第9話『みらくる・ざ・ゆにばーす!』
PART 1
姫芽 | それじゃあ、めぐちゃんせんぱい~。 |
瑠璃乃 | せーのっ。 |
花帆&さやか&瑠璃乃&吟子&小鈴&姫芽 | 留年回避、おめでとうございます~! |
本日の主役、パーティーハットをかぶった慈が、豪快に笑う。 | |
慈 | あーっはっは! 余裕だったわ! もうこれで3月まで、なんの心配もナシ! |
一方、疲れ果てた顔の梢。 | |
梢 | 本当に……本当に、よかったわね、慈……。 |
慈 | いやあ、今回ばっかりはもうだめかと思ったんだよ。 めぐちゃん史上最悪のピンチだったね。 |
綴理 | ボクも、どうにかなった。 |
梢 | 綴理は現国、古文、歴史ぐらいだったから、ぜんぜんマシよ。 慈は、全教科だったものね……。 |
花帆 | 本当にお疲れさまでした! 梢センパイ! |
さやか | さすがですね……。 あの慈先輩を卒業まで導くなんて……。 |
瑠璃乃 | このご恩は、一生忘れません! |
慈 | ちょっとちょっと! がんばったのは私! めぐちゃん! めぐちゃんががんばったの! |
花帆 | 慈センパイががんばるのは当たり前じゃないですか……。 |
さやか | がんばってこなかったツケを払っただけですよね? |
慈 | なんだとこらー! |
花帆&さやか | きゃー! |
瑠璃乃 | はぁ……ともあれこれで、ルリのいちばんの懸念は解決した……。 肩の荷が下りたぜ……。 |
瑠璃乃 | ビッグボイス選手権まで開いたのに、めぐちゃんが学校に残ったら、 なんかもういろいろ台無しだったもんね……。 |
吟子 | それも、まあ……華やかで楽しそうだな、とは思いますけど……。 |
小鈴 | でもこのままじゃ、二年後は徒町もあんな風に……!? |
吟子 | 大丈夫だよ。 少なくとも小鈴は、ちゃんと真面目に授業受けてるし。 |
吟子 | 提出物も、その、間に合わないときはけっこうあるみたいだけど、 ちゃんと出してるし。 |
小鈴 | 確かに! 徒町は取り組み方と要領が悪いだけでした! |
吟子 | そんな悲しいこと笑顔で言わないで! |
目をウルウルさせる姫芽は、慈にすがりつく。 | |
姫芽 | ううう、でもでもやっぱり寂しいですよぉ~……。 |
姫芽 | どこにもいかないでくださいぃ~! |
姫芽 | アタシ、めぐちゃんせんぱいとユニットを組む楽しさを、 もう知っちゃったんです~! |
姫芽の言葉に、しんみりする瑠璃乃。そうだよね、寂しいよね……という気持ち。 | |
瑠璃乃 | ひめっち……。 |
姫芽 | だから、もっと思い出作りたいです~! 1年と言わず、2年! あと2年留年してください~! 一緒に卒業しましょ~!? |
瑠璃乃 | ぜったいやだよ! そんなめぐちゃん見たくないよ! |
慈は、姫芽の頭をぽんぽんと撫でる。 | |
慈 | ……姫芽ちゃんの気持ちは、わかるけどね。 でもね、私もやりたいことがあるからさ。 |
慈 | これまで、いろんなことがあったよ。 |
慈 | 蓮ノ空にやってきて、監獄に閉じ込められて…… もう勉強なんかするもんかと決めた一年生の4月……。 |
花帆 | 早っ!? |
さやか | まるで最初はやる気があったみたいな言い方ですね……。 |
慈 | なのに、周りは勉強しろ勉強しろと、自分たちの都合を押し付けてくる……。 そのたびに私は抗って、“自分の道”を貫いたんだ。 |
キラキラした目で、慈を見つめる小鈴。 | |
小鈴 | 慈大先輩、かっこいい~! |
吟子 | 騙されてるよ小鈴。 |
慈 | スクールアイドル。 動画編集作業。 テスト前の配信! 私は、やりたいことをやりきった! 最後まで屈しなかった! |
慈 | 人は私を、好き勝手に呼ぶかもしれないけど! |
慈 | 私は、間違いなくこの3年間をいちばん楽しんでやったんだよ! 後悔なんてないね! |
慈 | 見たか蓮ノ空! 全寮制のシステムも、 めぐちゃんには勝てなかったみたいだね! あーっはっはっは! |
綴理 | やっぱり、めぐってすごいよね。 |
梢 | もうなんでもいいわ。 |
吟子 | あの、さっき言ってた、慈先輩の“やりたいこと”って、なんですか? |
慈 | ん~? やりたいことは、いろいろあるよ。 |
慈 | まず車とバイクの免許は取りに行きたいしー。 あちこち旅行に行きたいし。 そのためにも。 |
慈 | やっぱ、夢への第一歩として、ひとり暮らしかな! 自由って言ったら、これっしょ! |
花帆 | ひとり暮らしって……寮生活もひとり暮らしみたいなものじゃ? |
さやか | うーん……だいぶ違うと思いますよ……? |
梢 | そうね……身の回りのことはすべて自分でやらなきゃいけないものね。 ……ほんとに大丈夫? |
瑠璃乃 | 生きてく分には、いけそうとルリ思う。 最低限。 |
慈 | ま、ちゃんと暮らしてくためにも、 その分お仕事もがんばらなきゃ、ってことで。 |
慈が手を挙げて、宣誓する。 | |
慈 | 藤島 慈、タレント復帰します! |
綴理&花帆&さやか&吟子&小鈴&姫芽 | おお~。 |
慈 | もともと所属してた事務所から、熱烈なオファーをもらっててね。 高校卒業したらぜひすぐにでも、って。 |
慈 | 私のスクールアイドル活動も追いかけてくれてたみたいなんだよ。 ありがたいことに。 |
花帆 | えーすごーい! |
吟子 | そっか。 慈先輩、もともとタレントだったんですよね。 |
小鈴 | 徒町、お部屋にテレビありませんけど、 実家に連絡してぜんぶ録画してもらいますね! |
慈 | ふふふっ。 |
慈 | つまり、私のミライは予想外どころか、バラ色! 全世界が私の卒業を祝福してるんだよ! |
慈 | いつか世界中を夢中にするために! もう怖いものなんて、なんにもなーい! |
姫芽がメソメソしながらも、慈を見やる。 | |
姫芽 | うう……。 寂しいです~。 |
姫芽 | 寂しいですけど~……めぐちゃんせんぱいの明日を、 アタシも応援しなきゃ、ですよね~……。 |
そんな姫芽の肩に手を添えてあげる瑠璃乃。 | |
瑠璃乃 | ん。 大丈夫だよ、めぐちゃんはどこにいってもめぐちゃんだから。 いつだってルリたちに、がんばってるところを見せてくれるよ。 ねっ? |
姫芽 | るりちゃんせんぱい~……。 ……はい~! |
慈 | お、事務所からの連絡かな? もう少しでラブライブ!北陸大会だから、 面談はその後にしてもらわないと、っと……。 |
綴理 | めぐ? |
慈 | ママだ……。 |
梢 | ……慈の、お母様? |
慈 | うわああああああ! ど、ど、どどどどどうしよう! |
姫芽 | め、めぐちゃんせんぱい!? いったいなにが~!? |
慈 | だからーー。 |
慈 | ーーママとの約束、忘れてたんだよ!! |