第6話『未来への花』

PART 8

吟子
あのね、おばあちゃん。
私、やりたいと思ってることがあって。
吟子
ーー。
吟子祖母
あんた……それ、みんなに話すん?
吟子
うん。 この後、Bloom Daysの閉会式で。
決めたから。
吟子祖母
ほやね……。
吟子祖母
人生の、大一番やね。
吟子
……そうだね。
吟子
緊張はするけど……でも、不安はあんまりないよ。
吟子
だって私も、信じてるから。
吟子
Bloom Daysの全日程が、本日で終了しました!
ここまで大きな成功になったのは、皆さんが協力してくださったおかげです!
吟子
本当に、ありがとうございました!
吟子
このイベントを通して、金沢の魅力を……伝統を、
たくさんの人たちに伝えることができました。
吟子
この街を盛り上げる、大きな力になったと思ってます。
吟子
私たち蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブも今、
『Bloom Garden Party』というイベントを実現させるために、
精一杯がんばって、活動してます!
吟子
これは、私の先輩が考えた、
誰でも花咲くことができるステージを作ろうという催しです!
吟子
最初は、
卒業した先輩がたとまた一緒にライブをしたいという約束から始まって……。
吟子
そして今では、どんな人でも願えば花咲ける……。 みんなが望む形になれる。
そんなステージを考えています!
吟子
そこに、今回開催した私たちのBloom Daysを乗せて……!
吟子
この金沢を、もっと、もっと、盛り上げていくために!
吟子
より大きく! より華々しく!
何年も、何十年も続いていく金沢の新たなお祭り、
『Bloom Garden Party』を作りたいんです!!
吟子
今年度中に『Bloom Garden Party』を決行して! 大成功させて!
世界中の注目を、この金沢に集めます!
吟子
きっと、この街も今回以上に盛り上がるはずです!
そのときにはーー。
吟子
ーー忘れられないためには、このイベントを毎年続けていくしかない。
吟子
でも、私ひとりの力じゃ、どんなにがんばっても、できることは限られてる。
吟子
どんなに声を枯らして叫んでも、
伝えられる気持ちにはきっと、限界があるから。
吟子
だから、ひとりひとりにこの夢を、自分の夢だって思ってほしいの。
吟子
金沢を盛り上げるために、
これが自分たちのお祭りなんだって思ってもらえれば……。
吟子
ひとりひとりの力が何百何千って集まれば、
それはずっとずっと、大きなものになるから。
吟子
みんなで、みんなの夢を叶えよう、って。
吟子
だから私、今日の閉会式で、しっかり伝えるつもり。
吟子祖母
……そうなんやね。
吟子祖母
これは、私たちの祭りなんやって。
私たちに、当事者になる覚悟はあるんかって。
吟子
それは……うん、そういうことだと思う。
吟子祖母
…………。
吟子
あ、それでね、ちゃんと考えてきたんだよ。
こう、その気になってくれるようなメリットとか。
吟子
こんな風に金沢のためになるんだよって説得できそうな資料も、
いろいろと作って……!
吟子祖母
思い出すねえ……。
吟子
え?
吟子祖母
10年前のイベントを学生さんが主催しとったって話したがいね?
あのとき、私もいろいろと関わっとってんよ。
吟子祖母
あのイベントは、今回のBloom Daysほど大きなもんじゃなかってん。
でも、当時も、街の人たちが、我も我もと協力してくれてね。
吟子
それは……。
吟子祖母
もちろん、自分たちがやりたいと思ったからや。
吟子祖母
そう、メリットはもちろん大事ねんよ。
ただあんね誠意だけを頼りに生きるのは、不誠実やからね。
吟子祖母
そこを忘れずにおるのは偉いよ、吟子。
吟子祖母
ほやけど、それだけじゃないやろ?
吟子祖母
人の人生は長い。
吟子祖母
私が芸楽部にいたのは長い人生のうち、たったの3年間やったけど。
生きとる限り、人は何度でも花咲きたいと願うものや。
吟子祖母
すべての人が花咲くためのイベント。
ふふ……。 面白い話しやがいね。
吟子祖母
この年になって、また春がやってくるなんてね。
吟子祖母
町内会や商工会には、私から話をつけとくしね。
今と同じ話をすれば、きっと、みんなやる気になるわ。
吟子
おばあちゃん……!
吟子祖母
メリットも大事やけどね。 それ以上に、みんな、
この街が大好きだからやっとるげん。
吟子祖母
いや……私たちの孫であるあんたが、この街の人とおんなじねんね。
吟子
そのときには皆さんも、自分の花を咲かせてみませんか!
吟子
私は、このBloom Daysで、
来てくれた人たちの笑顔を花咲かせたいと願ってました!
吟子
そして、私たちも、一緒にやる皆さんも、
このイベントに関わる全員が花咲けるようにと……!
吟子
そして私は、
たくさんの笑顔が花咲いたところを確かに見ることができました!
吟子
でも、その花は、放っておいたらすぐに枯れて、
忘れ去られてしまうんです……!
吟子
このBloom Daysで、皆さんが、同じ花を見たと思ってくれているなら……
その花が忘れられたら寂しいと思ってくれたなら……!
吟子
来年も、再来年も、その先もーー。
何度でも花咲いてほしいと願うなら!
吟子
そのためには、私たちのひとり、ひとりが、
自分から花咲くしかないんです!!
吟子
それができれば……ここにいる全員が、本気で花咲いてくれるなら!
吟子
きっと、私たちが見た花は、
どれだけ年月がたっても忘れ去られることはありません!
吟子
何度だって繰り返し、咲き誇れるはずです……!
すると、拍手の音が聞こえ始め、見る間に広がっていき、全ての聴衆の熱を帯びた、割れんばかりの拍手になる。
吟子
……っ。
拍手が収まると、吟子、穏やかな顔になって、今までより静かに話し始める。
吟子
……ありがとうございます。
吟子
……Bloom Garden Partyは、もともと、私の先輩の夢でした。
吟子
ううん、私だけじゃなくて……。
吟子
…スクールアイドルクラブが大きな壁にぶつかったとき
乗り越えるきっかけをくれたのは、いつも、その先輩で……。
吟子
太陽みたいにまぶしくて……いつも、力強い笑顔で、
私の背中を押してくれる人なんです。
吟子
今は……金沢と同じぐらい、大好きなひとです。
吟子
先輩が私を花咲かせてくれたように、
私もたくさんの人を花咲かせていきたいんです。
吟子
だから、先輩の夢を受け継ぎ、そこに自分の夢も乗せて……。
吟子
先輩が卒業しても、私が卒業したその後も、
私はBloom Garden Partyという夢を見たいです。
吟子
きっとそのときには、私と同じ夢を見てくれる人が、たくさんいて、
そんな人たちと一緒に、何度でも花を咲かせることができるんだって……
そう、信じてます!
吟子
たとえ、私がいなくなっても、その先もずっと受け継いで、
イベントを続けていくことができるように! 新しい伝統を、作りたいんです!
吟子
だから!
皆さんにも私のことを信じてもらえるように、これからも、がんばります!
先ほどの割れんばかりの拍手とは違う、温かい拍手が、さざ波のように広がっていく。
蓮メンバーたちも温かい笑みを浮かべて拍手を送っており、花帆も拍手を送りながら、目を細めている。
吟子
Bloom Days実行委員長。
蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ104期生、百生吟子でした。
吟子
本日は、ありがとうございました!