第17話『ルリ思う。』
PART 4
梢 | ワン、ツー、スリー、フォー。 ファイブ、シックス、セブン、エイト。 |
梢 | ふう。 どうかしら、さっきと比べて。 |
さやか | はい、今の方が安定していると思います。 たぶん、立ち位置の問題ですね。 |
さやか | 具体案があるわけではないのですが、 少し別の振りを挟むのはどうでしょう。 |
梢 | そうね、このままだとずれるし……ここ、音で合わせてみましょうか。 |
さやか | あ、良いですね。 それなら綺麗に通ると思います。 やってみましょう。 |
さやか&梢 | ワン、ツー、スリー、フォー。 |
梢 | うまく当てはめられたかしらね。 さすがはさやかさんと言ったところかしら。 |
さやか | いえ、梢先輩のアイディアあってこそです。 これで、良い感じだと思います。 |
梢 | いつもと違うから、ちょっと物足りない? |
さやか | あ、いえ……そんなことは。 |
梢 | 少し、休憩にしましょうか。 |
お茶会する梢とさやか。 | |
さやか | あ、この紅茶とっても美味しいですね。 |
梢 | それは去年の春の紅茶なの。 |
梢 | 時間が経ったら経ったで、摘みたてとはまた違った、 まろやかな味わいがあるでしょう? |
さやか | 勉強になります。 |
梢 | ふふっ。 時期が変わると、風味も変わる。 きちんと保管されていれば、香りが飛ぶこともない。 |
梢 | 別の美味しさが熟成されて……。 私たちも、色々変わったのかもね。 |
さやか | わたしたちも、ですか? |
梢 | きっと去年の春頃なら、さっきのレッスンが出来れば満足だったわ。 |
梢 | 課題があって、それをこなすための答えを出せた。 あとは、練習あるのみ。 さやかさんは、違う? |
さやか | ぁ……そうですね。 わたしはとにかく、“答え”が欲しかったですし。 |
梢 | 去年の私たちが正しかったかどうかは、今となってはもう分からないけれど。 今の私たちは、もっと違う味わいを知ってしまった。 |
梢 | 自分だけでは得られない……きらめきが欲しい。 |
さやか | 花咲きたい、ですね。 |
梢 | ふふ。 |
さやか | ふふ。 |
梢 | 困ったわ。 原因は分かっても、これじゃあ解決策はーー。 |
瑠璃乃 | わー! 優雅なお茶会開催中だ! |
綴理 | 美味しそう。 |
さやか | あ、綴理先輩。 瑠璃乃さん。 お二人も休憩ですか? |
瑠璃乃 | え、いや、休憩じゃなくてその。 |
綴理 | てーさつ。 |
梢 | あら、それなら新作のフレーバーティーの味も、偵察してもらおうかしら。 |
瑠璃乃 | えっ? |
瑠璃乃 | なにこれめっちゃ美味しい! ガムシロとか入れなくても甘い紅茶ってあるんだ! |
綴理 | おかわり。 |
梢 | ……気に入ってもらえてうれしいわ。 |
さやか | お茶菓子もありますからね。 |
瑠璃乃 | うおー、甘いに甘いとか最強じゃん。 ありがとー。 さやかちゃん、お菓子も作るんだ! |
さやか | はい。 梢先輩が教えてくれて、お菓子も日々勉強中です。 |
綴理 | さや美味しい。 |
さやか | わたしを食べてるみたいですよー。 |
梢 | ふふっ。 お茶会というより、お菓子パーティになったわね。 |
瑠璃乃 | ルリの知ってるお菓子パーティ、こんなお上品じゃないな? |
さやか | 瑠璃乃さん主催のお菓子パーティはきっと賑やかでしょうね。 |
瑠璃乃 | そうかな。 そうかも! みんながすっごく楽しい感じで盛り上がれるようにーー。 |
瑠璃乃 | ……あー、やっぱそう思います? |
さやか&梢 | ? |
瑠璃乃 | や、なんてゆーか……。 いえー! って盛り上がるのが正しいと思います? 的な? |
さやか | 正しい……? |
梢 | ……私は、いえー、という柄ではないわね。 |
さやか | ふふっ。 でもちょっと可愛いですよ、梢先輩。 |
綴理 | こずかわいい。 |
梢 | ……そうじゃなくてね。 |
梢 | シャッフルユニットを提案してくれた時から思っていたけれど、 瑠璃乃さんは自分のこれからに悩んでいるのかしら。 |
瑠璃乃 | あ……えっと。 |
梢 | ごめんなさい。 先に言っておくけれど、私には正解は分からないわ。 |
瑠璃乃 | そーですよねぇ。 こちらこそ、ルリの言い方が雑でして。 |
瑠璃乃 | ……これまで間違ってたとは思わないけど、 これだけが正解なのかなって思っちゃって。 |
さやかは、そっと自分の紅茶を見つめていた。梢との話題を思い出して。 | |
それから顔をあげて、瑠璃乃を見て笑う。 | |
さやか | この半年で、色々変わりました? |
瑠璃乃 | そーかも。 特に、ラブライブ!に出て、色々考えるよーになって。 |
瑠璃乃 | 前は、みんなが嫌な気持ちにならなければいいなって感じだったのが、 みんなに楽しい気持ちでいてほしいなって思うよーになったってゆーか。 |
梢 | だとしたら、私からひとつだけ言えることがあるわ。 その気持ちは絶対に、間違いではないということね。 |
瑠璃乃 | ! |
さやか | ふふっ。 そうですね。 ただ……間違いではないというだけでは、正解でもないんですよね。 |
さやか | 自分が間違っていないと信じて頑張ることが、一番大変です。 |
瑠璃乃 | ……信じて、頑張る、かあ。 |
綴理 | さやもこずもすごい。 結局間違ってるかもしれないのにね。 |
さやか | そうですね。 自分の目指すものに何が必要なのか…… それが分かるきっかけがあればと思います。 |
さやか | わたしはその……そこにおいてはズルをした自覚がありますので……。 |
綴理 | ズルじゃないよ? |
さやか | 偶然の出会いはズルですよ。 |
綴理 | 探してたんだからズルじゃないよ? |
さやか | もう……。 |
瑠璃乃 | 探してたから、ズルじゃない……。 |
梢 | 瑠璃乃さん? |
瑠璃乃 | ルリ、分かった気がする! |
瑠璃乃 | 偵察って…… ルリが綴理先輩を退屈させないためになんとか絞り出したことで。 ルリはそれしか考えてなかったんですけど。 |
綴理 | ……。 |
瑠璃乃 | でもそれが、綴理先輩には、ルリが何かを探してるように見えたんですよね。 |
綴理 | だって……ボクを楽しませようとしてくれてたでしょ? |
瑠璃乃 | ~~! そっか! |
さやか | ……よく、分かりませんけど。 瑠璃乃さん、きっと綴理先輩はその力になってくれますよ。 |
綴理 | がんばる。 じゃあ、なんか見つけたみたいだから、行こう! |
瑠璃乃 | おー! じゃあ、失礼します!! おじゃましゃしゃったー! |
梢 | さて……。 慈は、どう考えているのかしらね。 |
さやか | 仲直りさせてあげたいですね。 ……ふふっ。 |
梢 | さやかさん? |
さやか | あ、いえ。 結局、他のメンバーのことを考えてしまうなと。 わたしも、梢先輩も。 |
梢 | 変わらない味もあるということで。 |