第4話『太陽を目指した背中』

PART 1

小鈴の焦りを描く導入。
蓮ノ三連華が方々で活躍している様子。
小鈴、吟子が見つめる先には、忙しくしている蓮ノ三連華。
立ち話をしているというよりは、それぞれ動き回っているイメージです。
小鈴&吟子
……。
さやか
花帆さん、ステージの許可は取り付けておきました。
あとの打ち合わせはお願いできますか。 わたしは詳細詰めますので。
花帆
ありがと! やることは先にまとめちゃったから見ておいて!
瑠璃乃ちゃんの方はどう?
瑠璃乃
次のライブ出たい人はリストにしといたよー。
いやー、にしても時間がいくらあっても足りないねえ!
小鈴
なんか……先輩たち、忙しそうですね……!
小鈴に頷くさやか。
さやか
そうですね、これから先は一歩一歩進んでいくとは言いましたが。
笑顔で振り向く花帆。
花帆
その一歩一歩を、ゆっくりしてられるわけでもないからね!
花帆
だからこれまで以上にたくさんやるんだ!
みんなの輪を広げるために!
さやか
イベントも、配信も、曲作りも。 今まで動きをさらに活発にして、
より多くの人に届けられるようにする、ですね。
花帆
そう!
ふたりが笑い合う。
と、そこに姫芽が戻ってくる。
姫芽
るりちゃんせんぱ~い。
友達が助けてほしいって言ってて~。
瑠璃乃
ほいほい。 じゃあちょっと抜けるねー。
瑠璃乃が席を立つ。
花帆&さやか
がんばって!/がんばってください!
ひらひらと手を振りながら、瑠璃乃は出て行く。
吟子
……。
小鈴
すごいね、先輩たち。
小鈴たちのところへ戻ってくる姫芽。
姫芽
おろ、ふたりともどしたの~。
吟子
……先輩たちすごいよね、って話。
吟子が難しい顔をしながら。
そう言われて、姫芽は照れるように笑う。
姫芽
なんたってるりちゃんせんぱいですからね~!
ただのるりちゃんせんぱいじゃないよ、アタシの……相棒、ふへへ。
小鈴
流石は蓮ノ三連華……だよね!
小鈴は素直な尊敬から口にする。
姫芽と小鈴が笑い合っているところで、吟子は難しい顔。
吟子
そう、なんだけど。
姫芽
濁す吟子に、姫芽は首を傾げる。
と、吟子はためらいながらも零す。
吟子
……私たちだって……蓮ノ小三角、なんに……。
姫芽
姫芽は吟子の言いたいことを理解する。負けず嫌いな部分も含めて、姫芽の性格と近しいところもあってすぐに。
逆に小鈴の方は自信がないので反応できない。蓮ノ三連華がすごい。
どん、と姫芽は吟子に肩をぶつけてじゃれる。
可愛い可愛いと猫をめでるように吟子に声をかける。
姫芽
なんだよ~! 吟子ちゃんはかわいいな~!
吟子
なっ。
姫芽
なるほどなるほど~。 このままじゃBloom Garden Partyでも、
蓮ノ三連華についてきたおまけ、みたいになっちゃうかも~って?
吟子
そうなんだけど! そうなんだけどくっつきすぎ!!
その声やめて!
ぐい、と姫芽を引きはがす吟子。
姫芽
にゃ~。
引きはがされる姫芽の鳴き声。
そんなふたりの様子を見ていた小鈴は、自分の感覚が不安になる。
小鈴
吟子ちゃんはその……悔しい、の?
小鈴の言葉に素直に頷くのも恥ずかしいが、それでも心中は変えられない吟子。
吟子
悔しい……かも。
最近、花帆先輩に、どんどん離されてる気がするっていうか……。
小鈴
そっか……すごいな……。
徒町も、悔しいって思わなきゃなのかな……。
ぽつりと小鈴は零す。悔しいと素直に思えている吟子が羨ましい。
吟子は顔を上げて、ふたりに宣言する。
吟子
だからその……私たち3人で、やろうよ。 イベント。
姫芽
お、出し抜いちゃう? 出し抜いちゃう?
吟子
その言い方はどうなの! でも……そう。
今月中にやってやろうよ。 私たちで、やりたいことを集めてさ。
吟子
小三角のフェスを。
姫芽
いいねえ。 実はアタシもう、イベント考えてんだよね~。
吟子ちゃんは服飾系?
吟子
うん。 私は展示がメインにはなるけど、
衣装の試着をできるようなイベントがしたいんだ。 姫芽はゲーム系?
姫芽
ゲームといえばゲームかな。
アタシの好きな“対人戦”をもっと掘り下げたいんだ~。
姫芽
壇上から集まってきてくれたみんなにヒントもらいながらゲームするとか、
もう会場の人みんなと対戦しちゃうとか、
姫芽
とにかく全員巻き込んでイベントがしたいんだよね~。
小鈴
おお……!
吟子
じゃあ、一緒にやるというよりは、
同じ場所でそれぞれイベントをやる、みたいな感じがいいかな。
姫芽
あ、いいじゃん!
せっかくだから3人のブースで三角形作ってさ~!
吟子
うん、それでいいと思う。 来たいと思う人も別だろうし。
先輩たちを出し抜きたいってわけじゃないけど……。
姫芽
分かってる分かってる。
ちゃんとアタシもBloom Garden Partyに貢献した一員です、
って胸を張りたいよね~。
小鈴
吟子
……まあ、そう。
小鈴
ふたりとももうやりたいことがあるんだ……三連華どころか、みんな……。
徒町だけ……。
吟子
小鈴はどう?
小鈴
へ!?
急に水を向けられて顔を上げる小鈴。
姫芽
イベントでやりたいこと、ある~?
吟子
色々言ったけど、小鈴が難しそうならべつに来月とか再来月でも。
小鈴
あ、あるよ!! やりたいこと!!
慌てて笑顔を作る小鈴。
その日は近江町市場のお手伝い。今日は小鈴のみ。
画面中心で小鈴が頭を抱えている。
小鈴
言っちゃったあああああ……!!!
小鈴
徒町、何も考えてないのに~!!
徒町はおろか!!
悲鳴じみた声をあげ、しゃがみこむ小鈴。言っちゃったからにはなんとかしないと、そのなんとかが何をすればいいのかまったく分からない。
れいかさん
小鈴ちゃん! 頼んでたお会計は!?
小鈴
はっ! すみません~~!
慌てて立ち上がり、戻っていこうとする小鈴。そこに慌てたようにれいかさんの制止がかかる。
れいかさん
待ってこっちの作業も途中で終わらせられないから!
つんのめるようにして立ち止まり、れいかさんとレジの方を交互に見て困惑する小鈴。
小鈴
え、え!? でもお客さんが!
どうしよ、どうしよ! ときょろきょろする。
れいかさん
そ、そうね、えっと!
広実
どけ、ここはアタシがやる。
れいかさんも慌てた感じを出す。そこにやってきて小鈴を押しのける広実。
小鈴
うわっ、ええ!?
押しのけられた小鈴が動揺すると、れいかさんは広実の態度にあちゃー、という感じ。
れいかさん
広実ちゃんその態度は……
ああもう、小鈴ちゃん、会計お願い!
小鈴
は、はい!
広実
……。
慌てて駆けていく小鈴。その背を見送り、作業を始める広実で〆。
時間経過の演出。
戻ってきた小鈴が、膝に手をついて呼吸を整えている。
小鈴
はあ、はあ……ご迷惑を……。
れいかさん
いいのよ、忙しいピークは抜けられたし。
と、広実が用は終わったとばかりに立ち去っていく。
小鈴
あ! あの!
広実が振り向く。面倒くさそうに。
小鈴
さっきは助かりました!
広実
……。
小鈴
あ、あの。 さっきの、お客さんの……。
広実
あんま近寄るな、スクールアイドル。
小鈴
えっ……? あ、はい、ごめんなさい……。
言いたいことを言って立ち去っていく広実。
その背中を呆然と見送る小鈴が、我に返る。
小鈴
……そんな言われる!?
れいかさん
あー……。
小鈴
なんなんですかあの人!
た、確かに徒町はどうしようもなくフォローさせてしまいました!
しまいましたけども!
れいかさん
あー……広実ちゃんはね……。
うん、あの言い方はよくないわよね……。
れいかさん
そろそろもう少し人当りよくしてほしいんだけど……。
そうすれば私も安心して……。
下行はれいかさんの独り言っぽく。この台詞に小鈴は気づかないので、広実が向かった方角を見つめているなど。
小鈴
あの人、前から働いてる人なんですか?
れいかさん
あの子は……そうね、小鈴ちゃんが知らないのも無理ないわね。
人とのかかわりは極力避けてるみたいだし……。
れいかさん
あの子は大道 広実ちゃん。 小鈴ちゃんと同じ歳の子でね……
ここで働き始めてもう半年くらいになるんだけど、
れいかさん
なかなか打ち解けてくれないのよね。
たまに話すとあの調子だし。
むっとした顔の小鈴が映る。
小鈴
徒町は……もう少し、ひとに優しくありたい……。
誰にでも優しい、瑠璃乃先輩みたいな人を目指したい……。
れいかさん
ふふ、そうね。 頑張ってね、小鈴ちゃん。
小鈴
はい! 徒町、今の人を見返すためにも、
次の山場はひとりで乗り越えます! ちぇすとー!!
怒った顔で拳を突き上げる小鈴。
れいかさん
あ、はは。 気持ちは嬉しいわ。
でも今日はもうそんなに忙しくはならないわよ?
小鈴
ちぇすとー……。
小鈴
うう。 なにか……徒町にできるなにか……。
ぷるぷると震えている小鈴。
れいかさん
そ、そうねえ。 荷降ろしとか棚上げとかさせるわけにもいかないし……
裏倉庫の整理? いや、でも小鈴ちゃんにお願い出来る仕事じゃ……。
小鈴
や、やります!
裏倉庫の整理!! 場所も分かるので!!
ぴゅー、と駆けていく小鈴。
れいかさん
ああ、ちょっと!?
あそこは危ないから――あ、いらっしゃいませ!
すみません少し待ってもらえ――ああもう、どうしたら!
れいかさん、追いかけようとしてお客様に捕まった感じのイメージ。