第18話『いずれ会う四度目の桜』

PART 8

綴理
……ふぅ。
これは……。
えっ……とりあえず合わせてみただけだよね?
そうね、そのはずよ。
3人で集めたものを、合わせただけ。
もちろんある程度、歌詞に合わせてテンポを取ったけれど……。
綴理
みんなすごい。
すっごい! 私たち最強じゃん!
できすぎ!!
綴理
できすぎじゃないよ。 みんなすごい。
あ、綴理が全肯定マシーンに……。
でも、それぞれの持ち寄ったものの完成度が高かったからこそ、
できたもの。
綴理の言う通り、少しは誇っていいのかもしれないわね。
……成長の証として、披露できるものだと思うわ。
やっぱり、私たち成長したよね!
ええ、ただ……。
綴理
ただ?
いえ……。 私は、花帆に手伝ってもらったから。
私ひとりの全力と言うには。
綴理
? それが全力でしょ。
ボクもさやにお願いしたよ。 めぐは?
私も当然るりちゃんを巻き込みました!
それも私の力!
……そうね。 あなたたちが正しいわ。
私も、全力を尽くしたのよ。
綴理
今のボクたちの全力が詰まった曲になった。
きっと、さちもすごく喜ぶはずだ。
綴理
今日はぐっすり寝られる。 昨日ちょっと寝付けなかった。
ぜひ寝不足は回避してほしいところではあるのだけれど。
うーん……。
まだ、なんか足したいとことかある感じ?
綴理
ボク、今日も寝れない……?
なんというか……。 いえ、言うだけ言うわね。
少し冷静になって、思ったのだけれど。
この曲、少し沙知先輩に寄りすぎていないかしら……。
綴理&慈
……。
綴理
言われて、みると……先輩に貰った気持ち、
優しさ……先輩に与えられたものに、
嬉しかったって伝えたい……大好きだった……。
もしかして、これラブレターみたいになってない!?
そう! そうなのよ!
うわー、なんか恥ずかしくなってきた!
綴理
……えっと、ごめん。
何がダメなの? すごくいいよ、これ。
え~~~っとねえ? 確かに私たちは120点……
いや、沙知先輩に対して言えば150点のものを作れたと思う!
それはとてもいいことなの!
綴理
うん。
でも私たちが作るべきは、蓮華祭で発表する曲なの。
沙知先輩への感謝の気持ち、はもちろんそうなのだけれど……。
沙知先輩にしか届かなくて、周り全員ぽかーんとしてたら、
それはそれで先輩が安心して卒業できないよね!
綴理
そう、なんだ。 ごめん、よく分からなくて。
じゃあ、どうすればいいの?
分からん!
……少し、手立てを考えましょうか。
綴理
……さちにしか届かない曲、か。
蓮華祭の準備は、これで十分かしらね。
花帆
はい! 準備万端ですね!
あとは、その。 先輩たちが作っていた曲なんですけど。
そうね……もういっそ、新しい曲を作ろうかしら。
花帆
何度だってお手伝いしますよ!
綴理
これだと、どうかな。
さちのことは、それなりに好きみたいな。
さやか
た、たぶん、変えない方が良いと思います。
せっかく完璧に作れた振り付けですし……。
るりちゃん、こっちきて。
瑠璃乃
またー?
はいはい、どーぞ。
ぎゅー。
もう1個絞り出さなきゃー。
瑠璃乃
がんばれー。
沙知
やー諸君、元気に……。
花帆
あ、沙知センパイ。
こんにちは。
沙知
あ、ああああ。
こんちゃー。
花帆
どうしたんですか?
沙知
いや、なんでもない。
キミたち一年生も、だいぶ部室に馴染んだなーって思ってさ。
あー分かった。
卒業前でセンチになってるんだ、沙知先輩はカワイイなー。
綴理
そうなの、さち?
沙知
こほん……去年あれだけ自慢してた大好きな幼馴染に、
ぴったりくっついてる慈後輩もなかなか可愛いぞ。
ま・ね♡
おかげさまで、一緒だよ。
瑠璃乃
へいめぐ、ルリなんも知らねー話出てきた。
知らなくていいよ★
さやか
あの、沙知先輩はお仕事で来たんじゃ……。
沙知
あはは。 いやすまない。 お仕事じゃないんだ。
というか、もう生徒会長としての業務は全て終えている。
沙知
卒業式の前に、部室を見納めに来たんだ。
花帆&さやか&梢&綴理&瑠璃乃&慈
……。
綴理
留年すれば?
確かに。
沙知
さらっととんでもないこと言うんじゃないよ。
綴理
でもさち、寂しそう。
沙知
……やれやれ。
綴理というやつは相変わらず。
沙知先輩。
蓮華祭は出席されますよね?
沙知
ああ、そうだね。
沙知
蓮ノ空の卒業は、卒業式よりも実質蓮華祭みたいなところあるしね。
キミたちのパフォーマンスにも、心から期待しているよ。
ええ、任せてください。
スクールアイドルクラブとして、
これまでの先輩方に恥じないライブをお届けします。
私たちが沙知先輩以外の先輩を知らない以上、
あなたに判断していただく他ありませんから。
沙知
そうだね。
キミたちは、あたし以外の先輩を知らない。
沙知
……思えば、蓮華祭も未経験だったよねぃ。
沙知先輩?
沙知
……。
沙知
生徒会長としての仕事は終わったとはいえ、
蓮華祭でもあたしのやりたいことはあるんだ!
沙知
キミたちには最高のステージを用意するよ!
瑠璃乃
最高の、ステージ……!?
さやか
最高とは……期待させていただきますね、沙知先輩!
花帆
じゃあ、あたしたちも最っ高のライブでお返ししますね!
沙知
ふっ……ああ、頼んだよ、キミたち!
沙知
ぃよし!
沙知
それじゃあ、また明日とか!
さやか
もう、見納めは良いんですか?
よろしければ部室の鍵をお渡しするので、いつでもーー。
沙知
見納めは、
キミたちスクールアイドルがいることが大事だったからね。
沙知
べつに、まだ3月中は校舎中どこにでも生息してるから、
また会う時もあるさ!
瑠璃乃
生息。
沙知
それじゃ。
梢&綴理&慈
……。