第14話『Link!Like!』

PART 7

花帆
はぁ、はぁ……はぁ、はぁ……。
花帆
よ、よっし……これで、夜の練習メニューも、おっしまーい……!
花帆
去年も、夜遅くまで受験勉強がんばってたなぁ……。
なんだか、すっごく前のことみたい。
花帆
……あたし、この学校に来て、みんなと出会って、
ちょっとは成長できたかな?
花帆
あの頃とは、もう、違うよね。
花帆
あ。
花帆
ここに咲いてたサザンカのお花、散っちゃったんだ。
こないだの、風かな……。
花帆
や、やっぱり、もう1周してこよ!
花帆
ご、ごめんなさい! 朝練に遅刻しちゃって!
昨日、遅くまで自主トレしてて、そ、それ、で……。
さやか&梢&綴理&瑠璃乃&慈
…………。
花帆
あれ……? あの、どうかしました……?
もうさすがにガマンの限界!
堪忍袋の緒が切れたってやつ!
花帆
ひっ。
慈。 落ち着いて。
これが落ち着いていられるわけないじゃん!
なんなの、今度は『外出禁止令』って!
花帆
えっ……?
さやか
今朝、掲示板に貼ってありました。
蓮ノ空女学院の生徒は有事以外の外出を禁ずる、と。
さやか
生徒に対する締め付けが、さらに厳しくなったようです……。
瑠璃乃
で、でも! ラブライブ!北陸大会の配信は学校行事だし、
ゆーじってやつだよね!? ね!?
瑠璃乃
……ちがうの?
北陸大会への出場なら、きっと、大丈夫。
……けれど、配信となるとどうかしらね……。
瑠璃乃
それじゃ、意味ない!
瑠璃乃
だってルリたちは、ネット禁止令を撤廃するために、
配信しようとしているのに……。
もう、ムリ!
やっぱ校長室に殴り込んでくる!
瑠璃乃
続くぜ、ルリも。
綴理
ボクもいくよ。
さやか
だ、だ、だめですよ!
待ってくださいー!
花帆
あの、梢センパイ……!
あたしにもなにか、できること……。
……。
とりあえず私は、ラブライブ!の運営に連絡をするわ。
万が一のことを考えて、
会場でのライブに変更することはできないか、って。
花帆
それは……。
ええ、本当に万が一のため。
ラブライブ!に出場できないっていう、
最悪の事態だけは避けられるように、ね。
もう、不戦敗なんて、まっぴらだから。
花帆
梢センパイ……。
花帆
あたしは……。
花帆
……。
花帆
みんな、あんなにスクールアイドルクラブのために、
がんばってきたのに……。
花帆
どうすればいいんだろ……。
花帆
あたしも、みんなの力になりたいのに……
方法が、わかんないよ……。
花帆
あたしは、なんにも……。
えな
おーい!
びわこ
花帆ちゃんー!
花帆
あれ? みんな……どうしたの?
しいな
どうしたもこうしたも。
外出禁止令が出たって聞いたから、つい……。
びわこ
すごく困っているだろうから、
せめて、声をかけてあげたいなって……。
えな
ごめん、私たちでどうにかできたらよかったんだけど……。
でもね、応援してるから! スクールアイドルクラブのこと!
花帆
……そっか、みんな。
うん……ありがとう。
花帆
別に! スクールアイドルクラブのみんなだって、
まだ諦めたわけじゃないから!
花帆
きっとなんとかして、名案を思いついて!
外出禁止令も、ネット禁止令も、どうにかしてみせるから!
びわこ
花帆ちゃん……。
びわこ
うんうん! 外出禁止令が出たって、
スクールアイドルクラブがなくなったわけじゃないよね!
えな
そうそう、ネット禁止令が出たって、
案外、生きていけるっていうか!
しいな
しばらく配信のことはぱーっと忘れてさ、
ライブに向けてがんばろうよ!
花帆
……配信のことは、忘れて……。
しいな
え? う、うん。 気持ちを切り替えて、
ほら、私たちも応援するから、って……花帆ちゃん?
花帆
このまま、ネット禁止令が続いたら……
ずっと、続いたら……
あたしたちのやってきたことって、どうなっちゃうんだろ……。
花帆
みんな、あたしたちのこと、忘れちゃう……?
花帆
あたしが、今までがんばってきたことも……
ぜんぶ、なかったことに……。
しいな
ごめん、花帆ちゃん、そんなつもりじゃーー。
花帆
ーーあたしっ。
えな
あっ、花帆ちゃん!
花帆
あたし、あたしっ。
花帆
こんな校門ぐらい、乗り越えて……っ。
ふにゅぬぬぬっ!
花帆
や、やっぱりムリだぁ……!
花帆
外に……出られない……。
花帆
昔と、おんなじ……。 部屋の窓から、
外を眺めることしかできなかったあの頃と、おんなじ……。
花帆
ひとりぼっち……。
花帆
お母さん……体、げんきになったよ。
みんなと一緒に、お外で遊んじゃ、だめ……?
花帆
あたし、この学校に来て、梢センパイに出会って、
スクールアイドルクラブを知って……
たくさんの人が、あたしのことを知ってくれて……。
花帆
いっぱいがんばって、変わったと思ったのに……。
こんなところで枯れちゃうの、やだ……。
花帆
きれいで、おっきな花を咲かせるはずなのに……。
誰にも見てもらえないなんて、そんなの、やだよ……。
花帆
そうだ……スクコネ……!
花帆
みんなに聞けば、いいアイディアが、浮かぶかも……!
みんなとなら……!
花帆
あっ……。
花帆
通信制限~~~~っ!
さやか
か、花帆さん! どうしてそんなところに、座り込んで……。
花帆さん……?
花帆
さやかちゃん……あたし、あたし……
みんなに忘れられちゃうよぉ~!
さやか
ど、どうしてそうなってるんですか、花帆さん!
花帆
だって、だって、みんな言ってたんだもん!
花帆
もう1週間も配信してないし!
スクールアイドルは素敵な子だってたくさんいるし!
花帆
あたし、スクコネがあったから、みんなが応援しててくれたから、
スクールアイドルでいられたんだよ……。
花帆
だからあたしのことなんて、もう誰も……誰も……。
さやか
そんなことないですよ、ぜったいに。
花帆
でも……。
さやか
……わかりました。
じゃあ、確かめてみましょう。
花帆
え……?
さやか
スマホをお借りしますね。
さやか
はいどうぞ、花帆さん。
花帆
えっ、これ……!?
花帆
どうやって……?
さやか
その、読み込み途中だったので、
花帆さんのスマホをテザリングでわたしのスマホに繋いだんです。
さやか
結果、一瞬しか表示できませんでしたけど、
うまくいってよかったです。
花帆
……。
さやか
ですから、ほら、大丈夫だって言ったじゃないですか。
さやか
花帆さんのことを、そう簡単に忘れられるわけありません。
さやか
入学してからずっと花帆さんの隣にいたわたしが、保証します。
さやか
誰がなんと言おうが、
花帆さんは立派なスクールアイドルですーー。
花帆
さやかちゃん……。
さやか
か、花帆さん……!?
花帆
ありがとうね、さやかちゃん……。
花帆
あたし、ひとりぼっちじゃなかった。
ひとりぼっちに戻るわけ、ないよね。
花帆
こんなにちゃんと、繋がってるのに。
さやか
……そうですよ、花帆さん。
わたしもいます。
さやか
スクールアイドルクラブのみんなだって、
もちろんそばにいるんですから。
花帆
うん!
瑠璃乃
花帆ちゃーん!
瑠璃乃
青い顔で走っていったって聞いて、探したよー!
瑠璃乃
ごめんねえ!
……ごめん、不安なのはみんな一緒なのに、大人げなかった。
ほら綴理も。
綴理
ボクも悪かったです。
花帆
みんな……。
また全員で作戦の練り直しね。
花帆さんも一緒に考えてくれる?
花帆
はい! もちろん!
瑠璃乃
でも、中でネットが使えなくて、外にも行けないんじゃ、
もう縮こまってるしかない亀じゃん……。
瑠璃乃
手も足も出ませんだ……。
さやか
そうですね……。
せめて、30分でもいいから、ネットに繋げられたら……。
花帆
ーー!
花帆
それだよ、さやかちゃん! さっきの!
さやか
え?
なにが?
綴理
なんのこと?
花帆
とにかく!
ーーみんながいれば、大丈夫!