第3話『ゆえに、みらくらぱーく!あり』

PART 1

瑠璃乃と花帆、さやかの三人が並んで、ゲームで遊んでいる。
ゲームはスマホの、マリオカート的なパーティーレースゲーム。三人ともスマホを横持ちで、通信対戦をしている最中。
ガッツポーズで喜ぶ瑠璃乃。
瑠璃乃
1着!
なんとか二着に食らいついた、というさやか。
さやか
に、2着です!
そして突っ伏す花帆。
花帆
うわーん、3着だぁ!
いったんスマホを置いてニヤニヤする瑠璃乃。
瑠璃乃
へっへっへ、また勝っちゃったね。
さやか
ゲームお上手ですね、瑠璃乃さんは。
花帆
う~っ……こうなったら、さやかちゃん!
ふたりで協力しよう! 二対一だよ!
さやか
に、二対一!?
花帆
あたしがスマホの左を持って動かすから、
さやかちゃんが右を持ってボタン係ね!
さやか
やりづらいだけかと思いますが!
瑠璃乃
あははっ。
さやかは、つかさもさやかも、ゲームはやらず。家にゲーム機もない。
フィギュアの帰りに、友達とゲームセンターに寄って、銃で撃つゲームを遊んだことがある程度。
さやか
でも、楽しいですね。
たまにはみんなでワイワイとゲームを遊ぶのも。
ゲームの経験は、花帆は、たまに妹と遊ぶ程度。勝ったり負けたり。
ふたばとみのりは好きで、ゲーム機でよく遊んでいる。
ゲームは小休憩、花帆がえっへんと指を立てる。
花帆
そうだね。 のんびりしてられるのも今のうち……。
なんたって、もうすぐ撫子祭だもんね!
瑠璃乃
おおー! ウワサの撫子祭!
さやか
そういえば、瑠璃乃さんは去年、撫子祭のライブを見てくれたんですよね。
瑠璃乃
そおそお!
梢パイセンと綴理パイセンの共演、すごかったな~!
頭を抱える花帆。気にせず、話を進めていく。
花帆
だよねだよね! あたしは今でも昨日のことのように……。
花帆
あれ、ちょっと思い出せないかも! 楽しいことがありすぎて!
瑠璃乃
ルリ、参加するのは初めてだからさ~、撫子祭。
なんか出し物とかあるのかな~。
瑠璃乃
あるならラジオとかやってみたいな~。 楽しみだな~。
さやか
撫子祭は、大まかには竜胆祭や蓮華祭とそう変わりませんが。
さやか
3つの文化祭の中では、
いちばん一年生の活躍の機会が多い場かもしれませんね。
瑠璃乃
ほうほう!
それじゃあ、ふたりも去年なにかしたの? あー、ライブ以外に!
さやか
わたしたちは、スクールアイドルクラブの記事を書きました。
毎年、一年生が記事を書くのが伝統だそうで。
花帆
そうそう。 センパイの魅力をぞんぶんに伝えたんだよ!
瑠璃乃
ええ~、めちゃめちゃ楽しそうじゃん!
じゃあ今年は、姫芽ちゃんと吟子ちゃんと小鈴ちゃんが書くってこと?
さやか
そうなりますね。
顔を見合わせるさやかと花帆。
花帆
えっ、じゃああたしたちのことも書かれちゃう……!?
さやか
そうなる、かもしれませんね。
花帆
どうしよ、あたしたちの悪いところが書かれちゃったら!
『先輩としてまだ実力不足は否めません。 ☆ひとつ』みたいな!
さやか
! そんなことは!
不安になる花帆と、その不安がうつってゆくさやか。
花帆
さやかちゃんは大丈夫かもだけど~!
瑠璃乃がニコニコと安心させてあげる。
瑠璃乃
いやいや、ふたりとも大丈夫っしょ。 いい先輩やれてるよー!
花帆
そ、そうかなあ?
さやか
で、でも、瑠璃乃さんにそう言ってもらえると、安心しますね。
瑠璃乃
そお?
自覚のない瑠璃乃を、ふたりが褒め称える。
さやか
はい。 瑠璃乃さん、みなさんのこと本当によく見てくれてますから。
花帆
そういえばこないだ、
あたしがタオル忘れたときも、なにも言わないのに貸してくれた!
瑠璃乃
ええ~? あれはたまたまだよ~。
花帆
たまたまじゃないよ。 だって、ヘアゴム忘れたときだって。
さやか
ふふっ、いっぱい忘れてますね。
瑠璃乃
確かに、花帆ちゃんのことは、気を付けて見ちゃってるかも~?
花帆
えー、それどういう意味ー?
三人、笑い合う。
花帆&さやか&瑠璃乃
あははっ。
花帆
いいなー、瑠璃乃ちゃん。 きっとセンパイ活動もうまいんだろうなあ。
姫芽ちゃんいっつも瑠璃乃ちゃんのそばでニコニコしてて、かわいいよねえ。
瑠璃乃
あの子がもともと、みらくらぱーく!大好きっ子だからねえ~。
さやか
あ、一緒にゲームで遊んだりもするんですか?
姫芽さんもすごくゲームが上手なんですよね?
さやかの素朴な疑問に、ピシリと固まる瑠璃乃。
瑠璃乃の脳裏に一瞬、4月の加入回の姫芽のセリフが蘇る。
瑠璃乃
え゛? ゲーム! ゲームはねえ、どうかなあ……。
姫芽
っしゃあ! 今日もゴキゲンに勝ちに行くぞ~~~!!!
腕組みしてうなる瑠璃乃。一緒にゲームはやりたくない! ぜったいにやりたくない! 露骨に話を逸らす。
瑠璃乃
う゛~~~ん! まあ、そのうち!
そのうち一緒にやる日も来るかもね! まあね、うん!
瑠璃乃
その話はいいとして!
どっすか? ゲーム、もう1戦!
花帆
お、いいね!
さやか
今度は負けませんよ!
瑠璃乃にとってゲームはコミュニケーションのツールのひとつなので、こうしてみんなと楽しくワイワイできる時間が、大切なのであった。
瑠璃乃
よーし、勝負だー!
翌日の学校。補習に向かう途中の慈に、瑠璃乃がみらくらぱーく!を託されるシーン。
慈は腰に手を当てて真剣な表情。
勝負なんだよ。
瑠璃乃
……なにが?
撫子祭の出し物のこと。
首を傾げる瑠璃乃に、慈は説明する。
瑠璃乃
あ、やっぱり出し物あるんだ。
そう、せっかくの自由参加だからね。
今年はスクールアイドルクラブも、
3ユニットそれぞれで申し込もうって話をしてたの。
なんだかんだお祭り好きな瑠璃乃が、ピカーと笑顔を輝かせる。
瑠璃乃
えー! 合同のライブやるだけじゃなくて!?
メッチャ楽しそうー!
もちろん! やるからには、本気だよ!
狙うは文化祭の最優秀賞!
みらくらぱーく!が蓮ノ空を制圧するのだ!
明日を指差す慈に、瑠璃乃も手を叩いて喜ぶ。
瑠璃乃
わーわー!
瑠璃乃
で、なにやるなにやる?
瑠璃乃
あ、だったらルリもやりたいことひとつあって、
みんなを楽しませるようなラジオをしてみたいっていうか~。
慈は突然、沈黙した。シリアスな顔で、告げる。
……。 それなんだけど。
瑠璃乃
ん?
慈は瑠璃乃の肩をポンとする。
みらくらぱーく!の出し物についてはぜんぶ任せたよ、るりちゃん。
瑠璃乃
え……えぇっ!?
瑠璃乃
ど、どうしたのめぐちゃん!?
瑠璃乃
やりたいことはなんでも自分でやらなくっちゃ気が済まない、
あの天上天下唯我めぐ尊が!
綺麗な微笑を浮かべる慈。
私も、気づいたんだよ。
そっか、るりちゃんはもう二年生で、先輩なんだな、って。
急にそんなテンションで来るから、びっくりしてしまう瑠璃乃。
瑠璃乃
えっ?
びっくりしている間に、慈はやたらいいことをいい顔で言う。
いろいろあったよね。
引っ越しで離れ離れになったり、
カリフォルニアにいって、ビッグになって帰ってきたり。
……私の手を引いて、前を走ってくれたり、さ。
あれは、嬉しかったな。
謎のしんみりとしたムード。
瑠璃乃
めぐちゃん……。
るりちゃんは、大きくなった。
私の足りないところも、埋めてくれる子になった。
そろそろね、任せてもいい頃合いだよ。
だから今回は……
るりちゃんが姫芽ちゃんとふたりで、最強の出し物を考えてくれる?
瑠璃乃
そんな。 めぐちゃん抜きでなんて!
でも! 私にはやらなきゃいけないことが!
悲痛な叫びをあげる慈に、ジト目になる瑠璃乃。
瑠璃乃
……やらなきゃいけないコト? もしかして、めぐちゃん!
私、必ず『補習』を乗り越えて、そして戻ってくるからね!
大好きなるりちゃんの元へ!
瑠璃乃
え゛。
それじゃあ行ってきます! バイめぐ~!
ド!ド!ドを歌いながら、髪を翻して光の中へと消えてゆく慈。
でもね~、たまに赤点取る日もあるよ~。
そう~、うちら人間なんだもん~。 (な~んだもん~)
その背中に生暖かいものを見るような目を向ける瑠璃乃。
瑠璃乃
たまにじゃなくて、いっつもじゃん……。
みらくらぱーく!めぐ抜きは、牛丼ネギ抜き、のような発音で。
瑠璃乃
え? ほんとに? みらくらぱーく!めぐ抜きなの?
ルリひとりで大丈夫かなあ~……。
そこに、ぱたぱたと廊下を歩いてきた姫芽が合流する。
姫芽
あ、るりちゃんせんぱぁい~。
あれ? めぐちゃんせんぱいは、どこ行っちゃったんですか?
瑠璃乃
そうだね。 近くて、遠い場所かな……。
姫芽
瑠璃乃
……ところで、姫芽ちゃんって、ベンキョーはしてる?
にこやかに告げてくる姫芽。
姫芽
え? してますよ~。
姫芽
だって、ゲームばっかりしてるのに成績下がってたら、
学生としてまずいじゃないですか~。
今、いちばん慈に聞かせてあげたい言葉を受けて、瑠璃乃はとても力強くうなずくのであった。
瑠璃乃
そう! だね!