第13話『追いついたよ』
PART 8
花帆 | また会おうねー!! 絶対だよー! ぜったいだからねえー! |
梢 | ……ふぅ、やり切ったわね。 慈、大丈夫? |
慈 | 可愛いめぐちゃんにかかればこのくらい……! どうってこと……ないんだよ……!! |
梢 | いつでも代わるから言ってちょうだいね。 |
慈 | 気持ちだけ受け取っておく……! くっそぉ、昔はもっと体格差あったからへっちゃらだったのに……ううっ…! |
梢 | ふふっ。 ……ねえ、慈。 |
慈 | ん? なに、手短にお願い。 |
梢 | 良かったわね。 |
慈 | あの曲のこと? ん~~~…………ま、そうかもね。 |
慈 | 割り切るとかじゃなくても、よかったのかもね。 でも、どうかな。 綴理みたいなやり方は、私にはできないからなあ。 |
梢 | ……私もね、 センパイでいることの意味をしっかり考えなくちゃって思ったわ。 責任は重いものね。 |
慈 | 今重いとか言わないでほんと。 |
梢 | ふふっ。 なんだか、ひとつ肩の荷が下りた気分だわ。 |
慈 | わざと言ってない? ねえ? |
さやか | 今日の曲……とっても良かったですね! |
綴理 | ん……。 そうだね。 ありがとう。 |
さやか | いえいえいえいえこちらこそ。 |
さやか | それが、今日の? |
綴理 | そう。 これ、さち先輩の曲。 |
さやか | えっ? |
綴理 | さちが、作った曲なんだ。 |
沙知 | ……良い、ライブだったよ。 |
綴理 | おしごと、あるんじゃないの? |
沙知 | ああ。 でも……あたしも、言えなかったことを言っておこうと思ってね。 |
綴理 | ? |
沙知 | キミはもっともっと、成長もできる。 心配しないで、さやかと、みんなと、スクールアイドル頑張って。 |
綴理 | ……ねえ。 |
沙知 | ん? |
綴理 | ……戻らないの? スクールアイドルに。 |
沙知 | なに言ってるんだい? |
綴理 | え? |
沙知 | あたしはーースクールアイドルだよ。 |
沙知 | ……今でも、そのつもりだ。 |
綴理 | でも、クラブには。 |
沙知 | ……そうだね。 最初は確かに、人身御供のようなものだったさ。 理事長の孫娘だから、方々に顔が利くから、交渉事に慣れてるから。 |
沙知 | それに……スクコネや、遠征なんかの禁止が多発しそうだったから。 生徒会長は、あたしがやるしか、なさそうだった。 |
綴理 | ……。 |
沙知 | でもね、綴理。 ……スクールアイドルって、なんだい? |
綴理 | 不完全でも熱を持ったボクたちで作る、芸術。 |
沙知 | そうだよね。 ……ボクたち、になったんだね。 |
綴理 | ……ん。 |
沙知 | 生徒会長として忙しい日々を送る中で、 スクールアイドルクラブから離れたことを何度もつらく思った。 |
沙知 | ……というか、 スクールアイドルを想わなかった日なんて一度もなかった。 |
沙知 | でもね……そうやって過ごしたこの1年で、 あたしも気付いたことがあるんだよ。 |
綴理 | ……なんだろう。 やったことないからわかんない。 |
沙知 | ははっ、そうだね。 |
沙知 | あたしがやったことは、 |
沙知 | たとえば今回みたいにオープンキャンパスを作ったり、 |
沙知 | 学校の体制と向き合って、 スクールアイドルクラブの活躍できる場所を守ろうとしたり。 |
沙知 | 試練とか言って一年生にちょっかいかけたり。 |
沙知 | ……それから、こうやって曲を託したり。 そういうことを、やってた。 ……やってて、楽しかった。 |
綴理 | ……ぁ。 |
沙知 | ね、綴理。 こうやって裏側からスクールアイドルを支える仕事は、どうかな。 |
沙知 | 綴理にとっては、スクールアイドルじゃないかな? |
綴理 | ……それは、そうかも。 |
沙知 | スクールアイドルは、不完全でも熱を持ったみんなで作る芸術。 綴理ならきっとそう言ってくれると思ったよ。 |
沙知 | だからあたしは、クラブに戻らなくても、 スクールアイドルのつもりだ。 |
沙知 | もちろん、自分をスクールアイドルだと思うかどうか…… その価値観は人それぞれだけどね。 |
綴理 | うん。 |
沙知 | だからさ、綴理。 あたしも頑張る。 綴理も、頑張れ。 |
綴理 | ……うん。 ありがと、さち。 |
沙知 | それじゃあ、あたしもあたしなりのスクールアイドル活動をしてくるよ。 また……その。 |
綴理 | ? また明日。 |
沙知 | ああ、また明日、だ! |
綴理 | ……帰ろうか。 |
さやか | はいっ! ……ふふっ。 |
綴理 | ……さや、ご機嫌。 |
さやか | 分かりませんか? 理由。 |
綴理 | ……分からない。 |
さやか | 隣にいるのが、全てですよ♪ |