第14話『Link!Like!』
PART 4
さやか | 『ネット禁止令』についての情報をまとめますね。 |
さやか | 正確には、1か月間の通信データ制限です。 動画を見たりゲームを遊ぶと、すぐにネットが使えなくなってしまいます。 |
さやか | 代わりに、家族とのメッセージや連絡のやり取りに限っては行っても大丈夫、 ということらしいですね。 |
さやか | スマホが没収されなかったのも、そのためでしょう。 |
さやか | しっかりと寮のWi-Fiは撤去されていたので、授業を除いて、 学内で個人が自由にネットを使える場所はありません……。 |
花帆 | あの……。 ちなみに通信データ制限って、どれぐらいなんですか? スクコネだと……。 |
綴理 | たぶん、アプリを立ち上げることもできないと思う。 |
花帆 | そ、そんなぁ……。 |
慈 | なんなの! もう! ネット禁止は、来年度からって話じゃなかったの!? むかつくー! |
慈 | いくよ! 綴理! |
綴理 | わかった。 |
梢 | ま、待って。 どこに行くつもり? |
慈 | 決まってるでしょ! 校長室だよ! 殴り込みだよ! ねえ綴理! |
綴理 | うん、手袋叩きつけてくる。 |
さやか | そんな、綴理先輩まで……! |
瑠璃乃 | ごめんね、さやかちゃん。 ルリもめぐちゃんに同意だよ。 |
瑠璃乃 | こんなの酷いって思う。 だから、突撃だ……! |
梢 | やめなさい、3人とも! ここで騒動を起こしたら、 それこそスクールアイドルクラブが廃部になるわよ。 |
慈 | だって! ネットが使えなかったら、配信ライブなんてできないじゃん! |
沙知 | ごめん、遅れちゃって。 いやー……参ったね。 まさか、こうなるなんて。 |
慈 | 沙知先輩。 |
沙知 | ええっと……。 とりあえず、もう一度座ってもらっても、いいかな。 こっちの状況を説明させてほしいんだ。 ね、慈。 |
慈 | ……お願いします。 |
沙知 | まずは、ごめん。 あたしの見通しの甘さで、みんなを余計に不安にさせてしまって。 |
梢 | ……いいえ。 ですが、いったいなぜこんなことに? |
沙知 | うん……。 前にも言ったけれど、蓮ノ空女学院にはふたつの陣営があってね。 |
沙知 | 蓮ノ空の生徒はこの静かな環境で感性を育むべきだという派閥と、 |
沙知 | 時代の流れを尊重して生徒の自主性を重んじる派閥。 規制派と容認派とでも呼ぼうか。 それらは緩やかに対立をしていたんだ。 |
さやか | じゃあ、この時期にネット規制が入ったってことは、 これから先もずっと……!? |
沙知 | わからない。 でも、今回のは、規制派がかなり強引な手段を使ったみたいでね。 |
沙知 | 容認派も手を焼いているみたいなんだ。 |
瑠璃乃 | うう、一生懸命お願いしたら、わかってくれないかなあ……。 |
瑠璃乃 | ネット禁止にされると、ルリたちメチャクチャ困っちゃうので、 許してください! って……。 |
沙知 | 残念ながらそれは、難しいだろうね……。 ごめん。 |
慈 | 沙知先輩が謝ることない! |
沙知 | うん、そうだね。 ごめん。 あ……。 |
綴理 | ……。 |
梢 | これから、どうしようかしらね……。 |
瑠璃乃 | じゃあじゃあ、容認派の方に、助けてください~! って言いにいくのは……? |
慈 | るりちゃんにお願いされたら、そりゃ私なら秒で助けるけども! |
梢 | それは……案外、やってみる価値はあるかもしれないわね。 |
慈 | え? 私? |
梢 | じゃなくて、敵の敵は味方って話。 |
梢 | 沙知先輩。 規制派が強引な手段を使ったということは、 当然不満の声もあがっているはずですよね。 |
梢 | だとすれば、もし今、容認派にとっての追い風が吹いたのなら? |
沙知 | ……そうか! 規制派のやったことが間違いだったと、 認めさせることができるかもしれない! |
花帆 | えっ、えっ!? |
さやか | 『ネット禁止令』は、今度こそ撤廃できるってことですか!? |
沙知 | ああ、できる。 だけど……そのためには大きな実績が必要だ。 |
沙知 | 盤面をひっくり返すほどの大きな実績、それはーー。 |
梢&綴理&慈 | ーーネット配信で、北陸大会突破。 |
さやか | それが、最低条件……。 |
沙知 | ごめん、キミたちに余計なプレッシャーをかけたくはないんだけど……。 |
慈 | べっつにぃ? 配信だろうがなんだろうが、 優勝するのはもともとの目的だし! |
綴理 | うん。 変わらない。 それともさちは、ボクたちには無理だと思ってる? |
沙知 | え? いや! まさかそんなことは! |
慈 | ちょっと綴理! 沙知先輩ひどくない!? 私たちのこと、信じてないんだよ! |
綴理 | うん、とてもつらい。 |
沙知 | ち、違うよ! キミたちなら必ず優勝できる! それは間違いなく! |
沙知 | 初めて3人を見たとき、とんでもない逸材が 3人も一気にやってきたって思ったんだから! 本当に! |
梢 | ふふ。 では、沙知先輩は安心して構えていてくださいね。 私たちは負けませんから。 |
慈 | ふふん。 |
綴理 | うん。 |
沙知 | みんな……。 |
沙知 | ほんとに、強くなったね、みんな……。 |
梢 | あの頃の先輩と一緒です。 私たちにも、守るべき後輩ができましたから。 |
梢 | というわけで、これからの方針なのだけれど。 |
花帆 | はい! |
梢 | 校内でネットが使えない以上、 北陸大会は学外にステージを作って進めることになるわ。 |
梢 | 私たちだけじゃ準備が追いつかないでしょうから、 外部協力者の力も借りなくっちゃね。 |
瑠璃乃 | 学校の外の仲間に、声をかければいいってことですか? よっしゃ、めっちゃ声かけよ! |
さやか | 綴理先輩の分も、いっぱい外出届を書かないといけませんね! |
慈 | 綴理、後輩に書かせてるの!? |
綴理 | 知らなかった。 ボクは外に出るのを許されたんだと思ってた。 |
さやか | あ、あの! その方が早いかなって! すみません勝手に! |
瑠璃乃 | あれ……? でも、そもそもべんきょーのために ネット禁止令が出たんだったら、 |
瑠璃乃 | べんきょーせずに毎日毎日ステージ探しにお外巡るのってムリめぐじゃ……? |
梢 | ……確かに、 正当な理由ではないと外出届を突っぱねられる可能性は、あるわね。 |
沙知 | そこはだいじょーぶ! あたしのスーパー会長パワーでねじ込むさ! 県内で門限までならどこでも行っておいで! |
花帆 | わあ、生徒会長すごいです! ついでにショッピングモールも作ってください! |
沙知 | それは無理! |
花帆 | がーん! |
慈 | よーし! 最高のステージ作ってやるぞー! |
綴理 | 目標は優勝ただひとつ。 |
梢 | まだ打つ手がなくなったわけじゃないわ。 私たちの大逆転を、見せてあげましょう! |
花帆&さやか&綴理&瑠璃乃&慈&梢 | おー! |