第2話『Dream Match!』
PART 8
花帆 | 昨日は熱かったよね~。 瑠璃乃ちゃんのスーパープレイで、お客さんがどわーって盛り上がって! |
瑠璃乃 | あはは……その話、今日十回くらい聞いてる気がするぞー。 |
花帆 | あたしはまだ話し足りないよ! |
さやか | まあ、気持ちは分かりますけど。 |
瑠璃乃 | そうだねえ……今、どうしてるかな、ひめっち。 |
花帆 | きっと、あたしの倍くらいこの話してると思うよ! |
さやか | そうでしょうか? |
花帆 | そうに決まってるよ! だって、夢を叶えた本人だもん。 今ごろはーー。 |
姫芽 | 見つけたーー!! |
姫芽 | はぁ、はぁ……。 |
花帆 | って、姫芽ちゃん!? |
瑠璃乃 | なんでここに!? |
姫芽 | はぁ、はぁ、神田明神に行けば、きっと会えるって……。 |
瑠璃乃 | じゃなくて! どうしたのひめっち、大丈夫……? |
姫芽 | 心配してくれて、ありがとうございます……。 でもアタシ、どうしても……。 |
瑠璃乃 | どうしても? |
姫芽 | かほせんぱいと、タイマンしたいんです……! |
瑠璃乃 | タイマン!? |
花帆 | 分かった! ちょっと怖いけど、タイマン、受けて立つよ! |
瑠璃乃 | 受けて立っちゃうの!? |
さやか | いえ、多分、物騒な話じゃないと思うんですが。 |
さやか | 花帆さんと一対一で話がしたい……そういうことで合っていますか? |
姫芽 | はい……。 |
花帆 | それで、話って? |
姫芽 | ……アタシ、怖かったんですよ。 かほせんぱいの夢に呑まれちゃうのが……。 |
花帆 | 夢に、呑まれる……? それってどういうこと? |
姫芽 | かほせんぱいの夢を一緒に追っかけていったら、 自分の夢もついでみたいに一緒に叶っちゃうんじゃないかってことです……。 |
姫芽 | でもそんなの、 かほせんぱいの夢を利用してるみたいでイヤだったんですよ……! |
姫芽 | ……だから、イベントのお誘いが来たとき、 こっちの夢もうんとでっかくすれば、呑まれないかもって思ったんです……。 |
姫芽 | でも、全力を出しきって、夢を叶えちゃったら…… 後はもう、これの繰り返しになるのかなって……。 |
姫芽 | アタシの夢は、終わっちゃったのかなって……。 |
花帆 | 姫芽ちゃん……。 |
姫芽 | そんなとき、いずみんが話を聞いてくれて……それで、気づいたんですよ。 まだ、やってないことがあるって……! |
姫芽 | アタシはまだ、自分の夢を終わりにしたくない! だから、アタシの夢をかほせんぱいの夢にぶつけたい! |
花帆 | 夢を、ぶつける……? |
姫芽 | そうです……! アタシ、イベントの準備でいずみんと本気でぶつかり合ったじゃないですか! |
姫芽 | そしたら、 アタシが最初に考えてたよりずっとすごいものが生まれたんですよ! |
姫芽 | アタシがやったことも、いずみんがやったことも、 ぶつけ合う前よりずっと大きくなったんです! |
姫芽 | だったら、かほせんぱいの夢とアタシの夢! |
姫芽 | 本気の夢をぶつけ合ったら、きっと、どっちの夢も大きくなる! いや、絶対大きくしてみせます! |
姫芽 | だから、お願いします……! アタシの夢を、ぶつけさせてくださいっ……! |
花帆 | ねえ、姫芽ちゃん……。 |
花帆 | あたしは、自分の夢をみんなに伝えたけど…… 実際、何をしていいか、まだ分かってなかったんだよ……。 |
花帆 | 「みんなが花咲けるステージ」って言ったって、 それがどんなものなのか、ずっと考えてたんだけど……。 |
花帆 | だけど……。 |
花帆 | さっき、泉ちゃんとぶつかり合ったって話してたよね? |
姫芽 | はい。 |
花帆 | 姫芽ちゃんの熱を浴びて、泉ちゃんも本気になって……そうしたら、 どんどん熱が高まってきて……あたしも、最初に思ってたより、 ずっといいものにできたと思う。 |
花帆 | みんなも、きっとそう思ってるはず。 |
花帆 | それって、姫芽ちゃんと泉ちゃんが本気をぶつけ合ってくれたから、 みんなが花咲けたってことだと思うんだよ! |
花帆 | ーーあたし、「場所」を作りたい。 |
花帆 | いつでも、誰でもそこにくればスクールアイドルになれる場所…… みんなが花咲ける場所……! |
花帆 | やっとイメージできた……! |
花帆 | これが夢をぶつけ合うっていうことなら、 あたしは何度だってこれをやりたい! |
花帆 | 他のみんなとも……姫芽ちゃんとも、何度でも! |
姫芽 | ほんとですか! |
花帆 | うん! だってこれもまた、誰かとつながるってことだから! |
花帆 | あたしの夢がみんなの夢になって、みんなの夢があたしの夢になるなら、 それって最高だと思う! |
姫芽 | じゃあアタシ、がんがんぶつけにいっちゃいますよ~! 覚悟はいいですか~? |
花帆 | もちろん! 本気の夢をぶつけ合ってーー。 |
姫芽 | どっちの夢もでっかくしましょう~! |
姫芽 | じゃ、アタシはこれで~! |
花帆 | えっ。 |
花帆 | 行っちゃった……。 |
さやか | 本当に、これだけのために東京まで来たんですね……。 |
瑠璃乃 | いや~なんというか……すごいね、ひめっちは。 |
瑠璃乃 | 帰ったら忙しくなりそうだねえ。 |
さやか | ええ、あの調子だと、 思いついたものを片っ端から花帆さんにぶつけてくるんじゃないでしょうか。 |
花帆 | あたしも負けないもん! 姫芽ちゃんの本気、あたしの本気で受けて立つから! |
花帆 | よーし! のんびりしてらんないよ! さやかちゃん、瑠璃乃ちゃん! あたしたちも蓮ノ空に帰ろっか! |
さやか | いや、修学旅行中ですよ!? |
さやか | 花帆さーん!? 待ってくださいー! |
瑠璃乃 | ……すごいなあ、みんな。 |
姫芽 | かほせんぱい、たのも~! |
吟子 | また来た……。 |
姫芽 | 新しい企画考えてきたんです~! |
花帆 | 昨日も持ってきたのに、もう!? |
姫芽 | いやいや、昨日よりもっとすごい企画を三つも思いついたんですよ~! |
花帆 | 三つも!? |
小鈴 | 花帆先輩、たのもー! |
花帆 | なんで小鈴ちゃんまで!? |
吟子 | 小鈴、あれ何かのチャレンジだと思ってない? |
泉 | かもしれないね。 でもいいじゃないか。 何か、面白いものが生まれるかもしれない。 |
吟子 | 姫芽も、帰ってきてからずっとあの調子だし……。 |
吟子 | 泉さん、姫芽が東京行く前に会ってたんでしょ? そのときまた何か挑発したんじゃないの? |
泉 | いや? |
泉 | 姫芽ちゃんは、私が何か言ったところで、 それにとらわれるようなタマじゃない。 |
泉 | 私のことなんて軽々と飛び越えていったんだ。 |
泉 | そして、新たな夢と情熱を胸いっぱいに抱えて帰ってきたのさ。 |
吟子 | ……まあ、いいけどね。 姫芽も、花帆先輩も、楽しそうだし。 |
泉 | ……そうだね。 |
姫芽 | アタシ、あれからずっと絶好調なんです~! まだまだアタシの夢は終わりませんからね~! |