第6話『わがままon the ICE!!』
PART 2
花帆 | わー……!! ほんもののリンクだー……!! |
花帆 | って、さむ! |
さやか | ほんもののリンクですからね。 |
さやか | すー……。 |
さやか | 冷たい。変わらないな……ここは……。 |
花帆 | ねえねえさやかちゃん! |
さやか | わっ、はい、なんでしょう。 |
花帆 | 滑りに来たんだよね!早く行こー! |
さやか | ……。 |
さやか | ふふっ、そうですね。 では、最初はハの字で立ってみましょう。 |
花帆 | よーっし! |
花帆 | あだっ!? |
さやか | 花帆さん!? |
花帆 | 結構難しいねぇ。えへへ。 |
さやか | 慣れれば、滑り始めるくらいまではすぐですよ。 |
さやか | 転んでも頭を打たないようにってことだけ気を付けて、 ゆっくり滑っていきましょう。 |
花帆 | うん! さやかちゃんさやかちゃん! |
さやか | なんですかなんですか。 |
花帆 | あたしも頑張るけど…… さやかちゃんがフィギュアスケートしてるとこ見たいな! |
さやか | ……わたしが。 |
花帆 | うん。ダメかなあ。 |
さやか | そう……ですね。今は人も少ないみたいですし。 ……ちょうどいいと言えば、ちょうどいいですね。 |
さやか | 分かりました。 あまり、期待しないで見ていてくださいね。 |
花帆 | うんうん! |
さやか | あはは……。 |
さやか | では……行きますね。 |
さやか | 久しぶりだけど、思ったより動けそうな気がする。 |
さやか | ……よし。 |
花帆 | わー!すごいすごーい! フィギュアスケートみたい! |
さやか | みたいじゃなくて、そうなんですけど。 |
さやか | でも……花帆さんが楽しんでくれているんだから、 もう少し頑張ってみましょうか。 |
さやか | わたしの、フィギュアを! |
花帆 | すっごーい!!さやかちゃーん!! |
さやか | ふふっ。 ……なんだか、楽しいな。 |
花帆 | ……きれー。 |
つかさ | ねー。すっごい綺麗ですねー。 |
花帆 | ふぇ? |
花帆 | あ、はい!そうですね!すっごい綺麗です! |
つかさ | ふふっ。 |
つかさ | ほんと……なんていうかー。 さやかの几帳面な感じとか、繊細な感じが出てるというかー。 |
花帆 | それに、さやかちゃん楽しそうで! |
つかさ | そうですねー。……ほんと、変わったなー。 |
花帆 | ……あの、さやかちゃんのこと知ってるんですか? |
つかさ | はい、結構知ってますよー。 |
つかさ | でも、前のさやかとは大違い。 もう、上手くやらなきゃー、とか思ってないんじゃないかなー……。 |
花帆 | え? |
つかさ | あー、ごめんなさい。お邪魔しちゃいましたねー。 |
花帆 | あ、あの、一つ聞いてもいいですか? |
つかさ | なんでしょー? |
花帆 | さやかちゃん、前とは大違いって……。 |
つかさ | もちろん誉め言葉ですよー。 今のさやかは、昔とは全然違う……煌めきがありますよ。 |
つかさ | ではではー。 |
花帆 | あっ……。 |
花帆 | 今の人……さやかちゃんの昔の友達……かな? お話ししていかなくて良かったのかな。 |
花帆 | うん、ほんとに楽しそうで綺麗で、見惚れちゃうくらいだよ。 さやかちゃん! |
花帆 | んー!楽しかったー!最後の方は、柵にも触らずに一周できたし…… ひょっとしたら次はもっと滑れるようになるかも! |
花帆 | またさやかちゃんと一緒に来たいなあ。 梢センパイと、綴理センパイも呼んだりして。 |
さやか | すみません、遅くなりました! |
花帆 | んーん、全然待ってないよー! でも、凄い囲まれてたね、さやかちゃん! |
さやか | そ、そうですね。 やっぱり久々に顔を出したからというのもありますが…… |
さやか | 大会に出るのかどうかを聞かれてしまって。 |
花帆 | 大会? |
さやか | はい。実は週末に地区の大会があるんです。 |
花帆 | えー!?そ、そうだったの!? ごめんねほんとにわがまま言ってついてきちゃって! |
さやか | ああ、良いんです良いんです。 それは、本当に。 |
さやか | なかなか踏ん切りがつかず、 今日まで引っ張ってしまったのはわたしですから。 |
花帆 | そ、それはスクールアイドルの練習が忙しくて、とか……? |
さやか | いえ。むしろ、あのスクールアイドルとしての楽しい毎日が無ければ、 わたしはここに来ることもできなかった……。 |
さやか | だから花帆さん。 今から、あまり良くないことを言います。 |
花帆 | えっ、あ、はい。 なんでしょう……? |
さやか | わたし、今日うまく滑れないと思っていました。 |
花帆 | えっ? |
さやか | もうわたしの身体はフィギュアから離れてしまっていて、 大会なんて夢のまた夢なんじゃないか……そんな風に、思っていました。 |
さやか | そして……それならもう、諦めもつくのではないか、とも。 |
花帆 | ……で、でも……。 |
花帆 | でも!すごく綺麗だったよ、さやかちゃん! |
さやか | ありがとうございます。 ……実は、そうなんですよね。 |
花帆 | へっ? |
さやか | こんなにブランクが空いたのに、 今日のわたしを見たみんなが、前よりずっと良いと言ってくれました。 |
さやか | だから、ぜひ大会に出てみないか、とも。 これはひとえに、スクールアイドルとして培った経験のおかげです。 |
花帆 | そっ……か! そっか! |
花帆 | そっかあ、スクールアイドルで頑張ったから……。 じゃあ、本当に良かったね、さやかちゃん! |
さやか | はい!だから、出てみます。大会。 わたし、頑張りますね! |
花帆 | そうだね!うん、応援してる! さやかちゃん、こんなに綺麗なんだもん。きっとすごい結果残せるよ! |
さやか | ありがとうございます。 では、帰りましょうか。 |
花帆 | うんっ。 試合観に行くねー! |
さやか | それは緊張しますね……! |
梢 | 村野さん、大活躍ねぇ。 |
花帆 | 凄かったですよ!きらきらしてて! さやかちゃん、本当に綺麗で……。 |
梢 | 私も、用事が無ければ行きたかったわ。 もう少し、部活会も時間に融通が利けば……。 |
さやか | すみません、遅くなりました! |
梢 | あら、主役ね。 |
綴理 | え、なに? |
梢 | あなたじゃないわ。 ……また村野さんに迷惑かけて。大会の疲れもあるでしょうに。 |
さやか | 大丈夫です乙宗先輩。これも仕事ですから。 ん?仕事?夕霧先輩連れてくるのが……仕事……? |
綴理 | ……これは? |
花帆 | さやかちゃんが優勝した記事ですよ!一昨日のフィギュアの大会で! |
綴理 | あー……。 さや、おめでと。 |
さやか | はっ。 |
さやか | はい、ありがとうございます!といっても、 夕霧先輩には昨日からたくさんのおめでとうをいただいていますけども。 |
花帆 | 次は梢センパイも綴理センパイも、一緒に応援行きましょうね! |
さやか | あ、宜しければ是非、お願いします! |
梢 | そうね。私も楽しみだわ。 |
綴理 | ん。さや、また大会あるの? |
さやか | はい、実は色々連絡が来てまして。また来月にも県大会があります。 なので今日も、練習後にリンクに行く予定です。 |
梢 | 頑張っているのね。応援しているわ。 |
さやか | ありがとうございます! より一層、身が引き締まる思いです! |
梢 | あらあら。 |
梢 | 花帆さん、私たちも負けていられないわね。 そろそろまたライブイベントもあるのだし、頑張りましょう? |
花帆 | ライブ! はい、さやかちゃんに負けないくらい頑張りましょう! |
さやか | そ、そんな、勝ち負けの話じゃ! |
梢 | ふふふ。そうね。 でも、こんなものを見せられてしまったら、私たちも気持ちが入るわ。 |
梢 | ね、綴理。 |
綴理 | 次のライブイベント……。 |
綴理 | ん、そだね。 |
梢 | ええ。 |
綴理 | さや。今から練習だけど、疲れとかない? |
さやか | はい、大丈夫です! 今日もご指導のほど、宜しくお願いします! |
梢 | 頑張ってね、村野さん。 今は忙しい時期でしょうけれど、落ち着いたら、大会のお祝いをしましょう。 |
花帆 | 色々考えておくね、さやかちゃん! |
さやか | ……! はい、ありがとうございます! |
綴理 | ……。 |