第13話『いずれ会う約束の桜』

PART 4

めぐるりひめの三人は、既に「思い出の写真を撮る」という情報を共有している。めっちゃ遊ぶぜ、と気合を入れたあとの状態。
めぐちゃんをめちゃめちゃ姫芽が写真撮影をしているところ。
姫芽の構えているカメラは、写真部から借りてきたこと。
姫芽
うお~! かわい~! 世界一かわい~!
ぱしゃっとフラッシュされるごとにポーズを変える慈。最初は両手を広げて、次は投げキッスで、最後は両手を頬の横でピース。
いえーい! んーまっ♡ ピース!
瑠璃乃
ひめっち、めちゃめちゃごっついカメラ借りてきたね……。
姫芽
んふふふ……。 この日のために、写真部で修行してきました~
るりめぐの思い出を写すためとなれば、このぐらいは……!
姫芽
ほらほら、るりちゃんせんぱいも、めぐちゃんせんぱいのお隣に!
カメラマンなら、アタシに任せてくださいね~!
瑠璃乃
ひょっとしてひめっち、きょう写る気なかったりする?
思いっきり目を泳がせる姫芽。
姫芽
ぎく。
い、いえ、そんなことはぁ……。
冷や汗をかきつつ、私欲を満たそうとする姫芽。
姫芽
で、でも仕方ないですよね~!
このカメラ、すっごく操作が複雑で~!
姫芽
修行しないと使いこなせませんからね~!
アタシしかできませんね~!
瑠璃乃
この子、自分が写らない理由を作るために、そこまですんの!?
慈、瑠璃乃と一緒に姫芽を挟んで、自撮りの体勢。
じゃ、スマホで撮ろうっと。
はいチーズ♡
姫芽
あっ。
パシャリ。
このままでは計画が狂ってしまうと姫芽が慌てる。
姫芽
し、しかし~! せっかくいいカメラを借りてきたのに~……!
甘いね、ツマヨウ寺ちゃん。
めぐちゃんは……どんなカメラでも! かわいい!
溜めて溜めて言う慈に、衝撃を受ける姫芽。
姫芽
そっ……! それは確かに……!
いくよ、るりちゃん、姫芽ちゃん!
きょうはこの遊園地を、みらくらぱーく!が制覇するのだ!
姫芽
うう……やはりまだまだめぐちゃんせんぱいには及びません~……。
あはは! 先回りして私たちのスマホをぶっ壊しておく、
ぐらいのことはしてみせるんだね!
瑠璃乃
困るよ!?
瑠璃乃、はしゃぐ慈と、そんな慈を追い回す姫芽を見て、仕方ないなあという笑顔。
瑠璃乃
まったくも~……。
瑠璃乃
いつも通りのみらくらぱーく!だし。
これじゃただ遊びに来ただけみたいじゃん。
瑠璃乃
ふたりとも! 実はあっちの方に、ナイスフォトスポットがあってねーー。
シーン内場面転換
どこかのベンチに座って、小休憩中。
るりちゃん、この遊園地よく来るんだね。
瑠璃乃
なんと釣り堀がありますからね!
てか、ゲーセンもあるし。
なんかすっごく私たちにぴったりって感じしない?
姫芽
まさに石川県のみらくらぱーく!ですね~。
冷静に突っ込む瑠璃乃。
瑠璃乃
それはただのみらくらぱーく!なんよ。
瑠璃乃
ほら、めぐちゃん、次はどこに行きたい? 乗り物乗る?
慈、エスコートされる貴婦人のように、上品に微笑む。
瑠璃乃、王子様のように微笑む。
あら。
ワタクシがすべて決めてよろしいのかしら?
瑠璃乃
当たり前じゃん。
だってきょうは、めぐちゃんとの思い出を作りに来たんだから。
瑠璃乃
めぐちゃんに楽しんでもらうのが、いちばんだよ。
瑠璃乃は意識してないが、無自覚に瑠璃乃のかっこいい部分が出る部分なので強調。姫芽と慈がくらっと来る。
瑠璃乃
ね、ひめっち。
姫芽、我に返ってから慈に恭しく礼。
姫芽
……ハッ。 コホン。
姫芽
もちろんですよ、お嬢様~。
あなたの願いを、叶えさせてくださいませ~。
慈、ふたりからのお姫様扱いに、ちょっとドキドキ。
ふ、ふーん。
そこまで言うなら、仕方ありませんわね!
じゃあ、このワガママプリンセス藤島 慈ちゃんが、
ふたりのこと、思いっきり振り回しちゃうんだよ!
瑠璃乃、胸を張る慈を見て、微笑む。
瑠璃乃
ふふっ。
瑠璃乃
めぐちゃんが楽しんでるところ、はしゃいでるところ。 かわいいところ。
いっぱい撮るからね。
瑠璃乃
ルリたちに任せて。
瑠璃乃のイケメンスマイルを見て顔を赤らめる慈。
む……。
姫芽
シャッターチャンス……!
パシャリ。
ハッと我に返る慈。
ちょ、今のはダメ!
慌てて手で顔を隠す慈。姫芽からカメラを取り上げようとするが、姫芽は華麗によける。
姫芽
うぇへへへ~! 最高にかわいい写真が撮れました~!
逃げ回る姫芽と、追いかけ回す慈。
慈をドキドキさせた自覚のない瑠璃乃もまた、立ち上がる。
顔作ってなかったから! もう一回もう一回!
こらー! 姫芽ー!
瑠璃乃
んし。 それじゃあ、めぐちゃんのために楽しもっか!
写真もたくさん忘れずに!
姫芽と一緒にガンシューティングを楽しむ慈を、後ろから撮る瑠璃乃。
釣り堀で瑠璃乃に寄りかかって寝てる慈と、仕方なさそうに慈を見て微笑む瑠璃乃。後ろから姫芽が連写。
スカイジェットで遊園地を探索するみらぱ! 前にるりひめ、後ろから真ん中に乗り出す慈。
観覧車で、慈と瑠璃乃が隣に、向かい合う席に姫芽が座っている。
姫芽
夕焼けのめぐちゃん……きれいです~……。
トーンは低めに、感動したようにつぶやく姫芽。
上品な笑顔でピースサインをする慈。
姫芽が慈をパシャリと撮影する。
ふふ、ありがと。
姫芽
るりちゃんせんぱいもぜひ一緒に、一緒に~……。
苦笑しつつ、瑠璃乃も慈に体を寄せる。
瑠璃乃
はいはい。 ……今日は、楽しかったね。
姫芽
はい、心から。
姫芽
めぐちゃんせんぱいも……今日はしっかり、楽しめましたか~?
うん、すっごく楽しかったよ。
姫芽ちゃんは、私たちと一緒にいるといつも誰よりも楽しそうだからね、
そりゃ私だってつられちゃうっていうかさ。
姫芽
ふへへ~。 自分が今すっごく楽しんでるってことは、
一緒にいる人に伝えられるんだって知りましたからね~。
姫芽
広がれ、熱! ってやつです~。
るりちゃんはるりちゃんで、
きょうも姫芽ちゃんがちょっと疲れたりおなかすいたりしたら
すーぐ気付いてくれるでしょ。
最近は充電回数も減ってきたし、
一緒にいる人に寄り添うって意識がもう根付いてる感じ。
瑠璃乃
そうかな。 ……そうかも。みんなのおかげかな。
話が一段落して、みんなが観覧車の外へ意識を向ける。
ニコニコと笑う姫芽。それから改めて噛み締めるように。
姫芽
はぁ、至福のときです~……。
姫芽の言葉尻が弱くなってゆく。
姫芽
本当に……ほんとに…………。
瑠璃乃
ひめっち?
姫芽
あ、いえ~……。
徐々に姫芽の声が震えてゆく。
姫芽
……あっ、もぉ~……ごめんなさい~……。
きょうは一日、楽しもうと、思ったんですけど~……。
涙を見せたくなかった姫芽は、なんとかこらえようとする。
いいんだよ、姫芽ちゃん。
私は嬉しいよ。 姫芽ちゃんが泣いてくれて。
姫芽
うう~……。
姫芽
アタシ、チームが解散したときも、
泣かないようにって自分に言い聞かせてたんです……。
姫芽
だって、これは別れじゃなくて、旅立ちだから……。
みんな、次の夢に向かうんだから、って……。
姫芽
でも、でも。
姫芽
もうるりめぐが一緒にスクールアイドルしてるところが、
見れなくなるの……。 やっぱり、悲しいです~……。
姫芽
ごめんなさい。
こんなこと言っても、おふたりを困らせるだけだって、わかってるのに……。
慈と瑠璃乃、顔を見合わせる。それから、うなずく。
慈と瑠璃乃はそれぞれ姫芽を挟むようにして、左右から抱きしめる。
瑠璃乃
ぎゅ。
姫芽
るりちゃんせんぱい……。
ぎゅ~。
姫芽
めぐちゃんせんぱい……。
じゃあ、約束してよ。
来年、今度はふたりが、私の背中を押してくれるって。
姫芽
るりちゃんせんぱいと、アタシで……?
あのねえ。 私、ひとりで外国行くんだよ?
ステージの上の藤島 慈が無敵なのは当たり前だけど。
でも、ちょっとはビビるっての。
そんなときさ。
ふたりが蓮ノ空でがんばってるのを見たら、たぶん、元気出てくるから。
もし立ち止まりそうになったときでも、くじけず、がんばれるから。
慈、離れて瑠璃乃と姫芽を正面に捉える。
どこまでも、走っていけるから。
できる? 約束。
正面から目を向けられた姫芽は、思いっきりうなずく。
姫芽
でーー。
姫芽
できます!!
慈が姫芽の頭を撫でる。
良いお返事。 それでこそ、みらくらぱーく!
それでこそ、私の弟子!
姫芽
えへへ……。
姫芽、泣きそうな顔で笑う。
慈が瑠璃乃の方へ顔を向ける。るりちゃんは?という意思表示。
瑠璃乃もまた、微笑む。
瑠璃乃
……うん。
瑠璃乃
みらくらぱーく!はいつだって、世界中を夢中にするんだよ。
瑠璃乃
来年も、もっともっと進化し続ける。 約束する。
遠い空の下のめぐちゃんのことだって、夢中にするに決まってるんだから。
ニッコリと笑う瑠璃乃。
瑠璃乃
楽しみにしててよね!
慈、その笑顔に自分も微笑む。
うん、めちゃくちゃ楽しみにしてる!