第4話『昔もいまも、同じ空の下』
PART 2
大掃除の後、練習後にミーティングをしているというイメージ。 | |
スクールアイドルクラブ、9人全員集合の部室。 | |
ホワイトボードの前に立つのは、今回は慈と綴理。 | |
慈 | ラブライブ!を優勝したいかー! |
綴理は「おー。」 陰キャの吟子だけ「お、おー!」といまいちテンションに乗り切れていない感じです。 | |
花帆&綴理&瑠璃乃&吟子&小鈴&姫芽 | おー! |
梢 | なんなの、急に。 |
慈の突飛な行動にやや呆れ顔の梢と、ほほえましいものを見るようなさやか。 | |
さやか | 燃えてますね、皆さん。 |
慈 | というわけで、もうすぐ夏休み! 夏と言ったら!? はい、綴理! |
綴理 | かき氷。 |
慈 | そう、かき氷! 違う! 夏と言えば、ラブライブ!大会に向けた、レベルアップの季節なんだよ! |
さやか | 練習の夏、ですね! |
小鈴 | 特訓の季節ですかね! |
姫芽 | スクールアイドルの練習を12時間しても、 FPSの練習が12時間できますね~。 |
瑠璃乃 | 人間のスケジュールじゃないよ! |
ワイワイと騒いだ後で、梢がぽつりと。 | |
梢 | ただ、その前に期末試験もあるわね。 |
慈 | なんなの!? 学校って試験多すぎじゃない!? 私、こないだ補習させられたばっかなんだけど! |
さやか | あはは……。 そういえば、小鈴さんや吟子さん、姫芽さんは勉強のほうは、いかがですか? |
姫芽 | アタシは中の中ですかね~。 平均点だけはキープできるように、なんとかかんとかです~。 |
瑠璃乃 | 吟子ちゃんは、勉強できそう! |
吟子 | そんなことは。 古文現文と歴史、家庭科で稼いでて、他は平均ぐらいです。 |
花帆 | となると。 |
一同の目が小鈴に向く。 | |
小鈴、朗らかに笑う。 | |
小鈴 | 今月のメインミッション……赤点を回避せよ! です! |
花帆 | がんばろうね! 小鈴ちゃん! |
普段から勉強やってない組の花帆と、がんばっているけれどとにかく要領の悪い小鈴がガッと握手を交わす。 | |
小鈴 | こんなところに仲間が……! 心強いです……! |
慈 | だいじょーぶだいじょーぶ。 |
慈 | 蓮ノ空は別に赤点取っても、部活停止とかになんないから。 やってるフリだけでいいんだよ。 |
小鈴 | えっ、そうなんですか? |
慈の言葉に食いつこうとする小鈴を、引き戻す三人組。 | |
さやか | 今のは無視していいですからね、小鈴さん。 |
梢 | あんなこと言うの、全校生徒でひとりだけよ。 |
瑠璃乃 | めぐちゃんひょっとして先月の記憶、落っことした?? |
慈 | ここぞとばかりに団結するな! |
さやか | 勉強は、各々がんばるとして……。 |
綴理もやる気になって、ぎゅっと拳を握る。 | |
綴理 | レベルアップしようね、みんな。 |
綴理 | ボクはずっと楽しいんだけど。 |
綴理 | でも、みんなの色が加わったスクールアイドルクラブも、 すごくきれいだなって思うから。 みんなの色、もっと見てみたいんだ。 |
姫芽 | つづりせんぱい、いいこと言う~。 チームの醍醐味ですね~。 |
姫芽にピースサインを返す綴理。 | |
綴理 | ちょっとわがままになってみた。 |
梢 | ……ふふ。 |
梢 | それじゃあ、具体的なレベルアップの練習メニューを話し合う前に、 私たちからも話すことがあるわ。 |
梢 | あれを持ってきてもらえる? 花帆、吟子さん。 |
花帆&吟子 | はい!/はい。 |
慈 | アレ? |
すると、花帆と吟子が中の見えない衣装ケースをもってきて、テーブルの上に置く。 | |
さやか | その箱は……衣装ケース? |
姫芽 | アイテムボックスみある~。 |
花帆 | ふっふっふ。 |
ドヤ顔でみんなを見回す花帆。 | |
花帆 | これ、なんだと思う? 実はね……実はね! |
溜めて言おうとする花帆の隣から、さらっと吟子が告げる。 | |
吟子 | 衣装です。 |
花帆 | ああー! あたしが言おうとしてたのに! |
小鈴 | 衣装、ですか? |
立ち直り、みんなにどや顔する花帆。 | |
花帆 | だけどね! ただの衣装じゃないんだよ! |
吟子 | はい。 先ほど大倉庫の片づけをしている最中に、見つかりました。 |
吟子 | 初代スリーズブーケ、DOLLCHESTRA、みらくらぱーく!が、 初めてのお披露目ライブで身に着けていた衣装です。 |
花帆 | いかにもすごい衣装が入ってそうな箱だと思ったら、 吟子ちゃんが調べてくれたんだよ! |
花帆 | 箱にも書いてあるし、ほら! |
箱の文字を読み上げる瑠璃乃。 | |
瑠璃乃 | ……『スクールアイドルクラブ 最初の衣装』だってー!? レジェンドじゃん! |
さやか | というとこちらは、芸楽部がスクールアイドルクラブに 名前を変えたときのもの、ですか? |
梢 | そうなるわ。 今から十数年前のものね。 |
慈 | へー。 |
梢 | なんで慈が知らないのよ。 沙知先輩から聞いたでしょ。 |
慈 | まぁまぁ。 でもすごいじゃん! なんかご利益ありそう! |
三本指を立てる花帆。 | |
花帆 | はい! しかも、数はぴったり3着ずつあるみたいなんです! |
花帆 | なので。 ラブライブ!優勝を目指すためにーー。 |
花帆 | 今年は、この衣装を着て出場しませんか! |
花帆の発言にどよめく一同。 | |
瑠璃乃 | 蓮ノ空に代々伝わる、なんだかすごい衣装で! |
姫芽は完全に、RPGの伝説の装備だー、ぐらいのテンション感。 | |
姫芽 | え~、ちょーかっこいい~。 伝説装備感ある~。 |
綴理 | 楽しそう。 |
さやか | と、とはいえ、まだ中身も見てませんからね……。 |
花帆 | あ、そっか。 じゃあ、良さそうだったらこの衣装でラブライブ!に出場しましょう! |
吟子 | なにを言っているんですか。 伝統の衣装なんですから、絶対いいものに決まってます。 |
噛みしめるようにつぶやく吟子。 | |
吟子 | ……さりとて、皆さんもおっしゃっているとおり、 初代ユニットの伝統の衣装を着るなんて、とてもとても畏れ多いことです。 |
小鈴 | 今そんな話してた?? |
当たり前のようにひとりで進めていく吟子。 | |
吟子 | 特に私は、まだ入部して間もない身……。 果たしてその衣装に袖を通す資格が、あるのでしょうか……! |
姫芽 | 吟子ちゃん、目が本気だ~。 |
小鈴 | 吟子ちゃん、こないだ柱の傷にも感動してたよね。 『これが、伝統の傷……』って。 |
花帆 | でもほんとは、 あたしが大道具をぶつけちゃったときの傷だったんだよね。 あはは。 |
照れと悔しさで、歯噛みする吟子。 | |
吟子 | あれは一生の不覚っ……! |
花帆がニヤニヤしながら、吟子の近くにやってくる。ダイエット中の友達に美味しいパフェを勧めるような顔で。 | |
花帆 | ていうか、そんなこと言って吟子ちゃんもぉ~。 |
吟子 | な、なんですか。 |
花帆 | せっかく見つけたんだし、興味あるでしょ~? だってあんなにはしゃいでたのに~。 |
それは事実なので、うっ、と押される吟子。花帆のささやきに流されてしまう吟子。 | |
吟子 | それは……! |
吟子 | くっ……。 ラブライブ!優勝を目指すのならば、前に踏み出す勇気も必要……! |
微笑ましいものを見るような姫芽と小鈴。 | |
姫芽 | お~、流された~。 |
微笑ましいものを見るような姫芽と小鈴。 | |
小鈴 | 相手が花帆先輩だから、仕方ないよね。 |
吟子が顔を赤らめてツッコミを入れる。 | |
吟子 | そこヘンなこと言わない! |
慈 | よっしゃ、とりま開けてみよー! |
花帆 | はい! |
梢 | ……初代スリーズブーケの、伝統の衣装……! |
花帆が箱に手をかける。一同緊張しつつ、見守る。 | |
花帆 | いきます! えい! |
吟子 | ……え? |
さやか | こ、これは……! |
姫芽 | あはははは、ボロボロですね~。 |
クラッとする梢。珍しく慌てて支える綴理。 | |
梢 | ……はう。 |
綴理 | こ、こず! |
どちらも箱を開く花帆。 | |
花帆 | そ、そんなぁ……! まさかDOLLCHESTRAも、みらくらぱーく!も!? |
小鈴 | やっぱりボロボロ! |
瑠璃乃 | うわあ。 |
真っ白になる吟子。 | |
吟子 | そ、そんな…………。 |
最悪な雰囲気の中、慈が箱に近づく。 | |
慈 | え、ええい! まだわかんないでしょ! もとからこういう衣装だったのかもしんないじゃん! |
慈 | 着てみるまでは! さ! |
衣装を掴む慈。直後、SEで『ビリッ』という衣服が破ける音。 | |
慈 | あ。 |
花帆&さやか&梢&綴理&瑠璃乃&吟子&小鈴&姫芽 | あ。 |
ものすごく気まずそうな慈。誰もなにもフォローの言葉が言えない。 | |
慈 | ………………さ、さすがに、ごめん……。 |
気まずい沈黙を破って、吟子が手を挙げる。 | |
吟子 | あ、あの! |
一同の視線が吟子に集まる。 | |
吟子 | 大丈夫です! 直せると思います! |
吟子 | 私のおばあちゃんなら! |