第18話『いずれ会う四度目の桜』

PART 2

80 セリフ3 人物
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  1. コメント

    家の前に立つ梢。首が痛くなりそうなぐらい家を見上げる花帆。

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    衣装は私服。

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    門扉の前で立ち止まるふたり。

  4. ふう、ようやくついたわね。

  5. 花帆

    け、け……。

  6. け?

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    顎が外れそうなほどびっくりする花帆と、穏やかに笑う梢。

  8. 花帆

    兼六園級じゃないですか!?

  9. なにを言っているの、花帆。 兼六園は11ヘクタール。
    約3万坪もあるのよ。 さすがにそこまでじゃないわ。

  10. 花帆

    え、ええぇ……?

  11. それに、広さという意味では、
    花帆のご実家は我が家以上ではないのかしら。

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    おかしな対比をされて、花帆が口を尖らせながらツッコミをする。

  13. 花帆

    うちはほとんど山ですもん~!

  14. コメント

    梢は上品な微笑み。

  15. 時間があれば、花帆のために歓迎の演奏会を開いてあげたいのだけれど。
    今回は作業に集中をしたいから、またの機会にしましょうね。

  16. 花帆

    演奏会……!?

  17. 花帆

    あ、あの、あたし、
    次来るときはドレスとか着てきたほうがいいですか……!?

  18. あら、それもかわいいわね。 でも、大丈夫よ。
    私が中学の時に着ていたものが、いくらでもあるから。

  19. コメント

    戦々恐々した花帆が、梢の後をついていく。

  20. 花帆

    い、いくらでも……!
    やっぱりすごい、梢センパイ……!

  21. コメント

    ふたりで部屋に寄ってから、音楽室にやってくる。

  22. コメント

    花帆はあまりにも広い家に、もう疲労困憊気味。

  23. というわけで、ここが音楽室よ。
    ……あら、どうしたの? 花帆。

  24. 花帆

    い、いえ、客間に荷物を置かせてもらってからも、かなり歩いたので……。
    梢センパイ、自宅でもトレーニングしてたんですね……!

  25. コメント

    梢、花帆の体を気遣う。

  26. そういうわけではないけれど……。
    ええと、少し休んでからにしましょうか?

  27. 花帆

    いえ! 今回は作曲のために来たので、早く進めましょう!
    一泊二日しかありませんし!

  28. コメント

    梢の力になろうと張り切る花帆に、梢は微笑む。

  29. わかったわ。 実はね、曲のイメージはもうできているの。

  30. 花帆

    わあ、さすが梢センパイ!

  31. ただ、できているのはあくまでも大枠だけ。
    ここから細部を詰めていかなきゃいけなくて。

  32. コメント

    先生のような梢の言葉に、花帆はしっかりと胸を張る。

  33. その作業がいちばん大変だって、もう花帆もわかってるわよね?

  34. 花帆

    ふっふっふ。 あたしだって、
    スクールアイドルクラブに入部して、もうすぐ1年経つんですよ。

  35. 花帆

    こないだは、慈センパイのお手伝いだってしたんですから!

  36. コメント

    その頼りがいのある言葉に、微笑む梢。

  37. そうだったわね。 あれも素敵な曲だったわ。

  38. コメント

    梢がギターを手にして、花帆がキーボードの前に立つ。

  39. じゃあ、早速始めましょう。
    まずはメロディラインを確定させるところから。

  40. 花帆

    はい! よろしくお願いしまーす!

  41. コメント

    しばらくふたりは作曲の作業に没頭する。

  42. コメント

    あっという間に日が暮れ、夜になってゆく。

  43. コメント

    シーン内場面転換。乙宗家外観を映して、夜になった描写。

  44. コメント

    ピピピピと、アラームの音がする。

  45. あら……いけない、もうこんな時間だわ。

  46. コメント

    疲労を顔ににじませながらも、充実感のある花帆。

  47. 花帆

    あ……ちょっと、熱中しすぎちゃいましたね。
    でも、かなり進みましたよね?

  48. ええ、これなら、早ければ明日には形になりそう。
    助かったわ。 ……ふふっ。

  49. 花帆

    梢センパイ?

  50. いえ。 この前は作詞をしてもらって、今度は作曲のお手伝い。
    最近ますます頼りになるわね、花帆。

  51. それが嬉しくなっちゃって。

  52. コメント

    花帆、デレデレのニコニコ。梢は微笑む。

  53. 花帆

    えええ~! そんなこと言われたら、
    あたしこそ、もう嬉しさでバクハツしちゃいますよ~~!

  54. ふふっ。 それじゃあ、食事にしましょう。

  55. 私の大切な後輩が泊まりに来るからと言ったら、
    普段は料理人任せの母が、珍しく腕を振るってくれたのよ。

  56. 花帆

    はい! …………って、センパイのお母さん!?

  57. ええ、そうだけれど……?

  58. コメント

    花帆、自分の私服を見下ろして、絶望的な顔。

  59. 花帆

    あたし、こんな格好ですよぉ!?

  60. コメント

    動揺する花帆に、冷や汗を流す梢だった。

  61. か、かわいいんじゃないかしら……?

  62. コメント

    お風呂に入って、夜。

  63. コメント

    ふたりは寝間着姿。梢がアルバムをめくり、花帆が覗き込んでいる。

  64. これが、小学四年生の時。 バレエの発表会ね。

  65. コメント

    嬉しそうな声をあげて、身もだえる花帆。

  66. 花帆

    わあ、わあ~~! 梢センパイかわいい~~!
    写真に撮ってもいいですか!?

  67. コメント

    梢は頬を赤らめながら、綴理相手に言うように、きっぱりと言う。

  68. ……他の人に見せそうだから、だめよ。

  69. 花帆

    ええ~~~! うう、わかりました。
    それじゃあ今ここで目に焼きつけて……。

  70. コメント

    苦笑いをする梢。

  71. まったくもう。

  72. それにしても、お母様には困ってしまったわね……。
    あんなに口を滑らせるだなんて。

  73. 花帆

    楽しかったですよ! 梢センパイの昔話!

  74. 花帆

    最初はとても緊張しましたけど……でも、すっごく優しくて。
    さすが梢センパイのお母さんですね!

  75. コメント

    梢は苦笑いを浮かべて、答える。

  76. どうかしらね。 きっと、花帆に会えて、上機嫌になっていただけよ。
    あの人、花帆の配信だって追いかけているんだから。

  77. 花帆

    そうなんですか!?

  78. コメント

    それから、梢はぱらぱらとアルバムをめくり、母親に言われた言葉を思い返す。

  79. でも、本当に……。 この頃は、笑っている写真が少ないわね。

  80. コメント

    花帆は笑っていない梢ももちろん好きなので、いい風に解釈。

  81. 花帆

    確かに。 なんだかキリッって感じですね!

  82. コメント

    意外そうに聞き返す花帆。

  83. 蓮ノ空に入るまでの私はね、どこか、心に壁を作っていた気がするわ。

  84. 花帆

    そう、なんですか?

  85. ええ。 生真面目で、頑固。

  86. あの頃は、一対一で向き合わなければ、
    本当の音楽にたどり着くことはできないと思っていた。

  87. 他人に興味がなかったというよりは、そうね。
    きっと、余裕がなかったの。

  88. 自分が理想に手を伸ばすために精一杯で。
    周りがどんな気持ちでいるのかなんて、二の次だった。

  89. 花帆

    でも、今の梢センパイはぜんぜん違いますよね!
    いっつもあたしの気持ちに寄り添ってくれて。

  90. コメント

    梢、昔を懐かしむように微笑む。

  91. そうね。 それを教えてくれたのもやっぱり、
    スクールアイドルクラブであり……沙知先輩だったわ。

  92. 沙知先輩とユニットを組んで、お互いの意見を交換しながら、曲を作る。

  93. その過程で新しいものが生まれ、
    私の想像を超えた、素敵なステージが形作られてゆく。

  94. その初めての体験はとても鮮烈で、刺激的だった。

  95. 私ひとりの世界に、次々と色が生まれて……。
    楽しかったのよ。 夢を追いかけることだって、ぜんぶ。

  96. これがスクールアイドルなんだって、ようやくわかったの。

  97. コメント

    梢、花帆に微笑む。

  98. だからね。 自分ひとりの限界を知っても、今はもう絶望しないわ。

  99. 心と心を繋げていけば、
    世界はどこまでも広がってゆくんだって、知っているから。

  100. コメント

    花帆、大きくうなずく。

  101. 花帆

    はい!

  102. 花帆がついてきてくれて、よかったわ。
    沙知先輩には、返しても返し切れない、恩がある。

  103. だからせめて、素敵な曲を作りたかったの。

  104. コメント

    花帆と大きくうなずき合う梢。

  105. 花帆

    えへへ……。
    沙知センパイへのお礼の曲……ぜったい、いいものにしましょうね!

  106. ! ええ、もちろん。
    そうと決まったら、明日のために今日はもう寝ましょうか。

  107. コメント

    そこで花帆がもじもじする。

  108. 花帆

    あの、それなんですけど、梢センパイ~……。

  109. なぁに?

  110. コメント

    きょうは頼りになるところばかりを見せてきたので、恥ずかしい気持ちがありつつも、勇気を出して、梢に甘える花帆。

  111. 花帆

    シンとした廊下を通って客間に戻るの、なんだかすごく寂しくて……。
    きょうはせっかくなので! 梢センパイと一緒に寝てもいいですか!?

  112. コメント

    梢、優しく微笑む。

  113. ふふふ。

  114. だめよ。 ベッドが狭くなるもの。

  115. コメント

    思いっきりショックを受ける花帆。

  116. 花帆

    がーん!!

  117. ……と、蓮ノ空に入る前の私なら、言っていたでしょうね。
    もちろんいいわ。 かわいい後輩の頼みだもの。

  118. 花帆

    うわーん! 梢センパイを優しくしてくれて、ありがとうございます!
    沙知センパイ~~~!

  119. コメント

    抱きついてくる花帆に梢が楽しそうに笑って、消灯。

  120. ふふふふ。