第1話『Brand New Stories!!』

PART 3

スリーズブーケの花帆と吟子、そこにセラスと泉が練習に参加するという体。この時点ではまだ制服。
セラス
それではまずは、スリーズブーケから~。
いぇ~い。
手を叩いてはしゃぐセラス。
泉もまた、フランクな態度で頭を下げる。
よろしくお願いします。
花帆
よろしくねー!
吟子
さて、と。 スリーズブーケでは、
まず蓮ノ空のスクールアイドルクラブに慣れてもらうために、
吟子
基礎練から始めようと思うんだけど。
確認を取るために、いったん花帆を見やる吟子。
花帆は見守るポジションを選択し、吟子に笑いかける。
花帆
うん、あたしもそれでいいと思う!
というわけで、吟子はセラスと泉に向き直り、告げる。
吟子
じゃあ、普段使ってるランニングコースとか、案内するね。
セラス
はい。 よろしくおねがいいたします。
丁寧に頭を下げるセラス。
花帆
ふふふふ。
吟子
……なに?
ニヤニヤする花帆に振り返る吟子。
花帆
先輩一年生の吟子ちゃんを見るの、楽しいなあ、って。
そう言われるとなんだか、逆に恥ずかしくなってくる吟子。
吟子
む……。
スクールアイドルの成長に感動するセラス。
セラス
グッときちゃうね。
吟子
なんでセラスさんがそっち側なの……。
花帆が吟子の肩をポンポンと叩く。
花帆
先輩活動は大変だけど、がんばってね。
あたしの真似をするんじゃなくて、吟子ちゃんらしくでいいんだからね!
去年、梢に言われたことをそのままそっくり教訓として語る花帆。
吟子はそんな花帆を白々しいものを見るような目で眺める。
吟子
いや、花帆先輩の真似とかぜったいしたくないから。
したくないし、そもそもできないし。
あたしはあんなに梢センパイの真似をしようとがんばったのにー!と叫ぶ花帆。
花帆
なんでー!?
メンバー、全員練習着に着替えて、校庭へ。
吟子
それじゃ、ストレッチから。
セラス
あ、待って。 その前に。
花帆
すぅ、と息を吸うセラス。それから無表情でポーズを取って。
セラス
可憐なつぼみは、美少女桜。
セラス
とびきりかわいいスリーズブーケ、セラスちゃんだよ。
きゅるんっ。
頬に指を当てて、にっこりと笑うセラス。
いきなり突飛なことを始めたセラスに、???状態の吟子。
吟子
……え、なに?
ピースサインのセラス。ドヤ顔である。
熱意を感じ取った花帆は、嬉しそうだった。
セラス
名乗り。
考えてきた。
花帆
すごい! やる気満々だ!
引き気味に否定する吟子に、セラスは公約を宣言するように真剣に告げてくる。
吟子
あ、私たち、そういうのやってないから……。
セラス
わたしが入った暁には、中からスリーズブーケを変えようと思う。
花帆
早くも野望がすごい!?
吟子
なんなん……。
そんなセラスの奇行を、面白そうに眺めていた泉である。
念願のスクールアイドルができるから、浮かれているね、セラス。
吟子
浮かれてるんだ、これ……。
まっすぐに手を挙げるセラス。
セラス
はい。
体力と筋力はありませんが、顔の良さには自信があります。
吟子
セラスさんのアピールポイント、そこ!?
セラス
あと、曲作りとか、できます。 かなり。
花帆
すごい!
え、やっぱりスリーズブーケに勧誘したほうがいいんじゃ……!?
吟子
確かに、今年は梢先輩がいないから、私たちすごく苦労しそうだけど……。
吟子
でもだめだよ、花帆先輩。
吟子
『ムリヤリな勧誘を始めたら止めてあげて』って、
梢先輩からもらった花帆先輩の取扱説明書に、書いてあったから。
花帆
あたしの取扱説明書ってなに!?
吟子
花帆先輩をお願いされたんだから、私。
花帆
逆でしょ!? 吟子ちゃんがあたしの後輩だよね!?
どういうことですか梢センパーイ!
空に向かって問う花帆。もちろん答えは帰ってはこない。
そこできりっとした顔で、セラスが花帆と吟子に尋ねる。
セラス
それでは、とりあえず、今年のスリーズブーケの目標?を、
お聞かせいただけるでしょうか。
吟子
なんでそっちが面接する側なの!
馬鹿真面目にセラスに付き合っていちいちツッコミをしてあげる吟子と、セラスのやり取りに、泉が笑いをかみ殺す。
セラスは、構ってくれる人には無限に付きまとうから、
ほどほどにするといいよ。
振り回されている吟子さんを見るのも、楽しいけどね。
吟子
おのれ……。
花帆
でも、目標かあ。 なんだろうね、吟子ちゃん。
吟子
……こないだ話したアレでしょ、アレ。
花帆
あ、そっか。
それは私も興味があるね。
花帆
うん、えっとね。 あたしが部でやりたいことと、
スリーズブーケの目標はちょっとだけ違っててね。
花帆
どちらかというと、
もうちょっと具体的になってる、が正しいかな?
セラス
ふむふむ。
花帆
スリーズブーケはあたしと吟子ちゃんのユニットになったから、
花帆
あたしと吟子ちゃんがふたりでやりたいことをやろう、
って話をしたんだ。
それは?
花帆
スリーズブーケは『さくらんぼ色の花束』。
花帆
だからね、見てくれた人に花束をプレゼントするような、
素敵なステージをこれからも作りたいな、って。
花帆
あたしたちはそのステージでみんなの笑顔を花咲かせられるように、
がんばるんだよ。
にっこりとこれからの意気込みを語る花帆。
セラスは、感銘を受けたように声を漏らす。
そこで吟子に笑いかける花帆。
セラス
おお~……。
花帆
今年も、吟子ちゃんの素敵な衣装デザイン、いっぱい期待してるからね!
吟子
ま、まあ、それは……。
あくまでも、私がやりたいから、やるだけですけど……。
花帆
今からFes×LIVEが楽しみだなあ!
セラス
善き…………。
セラス、ドヤ顔でうなずく。
セラス
これがね、“スクールアイドル”。
どう? ヤバでしょ。
吟子
誰に話してるの……。
花帆
ひょっとしてせっちゃん、感動してたりする?
戸惑う花帆と吟子に、泉が親切に解説をしてあげる。
実は、セラスはプレーオフに出場して以来、ずっとこうなんだ。
あなたたちを含む、すべてのスクールアイドル、
そしてそれを応援する人々に救われただろう?
それがセラスの中では、大きな転機になったみたいで。
ひとり芝居しているセラス。
セラス
最高なんだよね、やっぱ……。
“スクールアイドル”ってやつは……ね。
しばらくしたら戻ってくるから、気にしないでくれ。
花帆
う、うん。
吟子
扱いに、慣れてるんだね。
そりゃあ、一年間ずっと一緒にいたわけだからね。
お互いもう、手加減も遠慮もない仲だよ。
吟子
ふーん。
あくまでもセラスを主体に、自分のことを進んで話そうとしない泉に、吟子が尋ねる。
吟子
泉……さんは、どうしてうちの学校に来たの?
え?
『それはどういう意味だい?』という顔で、吟子を見返す泉。
吟子
いや、セラスさんは見るからに『スクールアイドル最高』って顔してるけど、
泉さんはなんか、ちょっと距離あるっていうか。
言っただろう。 あなたたちに恩返しがしたかったから、って。
吟子
……でもそれがぜんぶじゃない気がする。
ふふ。
吟子
な、なんで笑うん!?
案外、ちゃんと人のことを見ているじゃないか。
花帆
吟子ちゃんも、もう二年生だからね!
吟子
関係ないし……。 ほら、白状して。
面白そうだったから、だよ。
花帆
面白そう? あたしたちの新しい夢が?
あなたたちの存在そのものが、かな。
首を傾げる吟子。
吟子
存在……?
私はね、面白そうなことをしている人たちが、好きなんだ。
一緒の輪にいたい。 成功も失敗も、そばで見ていたいと思うね。
吟子
なにそれ……。
花帆
泉ちゃんって、ひょっとして寂しがり屋?
素直に問いかけてくる花帆の言葉に、泉は目を丸くして。
ふっ、ふふふ。
そうだね、そうかもしれない。
花帆
だったら、あたしたちスリーズブーケに入れば、
きっと毎日賑やかに楽しめるよ! ね、吟子ちゃん!?
吟子
賑やか担当は花帆先輩だけでしょ!
花帆
吟子ちゃんだって伝統の話になったら、止まらなくなるじゃん!
吟子
私はたまにやもん! 花帆先輩の半分以下! 十分の一!
セラス
セラス、スクールアイドル、すき。
わたし、はいる。 スリーズブーケに……。
花帆
ほんとに!? わあ、嬉しいなー!
吟子
いや……体験して決めるって言ったんだから、他のふたつも見てきなよ……。
花帆
うっ……それは確かに、そう……!
セラス
わかった……見てくる……。
スクールアイドル様の仰られる言葉でございましたら……。
吟子
なんかヘンじゃない!? この子!
ニコニコと言い放つ泉であった。
セラスは最初からずっとヘンだよ。
私と出会ったときから、ずっと。