第8話『今はまだ遥か幽かな光』

PART 8

117 セリフ3 人物
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  1. ……。

  2. 先輩

    キミと一緒なら天下を取れるよ! わたしは!
    一緒に天下を目指そうじゃないか!

  3. ははは、なんだよそれ。

  4. 先輩

    やったよ、泉ちゃん! わたしたち……やったんだ!

  5. 先輩

    夢がーー叶ったんだよ!!

  6. ああ……。 私たちで掴んだ、夢だ!

  7. 先輩

    泉ちゃん、どうして……。

  8. 私はもう、あなたと共には、歩めない。

  9. さようなら。

  10. 先輩

    泉ちゃん!

  11. 先輩

    泉ちゃん、ごめんね……。

  12. 先輩

    あなたも、きっと……自分の夢を! 自分だけの夢を、見つけてね!

  13. ……先輩。

  14. いったい私は……。
    いつになれば、この呪いが晴れるんでしょうか。

  15. それとも……あの時の決断は、間違っていたんですか? 先輩。

  16. 姫芽

    ~!

  17. ……え?

  18. 姫芽

    いたぁ~!

  19. ……姫芽、ちゃん?

  20. 姫芽

    はぁ、はぁ……。 やっぱり、ここだった……。

  21. どうして。

  22. 姫芽

    ふへへ……。 もし間違ってたらみんなを巻き添えにしちゃうから……
    アタシひとりで、来ちゃったよ~。

  23. 姫芽

    事情は、せらりんから聞いたよ~。
    蓮ノ空、辞めようとしてるんだって~?

  24. ……。 ああ。

  25. 姫芽

    ふぅん。
    もう、決めたこと~?

  26. そうだ。

  27. 姫芽

    じゃあ、しょうがないっかぁ~。

  28. ……私を連れ戻しに来たんじゃないのか?

  29. 姫芽

    戻ってくる気があるなら、そうするけど~?

  30. ……。

  31. 姫芽

    アタシは、まあ、それも仕方ないのかな~って思うよ。
    事情は人それぞれ。

  32. 姫芽

    いずみんとは仲良くなれたから、寂しいのは同じだけどね。
    どこに行ったって別に、ネットでは繋がってるわけだし。

  33. ……あなたは話が早くて助かるよ、姫芽ちゃん。
    私とあなたは、最初からどこか、似ているところがあったから。

  34. 姫芽

    そ~だね。

  35. 姫芽

    ただ、せらりんは傷つくだろうね~。

  36. ……手遅れになるよりは、よっぽどいいさ。

  37. 姫芽

    その考え方も、間違ってないと思うよ~。

  38. 姫芽

    ただ、吟子ちゃんならこう言うだろうね。
    『逃げるの?』って。

  39. 姫芽

    小鈴ちゃんなら、こう言うかな。
    『きっとなんとかなるよ!』って、力強い笑顔で笑って、さ。

  40. ……なにが言いたいんだ、姫芽。

  41. 姫芽

    アタシの両親はね、
    アタシが小さい頃にとっても遠いところに行っちゃったんだ。

  42. 姫芽

    優しくて、大好きだったお父さんとお母さんに、もう会えなくなって……。
    毎日、ふさぎ込んでた。

  43. 姫芽

    そんなアタシを救ってくれたのは、
    お姉ちゃんが買ってくれたゲーミングPC。

  44. 姫芽

    そのおかげで、また友達ができた。
    たくさんの人と繋がることができた。

  45. ……それが?

  46. 姫芽

    でもね、去年。
    どうしてもスクールアイドル活動がうまくいかなくて悩んだアタシは、
    スクールアイドルのためにゲームを捨てようとしたんだよ。

  47. 姫芽

    どっちも中途半端になるぐらいなら、なにかひとつに打ち込むのが正解。
    そう思い込んで、ね。
    だけど結局、それも間違いだった。

  48. 姫芽

    ひとりで思いつめてるとね、見えるものも、見えなくなっちゃうんだよ。

  49. ……それでもあなたには、スクールアイドルが、あったんだろう。

  50. 私には、なにもない。
    なにもないんだ。

  51. 姫芽

    そう思い込んでるのは、いずみんだけだよ。

  52. 誰かの夢に寄生することしかできない私は、あなたとは違う!
    蓮ノ空に来た私の選択は、そもそもが間違いだったんだ!

  53. 姫芽

    だからぁ!
    それが違うって言ってるんでしょ! 泉!

  54. 姫芽

    今でも思うよ、アタシは!

  55. 姫芽

    もしゲームを捨てて本気でスクールアイドル一本に打ち込めば、
    もっとうまくいってたのかな、とか!

  56. 姫芽

    アタシがもっといい子にしてたら、お父さんともお母さんとも、
    今も一緒にいられたのかな、とかさぁ!

  57. 姫芽

    だけど!
    人生には、成功も間違いも、ない!

  58. 姫芽

    どんな不幸が襲ってきても!
    ただ自分の選んだ道を正解にするために、毎日がんばるんでしょ!

  59. だったら!

  60. 私はどうしてこんなに苦しいんだ!
    なにひとつ、捨てたくなんてなかった! 先輩と演劇を続けていたかった!

  61. だが、仕方なかったんだ!
    だったらこれが正解だったって、そう自分に言い聞かせるしかないだろう!

  62. あの時、他にも道があったのなら……私は、私は……。

  63. あまりにも……救われないじゃないか……。

  64. 姫芽

    ……泉。

  65. 姫芽

    『やりたいことをやれ』。

  66. 姫芽

    それが、アタシが蓮ノ空に入って教えてもらった、偉大な先輩方の言葉。

  67. 姫芽

    見てればわかるよ。

  68. 姫芽

    泉が蓮ノ空を離れたくないと思ってるのも、
    スクールアイドルクラブの毎日を、楽しいと思ってくれてるのも。

  69. 姫芽

    アタシは、人の楽しいって気持ちに、敏感だからさ。

  70. 姫芽

    その気持ちを押し殺して、
    誰かのために行動してる人は、ちょっと見過ごせないんだ。

  71. 姫芽

    それが友達なら、なおさら、ね。

  72. あ……。

  73. 姫芽

    ねえ、いずみん。

  74. 姫芽

    アタシたち、まだ人生の半分も生きてないんだよ。
    その中で、何百回も、何千回も間違ったって思うんだろうけどさ。

  75. 姫芽

    ゲームは、始まったばかりなんだよ。

  76. 姫芽

    最後まで、どう転ぶかなんて、ぜんぜんわかんなくない?

  77. ……人生をゲームに例える、あなたらしい言葉だ。

  78. 姫芽

    だからね。 諦めちゃダメなんだよ。
    ぜったいに、自分のことだけは。

  79. 姫芽

    去年、竜胆祭の後で、いずみんに言われたよね。
    アタシは肝心なときに人に気持ちをぶつけることができないって。

  80. 姫芽

    あのときは、すごく悔しかった。
    お前にアタシのなにがわかるんだ~、って思ったよ、正直。

  81. 姫芽

    だけど、それだってほら、乗り越えられた。

  82. 姫芽

    どんなに今がつらくても、苦しくても、
    かじりついてさえいれば、どこかできっと逆転できるんだ。

  83. 姫芽

    それが、人生ってゲームだと、アタシは思う。

  84. 姫芽

    少なくともアタシは、その気持ちで生きてきたよ。
    今も、生きてる。

  85. 姫芽

    最後に勝つまで、何度だってチャレンジできるんだよ。
    気持ちさえあれば、ね。

  86. それは、どうすれば最後に、勝ったって思えるのかな。

  87. 姫芽

    そんなの、決まってるっしょ~!

  88. 姫芽

    『楽しかった』ってそう思えたら、全員ウィナー!
    大勝利だよ~!

  89. ……そうか、『楽しかった』って、そう思えたら、か……。

  90. そうか……そうか。

  91. 私はきっと、心のどこかでこう思っていたんだ。
    こんな自分が救われるべきではない、と。

  92. 先輩の夢を奪った私を、私自身が許せなかった。

  93. ずっと……世界を灰色に見せていたのは、私の目だ。
    私がこの世界を、拒絶したんだ。

  94. どうりで、空っぽなわけだ……。

  95. 姫芽。
    ようやく、私のやるべきことがわかったよ。

  96. 私は、自分で自分を救わなければ、ならなかったんだ。

  97. 本当にリベンジするべきは、去年、夢を叶えられなかったことではなく……。
    最初に心を閉ざしてしまった私自身だ。

  98. どんな不幸に心を歪められたとしても、諦めず、
    私自身の光に、手を伸ばさなければならなかった。

  99. しっかりと自分の気持ちに寄り添い、正面から向き合って……。

  100. そうして、私だけの道を見つけ出し、
    これが正解だと信じて、進むしかなかったんだ。

  101. 姫芽

    ……うん。

  102. 姫芽

    もし迷って、なにも見つからなくて、不安になったそのときはね。
    いつだって誰かがそばに、いてくれるんだから。

  103. 姫芽

    『あなた自身を信じてあげて』って、そう言って、背中を押してあげるために。

  104. 姫芽

    アタシや吟子ちゃん、小鈴ちゃん。 かほせんぱい、さやかせんぱい、
    るりちゃんせんぱい。 学校のみんな、そして。

  105. 姫芽

    セラスちゃんが、ずっと、そう叫んでくれてたんだから。

  106. ……ああ。
    そういう意味だったのか……。

  107. スクールアイドルを好きにさせるということは、すなわち。

  108. ありのままの桂城 泉を、
    どうしようもなく肯定する言葉だったんだな……。

  109. ありがとう、姫芽ちゃん。 みんなに伝えてくれ。
    私には、やることができた。しばらく蓮ノ空には戻れない、と。

  110. 姫芽

    ……どうするつもり~?

  111. もう一度、先輩に会ってくる。

  112. 姫芽

    ……!

  113. そして、向き合うんだ。

  114. どんなに罵声を浴びせられようが、突き放されようが。
    そうしなければ、私は前には進めない。

  115. 過去を乗り越え、この目を開く。
    先輩に預けた夢を、色彩を……人生を、取り戻すんだ。

  116. これが私の、最後のリベンジだ。

  117. 行ってくるよ。
    私自身を、救うためにーー。