第7話『Link to the FRIENDS!』

PART 2

ユニット練習から、全体練習に変わる流れ。
視点キャラは、ここから吟子に。
花帆
わんつー、わんつー! はい、そこでぽーず!
息を切らしながら、吟子がリンクトゥザフューチャーのフリを踊り切る。
吟子
……はい!
ぱちぱちと拍手する花帆。
花帆
うん……いいよ、できてる! さすが吟子ちゃん!
花帆
ですよね? ね、センパイ!
そうね。 今の段階でここまで踊れているのなら、
竜胆祭にはいいものをお見せできるかもしれないわね。
吟子は顔を輝かせる。忖度のない評価をしてくれる梢に褒められると、素直に嬉しい。
吟子
ほ、本当ですか?
少し顔を曇らせる梢。眉を下げて微笑むイメージ。
ええ。 ……あとは、合同練習がうまくいけば、だけれど。
じゃっかん気まずい空気。自信がないため、不安そうな顔をする吟子。
吟子
……あ。
花帆
だ、大丈夫だよ!
きょうこそは、うまくいくって!
吟子
……はい、がんばります。
そこで向こうから、DOLLCHESTRAとみらくらぱーく!がやってくる。
姫芽
吟子ちゃん~。
小鈴
ちょっとしか見えなかったけど、すっごく上手になってるね!
すごいすごい。
吟子
あ、うん。 ありがとう。
吟子
でも、ユニット合同になると、なんでうまくいかないんだろ……。
姫芽
ん~~。
それはアタシと小鈴ちゃんの課題でもあるからね~……。
吟子
意思疎通がうまくいってないのかな。
練習場所の確保も、かぶっちゃったし……!
姫芽
それな~。
息を合わせるためにもっと声出しとかしたほうがいいかも~?
小鈴
チャレンジの数が足りないんだよ、きっと!
チャレンジあるのみ! ちぇすと! ちぇすとー!
吟子と姫芽、シンプルな小鈴を見てくすっと笑う。
小鈴の言い分に影響されて、とにかく今はやるしかないもんね!と気を取り直す吟子。
吟子
……ふふっ。 そうだね。 ん、がんばろ、小鈴。
ぽんぽんと小鈴の頭を撫でるふたり。頭を押さえながら突っ込む小鈴。
姫芽
小鈴ちゃんは、アタシたちのUSBハブだね~。
小鈴
どういう意味!?
瑠璃乃
そいじゃ、高まったユニットのぱわぁー! を、ひとつの力に!
さやかが手を叩いて、合同練習が開始される。
さやか
では、始めましょう。
吟子&小鈴&姫芽
はいっ!
吟子がトレーニングウェアから制服に着替えて、寮へと帰ろうとしているところ。
辺りは暗く、夜遅くまで残ってひとりで練習していた。しかし吟子の顔は暗く、合同練習はうまくいかなかった。
吟子
……はぁ。
どうすればいいんだろう、と思い悩んだまま帰ろうとしている吟子を、後ろから呼び止める綴理。綴理の口調は優しい。
綴理
ね、ぎん。
吟子
あ……綴理先輩、お疲れ様です。
すると、綴理の後ろに梢と慈もいる。
吟子
あれ……。 梢先輩も、慈先輩も……?
綴理
ちょっと今、いい?
吟子が座っていて、その正面に綴理が座っている。梢は綴理の隣に座り、慈は少し離れたところで、壁に背中を預けて立っている。
吟子
えっと……。 合同練習のこと、ですよね。
私が、うまくできないから。
綴理、不安そうに梢を見やる。
梢は静かに首を横に振って。
吟子さんだけじゃないわ。
一年生は、みんな同じところで手こずっているもの。
どの子も、ユニットごとのパフォーマンスはよくできているのだけれど……。
だけど、パート切り替えの際に、
前後のユニットと息が合っていないことが問題かしらね。
まー、難しいことを要求してるわけだからねー。
ってわけで、ひとりずつ話をしてみよっかって。
綴理から聞きたいこともあるみたいだしね。
吟子
綴理先輩が?
大丈夫。
言葉が足りてないなって思ったら、私と梢がフォローしてあげるから。
綴理
……うん。 ありがとう、こず、めぐ。
改めて、綴理は吟子に口を開く。
綴理
あのね、ぎん。 ぎんはどう思ってるかな。
吟子
え?
ここまでの歩みを思い出しながら、穏やかに語る綴理。
綴理
ボクはね、幸せだよ。
みんなとスクールアイドルをしてる毎日が。
綴理
みんなが混ざり合った色は、どこか不格好で、でも、
それがきれいだと思うから。
綴理
だから、ボクはこのままでもいいんだ。
これがボクたちだって、胸を張れるなら。
吟子
私は……。
硬く目をつむってから、顔をあげる吟子。
吟子
……今のままじゃ、胸を張れません!
吟子
みんなの足を引っ張りたくないし、
もっともっとうまくなりたいし、それに……。
吟子
私にだって、ラブライブ!の優勝を目指す理由がありますから!
吟子
金沢の伝統を世界に広めて、そして、
この蓮ノ空に新たな伝統を打ち立てるっていう、夢が。
吟子
みなさんのために……そのときのために作った衣装を、
ラブライブ!の舞台で披露して……その上で、勝ちたいです!
吟子の真意を聞いて、穏やかに微笑む綴理。
綴理
……うん、そっか。
綴理
あのね、ボクは今までたくさんのステージにあがったけど、
一等賞以外をもらったことがなくて。
腕まくりしながら前に歩み出ようとする慈を、手で制する梢。
お? おー?
続きを聞きましょう? 慈。
気持ちはわかるけども。
綴理
でも、去年初めて、負けたんだ。
吟子
それは、去年のラブライブ!全国大会で……。
綴理
うん。 そのとき、わかったんだよ。
綴理
ボクは蓮ノ空のみんなが好きだ。
綴理
つながった姿は完璧じゃなくて、完璧じゃないから、
凸凹だから、きれいなんだ。
綴理
なのに負けると「そうじゃないよ」って言われてるみたいで、悔しかった。
初めて、悔しい気持ちになった。
綴理
だから、ぎんが勝ちたいなら、ボクもできる限りのことはしたいから。
なにができるかわからないけど……。 でも、きっとできるって信じてる。
綴理
がんばろ、一緒に。
慈、綴理の肩を小突く。
そこは『ボクたち』でいいんだよ。
綴理
ボクたちはね幸せだよみんなとスクールアイドルをしてる毎日が。
戻りすぎ戻りすぎ! そこじゃない!
綴理
むずかしい。
幸せなのは間違いないけれどね……ふふっ。
ひとまずは、竜胆祭に向けて、力を合わせましょう。
最初ができないのは当たり前よ。
あなたたちは、よく努力をしてくれている。
だから、きっとできるようになるわ。
期待しているから。 なんでも頼ってちょうだい。
みんなで、がんばりましょうね。
吟子
あの、私……。
自信なさそうに問いかけてくる綴理。
綴理
伝わった……かな?
吟子
はい!
吟子、勢いよく頭を下げる。
吟子
これからもどうぞ、ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いします!