第3話『星に憧れて、花は舞う』
PART 1
視点主人公がさやかであることと、このシナリオの目的を示す。 | |
さやかが眠そうに登校してくる。 | |
さやか | ふわぅ……。 |
小さくあくびをするさやか。と、そこに後ろから花帆が追いかけてくる。 | |
花帆 | さやかちゃーん、おはよー! |
どん、と後ろからぶつかる花帆。 | |
さやか | おわっ!? |
振り向くさやかに、花帆は元気な笑顔。5月シナリオのあと、姫芽と夢に向けて話し合ったことでモチベーションが高まっている。 | |
さやか | お、おはようございます。 お元気そうでなによりです。 |
花帆 | うん、色々考えてたことがまとまってきてね! |
さやか、少し眠そうに目元を擦りながら。 | |
さやか | ……ああ、この前姫芽さんと話したことでしたっけ。 |
花帆 | そう、かほひめ会議だよ! みんなで花咲くステージに向けてねーーって、さやかちゃん、眠そうだねえ。 |
さやか | ふふ。 みなさんのイレギュラーに対応するためにも、 日々の雑務は早め早めにこなさないといけませんからね。 |
さやか | それこそ、花帆さんが何かを思いついた時に他の仕事が残っていては、と。 |
花帆 | いつもありがとね! え、どうする? 帰って寝る? |
さやかは過剰な心配に慌てて首を振る。 | |
さやか | 大丈夫ですよ! ……それに、花帆さんやみなさんと話しているとすぐに目も覚めますよ。 |
さやか | 逆に、学校で眠そうなのは花帆さんの方ですから。 |
花帆 | うっ……それはちょっと横に置いといて。 |
花帆 | 昨日思いついたのは、さやかちゃんの目覚ましにはならないかもだけど。 |
さやか | はい、なんでしょう。 |
花帆 | さやかちゃん、ロックフェスに出よう!! |
さやか | 特大の目覚ましですね!? |
驚きに目を見開くさやかで〆。 | |
花帆からさやかが事情を聞くシーン。 | |
レッスンルームに向かう道中。そこに他の全員が居るイメージ。 | |
花帆とさやかも練習着に着替えていて、これからレッスンするぞ感を出す。 | |
さやか | なる、ほど。 いきさつはなんとなく分かりました。 姫芽さんと、これからに必要なことを考えた結果なんですね。 |
さやかはまだ納得はできていないが、どうにか頑張って咀嚼して頷く。 | |
花帆は両手を広げ、楽しそうに語る。 | |
花帆 | うん、ふたりで話して改めて思ったんだ。 |
花帆 | あたしも、あたしの夢を早くみんなに伝えなきゃって。 口だけじゃなくて、こういうことがしたいんだっていうのを、見せたい。 |
花帆 | じゃあそのために何が必要なのか、最近ずっと考えてたんだけど。 |
なるほど、と納得するようにさやかが言う。 | |
さやか | 授業中もうつらうつらするくらいに。 |
花帆 | ま、まあその、うん。 ……いいんだよそれは! 見ないでよ授業中のあたしを! |
花帆 | こほん。 それでね、必要なのは場所だって思ったんだ。 みんなで花咲くステージをやる場所。 |
さやか | 八重咲ステージや、これまでライブを行ってきた場所ではなく? |
花帆 | あたしがやりたいのはね、いつでも花咲ける場所なんだ。 誰もが、いつでも。 |
花帆 | スクールアイドルがしたいと思った時に、できる場所。 時間制限のないライブステージ! |
花帆 | だから、その場所はずっとライブができる場所じゃないといけないんだ。 |
花帆の語りから卒業していった梢たちのことを思い出すさやか。目を細めて、花帆の夢を眩しく思う。 | |
さやか | ……素敵な夢ですね。 |
さやか | でも確かにそんな場所は、中々見つかりませんね。 |
花帆 | そうなんだよ! もうほんと、最近ずーっと探してるのに、全然見つからなくて。 |
花帆 | それこそ授業中も眠くなっちゃうくらいにね! |
さやか | 夜更かしは体に毒ですよ花帆さん。 まったく。 |
さやか | それなら先に話してください。 こういう時に頼ってもらうための、ダブル部長ではないんですか。 |
花帆 | えへへ、ありがとうさやかちゃん。 でも、ようやく見つかったんだ、その手がかりが! |
さやか | ……まさか、それがロックフェスという。 |
花帆 | うん! そのフェスは、ラブライブ!みたいに大会形式でね、 すっごく有名なやつで! |
花帆 | 優勝するとメジャーデビューもできるんだよ! |
さやか | それは凄い……え、ロックのプロを目指すつもりなんですか!? |
花帆 | もちろん優勝できるならしたいけど! でも目的は別にあるんだよ、さやかちゃん。 ほら、これ。 |
花帆がスマホの画面をさやかに見せると、さやかが僅かに目を見開く。 | |
さやか | ……優勝でなくとも、強く盛り上げた上位グループに与えられる、これが。 |
花帆 | そう! あの大きな会場を、一年間! 優先的に使えるようになるんだ! あたしが探してたもの、そのものだよ! |
さやか | なる、ほど……! |
花帆 | どうかな、どうかな! |
目を輝かせる花帆を前に、言いにくそうにしながら。 | |
さやか | ……正直なことを言ってもいいですか。 |
花帆 | え、うん、どうぞ! |
さやか | 流石に無茶です! |
花帆 | えー!? |
さやか | だって優勝すれば メジャーデビューが確約されるほどのロックフェスですよ!? |
さやか | そんなの、 これまでずっとロックで活躍するために努力を積み重ねてきた方々が こぞってエントリーしてくるに決まってるじゃないですか! |
さやか | わたしがわらわら居るフィギュアの大会で勝とうとするのと あんまり変わりませんよ!? |
花帆 | そんなあ!? 勝てるわけないよ!! |
さやか | いや、まあ、その、はい! |
さやか | ……前回の姫芽さんの時とは違って、詳しい人もいないんですよ? やってみようで挑むには流石に。 |
花帆 | む、ぐぐ……そんな軽いノリじゃないんだけど……! |
さやか | もちろん、ただプレゼントとしてステージが欲しいわけではない、 というのは分かりますが……! |
花帆 | ……。 |
さやか | ……分かりました。 一度、みなさんにも聞いてみましょうか。 |
さやか | わたしが思いついていないだけで、打開策もあるかもしれませんし。 |
花帆 | ……ん。 さやかちゃんが賛成してくれるような、 あっと驚くアイディアをみんなが出してくれますように! |
さやか | みなさんへのハードルが……。 |
全員登場。メンバーそれぞれの意見が飛び交う。 | |
誰かのための舞台、勝負の舞台と聞いてやる気を見せる泉と姫芽。 | |
泉 | ほう、ロックフェスと来たか。 優勝すればいいのかな。 |
姫芽 | 夢の場所を作るために、挑む戦い。 いいですね~、燃えてきたかも~? |
しゅ、しゅとシャドーボクシングする姫芽と、鷹揚に頷く泉を見て、瑠璃乃は苦笑い。 | |
瑠璃乃 | あはは、相変わらずここふたりは頼もしいなあ。 |
瑠璃乃 | でも、さやかちゃんも言ってたけど…… この日のためにロックを積み上げてきた人たちと一緒にやるんだよね。 |
吟子 | 出場がゴールじゃないんでしょ。 ダメだったら、その準備にかける時間も全部……。 |
セラス | だったら別のことをしてた方がいい……ってことですか。 |
純粋なセラスの疑問に、吟子は頷く。 | |
と、元気よく手を上げる小鈴。 | |
小鈴 | 徒町はやってみたいです! 欲しいものがあるなら、当たって砕けろです! |
吟子 | 砕けてる余裕あるかな……。 今月は撫子祭だってあるんだよ。 |
花帆は少し頭を抑えながら語り始める。なんか調子悪いなー、と思いつつもそれを表には出さないよう頑張っているイメージ。 | |
花帆 | 撫子祭もそうなんだけど……時間の余裕は、 そうじゃなくてもあんまりないんだ。 |
瑠璃乃 | ってーと? |
花帆 | 自由に使わせてもらえるステージって、探しても探しても全然なくてね。 |
花帆 | ロックフェスで良い成績を残したらっていうので なんとかようやく見つけられたんだ。 |
泉 | ……まあ、ステージが存在するということは、 必要としている人がいるということだからね。 |
泉 | なかなか、余っているという事態は考えにくいか。 |
花帆 | 待ってくれてるみんなに、 はやくあたしたちの“花咲くステージ”がどんなものなのか伝えたい。 |
花帆 | そういう意味でも、これは大きなチャンスで、数少ないチャンスでもあって。 |
吟子 | だったらなおのこと負けられないね。 |
小鈴 | ダメでもともとチャレンジとは、いかないという……? |
花帆 | うん。 |
セラス | 花ちゃんは、どうしてもこのロックフェスで勝ちたい。 でもみんなあんまりロックのことを知らないところからスタート……。 |
花帆&さやか&瑠璃乃&吟子&小鈴&泉&セラス | ……。 |
姫芽 | う~ん、悩むより先に戦いの準備をした方が良い気がしますけどね~。 |
セラス | ……えっと、じゃあ、どうします? 両方やります? ロックの練習しながら、ステージも探すみたいな。 |
さやか | ……花帆さん。 |
花帆 | ……ふう。 なに? |
さやか | 一度保留にしましょうか。 ひとまず、全員ロックフェスはおろか、ロックをよく知らない状況です。 |
さやか | わたしも含め、ロックを勉強しつつ……それこそ、 何かアイディアが出ればロックフェスへ。 |
さやか | そうでなければ、みんなでまた一からステージを探しましょう。 |
花帆 | ん……そうだね。 えっと、みんな! |
花帆が全員に向き直って言う。 | |
花帆 | どういう形でも、花咲くステージ、絶対にやろうね! |
さやか | 保留とは言ったけど、 わたしが何か良い案を出せるのならそれに越したことはない。 ひとまず、ロックのことを知らなくては。 |
さやか | もし出場したとしても…… 会場の方々にがっかりした記憶を残すわけにはいかない。 |
さやか | これから花咲くステージをやるというわたしたちが、 みなさんに楽しいライブを提供できない存在だと思われることも、 あってはならない。 |
さやか | ……裏を返せば、ステージを新しく探すより、 ロックフェスで好成績を残すのが一番か。 |
さやか | みなさんの楽しい記憶として残り、 かつ花咲くステージの足掛かりにもなる。 |
さやか | 高望みかもしれませんが、それができるのならーー。 |
さやか | え、え? |
さやか | はい、さやかです。 吟子さんですか? |
さやか | 花帆さんが倒れたー!? |