第15話『夢を信じる物語』

PART 1

ラブライブ会場がパッと表示される。
何度か瞬いて、そこに花帆のナレーションが重なる。
花帆
そこは、夢のおとぎ話のような場所でした。
今この瞬間を大切に、Bloom the smile!
花帆&さやか&梢&綴理&瑠璃乃&慈
Bloom the dream!
メンバーがステージに上がる音。
ワァァァと歓声。
花帆
光が瞬くように。 星が流れるように。
すべては、あっという間の出来事で。
花帆
だから、今でも。
実感が、わいてこないのかもしれませんーー。
ピピピピ、ピピピピ、と目覚ましの音。
花帆が寝ぼけ眼で起き上がる。
花帆
あ……。
花帆
ここ、あたしの部屋……。
冬の朝の冷たさに身震いする花帆。
花帆
ううっ、さむ……。
どこか寂しそうにつぶやく花帆。
ラブライブ!本戦の敗北を思い出しながら。
(※この時点ではまだ本戦の結果は読者には明かさない。ただ、負けたのだろうな、と思わせるようなテンション感)
花帆
……そっか。
帰ってきたんだ。 金沢に。
部室にやってくる花帆。誰も居ない。
テンション感は、前のシーンの寝起きの静謐さを継続。
ガラッとドアを開く音。
花帆
……おはよーございまーす。
花帆
……あれ? まだ、だーれも……。
花帆
あ、きょうは朝練、ないんだったっけ。
花帆は手持ち無沙汰に立ちすくむ。
なんとなく部屋に戻る気も起きず、ぼんやりしている。
するとそこで、部室のドアが開く。
花帆
……そっかぁ。
あら。
花帆
あ、梢センパイ……。
梢は優しく花帆に微笑みかけてくる。
ラブライブ!本戦に敗退して、ショックを受けて部室にやってきた花帆のことを真っ先に心配してくれる。
おはよう。
どうしたの?
もしかして、眠れなかった?
花帆
あ、いえ。 そういうわけじゃ、ないんですけど……。
梢の顔色を窺う花帆。
穏やかに微笑む梢に、問いかける。
花帆
梢センパイは、なんだか、いつも通りですね。
……そう見える?
花帆
違うんですか?
部員の前だからがんばって自分を律している梢は、それが成功していることと、本当にそうだったらよかったのにね、という気持ちで苦笑いをする。
私は、スクールアイドルクラブの部長だもの。
こんなときぐらいは、しっかりしていなくっちゃ。
去年は結局、辞退をしてしまったから。
みんな、初めての経験なのよ。
梢が印象的に言う。
ここで初めて、全国大会で敗退したという情報が出てくる。
ラブライブ!の大会で、敗退するのは。
花帆がうつむく。
花帆
……そう、ですよね。
決勝まで、いったのに。
花帆
あたしは……まだ、あんまり実感がなくて。
今も足下がふわふわしてるんです。
花帆
あんなにずっと練習してたのに、
ほんとに、たった1日で終わっちゃうんだな、って……。
……そうね。
梢、思いついたように花帆に優しい声をかける。
ねえ、花帆さん。
もう少ししたら、みんなの様子を見に行こうと思うの。
花帆
え?
よかったら、あなたも一緒に来てくれない?
自分が行っても、実になることはなにもできないかもしれない、と躊躇する花帆。
そんな花帆にかわいらしくお願いする梢。(※本当は自分も心細くて、花帆に着いてきて欲しかったのだが、その気持ちは表に出さない)
花帆
それは、でも。
ね、お願い、花帆さん。
花帆
……わ、わかりました。
なにができるかわかりませんけど、その、がんばります!
ふふっ、ありがとう。
梢が紅茶をいれに行って、このシーンは切れる。
それじゃあ、まずはお礼に紅茶をいれるわね。
きょうは寒いわ。 温まってから、みんなに会いに行きましょう。
花帆
はい! あ、手伝います!