『スクールアイドルになるために』『ステージ設営の薦め』……おお、
『楽しいスクールアイドル』！ こういう本もたくさんあるんだなあ！

徒町、ししょー頑張らないと。
……やっぱりダメだった、って凹む気持ちは分かるから。

あがり症を治す方法、見つかるといいな！
徒町も、ダメなししょーにならないようにしないと！

おや、小鈴さんが図書館とは珍しい。

ぎゃあ！ 泉ちゃん！？ セラスちゃんも！

苗字ぎゃあになったの？ ぎゃあ・泉。

芸名ならもうちょっとこだわるかな。 ぎゃあ・セラス？

泉の姉になった覚えはないんだけど。

なんでさらっと上を持っていくんだ。

ど、どうしてふたりがここに。

なにやら、小三角が合同イベントを画策しているようじゃないか。

な、なぜそれを！

ふふ。 同じ教室で聞いていれば分かるさ。
だったら私にもやることはないかとセラスに聞いたところでね。

この先私たちがやるべきイベントについて、
調べものの最中というわけだよ。

図書館には、建築とかの資料も多いですからね。
どういうステージにするかとか、参考に見ておきたくて。

小鈴先輩は……『スクールアイドルになるために』？

わ、えと、こ、これはその！

小鈴先輩……わたしのために……！

セラスのためなのか？

だって小鈴先輩がいまさら学ぶ理由はないでしょ？
だとしたら後輩のためだよ。
そして小鈴先輩の後輩はわたししかいないんだから、Q.E.D.。

…………そう！！

ほう？

あなたはイベントのために忙しくしている最中のはずだが、
こんなタイミングでわざわざセラスのために？

可愛い後輩のためだよ。

それ、後輩のために頑張る先輩側が言う台詞じゃないかな。

じ、じつはほら、徒町ってそういうイベントを考えててー。

ほう。 セラスの個人レッスンイベント。

個人レッスンではないんだけど後輩と頑張るイベントというか～！

小鈴先輩、わたし感激しました～！

う、うう……！

ふうん。 分かった、楽しみにしているよ。 そのイベント。

あい……がんばりやす……！

よし、行こう泉。
わたし、小鈴先輩のイベントのためにも頑張らなきゃだし！

わたしの大好きな小鈴先輩のために、小鈴先輩の大好きなわたしが！

そうだね。 じゃあまた、小鈴さん。

う……うう……！

やっぱり徒町はダメなやつだあああ！！

ごめんなさいぃいいい！！ 嘘なんですううう！

ごめんなさい～……！
セラスちゃんを期待させるような嘘を……罪深い……。

仕方ないですよ。 内緒の約束なんですよね。

うん……でも……やっぱりつらい……。
約束も、破っちゃって……。

難儀なものだね。

でも、話してくれて良かったです。
小鈴先輩ひとりで抱え込むことじゃないですよ。

ふぇ……？

他のみんなも事情を聞いたら協力してくれるんじゃないでしょうか。

で、でも。 内緒にしてほしいって……。

それは……分かりますけど。
でも、じゃあ言ってしまいますと……。

小鈴先輩……嘘つくの向いてないですよ。
わたしたちに全部言っちゃうくらいですもん。

ふぐっ。

その人がなんか言ってきたら、フォローはしますよ。
泉が。

私が？

なんてったって泉はフェンシングもできますからね。

どうやってフェンシングでフォローを……？

まあ、なので。
小鈴先輩には、憂いなくその人の師匠を頑張ってほしいです。

……いいの、かな。 みんなを頼っても。

向こうにも隠したい事情があったのかもしれないけど……
小鈴さんは嘘をつけなかった。 それでいいんじゃないかな。

そっか……うん。 広実さんに謝って、徒町、みんなに話すよ。

まったく……小鈴、ひとりで何をやってるかと思えば。

まあまあいいじゃん？ スクールアイドルになりたい子を応援するなんて、
すごくいいことだと思うな～。

え、いや。 責めてるわけじゃないんだけど……。
むしろ、小鈴は誰かの憧れになってるんだな、って。

誇らしいよね～。
それとも、羨ましいよね～？

……どっちも。

あはは。 小鈴ちゃんを倒すのは難しいよ～？
最近、ゲームもどんどん強くなってるからね～。

べつに倒したいわけでもないんだけど！

そ？ アタシはいつか倒したいな～。

何度勝っても、明日の徒町が頑張ります！
って言うだけで、敗北は認めてくれないからね～。

え、敗北を認めさせたいの……？ ゲームの話？

ゲームに限ったことじゃないんだけどね～。
何度倒しても挑戦してきてくれるじゃん？

アタシはそれが嬉しいっていうか……
その度に強くなる小鈴ちゃんが好きっていうか……。

歪み始めてない？

いやいや多いんだよ。
負けて実力差が分かっちゃうと、もう萎えちゃう人とかね。

小鈴ちゃんのメンタルは、もうそれだけで羨ましいくらいの才能なんだよ。

それは分かるけど！

蓮ノ小三角が揃って……揃って……！

お、落ち着いて！ ごめんね、徒町……嘘つけなくて……！

いや……。

そう、だな……。

ご、ごめんなさいぃ……！

ああいや……バレちまったなら……仕方ねえ……！

ま～そういうわけで～。 小鈴ちゃんが頑張ってるって聞いたので、
お手伝いしにきました～。 よろしくね～。

百生 吟子です。 今日は小鈴に協力しにきました。
……私もけっこう緊張しいなところあるから……役には、立てるかもとは。

大道 広実……

なのですわ。

え、急になに！？

ああ、緊張して変なキャラがはみ出てる！！

そんなことある？？？

ぐっ……。

ふたりとも、ありがとね。 忙しいのに。

それはお互いさまのはずだけど……
こんなことまでして、月末のステージ大丈夫なの？ 延期した方が良い？

ステージ……？

小三角でやるステージがあるんだ～。
良かったら遊びにきてね～。

あ、ああ……師匠、そんな忙しい中でアタシのために……！

い、いやあ……あはは……。

で、今日は何するか決めてるの？

うん！ 徒町、色々調べてきたんだ。

スクールアイドルになるための本とか読んで……
緊張してる時にどうすればいいか、載ってないかなって。

ど、どうだった？

やっぱり思ってた通り、慣れることが大事だって！
広実さん、大変かもしれないけどやっぱりライブを繰り返そう！

そう、か……！

ちょ、ちょっと待った小鈴。

待つ！

確かに場数を踏むのは大事だけど……かなり緊張するタイプなんでしょ？
その、広実さんは。

情けないことにな……。

なんなら今も蓮ノ小三角に囲まれてるとかいうわけのわかんない状況で
めちゃくちゃ心臓がうるせえ……。

こ、光栄だけど……。 だったら、何度も繰り返し失敗して
嫌なイメージが付いちゃうのも、よくないんじゃないかな……。

それは、そうなっちまうかもしれねえ……。

なんてったって小鈴ちゃんは何度失敗しても立ち上がる、
めちゃくちゃ強いメンタル持ってるからねえ～。

まあ……姫芽の思う小鈴の強いところがそこだとして。
それは誰でも持ってるものじゃないから。

うっ。
じゃ、じゃあどうしたら！

そうしたらさ～。 小鈴ちゃんのもうひとつの長所を活かそうよ。

徒町に長所が！？

いっぱいあるだろ！！

そう、いっぱいあるうちのひとつ。
人を見る目があるってこと。 広実ちゃんの長所ってなんだと思う？

アタシに長所……！？

あるよ！！
いざって時にすっごく頼りになるし、優しいし、スタイルも良いし！

わ、わー！ あんま言うな！ またアガっちゃうからァ！

その広実さんの長所を、どうするの？

アタシのゲームの大会を思い出してたんだけど……やっぱり、
自分の得意なことに集中すると緊張って気にならなくなったなって思ってさ。

つまり、苦手なことを得意なことで相殺しよう！
『ウィークポイント』と、『ストロングポイント』だよ。

う。

おお……なるほど……！
さっすが姫芽ちゃん……！

まあ、頼りになるところを、
どう緊張と相殺するかは思いついてないけどね～。

ううん、十分だよ！
それだったら、いいこと思いついたかも！