第13話『いずれ会う約束の桜』
PART 3
DOLLCHESTRAのターン。綴理小鈴と三人で出かける先を話すシーン。 | |
全員私服のイメージ。 | |
綴理 | ……さあ、それじゃあ。 |
綴理 | なにしよっか。 |
さやか | 綴理先輩には、やりたいことがあると聞きましたが……。 |
綴理 | ボクは……ふたりがやりたいことを、やってほしいんだ。 |
さやか | わたしたちですか? |
綴理 | そう。 それを見れば、 未来のDOLLCHESTRAがどんな風になるのか、そういう想像ができるから。 |
小鈴 | うう、綴理先輩……。 |
寂しそうな小鈴の肩に手を置いて、さやかは綴理に向き合う。 | |
さやか | 分かりました。 改めて寂しくはありますが……先輩が、そう言うのでしたら。 |
さやか | わたしたちが綴理先輩に、最高の未来をお見せしましょう! |
小鈴 | はい! お任せください! かたっぱしから考えます! 今回の思い出作りのプランを作る、徒町チャレンジです! |
どん、と胸を叩いた小鈴がぴゅーっと駆けていく。 | |
肩に置いたはずの手が宙に浮いたまま、困った顔のさやか。 | |
さやか | あれ!? 小鈴さん、どこへーー。 |
綴理 | ふふ。 せっかくだから任せてみよう。 |
さやかはそこまで困り笑いをしてから、独り言として考え込むように呟く。 | |
さやか | そ、そうですね。小鈴さんのことですから、 てんこ盛りにしてしまいそうですが……。 |
さやか | 現実的なプランに落とし込むのは、わたしの仕事か……。 |
綴理 | うん。 すずとさや、ふたりで頑張って。 |
小鈴とふたりと言われたさやかが、小鈴が走り去っていった方を振り返る。 | |
すると後ろで綴理がスマホを取り出し、小鈴が走り去っていった方とさやかを同じ画角におさめて一枚撮る。 | |
シャッター音に気が付いたさやかがまた綴理を振り返ると、スマホを構えた綴理が視界に入る。 | |
さやか | ? |
綴理 | ……ボク、これで完成でもいいくらいだ。 |
さやか | 肝心のあなたが入ってないじゃないですか! |
小鈴が戻ってくるところから。 | |
小鈴 | 徒町、考えてきました!! |
綴理 | うかがおう。 |
小鈴 | 3人で登山して! 春の海も見に行って! 新幹線に乗って! 近江町市場も見たいです! |
小鈴 | あと蓮ノ湖にピクニックもいきたいです! |
さやか | やっぱりてんこ盛り! |
綴理 | よし、全部行こう。 |
さやか | 全部!?!?!? |
小鈴 | はい! 全部を動画に収めます! さやか先輩! 映画の時のカメラ、貸してください! |
さやか | ええ!? |
ぱしゃ、と写真の音。三人揃った写真をれいかさんに撮ってもらうところ。 | |
れいかさん | はいおっけー! |
綴理 | ありがと、れいかさん。 |
れいかさん | それにしても……寂しくなるわね。 綴理ちゃんも、卒業かあ。 |
さやか | みなさん、綴理先輩が大変お世話になりました。 |
れいかさん | そうねえ……本当に、みんなでお世話したわ……。 もちろん、良い意味でね。 |
れいかさん | 立派になってくれて、我が子のように嬉しいって、 店長たちも言ってたわよ。 |
綴理 | うん。 みんなとも、最後に写真撮れて良かった。 |
れいかさん | 大学に行っても、元気でね! |
綴理 | たまに来るよ。 その時はもう、 スクールアイドルではないけれど……ボクは、ボクだ。 |
さやか&れいかさん | 綴理先輩……。/綴理ちゃん……。 |
さやか | ……ねぇ、綴理先輩。 少し、わがまま良いですか? |
綴理 | なんでも。 |
さやか | 今日は小鈴さんとわたしのやりたいことを見たいと、 あなたはそう言ってくれました。 |
さやか | だったら今、わたしにはやりたいことがあります。 |
さやか | それは未来のDOLLCHESTRAとは、 関係がないかもしれませんが。 |
綴理 | 分かった……いいよ。 じゃあ、今のDOLLCHESTRAをやろう。 ……みんなで。 |
小鈴 | み、みんなでというと! |
綴理 | もちろんーーこの市場のみんな。 ここが、今のDOLLCHESTRAだ。 一緒に、踊ろう。 |
さやか | あはは。 ……はい! |
今日の予定を全て消化したあと、蓮ノ湖でピクニックをしているシーン。 | |
三人がレジャーシートに座っているイメージ。 | |
今日撮った写真を、さやかがスワイプして見ている。 | |
さやか | たくさん、撮りましたね。 |
小鈴 | はい! 徒町も、さやか先輩も……それから、綴理先輩も撮ってくれました! |
さやか | ふふ、小鈴さんのおかげですよ。 本当に、一日で小鈴さんのプランを完遂してしまいました。 |
小鈴 | チャレンジ成功です! |
さやか | どうでしょうか、綴理先輩。 綴理先輩のやりたいこと……できましたか? |
綴理 | うん。 十分すぎるほどに、良い思い出になった。 |
綴理 | ボクは今日撮ったどの写真を見ても……きっと、 思い返す度に幸せな気持ちになれるはずだ。 |
さやか | なによりです。 |
小鈴 | この徒町としましても、思い出は増えるに越したことはないといいますか! |
小鈴 | それから、一年生で作っている映像のためにも、 撮ったものが増えたのは嬉しいです! |
綴理 | うん、すずにとっても良い機会で、良かった。 |
綴理 | でも……そうだなあ。 |
綴理 | どうしてあの時、みんなで踊ろうって思ったの? |
さやか | そう言ったのは綴理先輩ですよ? |
綴理 | ううん? ボクは分かったよ。 さやがもとからああしたかったんだって。 |
さやか | ……それは、確かにそうですが。 |
それから、やれやれといった風に首を振る。 | |
さやか | お見通しですね。 |
さやか | わたしはただ……未来のDOLLCHESTRAになるには、 まだ早いと思っただけです。 |
さやか | せっかく綴理先輩が居るのだから、 綴理先輩が居る間に、今のDOLLCHESTRAをやっておきたい。 |
綴理 | ボクは、寂しそうに見えた? |
さやか | いえ。 えっと。 |
小鈴 | はっ。 徒町分かっちゃいました! |
さやか | へっ? |
小鈴 | これは、徒町がそうだからというのもありますけど! さやか先輩はーー。 |
さやか | わー、待ってください待ってください! 自分で言いますから! |
綴理 | ? |
さやか | 難しい話じゃないんです、綴理先輩。 あまり口にしたくはなかったんですけど。 |
さやか | ただ……わたしが寂しかっただけですよ。 |
恥ずかし気に唇を尖らせるさやか。 | |
綴理は無言でスマホを向けてぱしゃり。 | |
さやか | ちょっと!? |
小鈴 | あはは、合ってました! |
さやか | 何を笑ってるんですか、もー! |
綴理 | じゃあ、寂しくないようにしよう。 |
綴理がぐっとさやかに近づく。 | |
小鈴がにこにこしながらさやかの後ろから寄り添う。 | |
綴理 | ほら、さや。 |
ぶすっとしたままのさやかが、小鈴を見て綴理を見て、それから自分でスマホを構えて、三人が収まるように自撮りをぱしゃっと撮るのだった。 | |
さやか | ……。 |