第5話『桂城 泉』

LIGHT

……。
……ふぅ。
セラス
あー!
セラス
なんで!?
わたしがまた、いちばんじゃなかった……!
は、早いね、セラス。
セラス
まさか、わたしに勝つために、部室に寝泊まりしてるの……!?
ぜったいにやらないよ。
そんなことをしなくても、あなたには大抵のことは勝てるから。
セラス
たとえそれが事実だとしても悔しいことに変わりはないからね!?
セラス。
セラス
なに!?
少し、場所を変えてもいいかな。
セラス
……屋上?
伝統と芸術の学校。
蓮ノ空女学院。
朝練にやってくる生徒たちも、
そのほとんどがきっと、夢を抱いているんだろうね。
……羨ましいよ。
私は、彼女たちのようには、なれない。
セラス
……泉?
私にできるのは、これが精一杯だ。
できたよ。 私の、歌詞だ。
セラス
……見てもいい?
もちろん。
セラス
ん……。
セラス
泉、これ……。
痛々しいだろう。
あなたには、見せたくなかった。
それが、私なんだ。
もし、スクールアイドルとして不適切だと思うなら、
また破棄してもらっても構わないから。
セラス
ううん。
セラス
これは間違いなく、泉の歌だよ。
他の誰でもない。 泉にしか書けない歌だから。
セラス
これでいこう、泉。
わたしも全力で、曲を作るから。
セラス
泉の想いを、奈落の底まで、響かせよう!
……セラス。
私はこれまで、闇の中を歩んでいた。
絶望よりも昏い、諦観の道だ。
私は変わることなどできないと、そう諦めながらも……
ほんの少し、ひとかけらの光を掴みたくて、
ずっと必死に、手を伸ばしていたんだ。
セラス
……うん。
どこへ向かえばいいのかもわからなくて。
暗闇の森。
行き場をなくしていた私の手を掴んでくれたのは、セラス。
あなただったんだよ。
セラス
うん……。
セラス
……え!?
ありがとう、セラス。
あなたが私の光だったんだ。
セラス
ま、待って!
セラス
今の、なに!?
なにって。
感謝の気持ちだけれど。
セラス
素直すぎない!?
一度、しっかりと伝えておこうと思って。
あなたが私の、
セラス
だから待ってって!
セラス
誰!? 中身誰!?
セラス
もしかしてドッキリ!? わたしにギブアップって言わせるために……!
夏合宿の仕返し!?
約束したね。
Edel Noteは一年限りの契約だと。
セラス
う、ん。
え……? 期間延長の申し出……?
いや、それはしたくない。
あなたを縛り付けることに変わりはないし……Edel Noteに甘えていては結局、
私の情熱はあなた頼みのものになってしまうだろうから。
だから、新たに誓おう。
今度は、契約じゃない。
私があなたとユニットを組みたい。 これが今の私の“願い”だ。
セラス
願い……。
セラス
……わかった。
改めてよろしく、セラス。
桂城 泉という名の怪物を、共に打ち倒そう。
セラス
倒さないよ。
セラス
ぜったいに、救うんだから。
スクールアイドルという名の、光で。
……そうか。
セラス
っていうか、まだ泉はスクールアイドルのスタートラインに
立ったばかりだからね! まだなんにも終わってないんだから!
別に、終わった雰囲気なんて。
セラス
なんか出してたよなんか!
あと七か月! みっちりとスクールアイドルを好きにさせて見せるからね!
それは楽しみだ。
……本当に。
セラス
わたし曲作るために帰るからね!
じゃあね泉!
セラス
えっ……な、なに? まだわたしと一緒にいたいの……?
わたしのことがすごく好きだから……!?
いや。
まあ、好きは好きだけれど……寮に戻るよ。
なんだろうな。 無性に、二度寝をしたい気分なんだ。
きょうは、ぐっすり眠れそうだから。
セラス
あ、そ、そう。
セラス。
私は、スクールアイドルを、好きになれるかな。
セラス
ていうか好きになってってるよ、もう。
自分が気づいてないだけで。
そうかな?
セラス
そうだよ。
セラス
なんたって。
セラス
このわたしと、蓮ノ空のみんなが、一緒なんだから!
そうか。
……スクールアイドル、桂城 泉、か。
悪くないね。