第1話『未来への歌』

PART 17

花帆
これも違う……これも、違う。
逆さまの歌じゃない……。
花帆
だめかあ!
また次のダンボール持ってこなくっちゃ!
花帆
ステージ制作して、練習して、衣装の続きも作って……。
花帆
先輩は、大変だあ……。
花帆
……いいアイディアだと、思ったんだけどなあ。
花帆
ううん、だめだめ! 諦めない!
先輩は、諦めないんだから!
花帆
はいはーい?
花帆
あれ? どうしたの、さやかちゃん、瑠璃乃ちゃん。
それに……その、ダンボール。
さやか
話は聞きましたよ、花帆さん。
吟子さんのために、なにかしているんですよね?
瑠璃乃
ルリたち、応援に来たよ!
失礼っ。
花帆
ええええ!? なんで!? なんでなんでー!?
さやか
友達が困っているんですから、当たり前です。
瑠璃乃
理由なんて、いらないぜ。
ルリ思う、ゆえにルリここにあり!
花帆
ふたりとも……。
花帆
もう、大好きっ!
さやか
ちょっ、あの!
瑠璃乃
せめて先にダンボール置かせて!
さやか
改変記録、ですか?
花帆
うん。
花帆
きっとノートのどこかにあるはずなんだ。
花帆
逆さまの歌が形を変えて、名前を変えて、
現代に受け継がれてるっていう証拠が。
花帆
でもまだ、最初のひとつも見つからなくて。
瑠璃乃
ほほう、ずいぶん確信をもって言ってるねえ、花帆ちゃん。
さやか
どうして受け継がれているって、わかるんですか?
花帆
わかるよ!
花帆
だって、今でもその歌を大好きな人がいるんだよ!
花帆
スクールアイドルクラブが、あたしの大好きなスクールアイドルクラブなら、
きっと受け継がれてるに決まってる!
花帆
だって、大好きなものを、大好きだから後輩に伝え続けたいって思うのが、
伝統なんだから!
さやか
ふふっ。
……笑顔の花帆さんが言うんだから、間違いなさそうですね。
瑠璃乃
ルリもそれで、納得かな!
花帆
じゃあふたりとも、力をお借りします!
さやか&瑠璃乃
任せてください!/お任せあれ!
花帆
……すぅ……。
こーら。
花帆
わっ。
次回のライブのためのミーティング中に居眠りとは、いい度胸じゃん。
綴理がうつったかー? えー?
花帆
ご、ごめんなさい! あの、えと。
小鈴
さ、さやか先輩も。 起きてください起きてください。
さやか
へっ? あ、お、起きてましたよ!?
大丈夫です、起きてました!
姫芽
るりちゃんせんぱ~い。
朝ですよ~。
瑠璃乃
むにゃむにゃ……。 もう食べられません……たすけて……。
もー、一年生! じゃない、二年生!
たるんでるんじゃないのー? 新一年生が見てるんだぞ!
慈、あんまり厳しく言うのは。
へー? かばうなんて珍しいじゃん、梢。
でもだめ。 ライブに真剣じゃないやつは、私が許さないから。
花帆
うっ……ごめんなさい。
罰として。
スクールアイドルノートを読むなら、三年生の力も借りること!
花帆
へ……?
花帆
えっ、あっ、瑠璃乃ちゃんが教えたの!?
瑠璃乃
夜、どこいってたの?
って、めぐちゃんに問い詰められて!
キミたちが新一年生のためにコソコソがんばってることは、
もうバレてるんだよ!
綴理
そうだったんだ、さや。
後ろめたくないなら、堂々と言ってくれればよかったのに。
さやか
う……それは、でも……。
花帆
で、でも、もうさやかちゃんと瑠璃乃ちゃんにも手伝ってもらってて……。
三年生は、いろいろと忙しいですよね?
綴理
いそがしくないよ。
姫芽
はいは~い。 したら、アタシたちがやりますよ~。
瑠璃乃
えっ、いいの? 姫芽ちゃん。
姫芽
はい~。
新一年生ってことは、アタシたちの同期ですよね~?
姫芽
これから同じチームになるフレンドのためにがんばるのは、
トーゼンってもんですよ~。
小鈴
徒町もやります!
人手が必要なら、どうぞ徒町を何人でもお使いください!
さやか
……ありがとうございます。
では小鈴さんおひとり、貸してくださいね。
小鈴
はいです!
ていうか、忙しくても関係ないのだよ!
なぜなら、私たちは最高のスクールアイドルクラブだから!
スクールアイドルの新しい芽を摘むなんて、ありえないんだよ!
瑠璃乃
めぐちゃんならそう言うと思った!
さすが!
綴理
ほんとにいそがしくないよ。
ね? 梢!
もう、あなたたち……。
……こうなってしまったからには、どうかしら、花帆。
あなたがやりたいという気持ちもわかるけれど……
せめて私にも、少しぐらいは手伝わせてくれる?
花帆
梢センパイ……みんな……。
花帆
それじゃあ、改めて……。
あたしからもお願いします! どうか、力を貸してください!
綴理&慈&小鈴&姫芽
おー!
もしかしたら、これじゃないかしら……?
逆さまの歌。
瑠璃乃
あっ、ほんとだ! 待って待って待って。
瑠璃乃
ここでタイトルが変わったんだったら、
もしかしてこないだルリが見たやつが……!
綴理
うん。 ほら、20年ぐらい前の竜胆祭でやってる曲。
またちょっと名前が変わってるけど、これもそうだ。
やるじゃん綴理!
ってことは、必要なのはこれ以降のノートだね。
小鈴
あ、だったら徒町が大倉庫までひとっ走りしてきますよ!
こういう仕事は任せてください! ちぇすと~!
姫芽
アタシもアタシも。 意外とカラダも動けるほ~なんで~。
無限に往復してダンボールでいっぱい持ってきま~す。
姫芽
反復は得意~。
さやか
あっ、新一年生だけで行ったら、
迷って戻って来れなくなってしまいますよ!?
さやか
皆さんで、皆さんで行きましょう!
花帆
逆さまの歌……。
花帆
そっか、そうだったんだ……!
花帆
メロディが変わって、詩が変わって、それでも、今に続いてた……!
スクールアイドルクラブみたいに!
花帆
これが、逆さまの歌だったんだ!
いえーい! さっすが私たち!
瑠璃乃
やったねめぐちゃん!
小鈴
お力に、なれたみたいで。 ふへへっ。
姫芽
いや~、良かったねぇ、徒町さん~。
綴理
楽しかった。
ボクたち、ステージの上じゃなくても、スクールアイドルだったね。
さやか
そうですね。 ほんとに、よかったです。
花帆、後は。
花帆
はい、大丈夫です。
あたしに任せてください。
花帆
将来有望な新入部員を、勧誘してきますね!