第15話『夢を信じる物語』

PART 5

56 セリフ3 人物
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  1. コメント

    屋上に寝そべって、雲を見上げている綴理。

  2. 綴理

    ……。

  3. 寒いでしょう、こんなところで。

  4. 綴理

    そうかも。 どこなの、ここは?

  5. 屋上よ。
    ていうか、この毛布はどこから持ってきたの?

  6. 綴理

    それはこの毛布に聞いてみないと。

  7. 花帆

    たぶん、さやかちゃんですよ。
    綴理センパイが風邪を引かないようにって。

  8. 綴理

    そっか。
    ありがと、さや。

  9. コメント

    こそこそと花帆は梢にささやく。

  10. 花帆

    なんだか綴理センパイ、どよーんとしてますね……。

  11. ……そうね。

  12. コメント

    同じように雲を見上げる。

  13. それで、どうしたの。
    私はさやかさんみたいに、優しくはないわよ。

  14. 綴理

    ……よく、わからないんだ。

  15. 綴理

    ちゃんとさやに、どういう気持ちなのか伝えようって、がんばったんだけど。
    喉を通った端から崩れていくんだ。 ちょうど、今の雲みたいに。

  16. それをそのまま、伝えればよかったんじゃない? いつものように。

  17. 綴理

    ラブライブ!に出られて、幸せだったんだ。

  18. ええ。

  19. 綴理

    さやが隣に立ってくれたんだ。
    ボクはもう、他になにもいらないと思ってた。 なのに。

  20. 綴理

    どうしてだろう。 ボクは、ぜんぜん満足できてないんだ。
    これじゃあ、さやに嘘をついてたみたいじゃないか。

  21. 綴理

    そんなの、だめだ。
    だから、さやにだけは、まだ……言えない。

  22. ……そう、それで。

  23. 綴理

    こずは、わかる?

  24. 難しいわね。 私は綴理じゃないから。

  25. 綴理

    そうだよね。 こずがつづだったら……。
    ふたりで雲を見上げてたかな。

  26. 去年の、あなたは。

  27. このままラブライブ!本戦に出るわけにはいかないって言って、
    ふたりで出場を諦めた。

  28. けれど、今のような顔はしていなかったわ。

  29. 今年は、なにが違うのかしら。

  30. 綴理

    楽しいよ。
    去年が楽しくなかったわけじゃないけど、今年はもっと楽しい。

  31. 綴理

    かほとるりがいて、めぐとこずがいて。
    ボクの隣に、さやが立ってくれてる。

  32. 綴理

    スクールアイドルになれたんだ。

  33. 綴理

    だから……。

  34. 花帆

    ……だから?

  35. 綴理

    だから、ボクは。
    ……あぁ、そっか。 そうなんだね。

  36. 綴理

    蓮ノ空が、好きみたいだ。

  37. コメント

    その言葉を聞いて、嘆息するように相づちを打つ梢。

  38. なにかわかったみたいね。

  39. コメント

    うつむく綴理。

  40. 綴理

    うん。 ボクは……欲張りになっちゃったんだ…………。

  41. 花帆

    えっ!? さっきより落ち込んじゃいましたよ!?

  42. 綴理

    蓮ノ空が好きだから、ボクにとって蓮ノ空がいちばんだから。
    みんなにも、そう思ってほしかったんだ。

  43. コメント

    ぎゅっと拳を握る綴理。

  44. 綴理

    ボクが優勝できると思っていたのはきっと、
    蓮ノ空がいちばんだっていう気持ちがあったからで。

  45. 綴理

    それを届けられなかったから……
    ボクは、悔しかったんだ。

  46. コメント

    ハッキリと『悔しい』と口にして感情をあらわにする綴理に、梢が柔らかく微笑む。

  47. 自分の好きなものを、みんなにも好きになってほしい、ね。
    まさかあなたが、そんなことを口にするなんて。

  48. 綴理

    ……おかしい?

  49. いいえ、素敵だわ。

  50. 綴理

    ……そっか。 うん、よかった。
    ボクは、さやに嘘をついてたわけじゃなかった。

  51. コメント

    ほっと胸を撫で下ろす綴理は、しかし、ガーンとショックを受けたような顔をする。

  52. 綴理

    あれ……でも、ボクは欲張りで……。
    どうしよう。 どっちが悪いんだろう。

  53. それこそ、さやかさんに聞いてみたら、どう?

  54. コメント

    綴理が立ち上がる。

  55. 綴理

    ……うん、そうする。
    そうしたい。

  56. コメント

    丁寧にお辞儀をする。

  57. 綴理

    ありがとう、こず。
    かほも、話を聞いてくれて。

  58. 花帆

    いえ、そんな。 あたしはなにも。

  59. コメント

    綴理は手を振り、屋上から立ち去ろうとして、足を止める。

  60. 綴理

    次はがんばろうね、こず。

  61. ……ええ、そうね。

  62. コメント

    そのまま、軽やかに走ってゆく綴理の背を見送る、花帆と梢。

  63. 花帆

    綴理センパイも元気になってくれて、よかったですね。
    さっすが梢センパイです。

  64. 花帆

    これでみんな、明日からまた練習がんばれますよね。

  65. ねえ、花帆さん。 もうちょっとだけ、付き合ってくれる?
    まだ話したい人がいるの。

  66. 花帆

    いいですけど……。

  67. コメント

    梢がじっと花帆に微笑みかける。花帆は驚いたように自分を指差す。

  68. 花帆

    えっ?
    それって、あたしのことですか?

  69. コメント

    花帆の手を取る梢。

  70. 部室に戻りましょう。