第12話『明日の君に花束を』

PART 1

ABCに廊下で呼び止められ、お祝いされる梢。
えな
それじゃあみんな!
せーのっ。
えな&びわこ&しいな
先輩、ラブライブ!優勝、おめでとうございまーす!
お祝いされた梢は、苦笑い。
あ、ありがとうね。
でも、あなたたち……もうラブライブ!が終わって、ずいぶん経つのに。
えな
ええ~? 嬉しいことは何度お祝いしてもいいじゃないですかぁー!
ねー?
びわこ
う、うん。
だって花帆ちゃん、毎日言ってるもんね。
しいな
言ってた言ってた。
なるほど、だからみんなの記憶がぜんぜん風化しないのか、と納得する梢。
まったく、もう……。 花帆の影響なのね。
えな
それじゃあ、きょうも部活動、がんばってください!
びわこ
蓮華祭も、楽しみにしてます。
しいな
お騒がせしました~。
パタパタと去ってゆく合唱部三人娘たち。
その背中を見送って、ふぅ、と一息つく梢。
ふぅ……。
……夢が叶ったのに、まだ、夢の中にいるみたいだわ。
……。
ぼーっと立ち止まっていた梢は、ハッと気づく。
いけない、ミーティングに遅れちゃうわ。
部員、全員集合。花帆を除く。
久しぶりのミーティングにて、蓮華祭の内容を話し合う回。
というわけで、
ラブライブ!優勝校である蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブの、
優勝校らしいミーティングを行います!
瑠璃乃
優勝校って言いたいだけのやつ!
そりゃ~言いたいじゃん!
私たちは~、せーのっ。
綴理&小鈴&姫芽
ラブライブ!優勝校、蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブです!
さやか
もう、綴理先輩まで……。
綴理
蓮ノ空さいきょー。 ちょーさいきょー。
吟子
ものの見事に浮かれてますね、みなさん……。
さやか
本当です。
そういや、有頂天代表のフラワーちゃんは?
さやか
花帆さんなら、きょうはおやすみです。
ちょっと疲れが出てしまったとのことで。
ありゃ。
姫芽
かほせんぱい、ラブライブ!が終わった後も、
毎日いろんなところに出かけてましたからねえ~……。
小鈴
協力してくれた皆々様に、遠路はるばるお礼参りしてくれました!
吟子
お礼参りってそういう意味だっけ……。
瑠璃乃
なので、いったん花帆ちゃん抜きでのミーティングにはなりますけれども~。
……。
瑠璃乃
梢先輩?
え?
瑠璃乃
話したいことがあるって言ってましたよね?
ああ、そうね。 ごめんなさい。
吟子
梢先輩も、どこか体調が……?
大丈夫よ。 少し、ぼーっとしていただけ。
みんなも知っての通り、来月は蓮華祭が開かれるわ。
いわゆる、卒業公演ね。
さやか
終わってしまえば、早いものですね。 一年というのは。
ええ、そうね。 その代わり、ラブライブ!が終わっても、
三年生はギリギリまで部活に参加する予定だから。
なんなら蓮華祭は卒業式の後だから、3月いっぱいは居座ってあげる。
姫芽
嬉しいです~……。 一秒でも長くいてください~……。
永遠にいなくなっちゃう人みたいなんだけど……。
それでね、ここからは私からの提案。
最近はラブライブ!に向けてずっと全体での練習が多かったから、
蓮華祭はそれぞれのユニットごとに新曲を作るのはどうかしら、って。
綴理
おお~。
吟子
ユニットごとの、新曲……!
いわば104期における、ユニット活動の集大成とも呼べるような曲を、ね。
姫芽
るりめぐの集大成……!
瑠璃乃
みらぱ!のね!?
姫芽
や、やだなぁ、るりちゃんせんぱいわかってますよぉ~。
姫芽
でもこれが最後というのなら、歴史に残るようなるりめぐの掛け合いを……。
小鈴
ユニットの新曲を作るのは、とても素敵だと徒町も思います!
綴理
夕霧も思います。
綴理
さやとすずとボク。
この3人のDOLLCHESTRAがあったんだってことを、刻みつけようね。
綴理
いつでも、どこにいても、胸の中から取り出せるように。
そんな曲を作ろう。
さやか
蓮華祭に向けて、これ以上ない重大なイベントですね……!
この1年、みんな本当によくがんばってくれたわ。
新入部員だった吟子さん、小鈴さん、姫芽さん。
3人は、すっかりラブライブ!優勝校の部員として、
ふさわしい顔つきになってくれたわね。
吟子
そ、そんな、恐縮です……。
小鈴
えへへ~。
姫芽
せんぱいがたのご助力ご指導ご活躍あってのものですけど~、
そう言ってもらえるのは嬉しいですね~。
さらにさやかさん、瑠璃乃さん。
それに、ここにいない花帆も、
今年は先輩として大きく部を引っ張ってくれたわ。
瑠璃乃
いや~、照れますなぁ。
さやか
はい。
ラブライブ!を経て大きく成長したあなたたちが、
曲にどんな彩りを加えるのか、今からとても楽しみにしているわ。
ということでね……って。
……なにかしら。
綴理
ボクにも。
私たちにもなにか言って、梢。
ええ……?
どうせあなたたちは、なにも言わなくてもいい曲を作るでしょう……。
はぁ~? ラブライブ!前はあんなにデレてたくせに~!
綴理
こず……。
しょせん夢を叶えたら私たちはお払い箱なんだよ!
綴理
悲しいね……。
うるさいわね……。
とにかく、みんなそれぞれに想いがあるでしょう。
この1年の集大成。
蓮ノ空の歴史に、この先ずっと伝統として歌い継がれるような……
そんな、最高のユニット曲を、作りましょう。
蓮華祭に向けたミーティングから数日後。
煮詰まってお風呂に入りに来た梢。暗い顔をしていたところを、先に湯に浸かっていた慈と綴理に合流する。
……。
お。
綴理
こずだ。
……あら。
……ふたりとも、あれから何日か経ったけれど、
ユニット曲の進捗はどうかしら。
まあ、そこそこ? とりあえず案出し中かな。
うちは100の案から1個を作りあげるからね!
綴理
ボクたちは、これかなっていうイメージはできたから、作るところ。
へー? 順調だねー。
綴理
かな?
ま、モチベめっちゃ高いのはわかる。
なんたって、私たちが作る最後のユニット曲だもんね。
ここでがんばらなきゃ、いつがんばるんだ、って。
……。
綴理
そうだね。 そのうち、めぐとこずにも、意見をもらいたいなって思ってて。
綴理
いい?
……もちろん、いつでも。
じゃ、そろそろ私はあがろうかなー。
綴理
ボクもー。
よし、きょうは私が髪を乾かしてあげよう。
綴理
わーい。
………………。
もしかして……なにもできていないのは、私だけ……?
そんな……。
睡眠だって取っているし、創作にもたっぷりと時間を使って、それなのに、
歌詞のひとつ、
曲の1フレーズもできないなんて……こんなの、おかしいわ……。
まさか、これってスランプなのかしら……。
いや、だとしても……。
ここで曲が作れなかったら、今まで私のやってきたことは、
なんだったのよ……!
机にしがみついてでも、やり遂げなきゃ……!
吟子
……あの……。
……え?
吟子
すみません、梢先輩、あの……。
……こ、こんばんは、吟子さん。
いいお湯ね。
吟子
ごめんなさい聞こえてました。