第6話『未来への花』
PART 9
姫芽 | 吟子ちゃん! |
吟子 | わっ。 |
姫芽 | よかったよ! ほんとに~! 一世一代の名演説! 痺れちゃった~! |
吟子 | そ、そう? |
泉 | いやはや、爆弾発言がいくつも飛び出したけれど。 |
小鈴 | 吟子ちゃん! Bloom Garden Partyを、何年も何十年も続くお祭りにしたいって!? |
吟子 | ああ、うん。 |
吟子 | 私の夢を叶えるならやっぱり、そうしなきゃ、って。 |
小鈴 | 蓮ノ空を卒業した後も!? |
吟子 | うん。 |
小鈴 | そっか……そっか! 吟子ちゃんの、おっきなおっきなチャレンジ、だね……! |
小鈴 | すごいよ、ほんとに…… 吟子ちゃんは、徒町の友達で、憧れで、誇りで……! |
小鈴 | ずっとずっと、応援するから! |
小鈴 | 徒町にできることがあったら、なんでもするからね! |
吟子 | ……ありがと、小鈴。 |
セラス | 吟子先輩、でっけえ……。 なんちゅー夢を掲げるお方だ……。 |
泉 | そうだね……本当に果てしない話だけれど、立派だよ、吟子さん。 |
泉 | まるで初めて会ったときとは、別人みたいだ。 いや、私が見抜けなかっただけか。 |
泉 | あなたの胸の中には、それほど大きな野望が眠っていたんだね。 |
吟子 | ……蓮ノ空で過ごした毎日の、おかげだよ。 |
吟子 | まっすぐに夢に向かう先輩や仲間たちの姿を見て、 私も、ちょっとずつ変わることができたんだと、思うんだ。 |
泉 | ……そうか。 それはなんとも、希望に満ちた言葉だね。 |
さやか | 会場の人たちもみなさん、心を打たれた顔になっていましたよ。 わたしたちと、同じように。 |
さやか | 吟子さんの気持ちが伝わった証拠です。 本当に、よくがんばりましたね。 |
瑠璃乃 | ねー、みんなやる気満々になってたよね。 |
瑠璃乃 | 一年生のときから見てたルリたちも、嬉しかったよ。 お疲れさま、吟子ちゃん。 |
吟子 | それは、よかったです……。 |
泉 | ま、壇上で先輩への想いを熱烈に語った辺りは、 さすがに少し恥ずかしくなってしまったけれどね。 |
吟子 | あ、あ、あ、あ、あ……! |
吟子 | 私、あんなこと言うつもりじゃなかったのに……! |
さやか | いいじゃないですか。 時には必要ですよ、ああいうことだって。 |
小鈴 | 徒町は、去年のビッグボイス選手権を思い出しました! |
姫芽 | 吟子ちゃんは、不参加だったもんね~。 |
セラス | そういえば、花ちゃんは? 吟子先輩の演説に心打たれて、どこで号泣してるの? |
さやか | 号泣してるかはわかりませんけど……。 |
瑠璃乃 | さっき、実行委員の人に声を掛けられてたけど~。 |
吟子祖母 | 吟子。 |
吟子 | あ……おばあちゃん。 |
吟子祖母 | いい、ステージやったね。 |
吟子 | う、うん……。 |
吟子祖母 | それに、いい仲間をもってんね。 |
吟子 | うん! |
吟子祖母 | それで、ちょっと聞きたいことがあるげんけど。 |
吟子 | あ、それ。 |
吟子祖母 | あんたが作ってきた資料ね、 ちらっと目を通してんけど、なかなかよくできとるわ。 |
吟子祖母 | 特に、動画で金沢の名所や名産品を紹介するって辺り。 面白そうやがいね。 |
吟子 | ほんと!? よかった! |
吟子 | じゃあ、早速動画を作らなくっちゃ。 小鈴も姫芽も、よかったら手伝ってくれる? |
小鈴 | それはもちろん! |
姫芽 | まだまだ忙しさは続きそうだね~。 |
吟子 | あ、でもまずはいろんなところに許可を取らなくっちゃだよね。 おばあちゃんは、紹介したい名産品とか、ある? |
吟子祖母 | ほやね、ひとつ、これだけは紹介してほしいものがあるね。 |
吟子祖母 | 蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ。 |
吟子 | ……えっ? |
吟子祖母 | 芸楽部時代から名前を変えて、バトンを受け取りながら、続いてきた。 金沢が世界に誇る伝統の文化やわ。 |
吟子祖母 | どうけ? まずはあんたたちのライブを、この地元金沢から発信してみる、っていうのは。 |
吟子 | で、でも……! |
小鈴 | いいじゃん、吟子ちゃん! やろうよ! |
吟子 | 小鈴!? |
小鈴 | せっかくおばあちゃんがこう言ってくれてるんだから! 徒町も動画を作るの、手伝うからさ! |
吟子 | あれ……、でもそれって……。 |
姫芽 | うん~! |
姫芽 | ライブを動画化した映像作品…… つまり、Fes×ReC:LIVE再び! ですね~! |
泉 | ああ、なるほど。 ハスノソラファンタジーで使った技術だね。 確かにそれなら、金沢の紹介を盛り込むこともできそうだ。 |
姫芽 | そうそう~! あれと同じことをやりましょうよ~! それだったらアタシも小鈴ちゃんも、制作のお手伝いができると思いますし~! |
小鈴 | 姫芽ちゃん天才! |
姫芽 | えへへ~。 |
吟子 | で、でも、いいのかな……。 最初に紹介するのが、私たちのライブなんて……。 |
吟子祖母 | どしたん? 自信ないがんけ? あんたの大好きな先輩ならきっと、とっとと準備を始めとるよ。 |
吟子 | おばあちゃんまで! |
花帆 | みんな~! |
泉 | おや、大好きな。 |
吟子 | いじっかしい! |
花帆 | うん? |
吟子 | なんでもない! |
花帆 | あ、吟子ちゃん! さっきの演説、ほんとにすごかったね! あたし、もう、もう~~…………! |
吟子 | いいから! それで、なに!? |
花帆 | あ、うん! じゃあそれは帰ってから、たっぷりね! |
吟子 | 帰ってからも、いいから……! |
花帆 | それでね、朗報!いま実行委員の人に聞いたんだけど、 Bloom Daysの開催期間、延長させてほしいって! |
瑠璃乃 | 吟子ちゃんの熱意、しっかり伝わったんだねえ。 |
さやか | ええ…… 金沢の人たちが、熱意をもって、早速立ち上がってくれましたね。 |
セラス | はい。 それならわたし言いたいことがあります。 |
花帆 | はい、せっちゃん! なんでしょう! |
セラス | 期間が延びたなら、あれもできるんじゃないでしょうか。 花ちゃんがやりたがってたーー。 |
花帆 | あ~! お花畑作るやつ! |
さやか | 来てくれた人たちに、花を植えてもらうイベントですね。 |
瑠璃乃 | いいじゃん、やろうよ! |
姫芽 | やりたいことはぜんぶやれ~! ですね~! |
瑠璃乃 | そゆこと! みらぱ魂! |
花帆 | やりたいやりたーい! |
花帆 | だったら、はいはーい! |
花帆 | ただお花を植えてもらうだけじゃなくて、 いくつかのお花の中から選んでもらって、 |
花帆 | そうしてみんなでおっきなお花畑を作り上げるっていうのは、どうかな! |
瑠璃乃 | 花帆ちゃん、さては、 今回はできないとわかってからも、ひとりでアイディア練ってましたな~? |
花帆 | だって、考えておけばいつかはできるかもしれないもんね! |
瑠璃乃 | 欲張りさんめ~。 |
花帆 | えへへ~。 まだあるよ! スクコネを通じて、もっと多くのみんなに参加してもらうの! |
さやか | どういうことですか? |
花帆 | えーと、システムから飾りたい花を選んでもらって。 あたしたちが代わりにそのお花を植えるの。 |
花帆 | そうだね……、お花に何か意味を込めてもいいかも。吟子ちゃんの呼びかけに、 「こういう気持ちで応えるよ」っていうメッセージにもなるし! |
さやか | 素敵だと思います。 みんなで作り上げるお花畑……。 まるで、Bloom Garden Partyの在り方、そのものですね。 |
さやか | ではそちらの手続きは、三年生主導で進めましょう。 蓮ノ三連華の名に、ぴったりのお仕事です。 |
花帆 | さやかちゃん、ひょっとして。 |
瑠璃乃 | その名前、いちばん気に入ってくれてるの、さやかちゃんじゃね? |
さやか | い、いけませんか!? だって、なんだか、こう、嬉しいじゃないですか! |
花帆&瑠璃乃 | あはは! |
セラス | 二年生はFes×ReC:LIVEの準備……。 三年生はお花畑イベントの準備……。 わたしはどっちを手伝えば……! |
泉 | 私はFes×ReC:LIVEを手伝うけれど。 あなたは好きな方を選べばいいじゃないか。 |
セラス | どっちもすごくやりたいから困ってるんだけど!? |
花帆 | ね、吟子ちゃん。 そしたらBloom Daysの延長期間が終わっても、お花畑は残るよね。 |
花帆 | 誰かに忘れられちゃうかもって、すごく怖いことだけど……。 |
花帆 | でも! お花畑を見たひとは、きっと何度でも、思い出してくれるよ。 吟子ちゃんの作った、最初の夢の形。Bloom Daysのイベントを! |
吟子 | あ……。 |
吟子 | 花帆先輩……まさか、最初から……? |
吟子 | もう……。 これ以上優しくされても……私、恩を返しきれませんよ……。 |
花帆 | いいんだよ、だって吟子ちゃんは! |
吟子 | ……花帆先輩の後輩、だからですか。 |
花帆 | うん! |
吟子 | ……ありがとうございます、花帆先輩。 |
吟子 | ね……おばあちゃん、だったら。 |
吟子 | 私たちのライブに、 植えてもらったお花畑を合わせて、ひとつの作品を作りたい。 |
吟子 | 金沢だけじゃなくて、来てくれた人の想いも、一緒に乗せて。 |
吟子祖母 | それは、どういう? |
吟子 | あ、えっと。 ライブの映像の背景に、お花畑を合成するっていうか……。 とにかく、そういうことができるの! |
吟子 | それだったら、金沢の新しい名所と合わせて、 来てくれた人へのお礼みたいな、そういうライブになると思うから。 |
吟子 | きっと、私たちスクールアイドルクラブじゃなきゃいけない意味が、 生まれるっていうか。 |
吟子 | Bloom DaysがBloom Garden Partyになっていくための輪を、 もっと、もっと、広げていくことが、できると思うから……! |
吟子祖母 | ……聞く前から、あんたの中で答えが出とるみたいやね。 顔が『やってみたい』って言うとるよ。 |
吟子 | ……うん、やってみたい。 みんなは、どう? |
さやか | 素敵なアイディアだと思いますよ。 |
小鈴 | ぜったいやろうよ、吟子ちゃん! |
姫芽 | 映像の合成ならアタシにお任せあれ~! |
瑠璃乃 | いいね~! それなら、そのライブ映像は、みんなで作った作品ってことになるし! |
吟子 | それにーー。 |
吟子 | Bloom Daysをみんなで作った証が、いつまでも残る……。 |
花帆 | 決まりだね! |
泉 | 情熱と情熱が響き合うと、こんなにも夢は大きく膨らんでいくんだね。 私も、いい気分だよ。 |
セラス | 蓮ノ空、最高ー! |
吟子 | それじゃ、すぐに準備にかからなくっちゃ! |
花帆 | 吟子ちゃん! |
吟子 | え、なに!? |
花帆 | 改めて、号令かけてよ! |
吟子 | えっ、号令? |
花帆 | だってこれが、吟子ちゃんの夢の続き、なんだから! |
吟子 | じゃ、じゃあーー! |
吟子 | みんな、延長期間も頑張って…… この街を、もっと、もっと、花咲かせよう! |
吟子 | Bloom the Smile! |
全員 | Bloom the Dream! |
全員 | おー!! |