第3話『星に憧れて、花は舞う』
PART 3
花帆の代わりを務めるのだと、さやかが張り切るシーン。 | |
まず瑠璃乃、姫芽、小鈴、泉、セラスの5人が部室に居る状態。吟子は花帆の看病。さやか待ち。 | |
心配そうなセラスが隣にいた小鈴に話しかける。 | |
セラス | 花ちゃんは大丈夫なんですか? |
小鈴 | 今は吟子ちゃんが花帆先輩の部屋にいるはずだよ。 これから代わりばんこに、看病する……ですよね、瑠璃乃先輩。 |
瑠璃乃 | うん。 誰かがダウンした時はそういう感じ。 助け合っていこうね。 |
セラス | 花ちゃん……。 |
泉 | 心配かい? |
セラス | 当たり前でしょ。 花ちゃんは体弱いんだから。 |
そう言うと、姫芽がセラスを安心させるように、瑠璃乃に向けて声をかける。 | |
姫芽 | もともとそうだとは聞いてたけど、 あんまりそういうイメージはないですよね~。 |
瑠璃乃 | うん。 二月にもちょっと体調崩しちゃったことはあったけど、それぐらいかな? |
瑠璃乃 | スクールアイドル始めて、めっちゃ体力もついたみたいだし。 昔みたいに寝込んだりすることは無いって、花帆ちゃん言ってたから。 |
ふたりの話を聞いて、セラスはほっと一息。 | |
セラス | そう……なんだ。 それなら、良かったです。 今回は、ただの風邪ですか? |
だとすると自分にも責任があるな、と考え込む姫芽。 | |
姫芽 | 最近、めっちゃ頑張ってたって言うし~…… 久々に無理しちゃった、とかなのかな~……。 |
と、そこでさやかが部室に入ってくる。 | |
さやか | 遅れました! |
全員がさやかの方へと向き直る。 | |
瑠璃乃 | 遅かったね、何か仕事? |
さやかは大真面目に答える。 | |
さやか | いえ、ちゃんと遅刻してきました。 |
何を言ってるんだとびっくりした目の瑠璃乃。 | |
瑠璃乃 | お??? |
さやか | 花帆さんなら、ここから元気よく遅刻を巻き返すはずです。 |
さやか | さあ、ロックフェスの準備を頑張りまーー頑張ろうね!! |
瑠璃乃&小鈴&姫芽&泉&セラス | ……。 |
一瞬の沈黙の中、おそるおそるセラスが頷く。 | |
セラス | ……え、あ、はい。 |
小鈴 | さ、さやか先輩……?? |
小鈴も戦々恐々。そんな中、泉だけは笑いをかみ殺している。 | |
泉 | なんだかおもしろいことになってないか? |
そしてさやかはその空気の中でも拳を突き上げ気合を入れるように叫ぶ。 | |
さやか | ロックフェスでステージを手に入れることができればとってもフラワー! みんなで花咲くんだよ! |
真顔で一生懸命花帆のトレースをするさやかに、絶望した顔でツッコむセラス。 | |
セラス | ギリ花ちゃんが言わなそうなこと選手権!? |
泉、限界。声を上げて笑う。 | |
泉 | あっはっは! |
小鈴がさやかの両肩を掴んで揺らすと、それでもなお花帆のトレースのまま笑ってみせる。 | |
小鈴 | 目を覚ましてくださいさやか先輩! なんで花帆先輩になっちゃったんですか!! |
さやか | 花帆ちゃんの代わりを務めるのがあたしの役目だからね! |
小鈴 | じゃあさやか先輩はどこいっちゃったんですか!! |
苦笑いの姫芽と瑠璃乃。 | |
姫芽 | 代わりってそういうことなんですかね~。 |
瑠璃乃 | さやかちゃんが頑張りたいっていうならいいことだとも思うけど。 |
瑠璃乃 | じゃあ……ロックフェスは出るって方針で良いの? |
さやか | うん、花帆ちゃんのためにも、頑張ろうね! えーっと。 |
さやか | 花帆さんが居ない中、わたしは至らぬところも多いかと思います。 ですが、わたしなりに力を尽くそうと思います。 |
さやか | どうかみなさん、宜しくお願いします。 |
小鈴 | うわあ、戻った! |
さやか | くっ……花帆さんが言いそうな言い方が思いつかなくて……! |
瑠璃乃 | べつに全部トレースしなくても!! いやそもそもトレースしなくていいんだよ!? |
姫芽 | あはは……。 ま、かほせんぱいもめっちゃ悔しいでしょうし~。 |
姫芽 | なんとかして、どうにかなって良かった~って思ってほしいですよね~。 |
さやかが頑張ろうとしているのは分かって、セラスも頷く。 | |
セラス | 花ちゃんが笑ってくれるなら、わたしはたとえ火の中岩の中……。 |
セラス | ロックフェスだけに。 |
セラス | ロックフェスだけに。 |
瑠璃乃 | 岩だからロックって何度も言わなくていいよ! |
泉 | ロックフェスそのものは、昨日下調べしてみて面白そうだとも思ったからね。 |
小鈴 | めっちゃくちゃ楽しかったです! 身体の底から熱いものがこう……すごいです! |
泉 | ……私もフェスを見て確かな熱を感じたよ。 |
泉 | あそこに飛び込んで スクールアイドルクラブの夢を叶える足掛かりにするというのは、悪くない。 |
瑠璃乃 | ……だね。 |
瑠璃乃 | あそこでライブをするならどういうことができれば楽しいかなって、 思いつくこともたくさんあったよ。 |
瑠璃乃 | 花帆ちゃんのためにも、成功させようね。 さやかちゃんが大変なことがあれば、力になるからさ。 |
さやか | はい。 ありがとうございます、瑠璃乃さん。 では、改めまして。こほん。 |
さやかの咳払いに、瑠璃乃が首を傾げる。 | |
さやか | ロックフェス、みんなでぶちあがってドデカく花咲こうね!! |
やめろお!とばかりに頭を抱えるセラス。 | |
セラス | 花ちゃんはそんなこと言わない!? |
泉 | あっはっはっは!! |
セラスと小鈴、姫芽と吟子の四人がレッスンルームで頭を悩ませている。 | |
吟子&小鈴&姫芽&セラス | うーん……。 |
吟子 | やりたいことがあるのはいいけど。 |
小鈴 | 衣装はどう? |
緩く首を振る吟子。 | |
吟子 | 全然思いつかない。 ……曲はどんな感じ? |
吟子と同じ感じで首を振るセラス。 | |
セラス | 全然思いつかない。 ……振り付けどうですか? |
ぶんぶん首を振る小鈴。 | |
小鈴 | 全然思いつかない!! |
吟子&小鈴&セラス | どうしよう……。 |
その様子をずっと後ろで見ていた姫芽が苦笑い。 | |
姫芽 | う~ん……これは難しいねえ~……。 |
吟子 | 花帆先輩に今、相談を持ち込むのも……。 |
姫芽 | 安静にしててほしいしね~。 |
と、姫芽が言った瞬間、レッスンルームの扉が開く。 | |
さやか、迫真の表情。 | |
さやか | ふーらわー!! |
セラス | で、でた!? |
頑張って作った笑顔で、さやかがぐいぐい吟子に寄る。 | |
さやか | 困ってるみたいだね! あたしがなんでも聞くからね! |
吟子 | え、なんですか、なんなんですか!? |
小鈴 | 吟子ちゃんの方がさやか先輩みたいに! |
さやか | お悩みがあるというのなら、 さやかちゃんがなんでも聞いてあげるから安心して! ほら、どうぞ! |
ドン引きのセラス。 | |
セラス | え、じゃあ先輩が昨日からおかしくなってビビってます……。 |
満面の笑みで振り返るさやか。圧を感じさせる台詞。 | |
さやか | 今はそんなことはどうでもいいんだよ! |
セラス | 聞かれたから答えたのに! |
さやか | あたしはただ、みんなの悩みを解決したい! 突拍子もない思い付きでね! |
セラス | だから花ちゃんはそんなこと言わないですよね!? |
セラス | ……え、まさか今の花ちゃんはそういうこと言う……? |
驚愕した顔で小鈴を振り向くセラス。 | |
小鈴 | 言わないと思う!! |
小鈴は小鈴で大好きなさやか先輩はどこ行ったんだ! というテンション。 | |
吟子 | ……まあその、困ってるのは事実なんですよ。 実は、衣装が……。 |
セラス | 曲が。 |
小鈴 | 振り付けが。 |
吟子 | 全然思いつかなくて……って差し込まないでくれる!? |
セラス | だってこのままじゃさやか先輩のせいでわたしがツッコミ固定に。 |
吟子 | なんやいね……。 |
姫芽 | あはは~。 ご覧の通りで。 アタシ自身も、あまり気の利いたこと言えなくて困ってました~。 |
さやか | なるほど……まとめて解決しちゃうよ! |
姫芽 | それはかほせんぱいでもなかなか厳しいのでは~? |
吟子 | ……悩んでる点自体は一緒なんですよね。 |
吟子 | どうやったら私たちとロックが調和するか 分からないっていうか。 |
考え込むさやか。 | |
さやか | そう、だなあ……。 |
吟子&小鈴&姫芽&セラス | ……。 |
さやか | そう……だなあ……。 |
小鈴 | さやか先輩!! さやか先輩のままで良いんですよ!! |
さやか | くっ……! |
さやか | 出直してきます!! より花帆さんに近づくために!! |
そう言って退散するさやか。 | |
小鈴 | えええええ!? |
吟子 | 行っちゃった……。 |
セラス | さやか先輩って、面白い人なんですね……。 |
小鈴 | いつもとは、その、ちょっと違うよ!? さやか先輩はもっとちゃんとしてて! すごいんだから! |
セラス | 確かにすごい……。 |
小鈴 | じゃなくてね!? |
姫芽 | まあ~……アタシたちはアタシたちで、 ちゃんとがんばった方が良さそうだね~。 |
さやか | くっ……花帆さんになれない……! |
さやか | 花帆さんになれないまま、結局わたしはさやかちゃんとして お弁当の仕込みを……果たしてこれは正解なのでしょうか……! |
さやか | 花帆さんになるためには、 一度さやかちゃんとしてやるべきことは全てやめた方が良いのでは……!? |
と、そこでがさっと音がする。 | |
さやか | !? |
小鈴 | こそ~……。 |
さやか | ……ふう。 |
さやか | あれ、小鈴ちゃんなにしてるの? |
小鈴 | どわあ!? |
小鈴 | い、いえ決して盗み食いをしにきたわけでは! |
さやか | え、盗み食いはダメだよ? |
小鈴&さやか | ……。 |
小鈴 | そ、そうですよね……さやか先輩に見つかったら終わりだと、 徒町分かってました……。 |
さやか | ! |
小鈴 | ? |
さやか | 言われて、みると……。 さやかちゃんではなく、花帆さんなら……! 花帆さんならどうするでしょうか……。 |
小鈴のおなかが鳴る。 | |
小鈴 | ……。 |
一瞬、さやかを利用することを葛藤するも、おなかがすいたことを優先する小鈴。 | |
小鈴 | 花帆先輩だったら~。 |
小鈴 | がまんはしないんじゃないかなー、とか考えてみたりしましてー。 |
あらぬところを見ながら上ずった声で、とぼけたように。 | |
さやか | 確かに……! 小鈴ちゃん! |
小鈴 | は、はい! |
さやか | がまんなんてしないでいいよ! |
小鈴 | やったー! |
さやか | じゃあ食べちゃおっか! それが小鈴ちゃんのやりたいことなんだから! |
小鈴 | はい! 遠慮しません! |
暗転して、じゅわーなど料理をする音の演出。 | |
暗転開けて、ふたりでテーブルを囲んでいる。 | |
ぱくぱく揚げ出し豆腐を食べる笑顔の小鈴。 | |
その幸せそうな笑顔を見つめ、さやかは思う。 | |
さやか | そっか……がまんしない……。 |
口にもの入ってる小鈴。 | |
小鈴 | しゃやかしぇんぱい? |
さやか | そっか、そういうことか……花帆さんとは…… 素直に思ったことを口にすること……! |
さやか | 思ったことは口に出そう、やってみよう、 そういうことなのかもしれませんね……!! |
なにやら神髄を掴んだ顔をするさやかで〆。 |