第14話『Link!Like!』

PART 2

瑠璃乃
えっと~、つまり~。
瑠璃乃
学校側に『ネット禁止令』を、
どうにかして引っ込めてもらわなくっちゃいけなくって。
瑠璃乃
そのための手段を探すってことだよね。
花帆
そう! そして、いちばん手っ取り早いのはやっぱこれ!
花帆が手に持った紙の束をふたりに見せつける。
10月でチラシを配ったことを思い出して、暗い顔になるさやか。
さやか
署名ですか……。
花帆
うん! ネット禁止なんて聞いたら、
みんな署名活動を手伝ってくれるに決まってるよ!
花帆
こんな、いつまで経っても
隣にショッピングモールを作ってくれない学校なんて……!
蓮ノ空に対するヘイトを思い出して、燃え上がる花帆。
花帆
学校の横暴を、許すなー! だよ!
ハテナマークを頭に浮かべる瑠璃乃。
瑠璃乃
しょっぴんぐもーる??
さやかは花帆の怒りがヘンな方向に向かわないうちに、やることをやっちゃおうと声を上げる。
さやか
と、とりあえずお願いしていきましょう!
さやか
ふぅ……よし、いきます!
瑠璃乃
あのさやかちゃんが、メチャあぐれっしぶ……!
さやか
ビラ配りで鍛えさせられましたからね!
すみませーん! 署名をお願いしまーす!
花帆
お願いしまーす!
瑠璃乃
おーっし、そんじゃあルリもやってやりますかぁ!
あっという間に時間経過。
場面転換。生徒会室。
花帆
え!? 意味ないんですか!?
さやか
こんなに集めたのに……。
生徒会室の端っこにはダンボール。その中には、署名活動で充電の切れた瑠璃乃が入っている。
瑠璃乃
あつめたのに。
沙知
いやあ、集めてくれたことは、ありがとう。
でも実は、嘆願書って毎年すごい数が提出されてて……。
ぺらと見せられた紙を読み上げる。
さやか
『寮の食事をもっと豪華に』
花帆
こっちは『授業を短くしてほしい』だって。
交互に読み上げるさやかと花帆。ダンボールの中からぽつりと声がする。
瑠璃乃
……めぐちゃんじゃないよね?
沙知
そ、そうではないけど。
沙知
でも、そもそも『ネット禁止令』なんて出したら、
生徒から猛反発来るのなんてわかっているだろうしね……。
一応手伝ってくれた子たちに、焦りながらお礼を言う沙知。
沙知
あ、で、でも!
学校のために動いてくれたっていうのは、本当に嬉しいんだ! ありがとう!
これ以上生徒会長に文句を言っても仕方ない。花帆は切り替えてゆく。
花帆
ええい、次の作戦!
場所は放送室内の学校スタジオ。
花帆と瑠璃乃が放送室のブース前で、さやかと梢の様子を窺っている。
ぴんぽんぱんぽーん、という校内放送からスタート。
さやかと梢はどちらもわざとらしい演技をしている。
さやか
と、というわけで! 本日は、成績優秀な乙宗 梢先輩に、
勉強法のコツについてお聞きしたいと思います!
さやか
よろしくお願いします、梢先輩!
え、ええ! 任せて頂戴!
今の時代と言えば、やっぱりネットよね!
さやか
おお……! ネットですか!?
ええ! 学校の授業だけじゃカバーできないところが、
なんだって動画でアップロードされていてね。
すごく勉強の役に立っているの! ネットが!
さやか
そ、それは、ぜひぜひわたしも真似してみようと思います!
ネットを使った勉強法を!
放送作家のような顔をしている花帆が、ぐっと拳を握る。
隣に座る瑠璃乃はラジオプロデューサーのような顔で困惑。
花帆
どう、この作戦!
瑠璃乃
これは……なんだい? 花帆ちゃん。
花帆
全校生徒と先生たちに、猛アピールだよ!
花帆
成績優秀なふたりの言葉だから、説得力がすごいよね!
これはネットの勝利!
さやか
あ、じゃあわたしにも
参考にしているチャンネルを教えてもらってもいいですか!?
ええ、もちろん! ちょっと待っててね……。
ええと、ええとね、まずは動画アプリを開いて…………あのね、
ええとね……ええと……。 (もたもた)
不穏な空気が漂い出す。瑠璃乃は微妙な顔で、こずさやを指差す。
おかしいわね、普段はもっとサクッと開けるのに……。
どうしたのかしらね、きょうは……。
瑠璃乃
やばくね?
頭を抱える花帆。
花帆
し、しまったぁ! 梢センパイが機械オンチなの、忘れてたー!
その先では、梢が必死になっていた。真面目ではあるのだ。
本当よ、本当にネットを見ながら勉強してて……本当に! 本当なの!
さやか
お、落ち着いてください! 梢先輩!
あの! えと! それではみなさん、また!
校内放送がブツッと途切れる。
花帆
あわわわ。
瑠璃乃
……とぅーびーこんてにゅーど! 次いこ、次!
慈がデスクトップパソコンを叩いている。その後ろから覗き込んでいるスクールアイドルクラブ全員。
梢はしょんぼりと落ち込んでいる。
ごめんなさい……。
梢に必死にフォローする花帆。
花帆
ぜ、ぜんぜん! がんばってくれましたよ!
それもこれもぜんぶネット禁止令が悪いんですからね!? ね!?
慈が振り返ってきて、お金のマーク。
ま、よーするに、ネットが学校の役に立ってるって思わせればいいんでしょ?
だったらやることは決まってるんだよ。
お金だよ、お金!
さやか
稼ぐんですか!? その、株とかで……!?
慈の肩を掴んで、がくがくと揺らしながら叫ぶ瑠璃乃。
しばらくあうあうと揺らされた慈が、モニター画面を指差す。
瑠璃乃
ぜったいやめたほうがいいよめぐちゃん!!
ぜったい向いてるわけがないよぜったい!!
めちゃめちゃ言うじゃん、るりちゃん。 じゃなくて、ほら。
綴理
こないだの、オープンキャンパスの動画だ。
そそそ。
こいつを編集して、蓮ノ空の新入生募集の動画を作れば……。
来年からわーっと新入生が増えて、学校はいっぱいお金が儲かって、
ネットすごーい! ってなるってもんだよ!
花帆
おお……お金はともかく、なんだかよさそうですね!
瑠璃乃
ルリ、めぐちゃんのことまだまだ甘く見てたみたいだよ……!
ほめそやされて調子に乗る慈。
これが、ほんとに頭がいいってことなんだよ! あはは!
そこに、綴理がぽつりと指摘する。
綴理
だめかも、それ。
む。
さやか
どうしてですか? 綴理先輩。
綴理
屋根が足りない。
はぁ? なに言って……。
……蓮ノ空は全寮制だから、部屋が足りないってことね。
梢が告げた言葉に、その場にいる全員が慈の作戦の失敗を理解する。
花帆&さやか&瑠璃乃&慈
あ。
足りない分は相部屋にしてさ!
それでも足りなければ、食堂に布団でも敷いて寝かせればいいじゃん!
瑠璃乃
めぐちゃん甘かったよ。 素直に負けを認めようよ。
あくまでも真面目に検討する綴理に、無理そうだと言う梢。
綴理
つまり、まずは署名活動で寮の建て増しを要求するところから?
今年度中に終わりそうには、ないわね…………。
作戦は失敗!
ぐぬぬぬぬぬ。
部室に戻ってきて、全員で作戦会議。
沙知はいない。
慈のがんばりをフォローするみたいに、声を上げる瑠璃乃。
瑠璃乃
でもでも~、そーゆーこと、だよね?
投げやりな声をあげる慈。
なにがー?
瑠璃乃
えーと……めぐちゃんとか花帆ちゃんが言ってた通りさ?
学校が『いえあ! ネット最強!』って思わないといけないのかなーって。
ネットがあることが学校側の利益にならなくっちゃいけないってことね。
言語化が上手な梢に指を立てる瑠璃乃。
瑠璃乃
それっす!
さやか
そもそも蓮ノ空女学院は、
どんなことなら利益だと考えてくれるんでしょうか。
綴理
蓮ノ空女学院は芸術・文化に秀でた学校で、
毎年たくさんの賞を受賞している……だって。
綴理
学校案内にも、いちばんにそれが載ってた。
美術部とか書道部とか、吹奏楽部とか強いもんねー。
さやか
ってことは、やっぱりそっち方面ですよね。
花帆がぶつぶつとつぶやきながら、考え込む。
花帆
そっち方面……。
花帆
……そっか、ネットを使って、賞を受賞……。 大会をネットで……。
一緒にやれば、どっちの問題も解決できる……かも!?
勢いよく梢を見やる花帆。
花帆
梢センパイ、あの、ラブライブ!北陸大会のことなんですけど!
え、ええ。
花帆
大会って、配信で参加できたりってしますか!?
それは……大会の会場に行ってライブをするんじゃなくて、
スクコネの配信を使ってリモートで出場するってこと?
花帆
はい!
花帆の発言に、面々がざわつく。
綴理
いいね。 それ見たらおっけーくれるかも。
さやか
ネットでしかできないことで、北陸大会を優勝できれば……。
ネットの必要性は示せますし、きっと実績にもなりますよね?
それならいけそうだけど……でも、ただ配信するだけじゃだめだよね。
配信でやる意味のあるライブにしなくっちゃ!
瑠璃乃
配信でやる意味があること?
そんなの、無限にあるよめぐちゃん! だって、配信超楽しいじゃん!
花帆
梢センパイ!
……そうね。 実現可能なアイディアだと思うわ。
ぱっと花帆の顔が明るくなる。
花帆
それじゃあ!
ええ!
ラブライブ!北陸大会を優勝して、学校の『ネット禁止令』を撤廃する。
ずいぶんシンプルな話になったわね。
やりましょう、みんな。
来年度のスクールアイドルクラブをーー私たちを、この手で救いましょう。
花帆&さやか&梢&綴理&瑠璃乃&慈
おー!!