、笑顔を向ける慈。 | |
慈 | お客さん、へいいらっしゃい! 何名様で! |
瑠璃乃 | めぐちゃん、それじゃお寿司屋さんだよ!! |