幕間
『Bloom the stars』
小鈴 | 綴理先輩! 徒町、やってやります! |
綴理 | ん。 きっと良いフェスになるんだろうな。 いいなぁ。 |
さやか | しっかり、この旅行中に作詞も完成させます。 |
綴理 | それも楽しみにしてる。 さやなら、できるよ。 |
さやか | はい! |
アナウンス及び音楽が鳴り響く。 | |
梢 | 時間ね。 私たちはもう行くわ。 |
慈 | また来週~! |
綴理 | ばいばい。 |
梢 | はぁ……。 |
慈 | うわなに、いきなり~? 大丈夫だよ、つよつよるりちゃんがついてるんだから。 |
綴理 | さやもいる。 かほもいるよ? |
梢 | ええ、だから心配はしていないわ。 ……はぁ。 |
平然と答える梢。しかしすぐにまたため息をつく。 | |
慈 | じゃあなんなのそのため息は! |
梢 | 私がついていれば、さやかさんや他の子たちの負担を 半分にすることができたのに、というだけでね……。 |
梢 | 言っても仕方のないことだけれど。 |
慈 | わかってんじゃん。 |
梢 | さすがにね。 最上級生ですから。 |
慈 | よっしゃ、それじゃ気分を変えて、全力で楽しむモードに切り替えるんだよ! |
慈 | この瞬間から私たちは! スクールアイドルじゃなくて、 修学旅行を楽しむただの高校三年生! |
綴理、自己矛盾によってフリーズ。宇宙猫と化す。 | |
綴理 | ボクたち……スクールアイドルじゃ、なくなる……? |
慈 | や、今のは、たとえでね!? |
綴理 | ボクは、なに……? 人間……? |
慈 | と、とにかく! なんか楽しいことしよ! ほらトランプとか! |
梢 | とりあえず……あなたたち、 ちゃっかり座っているけれど、自分の席に戻った方がいいんじゃないかしら。 |
梢 | 学校に追い返されないうちに。 |
慈 | 追い返されたら、敦賀ライブに出られるかな。 |
綴理 | よし。 |
と言って立ち上がる、綴理。 | |
真面目な顔で悪だくみをする慈と綴理に、梢がツッコミを入れる。 | |
梢 | 戻りなさい! |
初日の夜、綴理の部屋に遊びに来る慈。 | |
部屋は四人部屋。たまたま他の子がいなかった、という設定。 | |
慈 | こんこーん、つーづりー。 |
梢 | あら、慈。 |
慈 | あれ? なんでいるの? まさか、私に隠れて密談……!? |
梢 | それは、よくわからないのだけれど……。 |
戸惑う梢の後ろから、綴理が顔を出す。 | |
綴理 | みてみて、こずが買ってきてくれた。 つーづりーの好きなお菓子。 |
沙知の好きだったお菓子、まねっこドーブツを持って、嬉しそうな綴理。 | |
梢は恥ずかしい気持ちを隠しつつ、普段の調子で答える。 | |
梢 | 売店を覗いていたら、たまたま見つけてね。 それで、なんとなく。 |
慈 | ……へー。 ふーん。 |
梢が慈の手に持つものに気づく。同じく、綴理も。 | |
梢 | ……なによ。 って、あなた。 |
綴理 | あ、めぐも買ってきてくれたんだ~。 ありがと~。 |
慈 | ……なんとなくだよ、なんとなくー。 |
梢と考えていることが一緒とはねえ、と思い、憮然としつつ答える慈であった。 | |
三人、適当な場所に座りつつ、まねっこドーブツをつまむ。 | |
(※綴理がベッドで、慈と梢がそれぞれ椅子を引っ張ってきて、など? 詳細な位置関係はお任せいたします) | |
梢 | 修学旅行先に来ても、どうして私たち3人で一緒にいるのかしら。 |
慈 | そういう星の下に生まれたんじゃない? 知らないけど。 |
梢 | 星……ね。 |
そこで手を挙げる慈。 | |
慈 | それでは。 え~、第1回102期生・大暴露大会~! |
梢 | なに? 急に。 |
楽しそうな雰囲気に、よくわからず拍手する綴理。 | |
綴理 | わ~。 |
慈 | せっかくの修学旅行なんだから、3人で普段しなさそうな話しようと思って。 ほら、いつもは言えないようなことを、ほら、ほらほら。 |
カモンカモンの手つきをする慈。 | |
梢 | いつもは、言えないようなこと……。 そうね、ならちょうどいいわ。 |
慈 | お、なんかネタある? |
綴理 | その言い方は、お説教じゃないとみた。 |
梢 | ラブライブ!の話なの。 |
綴理 | ラブライブ!……。 でもボクは今、スクールアイドルじゃないから……。 |
慈 | 今だけ戻っていいよ。 |
綴理 | ! |
慈からの許可が出て、ボクはスクールアイドルだ……!と気合が入って、思わず立ち上がる綴理。 | |
慈 | 踊るのは後にするんだよ! |
なにも言わずに座り直す綴理。 | |
一連の流れを生暖かい目で見つめつつ、口を開く梢。 | |
梢 | ……今年は最後のチャンス。 だからこそ、優勝を目指したい。 |
それはわかる、の慈。 | |
慈 | ん。 |
梢 | でもそれは……あくまでも、私たちの事情。 |
それはどういうこと? の慈。 | |
慈 | ん? |
梢 | 今年、スクールアイドルクラブに入部してくれた新入生にはね。 まずスクールアイドル活動を楽しんでもらいたいの。 |
梢 | スクールアイドルにとって、ラブライブ!出場は 選択肢のひとつに過ぎないわ。 |
梢 | ただ好きなようにライブをしてもいいし、配信だけをしていてもいい。 曲も衣装だって、自作しなくてもいい。 スクールアイドルは、自由だから。 |
梢 | 彼女たちが自分の意志でラブライブ!を目指してくれるのなら嬉しいけれど、 部長としてみんなに強要はしたくなくて。 同じユニットの子であってもね。 |
梢 | だから、今年もいつも通り過ごしたいのだけれど……。 |
梢、ちらりと慈と綴理の様子を窺う。 | |
梢 | ……おかしいかしら。 |
慈、肩をすくめる。 | |
慈 | いやー。 再確認したよ。 相変わらず面倒な性格してんね、あんた。 |
梢 | 慈にだけは言われたくないのだけれど……。 |
梢 | どう? 綴理は。 |
綴理 | こずは、みんなにかほと同じことをしてあげたいんだね。 |
梢 | ……そうね。 きっと、そうだわ。 |
梢 | その上で、こちらがやりたいことは、いずれちゃんと伝えるつもり。 私と花帆のときみたいに、お互いがすれ違ってしまわないように。 |
梢 | 今はね、彼女たちが花咲けるような、そんな部になればいいと思っているの。 |
梢がちゃんと考えたことなら、と綴理は柔らかく微笑んでうなずく。 | |
綴理 | うん、こずの気持ちはいいと思う。 |
綴理 | でも、みんなで同じ目標に向かってがんばるのは、 それはそれで楽しいとも、思うよ? |
梢 | ふふっ……ありがとう、綴理。 |
慈 | じゃ~、次~。 つづたんなんかある? |
綴理 | うん。 1個、思い出した。 |
慈 | お、なになに? |
まねっこドーブツのパッケージを眺めつつ。 | |
綴理 | ボクはね、さちになりたい。 |
梢 | ……沙知先輩に? |
慈 | 綴理が、珍しいこと言うじゃん。 |
綴理 | うん。 さちみたいに、今年入ってきたすず、ぎん、ひめのことを…… スクールアイドルとして立たせてあげたい、かな? |
梢 | 立たせてあげたいというのは…… さやかさんにあなたがしてあげたこととは、違うのかしら。 |
綴理 | さやには、ボクのままでよかったんだ。 でも、これからのボクはもっと頑張りたい。 |
綴理 | 隣に立てなくてもね、見ててあげたい。 日陰にうずくまっていたら、日向の場所を教えてあげたい。 |
綴理 | さちがしてくれたことが、すごく、嬉しかったから。 そういうものに、ボクもなりたい。 |
梢 | ……素敵ね。 |
慈 | ……シャッフルユニットのときさ、るりちゃんのこと、 先輩として親身になってくれたじゃん? |
綴理 | ? してないよ。 |
慈 | じゃあ、一緒に悩んでくれた。 |
綴理 | それは、したかも。 |
慈 | 私からもありがとうって、言ってなかったなって。 |
慈 | 綴理、実はそういうの向いてると思うよ。 ちゃんと悩んでくれるから。 なんだったら、私や梢より上手かも。 |
軽口を叩く慈に、なぜか落ち込む梢。 | |
梢 | そうね……。 きっと、そうだわ……。 上手よ、綴理は……。 |
慈 | なにダメージ受けてんの! 気にしてたの!? ごめんて! |
梢 | でも立派だわ、綴理。 がんばりましょうね、一緒に。 |
綴理 | うん。 まあ、ボクはさちにはなれないんだけどね。 伸びすぎた。 |
慈 | 身長の問題かい。 |
慈 | ま、綴理がそういうスタンスなら、私は安心して好きにやらせてもらうよ。 やっぱ先輩ってのは、偉大な背中を見せなきゃいけないからね。 |
慈 | 誰もが憧れる最強のスクールアイドルが身近にいたら、 後輩のモチベ爆上がりでしょ? |
慈 | これはめぐちゃんにしかできない役目だからね☆ |
ポーズを取ってウィンクする慈。 | |
綴理 | めぐかわいい~。 |
梢 | それってつまり、今までとなにも変わらないってことね。 |
慈 | それってつまり、 梢はめぐちゃんを最強のスクールアイドルだって認めてるってこと~? |
梢 | ~~はい、私と綴理が言ったんだから、最後は慈よ。 |
照れ隠しに話を進める梢に、ニヤニヤする慈。 | |
言いたいことを言い合えている親密な空気に、綴理もほっこり。 | |
綴理 | なんか、いいね、暴露大会。 毎日やりたい。 |
梢 | それはちょっと……。 |
慈 | それじゃあねー。 んー、これは暴露ってか、思ってたことなんだけど。 |
梢 | ルール違反よ。 |
慈 | 遊びに厳格になるな! あのさあ、あるじゃん、ホワイトボードに。 梢の戒めスター。 |
綴理 | 戒めスター。 |
梢 | え、ええ……。 |
慈 | あれさ、3色追加したいなって思って。 |
綴理、真っ先に賛同。ぱちぱち拍手する。 | |
綴理 | おー。 |
慈 | まー、まだみんな入ってきたばかりってのはあるけど。 6色ってのが気になるんだよねなんか。 せっかくの後輩ができたのにさ。 |
慈 | 剥がして捨てることも考えたけど、 そしたら梢が拾って部屋に貼っちゃうだろうし。 |
梢 | 人を、巣の材料が足りないスズメかなにかだと思っているの? |
綴理 | ボクは賛成。 みんなの色があったほうが、きれいだよね。 |
梢 | ……どっちみち、私が意見を言える立場ではないわ。 あれは綴理がしてくれたことだから。 |
慈 | そういうのを取っ払って意見を言うと? |
梢 | ……私たちの愚かしさに、104期生のみんなを巻き込むのも。 |
慈 | だから、新しい意味を作るの。 |
慈 | 嫌な思い出はいい思い出に。 いい思い出は、もっといい思い出に。 沙知先輩が、私たちに八重咲ステージを残してくれたみたいに。 |
慈 | ま、あの規模に比べたら、ぜんっぜんだけどね。 |
梢 | ……そうね、そういうことなら。 ありがとう、慈、綴理。 |
慈 | いいってことよ。 じゃあ綴理、なにか思いついて。 |
梢 | えっ……丸投げ……? |
綴理 | わかった。 |
梢 | いくら綴理でも、そんなパスじゃ……。 |
考え込む綴理。 | |
少しの間。 | |
見守る梢と慈。 | |
そして綴理がすぐに顔をあげる。 | |
綴理 | んー……ん、思いついた。 |
慈 | 天才じゃん。 天才だったわ。 |
梢 | すごいわね……。 それで、どうするの? |
綴理 | うん。 こずの言う通り、みんなが花咲ける場所を、作るんだ。 |
綴理 | 星の花を、咲かせよう。 |
慈 | こういうことね。 |
綴理 | きれいだね。 |
梢 | ……素敵だわ。 夢の種が、花咲いたみたい。 |
慈 | なんか今の、歌詞っぽくなかった? |
梢 | え? そう? |
綴理 | なんだかちょっと、かほっぽかったね。 あ。 |
どこからか一年生や二年生の笑い声が響いてくる。 | |
場所はそのまま、台詞の字幕なし。 | |
ここまで字幕なし。 | |
梢、慈のほうを向いて嬉しそうに言う綴理。 | |
綴理 | 帰ってきた。 |
慈 | よし、それじゃ敦賀ライブの感想会でもやっちゃおうか! |
梢 | ふふ、9人分のお茶を入れるのは、大変だわ。 |