第3話『星に憧れて、花は舞う』
PART 4
さやか | 吟子ちゃーん! |
吟子 | まだやってるんですか!? |
さやか | あのあと、衣装はどうかなあ。 |
吟子 | しかもなんかちょっと真似が堂に入ってきてる……。 |
吟子 | えと、まだ難航中です。 二月に梢先輩とロックを見に行ったときのことを 思い出してみたりはしたんですが……。 |
吟子 | どうしたらロックのステージに合う衣装が作れるのか、 ちょっとビジョンが見えなくて。 |
さやか | ふんふん。 じゃあもうちょっと掘り下げて考えてみよ。 吟子ちゃんはロックフェスのステージでどんなことがしたい? |
吟子 | したいこと…… ロックフェスの人たちみたいな輝きを、私たちも、とは思っています。 |
吟子 | あの人たちは、心からの叫びみたいなものを表に出してて。 |
さやか | そっか……じゃあ、叫ぼう! 我慢したり、ため込んだりしたものを、勢いよく! さあ! |
吟子 | ここで!? |
さやか | うん、ここで! あたしが花帆ちゃんの真似をしてるみたいに、ロックを真似する勢いで! |
吟子 | いろんな意味で説得力がすごい……。 |
一度目を閉じた吟子は、真似事はともかくさやかの言っていることは確かだと思い考える。 | |
吟子 | でもそうなると、私たちのありのままを表現したい、になるのかな……。 ありのまま……。 |
吟子 | そっか。 飾る必要のないありのまま。 さやか先輩、分かった気がします。 ……ありのままで良いんだ。 |
さやか | とっかかりになったかな!? |
吟子 | はい。 衣装の方は、大丈夫そうです! ありがとうございます。 |
さやか | さっすが花帆ちゃん! |
吟子 | どういう感情で喋ってるんですか!? |
さやか | 花帆ちゃん流お悩み解決術、だよ! |
姫芽 | う~ん、どうしようかな~。 |
さやか | 悩み事かな!? |
姫芽 | うわあ! びっくりした~! |
さやか | なんでも聞くよ! 部長の役目だからね! |
姫芽 | あはは、ありがとうございます~。 このモードのさやかせんぱい愉快だな~……。 |
姫芽 | まあその、今回のことの発端ってアタシとかほせんぱいじゃないですか~。 かほせんぱいが倒れるくらい頑張ったのが、ちょっと申し訳なくて~。 |
さやか | それは……。 |
姫芽 | アタシだけやりたいことやって、なんて……ちょっと気が引けるというか。 |
さやか&姫芽 | ……。 |
さやか | は、だめだめ。 心の中の花帆ちゃんを呼び覚まさねば! |
姫芽 | なにかはじまった。 |
さやか | ……そう、さやかちゃんは言いづらいかもしれないけど、 花帆ちゃんならきっと「そんなの気にしない!」って言うよ! |
さやか | 花帆ちゃんは自分がやりたいからやったんだよ。 |
さやか | だから姫芽ちゃんもやりたいことを我慢せずにやろう! もちろん、無理して風邪とかひいちゃだめだけどね! |
姫芽 | ……それは、そうですね~。 あはは、さやかせんぱい、めっちゃかほせんぱいの真似うまくなりましたね~。 |
さやか | えへへ、そうかなー。 |
姫芽 | でもそうですね~。 |
姫芽 | アタシもかほせんぱいにならって、夢のために頑張ろうと思います~。 憂いなく、ロックフェスに臨むために! |
さやか | うん、頑張って! |
さやか | よしよし、お悩み解決! どんどん行こー! |
セラス | あのー……さやか先輩……? |
さやか | おはようございます、セラスさん。 小鈴さんも。 |
セラス | ! 戻ってるー!! |
小鈴 | 花帆先輩の真似はもう良いんですか? |
さやか | ふふ、いいえ。 |
セラス | ひぇ。 |
さやか | 花帆さんになることで、様々な学びがありました。 |
さやか | その経験は今しっかりわたしの中にあります。 ですから戻ったわけではありません。 |
さやか | 今のわたしは、村野さやかwith花帆さんです。 |
小鈴 | 共存してる……。 |
さやか | 花帆さんのマインドとわたしの両方を併せ持つという意味です。 |
小鈴 | 徒町にはよく分かりませんが、うまくいったという……? |
さやか | はい。 なんとなく分かった気がするんですよね。 |
さやか | 花帆さんって、すごくロックですよね。 |
セラス | 言われてみれば……。 |
さやか | 突拍子もないことを言い出すのもそう感じますが、 その突拍子のなさの裏側には、花帆さん自身が強くどうにかして 目の前のことをやりたいんだという気持ちがあって。 |
小鈴 | 確かに……。 それこそ、今年の三月もそうでした! だから今の徒町たちがあります! |
さやか | はい。 その気持ちを理解できたかなと思ってます。 |
さやか | きっとみなさんも、心の中に花帆さんを作れば、 ロックフェスはうまくいくはずです! |
セラス | 日野下インストール……。 |
さやか | そう! さあ、日野下インストール! |
小鈴 | 変な名前までついた!? |
セラス | ……花ちゃんだったらどうするか、かあ。 |
セラス | わたしも今、曲について迷ってて。 |
セラス | 打開策は思いついてないので…… ちょっとやってみようかなと思います、日野下インストール。 |
小鈴 | あんなに怯えてたのに。 |
セラス | 急にやられたら怖いじゃないですか! |
セラス | 本当はもう部屋に花ちゃんがいなくて、 さやか先輩の体に共存してるのかな、とか……。 |
小鈴 | どんなホラー映画!? |
セラス | 次第にふたりの境界線は曖昧に……。 |
小鈴 | そっちのが怖いよ! |
さやか | セラスさんの曲の悩みというのは…… ロックフェスでどんなものを披露するか、でしたっけ。 |
セラス | はい。 |
セラス | ううん。 そうだよ、さやかちゃん、小鈴ちゃん。 |
小鈴 | さっそくインストールしてる!? |
さやか | だったらなんでも力になるよ! どんな曲になるかすっごく楽しみ! |
セラス | うん、待ってて! すぐに形にしてみせるから! |
さやか | あれ!? 相談してくれないの!? |
セラス | あたしの気持ちを全部込めなきゃいけないからね! さやかちゃんはカツカレーでも食べて待ってて! |
さやか | 言われたことないよそんなこと! |
小鈴 | 徒町この空間が怖いです! |
頭を抱える小鈴に、さやかとセラスは一度目をやって、改めて元に戻る。 | |
セラス | とにかく……せっかくアドバイスもらえたので、自力でやってみたいです。 全部やってもらうみたいになってもダメだと思うので。 |
さやか | そうですか……。 わたしの中の花帆さんが、ものすごい手伝いたそうにしてるんですが……。 |
セラス | ふふ。 それは分かりますけど、 わたしの中の花ちゃんもやる気に満ち溢れてるので。 |
さやか | そう、ですか……分かりました……! |
さやか | な、なにかあったらいつでも言ってくださいね! 小鈴さんも、振り付けで悩んでましたよね? |
小鈴 | 徒町は、花帆先輩をインストールなんてとてもできませんが…… でも、セラスちゃんと同じで、やってみたい気持ちはちゃんとあります! |
さやか | そう、ですか……。 |
セラス | ふふ。 小鈴先輩は花ちゃんと近いとこあるから、 インストール要らないのかもです。 |
さやか | ……確かに。 |
小鈴 | おそれおおい! |
セラス | でも、うん。 だったら小鈴先輩、頑張りましょう。 目指せ、みんなで花咲くステージ! |
小鈴 | おー! |